全191件 (191件中 101-150件目)
ホームグランド手賀沼とその沿岸には、ゴールデンウィーク前後にオオヨシキリが飛来する時期となります。ギョッギョッと囀るのを目撃すると、初夏の到来を実感します。西海(2007)は、オオヨシキリの形態、生態、生活などに関する知見を整理し報告しています。一夫多妻制でオスの20~30%が2~3羽のメスとつがう一方、なわばりを持っても1羽のメスともつがえないオスが15%前後いると述べています。早く渡来した雄はアシ原の植生密度が高い場所を好んでなわばりを確保し、最初の雌(第一雌)がなわばり内に入ると雄はさえずりをやめ、メイトガード(*)を行なう。第一雌が産卵を始めるころ(初卵日の前後3日間)にメイトガードをやめて再度さえずり始め,第二雌を誘引する.第二雌は第一雌の巣から離れた場所に営巣する傾向がある.早く渡来した雄、特に4月中に渡来した雄は一夫多妻になる傾向が強く,5月中ごろ以降に渡来した雄は雌を1羽も得られないことが多いことを記しています。さて、表題について、西海(2007)は、次のように興味深い報告をしています。オオヨシキリの雄が多い巣では雄親の給餌頻度が高いことを紹介しています。雄のヒナが多い場合には、雄親は十分な餌を与えて「良い息子」に育てようとし,逆にメスのヒナが多い場合には、給餌には労力を割かず、さえずることでもう一羽のつがい相手を獲得することに労力を割く方がより多くの子孫を残すことができるからだと考えることができると述べています。一般的に鳥類のヒナの性は外観上わからないとされていますから、雄親がどうやってヒナの性を識別しているのかという疑問は残りますが、興味深い記事です。(*)メイトガード:雄が雌に近づかないように警護すること(引用)西海 功.2007.父親はオスのヒナが多い巣でよく働く.Bird Research News Vol.4 No.8.p4-5.(写真)一枚目2019年5月11日柏市布瀬二枚目2019年5月12日柏市片山新田三枚目2022年5月20日印西市下井四枚目2022年6月17日柏市鷲野谷
2023.03.24
コメント(0)
ヒバリは、平地から山地の農耕地、草地、荒れ地等に生息している鳥類で、主に平地に生息していると思われてきました。しかし、清棲(1966)が報告しているように、長野県の霧ヶ峰や奥日光の小田代が原といった高地、上田(2007、白木2007)が述べているように富士山の標高1500~2000m のガレ場で営巣が確認され、北海道の高山帯でもさえずりが確認されていました。しかし、近畿、中国地方には活動中の火山が存在しないこと、ヒバリが生息できる見通しのきく環境がないことからヒバリは生息しないと考えられてきたこともあり、日本列島の山岳地帯の生息状況は不明でした。上田ほか(2022)が、2018年から2021年にかけて調査を行った結果、従来は知られていなかった亜高山帯のガレ場や火山のスコリア帯(火山の軽石帯)における生息状況が明らかとなり、平地にしか生息しないとされてきたが日本列島の火山帯のガレ場やスコリアに普遍的に分布することが明らかになりました。また、調査の結果、高山の植生ではスゲ類が見られるところでは生息が認められたが完全な岩礫、裸地では生息が認められなかったこと、高山における生息環境要件として巣材として利用できるスゲ属の生育が重要であること、斜度35度になる急斜面のガレ場でも生息が明らかになったと報告しています。(引用文献)清棲幸保. 1966. 野鳥の図鑑. p205-206.東京堂出版.白木彩子. 2007. 大雪山における高山帯耐性鳥類研究の試み.鳥学通信 no.17.上田恵介. 2007. 高山ヒバリはどこから来たのか?. 鳥学通信no.17.上田恵介ほか.2022.科学研究費助成事業 研究成果報告書.高山帯ガレ場に生息するヒバリ個体群の生活適応史と遺伝構造の解明.(写真)一枚目2011年6月12日柏市片山、二枚目2015年6月6日柏市布瀬、三枚目2021年8月20日印西市発作、四枚目2022年6月30日柏市正蓮寺、五枚目2023年3月20日柏市正蓮寺で撮影
2023.03.23
コメント(0)
冬鳥として飛来したユリカモメの姿も春になると見られなくなります。千葉県では利根川河口沖で夜間の集団ねくらをとることが知られていますが、水面以外のねぐらは文献報告も少なく、意外と知られていません。平田(2007)は、一部の個体が京都府の民家の屋根でねぐら行動をとっていたことを報告し、屋根の上では幼鳥率が高い傾向が認められたと報告しています。ねぐらとしたところでは中州などの周囲を水で囲まれた陸地が池の周辺にはなく、屋根は地上性の天敵が接近しにくいという点で安全性が高いことも要因となったのではないかと述べています。また、あわせて、小さな池や陸上における小規模なユリカモメの集団ねぐらは日本では非常に少ないが、日本と同様にユリカモメが多数生息するイギリスでは、小さな池やビルの屋上などでも小規模な集団ねぐらが普通に見られるとの報告があり、なぜ日本では陸上ねぐらが少ないかを議論するうえで多くの情報が必要と指摘しています。(引用)平田和彦.2007.日本におけるユリカモメの陸上ねぐら.Strix第25巻.pp141‐146.日本野鳥の会.(写真)2016年11月13日茨城県潮来市北浦、2018年11月14日東京都不忍池、2022年1月17日水元公園で撮影
2023.03.17
コメント(0)
40年来の鳥友から柏市内、手賀沼とその周辺地域のシラコバトの生息について問い合わせをもらいました。拙宅の亭主が観察記録を整理している中から1970年からの観察記録を見返した結果を整理し、2009年7月5日から8月8日の約一ヶ月間、柏市中原の公園で姿を見かけて以降、シラコバトを観察していない旨と市内でのシラコバトを観察した地区を整理してデータを提供しました。(1)柏市内でのシラコバトの観察記録1979年4/8柏市戸張1羽1983年6/8柏市高田1羽1992年2月3日から8月27日柏市十余二の公園で繁殖1993年4月11日柏市泉1羽1994年5月13日から7月27日柏市十余二の公園で繁殖1995年3月9日から6月10日柏市十余二の公園で繁殖1996年4月24日から5月16日柏市十余二の公園1996年9月19日から1996年9月20日柏市豊四季1997年4月8日柏市十余二の公園で1羽1997年6月5日柏市豊四季で1羽1997年9月13日我孫子市北新田で1羽1998年8月8日柏市今谷上町で1羽2000年6月18日から8月25日柏市豊四季でペア個体2001年6月19日柏市東中新宿で1羽上記の観察場所は、いずれも垣根、庭木、防風林が存在し、休憩場所として使っていたものと思われます。(2)隣接する埼玉県でのシラコバトの動向埼玉県がホームページでシラコバトの調査結果を報告しています。その結果を整理すると、つぎのようにhttps://www.pref.saitama.lg.jp/なります。2012年6月から8月の繁殖期 24羽2012年12月から2013年1月の越冬期76羽2013年12月から2014年1月の越冬期107羽2014年12月から2015年1月の越冬期103羽2015年12月から2016年1月の越冬期103羽2016年12月から2017年1月の越冬期66羽2017年12月から2018年1月の越冬期75羽2018年7月から8月の繁殖期44羽2019年12月から2020年1月の越冬期38羽2020年12月から2021年1月の越冬期29羽2021年12月から2022年1月の越冬期42羽(3)埼玉県でのシラコバト減少の要因中央大学の2017年度高校生地球環境論文賞の入賞論文で斎藤玲奈さんが調査・インタビューした結果から減少の要因を報告しています。https://www.chuo-u.ac.jp/a.越谷市によると、2008年までの50年間で農地割合が72 %から27 %になり、一方で、宅地割合は2008年までの50 年間で8 %から36 %になったとし、農家の宅地化と宅地化による治水対策によるコンクリートの護岸工事によるシラコバトの水飲み場減少が減少の要因としてあげられると記しています。b.越谷市の養鶏業は1968年に飼養戸数500戸、飼養羽数100万羽に達していたが、2013年3月1日には、養鶏場が市内に1戸のみとなったことで餌場としての畜舎の減少が要因としてあげられると報告しています。c,越谷市内の屋敷林の箇所数は、1989年は386 箇所だが、2014年には156箇所になり、25年間で約4割減少し、営巣場所が減少したと記しています。(写真)2011年5月8日柏市内で撮影
2023.03.13
コメント(0)
春到来とともに出会いが楽しみなのがミソサザイです。小さな体に似合わず、雄は震わせた声を効かせて複雑な声量のある声でさえずる大好きに鳥のひとつです。音が鳥のさえずりに与える影響が注目されています。興味深く目を通したのが沢沿いに生息するミソサザイと山のミソサザイではさえずりの特性が違うとの植田さんの報告でした。植田(2013)は、ミソサザイは山と沢を比べると山の方がよりさえずりの音圧が低い傾向があったと報告しています。具体的には、沢の近くで雑音が多い場所(沢)でさえずる個体とそうでない普通の森林地帯の個体のさえずりの特性について調べた結果、沢の個体は山の個体と比べて大きな声でさえずり(音圧が高い)最低周波数が高く、音要素の周波数変調が少ない(単調な歌)ことが判明したと述べています。沢の近くでは、沢音がさえずりの邪魔をしているのでミソサザイは、負けないよう大きな声でさえずり,沢音の周波数帯と被らないように最低周波数が高くなっていると考えられる。一方,山の個体のさえずりは,沢音が邪魔しないので,それほど大きな声でさえずる必要がなく,音要素の周波数変調が多い(つまり複雑な歌)さえずりを持つことができると考えられたと記しています。(引用)植田睦之.2013.大きな声で鳴く沢のミソサザイと小さな複雑な声で鳴く山のミソサザイーミソサザイのさえずりへの騒音の影響ー.Bird Research.第9号.pp.S23-S28.(写真)一枚目:2015年5月23日栃木県日光市湯滝で撮影二枚目:2019年7月9日長野県戸隠森林植物園で撮影三枚目:2021年6月29日長野県上高地で撮影
2023.03.10
コメント(0)
多くの図鑑では、アトリ科のシメは種子を好んで食べ、地上で採食すると記されています。太い嘴は樹上に残った種子、地上に落ちた種子をすりつぶして食べるのに向いていると解説しているものがほとんどです。しかし、穴田・多奈田(2000)が富山県のモウソウチク林でハチ類を採食した旨を報告しています。イカルは、モウソウチクエダフクレフシを割って中に潜んでいたサナギまたは幼虫を食べていた旨です。私共のフィールドには、モウソウチクエダフクレフシが存在していないので、確認しようがありませんが、今一度、シメの食べている餌に注目してみる必要があると思います。(引用)穴田哲・多奈田功.2000.イカルとシメによるモウソウチク虫えい内の八チ類の採食.Strix.第18巻.p111-114.日本野鳥の会.(写真)過去の私のライブラリーのものをアップ
