PR
カレンダー
カテゴリ
コメント新着
キーワードサーチ
司馬 あの狛(こま)というあたりに、黄文(きぶみ)の絵師なんかがたくさん住んでいますね。だから黄文とか、黄色い色を出すというのは、新羅や百済のイメージよりは高句麗のイメージですね。 ちょうど読んでいたところからの引用です。いかがでしょうか、面白いですね。
林屋 そうですね。黄色というのはほんとうに大事にされてきたのですね。要するに東・西・南・北は四神といって、青龍・朱雀・玄武・白虎とある、そのまん中はどんな色かと、これが黄色なんですな。
司馬 神聖色が黄色というわけですかね。
林屋 やっぱりこれは道教じゃないでしょうか。
司馬 道教でしょうね。あるいは道教以前から黄色信仰はあったかもしれませんが、道教が吸い上げた。道教では決定的に黄色ですね。
林屋 これはびっくりしましたな。かれこれもう十年近く前のことになりますが、伊勢神社の式年遷宮の時に、内宮の中まで開放しましたでしょう。そこで見たんですが、ちゃんと黄色が使われています。そういえば四神では黄色がないですものね。五色と言ったら黄色が入るのです。気がつかないのがふしぎなくらいで、その場合黄色をまん中に置くのですね。ちゃんと内宮と下宮の高欄に、その玉が入っています。
全部白木の中で、あそこだけ五色の極彩色がパーッと見えるんです。
司馬 そうですね。私も物見高いものですから、その時の式年遷宮にも、そのまえのときも行ったのですが、あれは鮮やかな印象です。私が親しくなった宮司さんがおりまして、そのときはもう退役して老人になっておられましたが、要するにこれは中国のまねでしょう、と言ったらいやがりましてね。(笑)「思想としては道教じみていて、礼儀は儒教によったわけでしょう?」と言っても「うん。」と言わないのですよ。(笑)伊勢神宮のえらい人としては、やはりこれが惟神(かんながら)の道といいたいものですから。
ところが伊勢神宮が単に神聖な場所というのではなくて、ある程度は国家鎮護のにおいがあって、効きめということでは道教でしょうね。
林屋 そうでしょうね。 (古代出雲と東アジアP105~106)
目次
遠近の感想― まえがき ―司馬遼太郎
日本人はどこから来たか
まず「古代」を半分にしてみる~古代日本はアジアの標本蔵
日本人はいかに形成されたか
日本的律令制のスタート~中世に終止符をうった秀吉
古代出雲と東アジア
イリュージョンの国・出雲~平和のデモンストレーション
花開いた古代吉備
高い生産力を誇る~秀才官僚を産む
フロンティアとしての東国
勿来関(なこそのせき)の向う~商業の原点は京都・中京(なかぎょう)
中世瀬戸内の風景
生きるのが難儀な時代~津山は投馬(とうま)国か
日本人のこころの底流
諦めの浄土と活力の法華~芸術ショックに弱い日本人
世界のなかの日本文化
日本の中華思想~世界の文化の事務局に
あとがき ―林屋辰三郎
解説 陳舜臣
週刊 読書案内 今福龍太「霧のコミュー… 2024.11.11
週刊 読書案内 岸田奈美「傘のさし方が… 2024.11.10
週刊 読書案内 岸田奈美「もうあかんわ… 2024.11.01