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2017年03月10日

「スラブ叙事詩」日本へ(三月七日)




 コメンスキーを研究している方は、「スラブ叙事詩」のコメンスキーの絵をなんとしても自分の目で見たいといい、あそこに描かれているコメンスキーの姿にムハが何をこめようとしたのかを考えたいなんてことも仰っていた。こっちはただ圧倒されているだけだったし、コメンスキーのことをほとんど知らないまま見ていたので、何も感じなかったってことはないだろうけれども、何も覚えていない。モラフスキー・クルムロフの城館の中が、五月だというのにやけに寒かったのは覚えている。それとも感動で震えていたのを、寒さと勘違いしているのだろうか。

 さて、本日のチェコテレビのニュースでも日本で展示が始まった様子が放送されていた。輸送の第二陣、第三陣についてのニュースはなかったのだけど、いつの間にか日本に到着していたらしい。ニュースでは関係者のインタビューもちょっとだけ出てきて、名著『プラハ幻景』の著者ブラスタ・チハーコバーさんが登場したのには驚いた。こういう日本とチェコの友好に貢献してきた方が、こんな機会に日本に行かれてあれこれコメントするのはいいことだ。

 ところで、文化大臣は何しに日本に行ったんだろう? 「スラブ叙事詩」も文化財のはずだから、貸し出しの認可権を握っているのはこいつなのか。中国などのアジアツアーを画策しているのが文化省なのか、プラハ市なのかは、判然としないけど、ダライラマと会って、有頂天になるようなおめでたい人物には、どんなに金を積まれても中国への貸し出しは断固として拒否する強い態度を示してほしいものである。何であれ中国の思い通りにさせないことも、政治的にはチベットへの支援になるんじゃないのかね。少なくともダライラマと会見して喜んでいるよりは、はるかに有用なはずである。

 そして、最大の驚きは、今から何十年か前に、「スラブ叙事詩」の二十枚のうち、二枚が日本に貸し出されたことがあるという話だった。当時チェコから借り出して展示にかかわった人が、チェコテレビのインタビューに答えて、社長と二人で全国五十ヶ所ぐらいまわって展示したんだなんて回想をしていた。
 当時はまだムハはともかく、「スラブ叙事詩」の知名度は低かったはずだから、一箇所で展示していても客が集まらないので、絵の方が客を求めてあちこちしたということなのだろう。絵を見るためだけに地方から東京に出るなんてことが経済的に許される日本人もそれほど多かったとは思えないし、美術館だけではなく、デパートの催事場みたいなところでの展示もあったのではないかと、ついつい想像してしまう。
 それが、二十枚そろっての展示とはいえ、行列ができてしまうのだから、隔世の感がある。これを機に、フランス風のミュシャをやめて、日本でもチェコ語の発音にあわせてムハと表記してくれるようにならないものか。最初の一歩は、英語でインタビューに答えていた女性が、ミュシャと言った後に、ムハと言いなおしたところに見出したいのだけど、どうかな。日本人は自分の名前の表記、読みには、ものすごく敏感なくせに、外国人の名前のカタカナ表記には、滅茶苦茶鈍感だから、それにマスコミの怠慢さを考えると、はかない期待ということになりそうだ。

 とまれかくまれ、「スラブ叙事詩」が、日本から直接チェコに戻ってきて、チェコに戻ってきたら、プラハが専用の建物を建てるまでは、モラビアの片田舎に戻って、そこの城館で展示されることを願って、本日は筆を置くことにしよう。
3月7日23時。







posted by olomou?an at 06:54| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ
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