2023.03.08
コメント(0)
昨日、千葉市内でケヤキの木についていたヤドリギの実を食べていたヒレンジャク、キレンジャクを観察しました。帰宅後、ヤドリギについて復習。山崎(2015)は、ヤドリギについての知見を整理し報告しています。(1)ヤドリギの色の秘密光合成により栄養をつくっているので緑色をしており、果実は直径5mm ほどの球形で、中に透明のネバネバした液につつまれた種子が入っている。ヤドリギの種子は鳥のお腹の中でも粘液に包まれたままで、鳥のフンといっしょに出てきます。鳥が木にとまっているときにフンをすれば、粘液が長く糸を引いてたれさがります。また、果実の黄色または赤色は、人と同じように色を見分けられる鳥から発見されやすいと述べています。(2)ヤドリギのつく木の種類2012年冬に札幌市内のヤドリギの調査をした結果、ヤドリギがつく木の種類は、着生が多い順(割合)に並べると、A:公園や森に植えられた木ではシラカンバ・ハルニレ・ナナカマド、B:自然に生えてきた森の木ではドロノキの割合が50%にたっし、次いでオオバボダイジュとハルニレとの結果と報告しています。さらに、文献に収録されている長野県松本市を中心とした地区の調査結果を紹介し落葉広葉樹20種でヤドリギが確認され、たくさんついていたのはケヤキ・シラカンバ・コナラ・クリだったと記しています。(引用)山崎真実.2015.北海道の自然.北海道自然保護協会会誌.第53巻.p102-106(写真)1枚目、2枚目:2023年3月3日千葉市内で撮影、三枚目2020年2月埼玉県で撮影
2023.03.04
コメント(0)
ウグイスは、羽田(1970)が報告しているように、巣造り後期、抱卵、抱雛、給餌、糞運び出しの全てが雌が担当し、ナワバリ防衛は雄のみで行う鳥類と長年思っていました。しかし、濱尾(2001)は、隔離された大洋島で進化してきた小笠原のウグイスでは雄の巣内ビナヘの給餌が観察されており、2000年5月に京都府京田辺市で雄がヒナに給餌するところは直接観察できなかったもののヒナの近くに行くまでは職に幼虫をくわえているのを観察し、ヒナに近づいた後で幼虫をくわえていないのを観察したことから雄はヒナに幼虫を給餌していたと判断したこと報告しています。あわせて、子の世話の分担は、必ずしも固定されたものではなく条件により変化あるものと考えられると結んでいます。(なお、濱尾(2001)は、雌雄の識別について、雄は総排池腔が突出し、抱卵斑がなく放鳥後さえずる、雌は総排池腔が突出しておらず、抱卵斑があり囀ることがない点で識別したと記しています(引用)羽田健三・岡部剛士.1970.ウグイスの生活史に関する研究.山階鳥研報第6巻第1/2号.p130-141.涜尾章二・松原始・梶田学・三田村あまね.2001.ウグイスの雄による巣立ちビナヘの給餌.Strix第19巻.pp187-189.日本野鳥の会.(写真)2022年2月4日都内水元公園で撮影上面、下面ともに褐色味があり、嘴、足ともに褐色という解説が一般的です。水元の個体は上嘴が黒く、足は肉色でした。また。褐色の過眼線があり、足が長く見えたことから雄個体と思われました。
2023.02.26
コメント(0)
鳥類は、胃の中に胃石っていうのを持っていて、のみ込んでからおなかの中でその石でゴリゴリッて硬いものをつぶして消化をしてます。歯がないけども、胃の中に歯の代わりになる小さな石をのみ込んでいてそれで嘴に歯がないのにいろんなものを食べられると聞いていました。柏市内で姿を目撃しているトラツグミを含む一部の鳥類で胃石が認められない種類が存在すると報告があることを耳にしました。参考までに紹介します。群馬県立自然史博物館(2020)は、2015年7月から2020年9月まで23科48種127検体を調査し報告しています。それによると、胃石が認められた種類、個体により胃石が認められた種類、胃石がない種類が存在するとしています。(1)胃石が認められる種類コジュケイ、ヤマドリ、キジ、コハクチョウ、マガモ、カルガモ、カンムリカイツブリ、カワラバト(ドバト)、キジバト、オオバン、ツツドリ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ガビチョウ、ツグミ、スズメ、アトリ、カワラヒワ(2)個体により胃石の有無がある種類カワラバト(採餌は地上、食性は植物質)、スズメ(採餌は地上、食性はイネ科種子+昆虫類成虫)(3)胃石なしアオバト(採餌はほぼ樹上植物質)アオゲラ(採餌はほぼ樹上植物質+動物質)トラツグミ(採餌は地上・樹上昆虫類+植物質)(鳥は2つの胃を持つ)鳥は「腺胃(せんい)」と「筋胃(きんい)」という2つの胃を持っています。このうち、腺胃は人の胃と同じような役割で強い酸性の消化液で食べたものを化学的に分解する働きをします。また、筋胃は通称砂肝(すなぎも)とも呼ばれ、強力な筋肉でできた胃の運動と中に入っている石によって食べ物をすりつぶします。穀物を食べる鳥では筋胃が、肉食の動物では腺胃が発達しているとされています。胃石がなしと報告されているアオバト、アオゲラは樹上植物質(木の上で木の実を食べる)ことが多いので胃石が認められない時期があるのか、それとも筋胃が退化しているのか、胃石なしと報告されているトラツグミの場合は、摂取したミミズをどうやって消化しているのか興味のあるところです。(引用)群馬県自然史博物館.2020.動物たちの「いま」.ぐんまの自然の「いま」を伝える報告会.要旨集2020年度.2-24(写真)2023年2月24日撮影今朝、谷津田の一角で採餌をしていたトラツグミです。昨日とは違い、最初は木に止まっていた後に地面に降りて餌を物色していました。
2023.02.24
コメント(0)
鳥友からトラツグミとスズメ、シロハラ、ムクドリ、ウグイスの舌表面は類似していると聞いたがそれはどうしてかと質問をもらいました。江村(2011)は、トラツグミなどの鳥類の舌表面を電子顕微鏡で観察した結果を報告しています。それによると、ミミズなどを食べることが多いが柿などの奨果も食べるトラツグミの舌は、細長い矢じり状で舌尖の先端は幾つもの針状構造を呈していることがわかったと記し、スズメ目に属するスズメ、ツグミとシロハラ、ムクドリとウグイスと類似していると結んでいます。また、同じ鳥類でも食べ物により舌表面の構造は大きく異なり、草の葉や種子を主食とする鳥、水草あるいは肉などそのどれを主食とするかにより舌表面の構造は異なっていると報告しています。具体的には、昆虫類、ミミズ、種子を採食するトラツグミ、スズメ、ツグミ、シロハラでは舌先端は分離しているが、草の葉や種子を主食とする鳥でもキジの舌の先端は分離しないが、水草を主食とするオオヒシクイ、ハクチョウ、カルガモ には舌体外側面の毛状および鱗状の突起および隆起部が存在しているなどの内容を述べています。これらは、口腔内に入った食物が確実に食道に流れ込み、口腔外に押し出されないための装置と結んでいます。(引用)江村 正一.2011.トラツグミ、ハイタカ、オナガガモ、チュウサギの舌表面の走査型電子顕微鏡による観察.医学と生物学.第155 巻第 4号.p194-201.(写真)2023年2月19日千葉県柏市、2023年1月29日茨城県つくば市で撮影
2023.02.20
コメント(0)
中村(2005)は、カシラダカの分布、生息環境、脂肪と渡りについての知見と渡りを引き起こす要因について実験結果を報告しています。渡りは、衝動が現れることで引き起こされることがわかったと報告しています。実験で春の渡りは12時間以上日照を与えた時に引き起こされ、秋の渡りは12時間より短い日照時間で引き起こされることが実証されたと述べています。あわせて、気象要因として湿度が考えられたので、気象器を用意して日照時間を増加されたところ、日照時間が13時間を超えるころ50%の湿度で飼育したカシラダカのグループは渡りの衝動が起きたが、湿度80%と100%で飼育したグループには渡りの衝動は見られなかったと記しています。これらの結果から渡り鳥が野外においては気象に敏感で天気の悪い時にはじっと待ち、天候の回復を確かめてから渡りを開始するという行動が証明されたと報告しています。これから日照時間が13時間を超える時期は、春分以降となると思いますが、その頃のカシラダカは渡りの衝動にかられるとどんな仕草を示すのか、注視していきたいと思います。(引用文献)中村 司.2005.カシラダカ.渡りを引き起こす要因について.Bird Research News Vol.2 No.3.p5.(写真)2枚とも2022年2月8日茨城県菅生沼で撮影
2023.02.09
コメント(0)
近年、冬季にヒクイナが観察されブログに報告されているのを見かけます。私共がホームグランドとしている千葉県手賀沼や近郊の松戸市千駄堀、印西市印旛沼、都内水元公園といったフィールドでその姿を見かけています。ノートを見返すと、手賀沼で冬季に姿を見かけるようになったのは2011年1月から、ほぼ通年で姿を見かけるようになったのが2017年からのことです。かつて、環境省の自然環境保全基礎調査(繁殖地図調査)で1970年代後半、1990年後半の調査結果を比較すると生息していると報告されたメッシュ数が減少し、2007年改訂された環境省いわゆるレッドリストでは絶滅危惧2類に選定されました。しかし,2010 年代には,特に東日本で分布の確認が増加していたこともあり、レッドリスト2014 では準絶滅危惧に区分が変更されています。ヒクイナは、水辺の湿地、水田で繁殖し本州以北では夏鳥とされていましたが、2006年以降近畿地方を中心に1980年代と比べて拡大傾向となったことは研究者から報告されているところです。冬季、ヒクイナの行動は、湿地を歩行しながら採食する習性を持っている関係で凍結しない環境が必須とされています。近年の地球温暖化の影響で冬季にも観察できるようになったのではと推測できます。(写真)2022年2月4日手賀沼沿岸、2022年2月9日手賀沼沿岸、2022年3月9日松戸市で撮影(参考文献)バードリサーチ.2008.日本における2000年代後半のヒクイナの生息状況.pp11.環境省.1988.第3回基礎調査動植物分布調査報告(鳥類).環境省生物多様性センター.2004.第6回自然環境保全基礎調査(鳥類分布調査報告).環境省生物多様性センター他.2021.全国鳥類繁殖分布調査報告.日本の鳥の今を描こう. 2016-2021年.pp175.
