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2016年04月13日

イラク難民続報(四月十日)





 チェコ政府はこの件で、イラクからのキリスト教徒の受け入れプログラムを停止したのだが、当初の予定では、150人ほどの受け入れを予定していた。その選別は既に終わっており、今月にも次のグループがチェコに来るはずだったのだ。それが、心ない25人の振る舞いのせいで、半分ほどの人がイラクに残されたということになる。さらに悪いことに出発は確定だと思われていたため、イラクに所有していた資産はすべて処分し、子供たちの学校も退校の手続きを済ませてしまっているらしい。これ、このままプロジェクトを停止していいのだろうか。
 チェコに残っているイラクから逃げてきたキリスト教徒たちも、今回ドイツに向かった「仲間」の所業には腹を立てているようで、テレビのインタビューに答えて、「あいつらは自分のことしか考えていない利己的な連中だ」と批判していた。チェコのプロジェクトに関わっている人たちは、チェコに来てから心変わりしたんじゃないかと、弁護するようなことを言っていたが、チェコに来て一週間もたたないうちにドイツに行くと言い出したのだ。あまりにも好意的な見方としか言いようがない。いや、自分たちのプロジェクトの遂行に問題がなかったと言いたいだけなのだろう。

 実際、ドイツに向かった連中は、ドイツに住んでいる親類のところに行きたいなどと言っていたのだから、最初からドイツに近づくための手段として考えていたに決まっている。ドイツが受け入れてくれるかどうかについて、正体不明の弁護士に相談していたという話もあるし、ドイツに行きたいと言い出す前のイースターの時期に、ドイツから親類が訪問してきたらしい。そこで何が話し合われたかはわからないが、おそらく ドイツが受け入れれるかどうか、受け入れられるためには何が必要かなどであろう。その話し合いのときの写真を、難民の一人がフェイスブックに公開していたらしい。これで難民の待遇が悪いと言われたら、チェコ政府でなくても腹を立てるだろうなあ。

 そして、もう一人、この件に絡んでいるのではないかと見られている人物がいる。イラク出身のチェコに住んでいる人物で、最初はこのイラクのキリスト教徒のチェコへの受け入れプロジェクトの協力者だったらしい。それが自分の弟を、プロジェクトでチェコに受け入れるリストに押し込もうとして反対され、喧嘩別れすることになったのだという。
 このイラク人は、袂をわかった理由を、プロジェクトの実行団体であるゲネラツェ21の責任者が、緑の党の関係者であることを理由にしている。そしてあてつけのように、反イスラムを叫ぶ、外国人排斥主義者達の集会の特別ゲストとして呼ばれて、嬉々として演説をしていた。オカムラ氏の場合と同じで、チェコ人だけでなく外国人も反イスラムを叫ぶというアリバイ作りの意味で呼ばれたに過ぎないと思うのだけど、本人が喜んでいるんだったら、それでいいのか。
 この人物は、喧嘩別れをしたにもかかわらず、チェコにやってきたイラク人たちの歓迎の場などにも顔を出して、チェコに住むイラク人代表のような顔をしていた。そこで、ドイツ行きを希望する集団に接触して、いらんことを吹き込んだのかもしれない。正体不明の弁護士がこの人かどうかはともかくとして、ドイツから親類が来るのが早かったことなどを考えると、チェコ側に協力者がいたことは間違いない。
 結局この問題で最悪なのは、現在の状況を金儲けや自分の立場の強化のために悪用するEU内の人間がいることなのだ。ギリシャ、マケドニアの国境地帯から難民達が離れようとしないのも、ありもしないデマを広める連中がいるからだという話である。この件に関しては、人間輸送業者だけでなく、現地で取材をしているマスコミ連中や、ボランティアと称して支援活動をしている連中も疑いから逃れ得ないと思う。

 それにしても、と思わずにはいられない。どうして、あと一月、二月待てなかったのだろうか。プロジェクトが成功するにせよ、失敗するにせよ、一期目の受け入れが終わったら、いったん停止して第二期への準備を始めたはずである。その時期に、ドイツ行きを希望していれば、財産を処分してチェコ行きを待っているイラク人もチェコに着ていただろうから、その分問題も反感も少なくてすんだはずなのだが。
 プロジェクトが今後も第二期以降も継続されるかどうかはともかくとして、第一期の残りのチェコ行きの準備の済んだ人たちだけでも、チェコに受け入れられるようになってほしいものである。特に、すでに家族の一部がチェコに来ている人についてだったら、特別に便宜を図る価値はあるのではないだろうか。
4月11日12時。






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