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2016年07月10日

いじめられるチェコ(七月七日)




 芝の状態が悪くて踏ん張りがきかず、こけてしまう選手が続出していたからチェコ代表が負けたとか、ロシツキーが怪我をしたとか言いたいわけではない。フランスだからあんな芝の状態でも、大会を行うことを認められたのだと、ヨーロッパのサッカー協会の連中もろくにチェックしなかったに違いないと言いたいのだ。これがチェコでの開催だったら事前に、重箱の隅をつつくようなチェックを受けて、いい加減にしろと言いたくなるような修正要求を受けていたはずである。
 被害妄想、いやいや、そんなことはない。実例があるのだから。昨年チェコでU21のヨーロッパ選手権が行われた。会場となったのはプラハの二つのスタジアムと、モラビアのオロモウツとウヘルスケー・フラディシュテのスタジアムだった。このうち、ウケルスケー・フラディシュテのスタジアムの芝の状態にクレームが付けられ、リーグ戦の最中であったにもかかわらず、芝の張替えを余儀なくされたのだ。


 それが何度かの協会主導のプロジェクトを経てスタジアムの改修が進み(強制されたというほうが正しいか)、現在では照明設備も芝の融雪設備も整い、収容人数を除けば、どこに出しても恥ずかしくないレベルのスタジアムばかりである。逆に言えば一部リーグに参戦する条件として、スタジアムの整備が課されているため、一部昇格を目指すチームはスタジアムを事前に改修するか、改修することを約束した上で、改修が済むまでよそのチームの本拠地に間借りすることになる。

 だから、ウヘルスケー・フラディシュテのスタジアムの芝の状態もそんなにひどいものではなかったのだ。このスタジアムを本拠地とするスロバーツコの試合を見ても特に問題があるようには見えなかったし、少なくとも今回フランスで会場となれたいくつかのスタジアムよりは明らかにましだった。それなのに、チェックに来たUEFAの人間によって芝の状態に不備があることにされ、シーズン中にもかかわらず、芝の張替えを要求されたのだ。その結果、スロバーツコは芝の張替えの期間、よそでの試合を強要された。
 これがフランスでもUEFAの人間が入念にチェックをして芝の張替えを命じたという話だったら納得できるのだけど、実際はチェックが入ったのかどうかすらわからないという状態で、テレビ中継のときに解説者が不満をぶちまけていた。

 以前、アイスホッケーでも似たようなことがあった。チェコで世界選手権が行われたときに、世界アイスホッケー協会の連中が、スタジアムの確認に来たときに、本当にどうでもいいような細かいところにまでクレームを付けた上で、無事に大会が開催できるのかどうか不安だとか無駄な心配を表明するなど、大会が始まるまではチェコ側の運営能力を疑う発言を繰り返していた。その後、運営の面では何の問題もなく大会は終了し、関係者は途中から手のひらを反す発言をし始めるのだが、うっぷんの原因はそこにはない。
 翌年だったか、翌々年だったかに今度はオーストリアで世界選手権が開催された。このときも事前にスタジアムのチェックが行われたはずだが、問題がありそうだというコメントはどこからも聞こえてこなかった。それなのに、実際に大会が始まると、ゴール前の氷が解けて水たまりができるなど、会場となったスタジアムに問題が続出し、お前ら事前にチェックをしたんじゃないのかと言いたくなってしまった。チェコのときにはあれだけ細かくクレームをつけてきたのに、オーストリアの場合には、すべて放置されていたのだから、信じられない話だし文句の一つも言いたくなる。
 アイスホッケーという競技に関しては、チェコは世界のトップの一つで、オーストリアはその他大多数の国の一つである。だからチェコでの開催には信頼を寄せて、オーストリアでの開催に不安を感じるというのならよくわかるのだが、実際には完全に逆になっているのである。(この一文7月11日追加)

 ただチェコだからという理由で疑念をもたれ、必要以上のチェックを受け、フランスだからオーストリアだからという理由で、根拠のない信頼を寄せられる。この手の差別もしくは偏見というものは、本人は差別だと意識しない上に、時に善意の形を取って現れるだけにたちが悪い。これは、ヨーロッパ人だからというわけではなく、日本人でも知らず知らずのうちにやらかしてしまうものなので、批判の言葉であると同時に自戒の言葉でもある。
7月9日14時30分。


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