2023.02.02
コメント(0)
植田(2011)は、モズの環境利用と雌雄調査結果を整理し報告しています。その中に、春になるとモズのメスはオスのなわばりに「嫁入り」することが知られています。メスを引きつけられるよう、オスは良い環境になわばりをかまえると記されています。しかし、私が通っている柏市内の谷津田では、今冬モズの雌が縄張りを確保し昨年秋以降雄の姿は確認できなかったのですが、今朝雄の姿を見つけました。雄は雌を引きつけられるようになわばりを構えるとの点とは真逆でした。植田(2011)がモズの雌雄別の環境利用について調査結果を報告しています。内容をみるとモズの雄が利用する環境は、農地、河川の環境に依存しており、モズ雌に比べて住宅地での環境利用は少ないとの結果です。つまりモズの雄は環境変化に対応できず、以前のように雄が良いなわばりを確保し雌を引き付けることができなくなっているのかと思いました。単年度での観察結果なので結論めいたことは申し上げられませんが、興味のあるところです。(引用文献)植田睦之.2011.モズとジョウビタキの環境利用雄雌調査中間報告.バードリサーチニュース.2011年11月号.p1.(写真)雌:2023年2月1日撮影、雄:2012年12月撮影
2023.02.01
コメント(0)
鳥友からつくば市の探鳥リポートを見て、ルリビタキは年齢により羽色が違うが同じフィールドに違う羽色の個体がいると争いを見かけないが、同じ青色同志では激しく争うのを見るのはなぜかと質問をもらいました。森本(2005)が鳥類の色彩信号に関して知見を整理し報告しています。その中でルリビタキは、年齢により色が変化する特殊な発色様式をもつ小鳥で、繁殖している雄でも若齢か高齢かで色が異っていて羽衣遅延成熟と呼ばれていることを紹介しています。(雄の外観の違いが闘争に影響あり)さて、研究の結果、雄の外観の違いは、雄間闘争に関係があることがわかってきたと述べています。具体的には、ルリビタキの雄と雄が争う際に争っている雄同士の色の組み合わせの違い(青vs青、青vsオリーブ褐色、オリーブ褐色vsオリーブ褐色により闘争方法の激しさが異なっていたと記しています。具体的には、同じ色同士の闘争では、最も激しい闘争方法(*)である「つつきあい」まで発展することが多かったのですが、異なる色同士の争いでは、そこまで激しくならずに「追いかけ」あう段階で勝敗が決する事がほとんどだったと報告しています。(ルリビタキはお互いの色を闘争の信号として利用)つまり、ルリビタキが互いの色を雄間闘争における信号として利用しており、互いの地位が外観から予想できる際にはリスクの高い「直接闘争」に至る前に、勝敗を決している可能性を示唆し、青色は構造色であり構造色の有無が視覚森本 元.2005.鳥類における色彩と機能.「生物多様性を規範とする革新的材料技術」ニュースレター Vol. 4 No. 2.p98-101.(写真と撮影地)1枚目:2023年1月28日茨城県つくば市2枚目:2022年1月31日千葉県市川市3枚目:2021年2月8日千葉県松戸市4枚目2009年5月16日栃木県日光市5枚目:2019年12月22日千葉県柏市
2023.01.29
コメント(2)
年明けに手賀沼沿岸の葦原で今まで観察した個体の中でもふっくらとした個体を目撃しました。鳥友からツグミの体重は飛来した頃はもっとほっそりとしている記憶があり、これから体脂肪を蓄積すると春には増加するとすると聞いている。どうなってしまうのだろうと質問をもらいました。文献を調べてみたところ、根拠がはっきりとしていない記述が多く見受けられ、渡来したばかりの頃の平均体重は50~55gほどで、渡去前には95~110gまで増えるといった解説などを見受けました。藤巻(1991)は、北海道帯広市周辺で行ってきた標識調査の結果を整理した結果を報告しています。それによると、ツグミの体重は渡来したころは65-88g、平均75gと述べています。その後、2月に平均77gで3月には平均73gに減少し、4月下旬には106g、5月には平均94.6gで,越冬時より明らかに重くなっていたと記しています。渡り前に体重が一旦減少するのは、昨年暮れにハジロカイツブリが渡りに出発する前の2-3週間、絶食し体重を減らし脚筋も縮小することと同様ではないかと考えています。つまり、ハジロカイツブリと同様に脂肪蓄積のために移動運動器官と筋肉を落として消化器官を発達させその後で消化器官を委縮させ渡りに必要な筋肉と心臓の力を増やしているものと思います。(引用)藤巻裕蔵.1991.帯広における標識結果.ツグミ・マミチャジナイ.日本標識協会誌.第2巻.第2号.p54-56.フランク・B・ギル.2007.鳥類学.p292.新樹社.(写真)1枚目:2023年1月20日手賀沼沿岸、2枚目:2023年1月20日我孫子市高野山、3枚目:飛来したばかりの個体、2010年12月18日柏市内、4枚目:渡去前の個体、2020年4月12日手賀沼沿岸で撮影
2023.01.24
コメント(0)
19日に三郷市の江戸川で複数のチョウゲンボウが登場し、羽ばたきをしながら空中の1点にとまるようにホバリングをしていました。翼は打ち下げたら逆向きに引き上げなければならないので困難さが伴うはずです。しかし、チョウゲンボウの場合は、風上に向かってはばたき、速度を得ながら翼のまわりに空気の流れをつくるウィンドホバリングを行い揚力を得ています。1点にとまっているような動きとするために尾を使い制御しているようでした。ホバリングがどんな風の強さで行われるものかと興味を持ち、調べてみました。本村(1995)が、1994年繁殖期に関東地方五ヶ所でホバリングをした時の風の強さを調査した結果を報告しています。それによると、チョウゲンボウ は弱風力(秒速0.3mから3.4m)で多くホバリングし 、無風力(秒速 0.3m未満)と強風力(秒速3.4m以上)ではあまり行わなかったと述べています。ホバリングするには、ほとんど無風の状態では多く羽ばたく必要があり、また強風の中で は態勢を安定させる必要があるため、エネルギーの消費が大きくなるとからと考えられると記しています。また、弱風力で風に乗りホバリングするのは最も経済的だからではないかと推察していました。(引用文献)本村健.1995.チョウゲンボウは停空飛翔を行う時にどういう風力状態を選ぶか.BINOS vol.2:21 23(写真)1枚目から4枚目は2023年1月19日三郷市で撮影(北北東の風平均1.7m/s、最大3.7m/s/、間最大5.8m/s)5枚目から7枚目は無風状態でのもの。2015年3月28日茨城県稲敷市で撮影
2023.01.23
コメント(0)
鳥友から夜行性フクロウ類コミミズクなどは車の往来の激しい環境草原と往来の激しくない環境で、採餌行動に差があるのだろうかと質問をもらいました。文献を調べてみると、つぎのような報告がありました。(1)国内での調査報告北海道大学大学院農学研究院、国立研究開発法人森林総合研究所、カリフォルニア・ポリテクニック州立大学の共同研究チームが2014年12 月~2015年3月に北海道勇払原野と宮城県仙台平野のフクロウ類の越冬地103 か所でフクロウ類が人工音声を探知する確率に交通騒音が及ぼす影響を調査したことを報告しています。その結果、40~80dB(静かな住宅街~電車内の騒音量に相当)の交通騒音の存在下で17~89%低下し、フクロウ類の採食効率は道路から120m 以内の範囲で低下すると推定されたと述べています。交通騒音の影響はフクロウ類の採食効率に影響を与え、従来考えられていたよりも広範囲(道路から120m)に及ぶことを示していると指摘しています。(引用文献)北海道大学・森林総合研究所.2016.野生動物への見えざる脅威:交通騒音がフクロウ類の採食効率へ及ぼす影響を世界で初めて解明.北海道大学プレスリリース.2016年9月20日.(2)海外での報告https://www.jwc-web.org/ケンブリッジ大学の動物学者アダム・ベント博士は、何十万年もの間行われてきた仲間同士のコミュニケーションに、交通騒音が大規模な混乱を引き起こしていること、長期的に多大な悪影響を及ぼす恐れがあると警鐘を鳴らしています。また、イギリスのケンブリッジ州のアングリア・ラスキン大学のソフィー・モウルズ博士からは人為的な騒音の発生は、環境の特性を絶えず変化させているとの発言があり、騒音は生物環境に関わる深刻な問題と報じています。交通騒音をゼロにすることは困難ですが、路面や車のタイヤのデザインを変えるなど騒音を低減させるための研究の余地があるようです。(写真)いずれも流山市西深井で撮影。2012年から2015年(現在は物流団地で越冬地は消失)
2023.01.16
コメント(0)
バードリサーチ(2022)が全国鳥類繁殖分布調査の結果からこれまで狩猟鳥だったゴイサギとバンが急激に減少(*)していることに警鐘を鳴らしています。また、その原因は、ゴイサギだけでなく,ほかの小型・中型のサギ類も減少していたこと,バンやサギ類だけでなくタマシギや,サシバ,ツバメやスズメなど湿地や農地に生息する鳥も減少していたことから,主原因は,狩猟ではなく,生息環境の悪化と指摘しています。(*)1997~2002年と2016~2021年を比較した記録地点数と個体数ゴイサギ記録地点数236から93(マイナス60.7%)、個体数6197から738バン記録地点数87から42(マイナス51.75)、個体数202から84環境省(2021)は令和3年度狩猟鳥獣の見直し会合での資料を公開しています。バンの生息は、1970年代以降、記録メッシュ数は減少傾向にあり、 1990 年代と 2010 年代にほぼ同じコースを調査できた現地調査の記録からも、 87 地点から 42 地点へと減少していると報告し、水田の圃場整備や農地の質的な変化による水田の生物の減少などが影響している可能性があると報告しています。さらに、バンについて都道府県別で発行されているレッドデータブックのカテゴリーを整理してみると、絶滅危惧が千葉県、東京都、絶滅危惧Ⅱ類が愛知県、準絶滅危惧が青森県、山形県、福島県、埼玉県、石川県、滋賀県、情報不足が岩手県との結果と述べています。(引用)バードリサーチ.2022.全国鳥類繁殖分布調査の結果でゴイサギとバンが狩猟鳥獣から解除に.バードレサーチニュース.2022年9月.環境省.2021.令和3年度狩猟鳥獣見直しの会合資料.
