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2018年11月12日
仮定法1(十一月七日)
「kdyby」は文頭、もしくは節の最初に来て、仮定の意味、つまり「〜すれば」という意味を表す。それに対して仮定を受ける側の「by」は、節の二番目の位置に来る。「by」はまた単独で婉曲表現としても使われる。婉曲というよりは、表現を和らげて丁寧にするのに使われると考えたほうがいいかもしれない。とまれ先ずは形から入ろう。
人称変化は一人称単数から三人称複数まで以下のようになる。変化する部分は変わらないので「kdy」は括弧に入れておく。
1単 (kdy)bych
2単 (kdy)bys
3単 (kdy)by
1複 (kdy)bychom
2複 (kdy)byste
3複 (kdy)by
三人称は単数と複数で形が同じだが、一緒に使う動詞の過去形で単数か複数化区別できる。単数であれば「-l / -la / -lo」と主語が男性、女性、中性の場合で変わるが、複数であれば、「-l i / -ly / -ly / -la」と男性名詞が活動体と不活動体で語尾が変わるので、四つの語尾を使い分けなければならない。一人称、二人称の場合には必ず男性か女性が主語になるので、中性の語尾を取ることはないが、主語となる人物が男性か、女性か、単数か複数かで動詞の過去形の語尾を変えなければならない点は変わらない。
また、口語では「být」の現在変化につられて、一人称単数を「(kdy)bysem」、複数を「(kdy)bysme」という形で使う人も増えているが、これはまだ正しいチェコ語としては認められていないので、知り合いにそんなチェコ語を使う人がいたら悪影響を受けないように注意しなければならない。
実際に文を作ってみよう。
Kdybych neum?l(a) ?esky, nemohl(a) bych ?ít v ?eské republice.
チェコ語ができなかったら、チェコに住めないだろう。
動詞の末尾に「(a)」をつけたのは、女性の発言だった場合には「a」が付くことを示している。この文の「kdybych」のあとに、例えば「tehdy(あのとき)」を入れると、「あのとき日本語ができていなかったら、チェコに住めていなかったろう」と古典文法では反実仮想と呼ばれるタイプの仮定を示すこともできる。チェコ語にも反実仮想用の文法は存在するのだが、動詞の過去形を二つ並べるなどややこしく、現在では普通の仮定法で代用してしまうことが多い。
もちろん両方の節の主語が一致しなければならないということはない。いくつか組み合わせてみよう。できるだけ単純な短い文にする。訳を普通の仮定にするか反実仮想にするかは気分で決めた。
Kdyby nem?lo letadlo zpo?d?ní, stihl bych poslední vlak do Olomouce.
飛行機が遅れなければオロモウツ行きの最終に間に合うでしょう。
Kdyby se mi nelíbila Olomouc, nebydlel bych tam.
オロモウツが気に入っていなかったら住んでいません。
Kdybych ?ekal trochu déle, mohl bych se setkat s Petrem.
もう少し長く待っていればペトルに会えていたのに。
Kdyby vám to nevadilo, jel bych do Prahy.
よろしければ、私がプラハに行きます。
Bylo by dobré, kdybyste p?išel o hodinu d?íve.
一時間早く来てもらえるとありがたいんですが。
Bylo by špatné, kdybych neud?lal toto zkoušku.
この試験に合格できなかったらやばいんだよなあ。
ところで「by」のある部分だけを使った丁寧な婉曲表現も、もともとは前半部分が存在していて、省略されるようになったと考えてもいい。例えば、
Kdybyste m?l ?as, mohl bych se vás na n?co zeptat?
お時間があるようでしたら、質問させてもらっていいでしょうか。
いきなり、「質問してもいいですか」と聞くよりも、「時間があれば」と仮定したり、最初に時間があるかどうか質問したりした方が、丁寧な表現になるのは日本語もチェコ語も変わらない。だから「by」を使うことによって、「Kdybyste m?l ?as」や「Kdyby vám to nevadilo」のような仮定法が省略されていることが示唆され、丁寧に響くのではないかと考えられる。いや、本当かどうかは知らんけど、このように考えれば、納得して使えるというだけの話である。
実際には、「Dám si kávu」と言っても、「Dal bych si kávu」と言っても大差はないんだろうけど、「by」を使った仮定法で注文したりお願いしたりできるようになると、チェコ語がものすごくできるようになった気分になれたものだ。
ちなみに、かつてチェコ語を勉強していたころは、毎晩仮定法の勉強のために、いや実践のために飲み屋に出かけていたものだ。お金を払ったあとに、お店の人にお願いしたのだ。
Kdybyste m?li nový tácek, nemohl byste mi ho dát?
新しいコースターがあったらもらえないでしょうか。
Kdybyste m?li jiné tácky, cht?l bych si je vzít.
これとは違うコースターがあれば、ほしいんですけど。
とか「kdyby」以外の方法も交えて、さまざまなバリエーションを駆使して毎晩できるだけ違う表現を使うようにしていたのだ。その結果、仮定法がある程度使えるようになり、コースターのコレクションも増えていった。つまり、我が仮定法は飲み屋で、ビールとコースターによって鍛えられたのである。
2018年11月8日23時55分。