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2025.12.25
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 茨木のり子「歳月」(岩波現代文庫) 今日 12月20日 土曜日 です。​
2025年 も、あと10日。
​ 今年は初めての体験がいろいろありました。ちょっと弱気です。まあ、そんな気分で、思わず振り返ってしまう 1年 でした。
8月 の末に1週間ほど病院に閉じ込められて、久しぶりの本読みの日々だったのですが、その時に読みなおしたのが 茨木のり子 とか 石垣りん とかでした。で、病院から帰ってきたボクの机に置かれていたのがこの 詩集 でした。
茨木のり子「歳月」(岩波現代文庫) 茨木のり子 の死後、甥っ子さんの 宮崎治さん が遺品の中から見つけた 詩集 だそうです。​
「Y」の箱

「歳月」は、詩人茨木のり子が最愛の夫・三浦康信への思いを綴った詩集である。
 伯母は夫に先立たれた一九七五年五月以降、三十一年の長い歳月の間に四十篇近い詩を書き溜めていたが、それらの詩は自分が生きている間には公表したくなかったようである。
 何故生きている間に新しい詩集として出版しないのか以前訊ねたことがあるが、一種のラブレターのようなものなので、ちょっと照れくさいのだという答であった。
 そして伯母はその詳細について多くを語ることなく、二〇〇六年二月十七日、突然伯父の元へと旅立ってしまった。
 急逝から一週間後の二月二十五日、岸田衿子さんのご尽力で「櫂」のメンバーや知人が集まった際、花神社の大久保さんに初めてお会いし、伯母が夫への気持ちを綴った挽歌の出版の意思を、生前大久保さんに伝えていたことを改めて知った。
 その後、伯母の遺言に従って密葬を行い、お別れの手紙を二百通余り郵送し、伯父の眠る山形県鶴岡市の菩提寺での納骨を済ませ、毎日妻と二人で伯母の家を片付けていた。
 もうすぐ伯母の誕生日という六月の初旬に、書斎の書類の中から、原稿の入ったクラフトボックスを発見した。小さく「Y」とだけ書かれていたが、それが伯父のイニシャルであることですべて理解できた。
 箱を開けてみると、その中には推敲が済み、清書され、几帳面に一篇ごとにクリップでとめられた未発表の詩と、詩のタイトルを順番に並べた目次のメモ、草稿のノートなどが収められていた。

以下略(P147)
 と、まあ、生前、 詩人 が出版に踏み切れなかった 「愛の詩」 ですね。ちょっと、紹介するとこんな詩です。
歳月   茨木のり子

 真実を見きわめるのに
 二十五年という歳月は短かったでしょうか
 九十歳のあなたを想定してみる
 八十歳のわたしを想定してみる
 どちらかがぼけて
 どちらかが疲れはて
 あるいは二人ともそうなって
 わけもわからず憎みあっている姿が
 ちらっとよぎる
 あるいはまた
 ふんわりとした翁と媼になって
 もう行きましょう と
 お互いの首を締めようとして
 その力さえなく尻餅なんかついている姿
 けれど
 歳月だけではないでしょう
 たった一日っきりの
 稲妻のような真実を
 抱きしめて生き抜いている人もいますもの

  夜の庭   茨木のり子

 匂い 流れて
 はじめて気づく
 花々の咲そめを
 庭に一本の金木犀
 粒粒の花は
 クリームいろから鬱金へと
 たちまちに色を変え
 惜しげもなく妖しい芳香を放ち出す

 ぼんやりのところがあったあなたは
 ヘアトニックとシェービングローションを
 ひんぴんとまちがえて
 ふりかける人でもあったから
茨木のり子 が、夫である 三浦康信氏 と死別したのは 1975年 、そこから 31年 の間、 亡き夫 に対して書き継がれてきた だそうです。​
「歳月」 からは、詩人という肩書をも外した一人の女の声が聞こえてくるが、しかし逆説的、そのことをもって、詩人としての新しい境地を広げたともいえる。
巻末の解説 小池昌代さん がおっしゃっている言葉です。
茨木のり子 の代表詩集ともいえる 「自分の感受性くらい」(花神社) が上辞されたのが 1977年 のことだったことなどを思い浮かべながら読めば、 この詩集 に収められた 「ことば」の哀切 が、より一層、響いてくるのではないでしょうか。
 病院から帰ったボクの机に この詩集 を置いたのは、もちろん、同居人の チッチキ夫人 ですが、置いた当人が、病院帰りの同居人に対してどう思って、この詩集を置いたのかは謎です(笑)。が、 茨木のり子 を読む角度が少し変えられたことは事実ですね。ありがたいことです(笑)。
2025-no122-1195




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最終更新日  2025.12.28 22:21:12
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