2023.01.03
コメント(0)
大晦日、オフィス近くを散策していたら木のてっぺんに小鳥が飛来し、しばらく止まり周囲を見渡していました。頭が大きくずんぐりとして尾の先に白色があり、シメとわかりました。初列風切と次列風切の一部が独特の形をしています。高田・叶内(2008)に描かれている風切を見ると、P1~P5の先端が平らで内弁がえぐられたようになっていてトゲのように出っ張っている印象もあります。一般的な小鳥たちの場合は、羽根の先端はゆるい流線型となっているのと比べると独特です。初列風切は、羽軸の左と右で幅が違い、はばの狭せまい方が前、広い方が後ろになるようについています。羽ばたいて翼を下ろすと幅の広い方、つまり後ろに向かって風力が生まれ前に進むことができるようになっています。文献にも風切の独特の形についての解説はありませんが、頭の大きいずんぐりとした体で飛翔するためには、空気の流れを整える必要があるのかしらと想像をしています。(参照文献)高田勝・叶内拓哉.2008.野鳥の羽.p83.文一総合出版.(写真)2022年12月31日、2020年1月、2019年2月いずれも柏市内で撮影
2022.12.31
コメント(0)
(手賀沼とその沿岸で越冬期の分布が集中)近年、手賀沼で越冬するオオバンは沼本体の水面では姿はあまり見かけず、柏市と印西市の境界を流れる下手賀川に集中しています。これは、沼には浅瀬がになく陸上植物の植体や種子を食べることができないこと、沼では沈水植物・抽水植物・藻類等が豊富でないことと関連しているものと思います。全国的には橋本(2013)が1990年代、2000年代になるにつれ,西日本各地で越冬するだけでなく,越冬地が東北地方へと北上しており、各地でオオバンの越冬数が増加する湖沼がみられていると報告しています。にもかかわらず、手賀沼では顕著な増加傾向が見られないのは越冬個体を支えるだけの食物状況にないことが影響しているのではないかと推察されます。(繁殖期の深刻な食物状況との関係)北島(1994)は手賀沼におけるオオバンの繁殖について調査した結果を報告しています。その中に手賀沼に生息するオオバンの一腹卵数は,5.2±1.1卵でイギリスでは5.9卵、チェコスロバキアでは7.1卵、ラトビアでは7.6卵、西ドイツでは7.9卵の報告と比べると少ない状況となっており、その理由として冬季の食物状況の貧弱さを指摘しています。冬期も繁殖期いずれも食物状況が貧弱で深刻な状況となっています。(引用)北島信秋.1994.手賀沼におけるオオバンの繁殖生態.山階鳥研報.第26巻.p47-58.橋本啓史.2013.オオバン.Bird Research News Vol.10 No.2.p6-8.バードリサーチ.
2022.12.30
コメント(0)
ヒメハジロについては、外観上の特徴が図鑑に記されているのみでその行動などについて報告されたものはあまり見かけないのが現況です。かろじて清棲(1952)に生息環境、習性、繁殖、食性、国内観察記録などが記載されています。また、日本鳥学会誌短報に山本弘さんがその行動について寄稿しているものがありました。参考として提供します。(清棲図鑑の記載内容)(1)外観について多くの図鑑に記載のない上胸、脇、下腹が灰褐色を帯びるとあります。(2)一般習性について「主に昼間に餌を漁る。(中略)潜水時はキンクロハジロ等と同様に一度弧を書く(まるい曲線の形)ように跳ね上ってから潜り翼は體側につけて使用しないのが常である。陸地に休む時には直立した姿勢でいる。比較的水面から垂直に飛び立ち飛翔するときも不規則に低空を直飛する」と記しています。(3)食性について「動物質をとり、動物質ではない小魚、軟体動物の貝類、小エビ、蛙類、ゲンゴロウなどを好んで食物とする。植物質では水藻類、エビモ、キンギョモ、ミズハコベタヌキモ等を好んで食物とする」と報告しています。(4)国内の記録について1921年10月28日網走支所網走湖、1924年12月岩手県下閉伊郡宮古湾での観察記録を掲載しています。(日本鳥学会誌掲載内容)山本(1967)は、岩手県閉伊川河口に1963年3月19日および1963年12月14日、15日、17日、1964年1月2日、3日、5日、2月4日~24日、3月5、7、9、22日にヒメハジロ成鳥雄1羽が飛来した際の観察内容を整理し報告しています。それによると、ホオジロガモの群と共に行動していた点、ヒメハジロが飛ぶと頭部の白色が小さくなり,ホオジロガモと区別が困難になると指摘しています。さらに、ヒメハジロは2月初旬まではホオジロガモ♂群に混入を好むが、2月下旬以後はホオジロガモ♀群に追従するを好む傾向が見られることを述べています。(引用)清棲幸保.1952.日本鳥類大図鑑.Ⅱ.p589-590山本弘.1967.ヒメハジロ雄の二年連続渡来.日本鳥学会誌.鳥.第18巻.p51-54.
2022.12.29
コメント(0)
鳥友たちと共に時間をすごした折、2017年1月茨城県つくばみらい市にアネハヅルが飛来した件が話題となり、渡り高度との関係で過呼吸にならないのかとの話しになりました。森本 元 監訳(2021)が2012年にイギリスのバンガー大学の研究チームによる調査で追跡したうちのアネハヅル1羽が標高7290mの高度まで上昇してヒマラヤ山脈を越えたことを紹介しています。過呼吸に関しては、文献に報告が掲載されていましたので紹介します。(鳥が渡る高度について)フランク・B・ギル(2007)は、文献の報告されているものを整理し報告しています。鳥類の渡る高度については、夜間に渡るスズメ目の鳥は700-800以下の高度を飛ぶのが普通だが、乱流を回避する際には3000mより高く、ときには7000mの高度まで上昇する。水禽類ではエベレストを超えるエジプトガンは高度9000mにもなる。渡っているときのシギ・チドリは高度2000-4000mを飛ぶことが多いが、時にはもっと高いこともある。(鳥は過呼吸になるか)フランク・B・ギル(2007)は、呼吸器の気嚢内の空気圧や呼吸などについての文献に報告されている内容を整理し報告しています。その中に、鳥類は血液のphが上昇しても血流が低下することはなく、過呼吸にならず高い場所を飛ぶことができる特性を持っていると記しています。具体的には運動中や酸素濃度の低い高所では呼吸が早まり、多くの二酸化炭素が排出される。こうなると、二酸化炭素が多く失われ血液がアルカリ性になると(ph7.3-7.4)になり、血管が収縮し脳への血流が大幅に制限される。このため、哺乳類は過呼吸になると脳への血流が50-75%に低下するため気絶する。しかし、鳥類はph8まで血液のph値が上昇しても血流が低下することはない。このような特性を持つために高い場所を飛ぶことができる。(引用文献)フランク・B・ギル.2007.鳥類学.p161.p283.新樹社.監訳:森本 元 翻訳、渡邉 真里、定木 大介.世界の渡り鳥大図鑑.2021.(写真)2017年1月22日茨城県つくばみらい市で撮影
2022.12.27
コメント(0)
観察会の折、ハジロカイツブリが長旅に備えて胃や腸などの消化器官を大きくし、渡り直前に消化器官を小さくすると耳にしたがどうしてかと質問をもらいました。文献を調べてみると、フランク・B・ギル(2007)が研究者の報告を整理して紹介している内容と思われました。参考までに以下に紹介します。「長距離を渡る鳥は旅に先立ち脂肪をつけるだけでなく体の器官も組み替える。カリフォルニア州モノ湖に渡りのため集まるハジロカイツブリの研究がこの現象を明らかにした。大部分が脂肪を蓄えることで体重を約260gから600g以上にまですばやく2倍以上に増やす。このとき、この変化に必要な大量の食物(アルテミヤ*)を処理するために消化器の大きさをほぼ2倍にする。逆に胸部の飛翔筋は半分になり主要な換羽で風切羽を脱落させる前でも飛べなくなる。そして、渡りに出発する前の2-3週間、絶食する。体重を減らし脚筋も縮小する。一方で心臓を肥大させ胸部の飛翔筋は大きさを倍増してもとに戻す。ハジロカイツブリは、脂肪蓄積のために移動運動器官と筋肉を落として消化器官を発達させその後で消化器官を委縮させ渡りに必要な筋肉と心臓の力を増やしている」(ハジロカイツブリが三番瀬で採食していると思われる生き物)ハジロカイツブリは小魚や水生昆虫、甲殻類を食すとされています。このうち、三番瀬には千葉県(2020)が報告しているように、甲虫類ではコノハエビ、ドロクダムシ、ドロソコエビなど、動物プランクトン14種などが生息しています浦安、市川塩浜沖、ふなばし海浜公園沖に飛来しているハジロカイツブリはこうした生き物を採食しているものと思います。(引用)フランク・B・ギル.2007.鳥類学.p292.新樹社.千葉県2020.三番瀬再生会議資料.三番瀬における食物連鎖からみた種間関係.https://www.pref.chiba.lg.jp/kansei/shingikai/sanbanse-hyouka(三番瀬の自然環境の定期的なモニタリング手法の検討や再生事業の実施に伴う周辺環境への影響予測など、専門的な視点から検討する組織:すでに解散)(写真)2017年3月、2016年1月三番瀬で撮影、2016年11月旭市飯岡で撮影
2022.12.24
コメント(0)
鳥友からハヤブサの飛翔スピードについて質問をもらいました。図鑑などにハヤブサは急降下は最高で時速300kmにも達するというような記載があるがそれはどのように測定したものかとのものでした。複数の文献を確認してみると、たしかに飛翔速度について数値が記載されていますが、計算上のものなのか、実測した結果かは不明でした。いくつかの文献を調べてみたら、フランク・B・ギル(2007)が研究者の報告を整理し報告している中につぎのように記されていました。パラシューターがハヤブサに同伴して降下した際に計測した際の報告で240kmの由。(ハヤブサの飛翔速度について)ハヤブサの降下は獲物にむかって急降下する時、30-60度の角度で獲物より1500m以上の高度から開始され450-1080mの高度差を急降下する。(*1)観察者たちが定位置で出した計算結果では時速160-440kmの変化があった。また、自由落下したパラシューターが訓練したハヤブサに同伴した3670mの降下した際に計測した事例があり、急襲するハヤブサは翼をたたみ時速240kmで肩を広げてダイヤモンド型に見える形になった。さらに速度を320kmに増すと翼を体に引き付け頭を伸ばすことで最大限細長い形にして降下したとの報告があると記しています。(*2)(*1)white他(2002):White C.M.NF.Clum.TJ.Cade.and WG.Hunt.2002.(*2)Franklin(1999):Franklin K.1999.Vertical flight.J.North Am.FalconersAssoc.(引用文献)フランク・B・ギル.2007.鳥類学.p138.新樹社.
2022.12.22
コメント(0)
日本各地のミツユビカモメは冬鳥として飛来しています。ところが、北海道で越夏するものがいると近年耳にしています。ひょっとして営巣している可能性があるのではとも思い、営巣環境について文献を調べていたらフランクリン・B・ギルの著書鳥類学(2007)に記事が掲載されていました。参考までに紹介します。フランクリン・B・ギル(2007)は、「ミツユビカモメは吹きさらしの海岸の崖の捕食者が近寄れない狭い岩棚に営巣する。巣での捕食圧が減少したことで警戒声やモビング、巣から孵化後の卵殻の除去などの他のカモメ類ならみんな持っている捕食者に対する行動が失われてしまった。また、長い鳴き声を使わずにむせぶような控えめの鳴き声でなわばりを主張する。(中略)求愛する雄は食べ物を雌の前の地面に吹き出すことなく、雌に直接与える」と述べています。(写真)成鳥冬羽:2018年3月銚子市川口町、2018年3月銚子市千人塚2015年2月銚子市第三漁港で撮影第一回冬羽:2015年2月銚子市第三漁港で撮影(引用文献)フランク・Bギル.2007.鳥類学.(財)山階鳥類研究所訳.p435.新樹社.
