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2025年に出会った本
というふうに考えると、まず、この人の名前が浮かびます。 佐々木幹郎
です。 1947年生まれ
だそうですから、今、団塊のと呼ぶのがいいのでしょうか、 70代の後半の世代
ですね。ボクより少しだけ年上の感じです。 詩人
だそうです。 中原中也
についての 岩波新書
があることは知っていましたが、著書も詩を読んだことはありませんでした。
「うーん!」と唸った!のが始まりで止まらなくなりました。
月夜の蟹 佐々木幹郎
晩秋の新月の日に樫の木を切る百年経っても 虫がつかないんです家具職人のオサムさんは言ったそういえば満月の日の沢蟹を食べると腹くだしするってね村一番の色男 トクさんが言った蛾はね 昼間寝ていて 夜 飛ぶんです枯葉を踏み分けながら大きな網を振り回していた 蛾類学会のコイケさんは酔いながら 月の光のなかで黒い影になっているスコットランドの海をただよう海草が波にもまれ 風に吹き飛ばされ蒸留所の白壁に 叩きつけられる頃日本の火山の麓の斜面で男たちがボトルを傾ける焚き火とともに始まる山小屋バーは月が西の木の梢にかかりだすまで開店グラスの底の一滴まで脱皮を繰り返す満月の蟹みたいに身体をやわらかくして水が吸い込んだ泥炭の香りを嗅ぐあ 初雪!
冬の透明なツララが、山小屋の旧舘の軒先から垂れ下がっている。旧舘より低い斜面に建っている書斎のベランダから、そのツララを見上げる。ツララの垂れた屋根の向こうに大きなクリの木の枝が伸び、繊細な梢が美しい。空は 「雨過天晴雲破処(うかてんせいくもやぶれるところ)」 ともいうべき、淡いつややかな青色を雲の間にのぞかせている。。わたしはこの色が一番好きなのだ。「雨過天晴雲破処」というのは、雨が過ぎ去ったあと、雲の破れ目に最初に現れる新鮮な青色のこと。陶磁器の世界では「雨過天晴」と呼んで、中国の青磁の理想的な色を形容している。十世紀半ばの五代・後周の時代に皇帝世宗柴栄が、この色の青磁の器を作るよう命じたという伝説があり、実際に作られたのは北宋の時代。これに近い潤いのある済んだ青色の青磁が、皇帝専用の窯であった汝窯(じょよう)で完成されている。わたしは大阪市立東洋磁器美術館でこの色の青磁に出会って以来、大好きな色になった。どのような製法でこの色が出せるのか、陶芸家たちはいまも挑んでいるが、再現できずに謎となっているらしい。そういう逸話はともかく、わたしは「雨過天晴雲破処」という漢字の並び方も気に入ってしまって、しかのそれが色の名前だとというのも面白くて、以前、峠の旅館のミッチーが蕎麦屋を新しく開くにあたって、屋号を考えてほしい、と言ってきたとき:「雨過山坊」という名前を付けたのだった。(P200~P201)
ある朝 僕は 空の 中に
黒い 旗が はためくを 見た。
雲の破れ目の宇宙の青い色が、「旗」のようにひるがえっているのだった。と締めくくられます。こう纏めるといかにも文学エッセイのようですが、実は、 家具士のオサムさん とか ジュンジくんの看板描きの話 が綴られる 山小屋暮らしのお話 なんですね。で、また一人、また一人と名前を憶えていくというわけです。不思議な面白さです。いかがですか?
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