2022.12.21
コメント(0)
ホームグランド手賀沼沿岸などでは2010年春先頃からミヤマガラスの群れの中にコクマルガラスの姿があるのを目撃することがあります。ミヤマガラスの観察頻度は高いのですが、コクマルガラスは限られた観察記録のみで、手賀沼沿岸では2012年12月7羽、2013年11月に6羽、2014年11月5羽、流山市の水田地帯で2013年12月に60羽、、2015年11月に流山市で2羽と限らた観察記録のみです。ミヤマガラスが頻繁に観察されるエリアでは、コクマルガラスが増加傾向にあると言われていること、北海道の鳥友からはおおよそミヤマガラス100羽に対しコクマルガラス1羽の割合で観察されていると聞いており注視しているところです。アップした画像は、額から頭の前面と喉から胸まで黒く、頭頂から耳羽が白黒模様の淡色型成鳥、全体が黒く光沢があり白色や褐色味はどこにもない暗色型成鳥、眼の後方に灰色の斑がある幼鳥、成鳥に似ているが淡色部が不明瞭な中間羽タイプです。(写真)淡色型成鳥:2013年12月流山市、暗色型成鳥:2020年1月流山市、中間型:2017年11月流山市で撮影
2022.12.14
コメント(0)
今シーズン、柏市のオフィス周辺ではツグミの初認が12月5日とこれまでの年で最も遅いものでした。しかもその後もツグミの姿は見かけず。飛来が遅いのか、飛来が少ないのかと気をもんでいます。横浜で行われた市民調査の結果では、近年、ツグミやシメといった冬鳥の飛来の時期が遅くなり、飛去の時期が早くなっていると耳にしています。(気候変動いきもの大調査事務局)https://ccbio.jp/topics/t009バードリサーチ発信情報でも次の示すようにやや遅い感じとなっており、各地の様子が気になります。http://birdresearch.sblo.jp/2022/11/30報告:バードリサーチ事務所(東京都国立市)この週末からツグミが見られるようになってきました。事務所周辺の初認が去年は11/14、一昨年は10/31、その前は11/12だった(中略)。やや遅い感じです。(写真)2022年12月5日柏市で撮影
2022.12.13
コメント(0)
一昨日、手賀沼沿岸で複数の猛禽類を観察したことをリポートしましたら、鳥友から猛禽類はどんな環境を好んで選んでいるのかと質問をもらいました。いくつかの文献を見返してみると興味深い報告がありましたので情報提供します。橋本・長谷川(2014)は、印旛沼沿岸で冬期の猛禽類に関する調査結果を整理し報告しています。(1)トビとノスリ生息は水田の割合に影響されるこの2種の生息に影響を与えていたのは半径700メートル圏内の水田割合が影響を与えていることがわかったと報告しています。トビは水田地帯での分布が多く、水面上でも分布していたことが判明したと述べています。また、ノスリは、水田を餌場としており沼周囲の開けた土地で水田があり道路に沿って電柱が点在しているエリアで生息していたとしています。これは、ノスリが電柱に止って餌を探餌したり、空中でホバリングを行うために,開けた土地での生息の結果となったと考察しています。ただし、ノスリは採食場所が狭いと短期間に滞在場所を移動していくことを紹介しています。(2)ノスリ若様が短期間で越冬場所を移動する理由内田(2001)は、埼玉県の丘陵地帯でノスリ若鳥に発信機を装着し冬期の生活を記録した結果を整理し報告しています。報告によると、ノスリは越冬期には単独の採食なわばりを持つことが知られているが、若鳥は成鳥との競争に負けてしまう結果、良好な採食場所は占有できないと考えられることにくわえて、人や車の通行量が多いところや他個体との干渉を避けて短期間に越冬場所を移動していくと述べています。(3)手賀沼沿岸で猛禽を見かけやすい環境一昨日、複数の猛禽を見かけたエリアも前記文献が報告しているような水田地帯が広がり開けた土地のあり、比較的人や車の通行量が少ない環境でした。(引用文献)内田博.2001.ノスリ若齢個体の越冬期の行動.STRIX.VOL19.pp49-54.日本野鳥の会.橋本 大・長谷川雅美.2014.冬期の印旛沼流域における猛禽類の環境選好性と生息環境評価.千葉県生物多様性センター研究報告 7:65-78.
2022.12.12
コメント(0)
昨日、手賀沼沿岸でミヤマガラスの群れを観察しました。2010年以降、秋から冬の間、沿岸の我孫子市側、柏市側の水田地帯で採餌している姿を観察しています。塒をどこにとっているかは確認できていませんが、市街地と隣接しているエリアで群れが行動していますので市街地をねぐらとしている可能性もあります。過去、市街地を塒とするミヤマガラス、ハシボソガラス、コクマルガラスが愛媛県で観察されその行動に関して報告がありますので、紹介します。山本・小川・丹下・秋山(2005)は、2001年から2002年にかけての冬期に松山市市街地でアーケード上の電線に密集し眠っていたのを観察したことを報告しています。当初は300羽程度だったものが1000羽弱まで増加し、糞害が深刻となったため商店街関係者による追い出しが行われたことが紹介されています。市街地で夜を過ごしたミヤマガラスは夜が明けるまで電線に滞在した後,郊外へ向かって飛び去り、ねぐらから10km離れた伊予郡松前町や伊予市郊外の水田地帯へ移動していたと述べています。ねぐらの下に落とされた糞にはモミ殻が多く含まれ、日中は水田地帯で採餌していることが判明したと記しています。手賀沼沿岸でもミヤマガラスが同様にねぐらとしている可能性もあります。このため、動向を注視しています。(引用)山本貴仁・小川次郎・丹下一彦・秋山 勉.2005.ミヤマガラスの都市型ねぐら.Strix Vol. 23, p149-152.日本野鳥の会.(写真)2015年11月、2018年11月流山市で撮影のもの3枚、2016年1月手賀沼沿岸で撮影のもの2枚(コメント)ミヤマガラスは頭頂部は平らで、ハシボソガラスの平たくない頭頂部と違いがあります。また、ハシボソガラスは嘴が太く先端に丸みがあります。さらに、ミヤマガラスは鳴く前に尾羽を広げ、鳴き声をあげる際には尾羽を上下動させています。
2022.12.03
コメント(0)
過日、市川塩浜で海ガモを観察した件をリポートしたところ、鳥友から図鑑に少ないとだけ記載があるがはビロードキンクロの個体数についてどんな現状なのかと質問をもらいました。同じ調査方法で個体数が調査されたデータは見当たらないので、文献に報告されているものを下記に紹介します。報告を見てみると、底質が砂の水深5-20m の海域で軟体動物(二枚貝類)や甲殻類が採食できるフィールドで生息していると整理できます。(文献に報告されているビロードキンクロの個体数)日本鳥学会(2004)は、2000 年から2003 年に、茨城県から千葉県の海岸で個体数および分布を把握するための調査を行い結果を報告しています。それによると、ビロードキンクロの最も大きな群れは3,531 羽で、2001 年3 月27 日に千葉県新川から栗山川間の砂浜で確認されたと述べています。調査域北部で384 羽/km、中央部で16 羽/km、南部313 羽/kmの密度だったとしています。また、その分布は、底質が砂の水深5-20m の海域で、主に軟体動物(二枚貝類)や甲殻類などを潜水して採食するためそのような条件にあう水面で分布していたと報告しています。千葉県(2015)は、三番瀬海域の鳥類の状況を調査した結果を報告しています。それによると、船橋三番瀬海浜公園先の水面でビロードキンクロ6羽を観察したと述べてます。日本生態学会(2021)は、日本の沿岸海域(オホーツク海及び瀬戸内海を除く)、海岸から1km及び3km沖合について高翼式飛行機を使用し調査をした結果を報告しています。記録できたカモ科の個体数合計は19318羽で、ビロードキンクロは113羽記録できたと述べています。(引用文献)日本鳥学会.2004.2004年度大会公園要旨集.茨城県から千葉県の海岸におけるビロードキンクロ属2種の個体数変動と分布.千葉県.2015.平成25年度三番瀬鳥類個体数経年調査結果.pp34日本生態学会第68回全国大会.2021.日本沿岸海域における航空機を用いた海鳥の広域分布調査.日本生態学会大会講演要旨.(写真)いずれも浦安市日の出で撮影、2021年2月、1月、2020年12月撮影
2022.11.30
コメント(0)
鳥友からハシビロガモとオカヨシガモは、手賀沼で見られなくなっているのはどんな要因かと質問をもらいました。ホームグランド手賀沼ではかつて大津川河口先の水面にはオカヨシガモの群れが見られ、東端の手賀沼フィッシングセンター近くの水面にはハシビロガモの大群が羽を休めていました。手賀沼の鳥(1994)は、ハシビロガモは1985年1月には1285羽が記録されたが以降激減したと報告しています。また、オカヨシガモは1988年11月に164羽を記録したと述べています。ところが拙宅の亭主と11月7日、14日に手賀沼の水鳥調査をした際にはオカヨシガモの姿は確認できず、その激減ぶりが目立ちます。(1)ハシビロガモの採餌松原(1996)は、ハシビロガモの嘴の形態に着目しその食性についての調査結果を報告しています。それによると、動物プランクトンのワムシ類、ケンミジンコ類を採食し、特にケンミジンコ類が増加する時期に最も増加する水域で採餌していたと述べています。また、ケンミジンコ類はタンパク質に富み、渡りに備えて大量の動物質を必要とする時期に好適なものて゜あることも記しています。(2)オカヨシガモの採餌松原(1996)は、ハシビロガモとともに頻繁に採餌しているのはオカヨシガモで、日中の採餌の場として利用していると述べています。しかし、オカヨシガモは他のカモとくらべて植物性の餌を多く利用する種類であり、採餌に時間を費やす種類と述べています。(3)手賀沼で見られなくなったハシビロガモとオカヨシガモすでに述べたように、ハシビロガモは動物質の餌を採食する種類、オカヨシガモは植物性の餌を多く利用する種類で、これらの餌が手賀沼で激減した可能性が高いと思います。また、最近の手賀沼は水位が高く、オカヨシガモが水底の藻や種子を食べるために頭を突っ込んで食べることができなくなったことがその姿が見られなくなった要因として考えられます。逆に柏の葉公園のように、水深が浅く、水底の藻などの餌を逆立ちして採食できるところにオカヨシガモが集まっているものと考えます。(引用)手賀沼の鳥.1994.20年の観察記録.P81.我孫子野鳥を守る会.松原健司.1996.ハシビロガモの嘴の形態と生息地選択および食性との関係.我孫子市鳥の博物館調査研究報告.第5巻.P1-83.
2022.11.26
コメント(0)
(財)山階鳥類研究所と環境省生物多様性センターが発行のバンディングかわら版5号に1961年から2017年に行われた標識調査で初放鳥から回収された日までの最長記録が報告されていました。ホームグランド手賀沼で観察記録のある種類について抜粋してみました。(カモ科)オオハクチョウ23年1ヶ月、カルガモ11年2ヶ月、オナガガモ23年0ヶ月(サギ科)ダイサギ21年6ヶ月、コサギ12年5ヶ月(ウ科)カワウ17年2ヶ月(シギ科)キョウジョシギ14年9ヶ月(タカ科)トビ8年4ヶ月、オオタカ18年8ヶ月(カモメ科)ウミネコ32年10ヶ月、ユリカモメ27年1ヶ月、コアジサシ21年10ヶ月(フクロウ科)フクロウ19年0ヶ月(山野の鳥)キジ4年11ヶ月、キジバト10年0ヶ月、、カワセミ5年1ヶ月、ハシブトガラス19年4ヶ月、シジュウカラ7年11ヶ月、ヒヨドリ10年4ヶ月、ツバメ8年11ヶ月、ウグイス9年0ヶ月、ムクドリ7年7ヶ月(標識調査で得られた鳥類の生存期間について)大迫・三原(1998)は、福井県大野市にある神明山で行った標識調査で装着した標識が再回収された鳥類の経過日数を報告しています。それによると、最も長い生存が確認されたのは、コゲラで723日、ヒガラで366日、ヤマガラで1504日、シジュウカラで1514日だったと述べています。バンディングからわ版ではシジュウカラは7年11ヶ月と報告されていますが、大迫・三原(1998)では1514日(約4年3ヶ月)で差異があります。(引用)大迫義人・三原学.標識調査から得られた鳥類の外部計測値,捕獲時期および生存日数.Ciconia 福井県自然保護センター研究報告.7:7-12.p1-6.バンディングレター.2022.バンディングかわら版.第5号.(財)山階鳥類研究所・環境省生物多様性センター.pp2.(webで解説のある鳥類の寿命)webで鳥類の寿命について解説がされているものを目にしますが、大方は下記に示す日本野鳥の会のBIRD FANの解説をそのまま引用しているものと思われます。https://www.birdfan.net/b-kids/kids-consultation/kids-faq/faq009/#解説文多くの小鳥は、春に生まれた子どものほとんどが次の年の春まで生きのびることができずに死んでしまうため、平均寿命は短く、スズメで1年3か月、シジュウカラは1年8か月、ツバメで1年1か月ほどです。ただ、数は少なくても、1年間生きのびたものは、経験や学習をつんで、数年から10年以上生きることも知られています。#ここまで#ただし、この解説はどんなエビデンスによるものかが記されておらず、後段の経験や学習をつんで数年から10年以上生きるとある裏付けも不明で注意が必要です。(写真)カワウ2022年3月手賀沼、キョウジョシギ2021年4月三番瀬、ダイサギ2022年2月柏市、トビ2022年11月手賀沼、フクロウ2022年5月千葉県、ユリカモメ2022年3月水元公園でそれぞれ撮影。
2022.11.23
コメント(0)
トモエガモについて、環境省生物多様性センター(2021)は、調査結果から全国的に飛来数が多い年があり、2 013 /14 年と 2 019 /20、2020/21 年に多かったと報告しています。かつて、田尻(2005)が数万から10万羽を超える越冬群が見られる韓国では60万羽が記録されているのに、日本では多くても2000羽程度が記録されるのみで絶滅が危惧されると報告していることからすると、韓国の個体が飛来した、繁殖地のロシアでの繁殖状況が良好だったかなど要因が注目されています。(引用文献)田尻 浩伸.2005.トモエガモ日韓合同カウント調査.Bird Research News Vol.2 No.1.p2-3.バードリサーチ.環境省生物多様性センター.2021.モニタリングサイト1000 ガンカモ類調査.2021年度ニュースレター.
2022.11.20
コメント(0)
今日から2月まで狩猟期間に入りました。カモたちは、狩猟が可能な水辺から安全な湖沼に移動するものと思います。湖沼をはじめ沿岸域、平野部などさまざまな環境に生息するのがホシハジロです。このホシハジロについて、興味深い報告がありますので紹介します。神山(2017)は、ホシハジロの分布、生息環境、食性、文献に記されている事柄を整理し報告しています。その中で、ホシハジロの雄と雌には地域的な差があり、2014~2016年の1月に行った調査で、日本列島を北および東に進むほど(緯度と経度の数値に比例し)ホシハジロの群れに占める雄の割合が高いと述べています。また、ヨーロッパ、北米でも潜水ガモ類で同様の傾向が見られるとしています。理由については、攻撃的な雄がよい餌場からメスを追い出していること、雄の方が寒さに強い、オスは繁殖地に近い場所で越冬する、オス・メスで好む食物が異なるなどの説が存在するが、解明されていないと記しています。みなさんが普段ご覧なっているフィールドでのホシハジロの雌雄の割合は、さていかがでしょうか。(引用文献)神山和夫.2017.ホシハジロ.Bird Research News Vol.14 No.2.p1-2.
2022.11.15
コメント(0)
昨日、ホームグランド手賀沼沿岸でコチョウゲンボウと出会いました。じっと電柱に止まっていましたが、それも開放的な環境で捕食活動を行う関係でのものです。これから冬にかけて、捕獲した小鳥を貯蔵する行動を見かけることがあります。コチョウゲンボウの捕食と貯蔵行動について文献で報告があります。参考までに紹介します。松村(1993)は、1987年をのぞく1980~1991年の8月~翌4月に福井臨海工業地帯内の工場敷地内の草原、造成後人工的に吹きつけをした草原、造成後自然に草原が復元し,裸地と草原がパッチ状に分散している海に面した草原とクロマツ林、池、港、海の環境から構成されるエリアで、ワシタカ類の捕食行動などについて調査を行った結果を報告しています。(1)捕獲行動と場所おもに、獲物が隠れる場所のない開放的な草原で行なわれ、地上近くの杭や砂山などで「とまり型」を行ない、おもに飛期中の獲物を発見すると追尾や急降下を交えて捕獲していたと述べています。そのほか、地上または低木にとまっている獲物の場合は,接近により飛び立たせてから捕獲行動に移ったことも記しています。(2)貯蔵行動チョウゲンボウとチョウゲンボウの貯蔵行動は,11月上旬の小鳥が次々に渡る日に観察され、コチョウゲンボウは、貯蔵後すぐに上空を探索する行動をとり、獲物を発見するとすぐに捕獲の体勢に入る行動が連続的に観察されたと報告しています。また貯蔵場所は、あまり茂っていない草の根元であり貯蔵のあとも食物の所在が容易に観察できたとしています。(3)捕食していた3つのタイプなお、コチョウゲンボウが捕食していた小鳥は、草原低木種(スズメ、カワラヒワ)、上空通過種(メボソムシクイ、メジロなど)、地上種(タヒバリ、ヒバリなど)の3つのタイプだったと報告しています。その他では、キジバトやハマシギなどを狙ったが成功しなかったと述べ、捕獲行動の成功率は52.3%と述べています。(引用文献)松村俊幸.1993.松村工業埋立地における非繁殖期のワシタカ類の捕食行動と優劣関係.Strix.第12号.p61-71.日本野鳥の会.
2022.11.08
コメント(0)
ジョウビタキについて、鳥友から年によって雌のほうが飛来数が多い印象があるがどうしてかと質問をもらいました。文献を調べてみると、田中・佐藤(2013)が1999年秋から2011年春まで高知県内で観察したジョウビタキの渡来数と性比について報告しています。12年の越冬期合計で1173羽を記録し、年による増減が大きかったと述べています。この文献の中で、雄が越冬地に先に到着しなわばりを確保していると雌がなわばりを確保できる可能性が低いと記している点が興味深い部分です。このような要因で雌の割合が高い地域があると読み取ることができます。今シーズン、ようやくジョウビタキが飛来したばかりですが、観察した個体が雄か雌か、個体数はどうかを記録しておく価値があると思います。(報告概要)注目されるのは、2002年、2007年、2009年は高知県へのジョウビタキの飛来が多かったが平野部での越冬個体数は多かったのに、寒さが厳しい山地では少ない結果だったとの点、高知県では雌が雄より多かったと述べている点です。前記筆者は、鳥類の生まれた時点での性比には違いがなく、ジョウビタキも同様と考えられていると述べています。しかし、繁殖地により近い越冬地にいち早く到着した雄ほど繁殖に適した場所をなわばりとして確保でる可能性が高い。一方、雌も越冬地でなわばりを形成するが、越冬地に雄がすでに渡来していると雌がなわばりを確保できる可能性は低い。このため、雌は繁殖地からより遠い場所での越冬地に飛来すると記しています。ジョウビタキは中国北部からシベリア南東部などで繁殖し、日本、韓国、中国南部で越冬するが、高知県で越冬期で雌のほうが多かったのは、繁殖地に近い越冬地に雄が先に飛来していたために、繁殖地から遠い高知県では雌の個体数が多い結果となったものと思われると報告しています。(引用)田中正春・佐藤重穂.2013.高知県におけるジョウビタキの性比と越冬個体数の年変動.四国自然史科学研究.第7巻.p12-13.
2022.11.06
コメント(0)
3日に宮城県伊豆沼と蕪栗沼を訪ねました。鳥友からマガンは何を食べているのか、餌を食べるのに活発な時間帯はと質問をもらいました。嶋田・鈴木・石田(2002)は、伊豆沼とその周辺に飛来しているマガンの食物内容を糞分析法をもちいて調査した結果を報告しています。マガンの糞内容物は、10~1月にかけてどの月もモミの削合がもっとも高く、全休の40.0~53.8%、イネの葉と単子葉類,双子葉類の葉が26.0~47.0%で、その後イネ葉の割合の減少にともなって単子葉類と双子葉類の割合が増加することが判明したとの述べています。また、エネルギー価の高いモミが積雪でとれなくなると、畔などの草本類に食物に移行すると採食時間は増加したと述べています。また、マガンの採食行動の活性が高くなるのは早朝から10時までの時間帯で、11時から14時まで一度低下した後15時から夕方にかけて再び増加する結果だったとも述べています。(引用文献)嶋田哲郎・鈴木康・石田みつる.2002.糞分析法による越冬期のマガンの食性.STRIX Vo1.20、pp,137-141,2002.日本野鳥の会.(写真)1枚目、2枚目は2022年11月3日撮影、3枚目は2014年12月、4枚目は2017年12月撮影(参考)双子葉類(子葉の枚数が2枚)アブラナ・エンドウ・タンポポなど単子葉類(子葉の枚数が1枚)イネ・ツユクサ・トウモロコシなど
2022.11.05
コメント(0)
冬、小鳥たちが復数の種類で行動をともにし実のなる木にやってきて一緒に飛び立つ姿を見かけることがあります。これからの季節、身近な環境で混群の規模、構成している種類がどうなっているかを観察するのも観察の醍醐味です。(混群とは)混群の定義については、石塚(2016)に「違う種で構成される群れのことで、2種3羽以上、互いに25m以内、最短5分維持され同じ方向に30m以上移動する」と説明されています。(混群の構成)和田(2017)は、混群には複数種が混じっているが、そこには役割分担があると指摘し、混群の中核をなし他種を引き付ける中核種、中核種についていく随伴種が存在し、多くの場合はエナガが中核種で、エナガが不在の場合はヒガラなどが中核種となる。そこに随伴種として他のカラ類、キツツキ類が交じることを述べています。なお、なぜ、追従するのかについては、日野(2012)が北海道石狩町での調査した結果から餌の探索者と略奪者の関係であると考えられたと報告しています。(引用)日野輝明.2012.バードリサーチニュース.2012年10月号.p4-5.石塚 徹.2016.見る聞くわかる野鳥界識別編.p35.信濃毎日新聞社.和田 岳.2017.身近な鳥からの鳥類学.(35)カラ類の混群に交じる鳥.日本野鳥の会大阪支部会報.むくどり通信.第246号.2017年1月.p9
2022.10.28
コメント(0)
小鳥のシジュウカラには二つの連続する鳴き声を一つのまとまりとして認識する能力があることを、京都大白眉センターの鈴木俊貴特定助教らの研究グループが発表した件を新聞で読んだが具体的にはどんなものかと鳥友から質問をもらいました。これまで、シジュウカラは「ピーツピ」に対しては警戒行動、「ヂヂヂヂ」に対しては集合、「ピーツピ・ヂヂヂヂ」に対しては警戒しながら集まることがわかっていました。しかし、聞き手のシジュウカラが「ピーツピ・ヂヂヂヂ」を1つのまとまりとして認識(併合)しているのか、2つの個別の音声の連なり(「ピーツピ」と「ヂヂヂヂ」)として認識しているのか、区別されていませんでした。検証では、シジュウカラに「ピーツピ」、「ヂヂヂヂ」の2つの音声を1つのスピーカーから連続させて聴かせる場合と同じタイミングで2つのスピーカーから分けて聴かせる場合とで、行動の比較が行われました。その結果、単に耳に入った「ピーツピ」、「ヂヂヂヂ」の2音に反応しているのではなく、「これら2つの音声が1羽(1つの音源)によって発せられた1つのまとまり(メッセージ)である」と認識して追い払い行動をとっていることが明らかになりました。このことからシジュウカラには「2つの音声が1個体によりまとめて発話されているか」を認識した上で、音列の意味を解読していることが判明したということです。ヒトの多彩な言語表現は、2つの要素を1つにまとめる力のもとに成り立ちます。例えば、「小さくて黒い犬」という表現は、「小さくて」と「黒い犬」が1つにまとまったもので、うち「黒い犬」は、「黒い」と「犬」が1つにまとまった表現です。このように、2語を1つのまとまりとして認識する能力は言語学では併合と呼ばれるものですが、人間以外の動物でその存在が確認されたのははじめてです。(参照文献)鈴木俊貴、松本結.2022.野鳥の音声コミュニケーションにおけるコア併合の実験的証拠.Nature Communications DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-022-33360-3PDF: https://rdcu.be/cWgT0.(写真)上記研究報告とは直接の関係はありません。
2022.10.07
コメント(0)
連日の雨でフィールドに出かけられないので鳥類の文献を読み漁っています。たまたま、図書館で借りてきた書籍「日本野鳥の会のとっておきの野鳥の授業」の中にモズのはやにえの不思議と題する章がありました。2019年に大阪市立大学の西田特任講師と北海道大学の高木教授の共同研究で発表した「はやにえを食べたオスがモテる」との論文を日本野鳥の会会報誌野鳥向けに書かれたものでした。モズのはやにえといえば、鳥見をはじめた頃に探鳥会リーダーからは縄張りを主張するマーキング説、冬の保存食説、縄張りの餌の豊富さを誇示するものなどの意味があると説明を受けたものです。このうち、一番人気のある冬の保存食説について検証を行ったのが西田講師でした。検証の結果は、はやにえの消費数は気温が低くなるにしたがい増えていき、最も寒い1月にピークに達したと報告されています。ところが保存食であるならば、1月と同様に寒い2月にはやにえが多く消費されるはずがそうではない結果であり、別の役割があるのではないかの仮説を立てて新たな検証が行われました。はやにえの消費量が多かった1月はモズの繁殖シーズン直前にあたり、なわばりの中で活発に歌い始る時期にあたります。新たな検証は、はやにえのモニタリングと並行しオスの歌声の録音を行いはやにえの消費量と歌唱速度の関係を調べるものでした。この結果、オスがプロポーズを成功させるための栄養補給食の役割を持つことが判明しました。(引用文献)西田有祐.2021.モズのはやにえの不思議.日本野鳥の会のとっておきの野鳥の授業. p78-91.山と渓谷社.大阪市立大学プレスリリース.2019.モズの『はやにえ 』の機能をついに解明 ―はやにえを食べたモズの雄は歌が上手になり雌にモテる―.このリリースは、国 際学術誌『Animal Behaviour』のオンライン版に掲載されたものを発信するものでした。(写真)文書とは直接関係はありません。2022年1月、2016年9月、2013年9月に手賀沼で撮影
2022.10.06
コメント(0)
秋が深まると、夜間に上空をオオジュリンなどの冬鳥が鳴きながら通過していきます。秋冬期に青森県や宮城県などの東北地方から関東や中部地方、新潟県から愛知県、あるいは中部地方から中国地方などへの移動していきます。夜、耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。さて、そのオオジュリンの尾羽について異常が観察された年がありました。内容については、富田ほか(2013)を参照してください、当時、富田ほか(2013)が要因としていくつかを上げていますが、甲状腺異常、放射性物質による突然変異といった点について鳥友の中で話題となりました。(尾羽異常について)富田ほか(2013)によると、尾羽異常は、つぎの3つのタイプが認められたと述べています。(1)虫食い状欠損型(約1 mmの穴が数ヶ所開いている状態や羽枝が途中で溶けたようになりその先が欠損している)(2)成長異常型(正常羽と比較し長いもの、あるいは短いもの)(3)成長異常型の長ものと短いものが同時に観察されるもの尾羽異常が一過性の現象なのか、それとも同様の現象がその後の見られているのか、我々ウオッチャーが野外で注視する必要があります。ただし、野外では尾羽を観察できる時間が限られることから前記状態を確認できるかは困難さがあるものと思います。そのためには、画像で撮影して後から確認するしかありません。なお、吉安ほか(2020)が述べているように、自然の条件下で生存している小鳥たちの寿命は短く、小鳥の中ではヒヨドリが10年4ヶ月、ホオジロが8年10ヶ月、アオジが14年3ヶ月といったところです。したがって、当時観察された個体がその後も生存している可能性は低く、世代がかわっているものと思います。(引用文献)吉安京子・森本元・千田万里子・仲村昇(2020). 鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一覧.山階鳥類学雑誌.52(1): 21-48.富田直樹・仲村 昇・岩見恭子・尾崎清明.2013.2011/2012 年に日本全国で観察されたオオジュリンを主としたホオジロ科鳥類の尾羽の異常.日本鳥学会誌.第62巻.第2号.p143-152.
2022.10.05
コメント(0)
昨日、手賀沼沿岸でノビタキを観察した折、黒いはずの嘴の一部が肉色をしている個体を観察しました。嘴以外は一般的なノビタキと差異はありませんが、帰宅後、拙宅の亭主に聞いてみました。鳥類の嘴は、組織にある色素細胞が、さやに色素を送るので色がつくんだ。色素が送り込まれなければベースの色が見えることになる。そうした原因なのか、他の要因によるものなのか観察と学びを続けたいと思います。写真は昨日の撮影のもの、先月同地でシーズンはじめて撮影した個体のものをアップします。(年齢による嘴基部に色の変化)玉田・池田(2019)は、スズメの標識調査の結果を整理したものを報告しています。復数の研究者がスズメ成鳥の嘴の色は真っ黒になるのに対して幼鳥は暗褐色で基部は淡いことを指摘しています。さらに、三上(2013)に成鳥の嘴は秋になると根元が黄色になることの記述があると紹介しています。ノビタキについては、嘴のさやに色素を送り込まなかったから肉色なのか、スズメのような要因があるのかは不明です。(写真)2022年10月3日手賀沼沿岸で撮影、2022年9月17日手賀沼沿岸で撮影(引用文献)三上 修.2013.スズメ一つかず・はなれず・二千年.岩波書店.玉田克己・池田徹也.2019.北海道のスズメにおける嘴基部の色の季節変化と 外部計測値による性判定の可能性.日本鳥学会誌.第68巻.第2号.p349-355.
2022.10.04
コメント(0)
モズの高鳴きがよく聞こえてくる時期となりました。浦本(1988)が述べているように、モズは冬には雌雄別々に一羽ずつなわばりを占め、そのなわばりの所有を宣言しあうのが高鳴きです。高鳴きが聞こえるようになると、昆虫、ムカデ、ミミズ、トカゲ、カエル、ネズミなどを捕まえて食べているのを目撃します。野本(2016)が述べているように、はやにえからそのむ地域の生物相の一旦を知ることができるのでフィールドを歩く時に参考になります。また、「モズの高啼き七十五日」との言い伝えがあり、モズの高鳴きを初めて聞いてから75日目に霜が降りだすとされています。農作物の収穫も作業の目安としている地域もあるようです。モズについてのいくつかの地域の言い伝えについては、日本野鳥の会埼玉がホームページで紹介はしていますので、下記に紹介します。#日本野鳥の会埼玉 野鳥の声を楽しもう No12モズ.https://www.wbsj-saitama.org/yacho/koe/12.html・モズ(百舌鳥)の高鳴きは晴天の兆し(千葉・富山・高知・福岡)・モズ(百舌鳥)の高鳴きは七十五日の上天気(広島)・モズ(百舌鳥)が来るとその年はもう大風がこない(熊本)・モズ(百舌鳥)が鳴き始めると風が吹かない(愛知・奈良・福岡)・モズ(百舌鳥)が早く鳴けば、早く寒さ冬が来る(滋賀・大分)・モズ(百舌鳥)が鳴くと雪が降る(岐阜)(引用文献)浦本昌紀.1988.もず.四季の博物誌.p386-387.朝日文庫.野本康太.2016.おすすめモズのはやにえ探し.自然保護 NOV. / DEC. 2016 No.554.p22-23.日本自然保護協会.(写真)2018年 2月 3日千葉県我孫子市にて撮影2018年10月29日千葉県我孫子市にて撮影2021年 1月17日千葉県我孫子市にて撮影
2022.09.21
コメント(0)
バードリサーチ(2022)が述べているように、セイタカシギは日本国内では繁殖期は5~7月,一夫一婦制で繁殖すると記載している文献がほとんどだと思います。ところが、北川(2000)が1985年以来行っている調査・観察結果から1羽の雄と2羽の雌からなるトリオが生じることが判明し、雌と雌つがいが形成され、繁殖期にむけて共同的一夫ニ妻に発展する可能性が見つかったと報告しています。興味深い報告なので情報提供します。(トリオ形成の3つのタイプ)(1)雌、雌のつがいに雄が参入両雌が雄を受け入れる場合はトリオが形成されることになるが、繁殖期が近づき雄が2羽の雌のうち1羽に対し、あるいは雌同士の敵対関係が強くなると雌同士のつがいは解消し通常のつがいが形成される。このタイプは、非繁殖期に一時的に形成される。(2)両雌が雄に敵対し雄の参入を許さない場合両雌が雄に対して敵対し雄の参入を許さない場合、雌、雌のつがいが維持される。1996年から1999年にかけて4年間継続された。(3)両親に娘が参入する場合繁殖地から親子で越冬期間を過ごし、繁殖地へ前年の子を伴って移動してくる。親がなわばりを形成し営巣すると親鳥は若鳥に対して攻撃的になるが若鳥に対する敵対行動が強くないと若鳥は親の産卵後もなわばりにとどまり、娘が両親の巣に卵を生む機会ができ、共同的一夫ニ妻に発展する。(引用)北川珠樹.2000.セイタカシギとその繁殖地・越冬地としての湿地・干潟の保護・保全に関する研究.2000年度宝ホールディングス ハーモニストファンド 報告書.p5-11.https://www.takara.co.jp/environment/fund/aid/h12report.htmlバードリサーチ.2022.Bird Research News.2022年6月.p1-2.
2022.09.20
コメント(0)
私が野鳥を見始めた1980年代はじめの頃、当時の探鳥会リーダーが渡り鳥について説明するときは本州伝いに南下して大陸に渡ると説明を聞き、そのエビデンスも確認しないまま、信じていました。ところが国立研究開発法人森林総合研究所は、ドイツヘルゴランド鳥類研究所、オーストラリアディーキン大学、北海道大学、山階鳥類研究所と共同で、2014年にジオロケーター(小型の計測機器)を草地性のノビタキに北海道で装着し、その渡り経路を追跡しました。2015年に回収した結果、本州を経由せず北海道から直接大陸に渡っていたことが判明しました。繁殖を終えたノビタキは大陸に移動して中国を経由し、主にインドシナ半島で越冬していたことがわかりました。従来刊行されている文献を見返してみましたが、言及しているものは見当たりませんでした。エビデンスを確認しないまま、ノビタキの渡りを理解していたつもりでいたことを後悔しています。なお、森林総合研究所(2016)は、前記の調査との結果にくわえて北海道のノビタキについてつぎのように記しています。「1 万3 千年ほど前の北海道は、最終氷期にあり寒冷で乾燥しており、草地が広がっていました。当時の北海道は、サハリンを通して大陸とつながっており、マンモスをはじめ草地性生物の多くが大陸から渡来してきたとされています。ノビタキなどの草地性鳥類もこの北回りのルートで北海道に定着し、このルートが現在も遺産として残っているのかもしれません」(引用)森林総合研究所.2016.北海道の草地性鳥類(ノビタキ)は大陸経由で南下してインドシナ半島で越冬する-小鳥の新たな渡り経路を発見-.プレスリリース2016年8月22日付.
2022.09.19
コメント(0)
昨日、茨城県南部でシギ・チドリを観察してきました。その折、アオアシシギが目をつぶって寝ているようにも見えました。そういえば、野鳥たちの眠りはどうなっているのだろうと帰宅後文献を紐解いてみました。はばたき(1988)に、閉じた目と反対側の脳半球には睡眠脳波が見られ、開いた目と反対側の脳半球には覚睡脳波が認められると記され、休憩場所のない大空を飛びながら脳を半分ずつ休めているとも考えられていると報告されていました。地上で休んでいる場合、両目をつぶって眠っているのか、片目をあけているのかを観察してこなかっただけに次回から注視してみないといけませんね。(引用文献)はばたき.1988.神戸市立王子動物園.第24号.p13.(写真)アオアシシギ:2022年9月15日茨城県稲敷市オバシギ:2022年9月10日千葉県船橋市三番瀬キアシシギ:2022年8月14日千葉県習志野市谷津干潟ハマシギ:2022年9月3日茨城県稲敷市
2022.09.16
コメント(0)
9月から晩秋にかけて港や内湾、水田、湖沼などにアカエリヒレアシシギが飛来することがあります。この鳥についての興味深いリポートを紹介します。なお、アップし画像は2020年10月3日に茨城県稲敷市で観察した夏羽から冬羽に換羽中の個体です。(1)アカエリヒレアシシギはコゲラ、ヒヨドリに類似江村(2011)は、アカエリヒレアシシギの舌表面を電子顕微鏡で観察した結果を報告しています。それによると、肉眼では細長い爪楊枝状を呈し、舌全体の形態しコゲラに、舌尖の先端はヒヨドリに類似していたと記しています。また、その構造は、口腔内に入った食物が確実に食道に流れ込み、口腔外に押し出されない装置であると考えられると述べています。(引用文献)江村正一.2011.アカエリヒレアシシギの舌表面の走査型電子顕微鏡による観察. 医学と生物学.第155巻.第1号.p1-6.(2)野球場に飛来したアカエリヒレアシシギ桑原・小島(1993)は、北海道興部町営球場にナイターの試合中に飛来した件を報告しています。それによると1993年9月13日21時頃、ナイター中に約100羽の群れが飛来したと報告しています。球場内の外野に人がいるにもかかわらず地上に降りた個体がおり、人間との距離は1.5mだったと述べています。飛来した要因については、球場の光源に鳥の群れが集中して引きつけられたことをあげています。なお、過日8月30日西武対楽天戦でアカエリヒレアシシギが球場に飛び込んだとのニュースは記憶に新しいところです。このほかにも2021年9月5日横浜スタジアム、2017年8月30日に仙台市Koboパーク宮城でもアカエリヒレアシシギがーの群れが飛来したことがメディアで取り上げられています。(引用文献)桑原和之・小島紀行.1993.北海道紋別郡興部町町営球場へのアカエリヒレアシシギ の観察記録.鳥類標識誌.第8巻.第2号.p53-59.
2022.09.02
コメント(0)
鳥友から子どもたちが鳥類の嘴について文献を調べていて質問をもらったと問い合わせをもらいました。内容は、シャモジ型のヘラサギとハシビロガモについて採餌方法が同じと書いてあったけれど、実際観察していると違うのだけれどと聞かれた由。下記の採餌について整理してみました。(ヘラサギの採餌)ヘラサギは、嘴を半開きにして水中で左右に振りながら魚やカエル、カニなどを採餌することが知られています。(ハシビロガモの採餌)水面に平たい嘴を浸けて水面を進み、取り込んだ水からプランクトンだけを濾し取ります。(ヘラシギの採餌)波打ち際の砂泥地や干潟でヘラ状の嘴を少し水につけ、左右に振りながら、昆虫、甲殻類などを採食します。(ハシビロガモとヘラサギ、ヘラシギの違い)ハシビロガモは水面に嘴を浸けて取り込んだ水からプランクトンだけ濾し取る点がヘラサギ、ヘラシギとの大きな違いです。ヘラサギとヘラシギは、嘴を左右に振りながら採食する点は同様です。まったく違う種類が同じような嘴に進化し、同様の動作をすることはたしかに興味深い点です。それで、ヘラサギは魚、カエル、カニを採食、ヘラシギは昆虫、甲殻類を採食するので餌の内容は異なっています。(写真)ハシビロガモは2018年1月、2021年1月市川市中国分で撮影ヘラサギは2013年12月埼玉県川越市で撮影
2022.08.18
コメント(0)
昨日、茨城県南部でアオバズクを観察しに出かけました。巣から離れた木の幹周辺にクワガタなどの昆虫の食べかすを見つけました。番が飛来してから渡去するまでどの程度の餌を食べるものかと思い、文献を調べてみました。飯村(1984)は、アオバズクの繁殖に関する知見を整理し報告しています。報告によると、トノサマバッタ、スズメガ科3種、ヤガ科のキシタバ、カンキリムシ科3種、コクワガタ、コガネムシ科1種が餌の残骸として観察できたと述べています。アオパズクの体重は約350gで、食餌物1日1羽当たり28.7g、番の2羽で1日あたり57.4gを摂食していることが把握できたと記しています。さらに、アオバズクが日本に飛来し繁殖のために滞留する五ヶ月でコガネムシ(体重0.7g)に換算すると21525頭を食べていることになると指摘しています。なお、コクワガタの体重については調べてみましたが報告している文献はなく、オオクワガタが50g前後との記述のあるwebがあっただけでした。(引用文献)飯村 武.1984.アオパズクの繁殖生態に関する知見.p44-49神奈川県自然誌資料.神奈川県立自然保護センター.
2022.07.10
コメント(0)
先月30日に柏の葉キャンパス駅近郊でイワツバメが巣を作っている旨を報告しました。記事を読んでくれた鳥友からイワツバメはどこで寝るのかと質問をもらいました。よく聞いてみると、ツバメやショウドウツバメ,コシアカツバメは渡りのコース上のヨシ原などに集まって休むことが文献や画像記録によって報告されているのに、イワツバメについてはねぐらに関するリポートもないとのことでした。西(2013)は、イワツバメの形態や分布、生息環境、生活史などを整理し報告しています。その中に「巣に入れなかった個体は、日没が近づくと小群になりコロニー上空へ飛び去り、この小群は日没後もコロニーに戻ることはない。さらに,ヒナの巣立ちが近づくと巣でねぐらをとらない親鳥が観察されるようになる」、「ヒナは巣立つと巣にはほとんど戻らなくなる」と報告しています。飛行能力に優れたアマツバメ類は、飛びながら睡眠をとると聞いていますが、イワツバメも同様に飛翔しながらの睡眠なのでしょうか?(引用文献)西 教生.2013.生態図鑑.イワツバメ.Bird Research News Vol.10 No.9.p4-5.(写真)2022年6月30日柏市柏の葉キャンパス駅近郊で撮影、2019年4月19日同地で撮影、2018年6月24日同地で撮影、2013年6月2日柏市柏にて撮影
2022.07.03
コメント(0)
全191件 (191件中 101-150件目)