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posted by fanblog

2018年11月19日

衝撃のコウノトリの巣事件、もしくは笑劇の……2(十一月十四日)




 振り返って、今回のチェコ首相の息子の誘拐事件の何ともスケールの小さいことよ。誘拐担当者はアグロフェルト社の実は運転手に過ぎないと言うし、誘拐されたからと言って命の危険があったわけでもなく、その後自宅でのうのうと過ごしているところを記者に訪問されて、運転手のおっちゃんが怖いと泣きつく35歳の元パイロットのおっさん。うーん絵にならんぜ。メチアル首相のやらかした誘拐事件はアクションフィルムさながらの劇的な物だったというだけに、今回の誘拐事件のしょぼさが際立ってしまう。

 そのしょぼさがバビシュ氏の言う精神を病んだ息子の戯言にふさわしいようにも見えなくはないけど、これまでのバビシュ氏のさまざまな言い訳から感じられるせこさに妙に似合っているように思えるのも否定できない。どちらも単なる素人の印象に過ぎないのだけど、バビシュ首相に軍の情報部や秘密警察を抱き込んで誘拐事件を起すなんてのはまったく似合わない。
 この事件に関して真相が明らかになるかどうかはわからないが、どちらが真相だったとしても、笑いようのないできの悪い喜劇にしかならないところが最悪である。息子を知り合いの運転手に頼んで誘拐してもらう総理大臣と、父親の部下に頼んで旅行に連れて行ってもらいながら誘拐だと主張する総理大臣の息子、どちらがましかと言われても選びようがない。

 バビシュ氏の息子について、ボーイング737の操縦免許を有効な状態で所持しているから、精神的な問題があるというのはおかしいと主張する人がいる。パイロットのライセンスを更新する際には、肉体的な健康だけでなく精神的な健康についても検査されるはずだというのだけど、どうなのだろう。スイスの報道でも元パイロットになっているし、どこの航空会社で仕事をしていたという情報も出てきていない。むしろパイロットの資格を取った後、仕事がうまくいかなくて父親になきついてアグロフェルト社関連の仕事でお金をもらっていたというストーリーのほうに整合性を感じてしまう。
 そうなのだ。バビシュ氏が最初からそういうストーリーに基づいて話をしていれば、コウノトリの巣事件から受ける印象は大きく変わっていたはずだ。つまり、ごくつぶしの子供たちを自立させるために、コウノトリの巣社を独立させて任せていたのに、精神を病んでしまって経営できなくなったから、親の自分が責任を取ってアグロフェルトに吸収したとか何とか。それを自分とは何の関係もないなどと嘘をつくから、弱みになって苦しい言い逃れを繰り返すことになるのだ。言い訳にすら使われなかったということは、この仮説のストーリーは事実ではないと言いうことなのかもしれないが。

 今回のセズナムの報道について、野党はよくやったと大喜びなのだけど、問題はそんなに単純ではない。かつてバールタ氏が率いたVV党が所属議員の内部告発というか、造反にあって解体の憂き目を見たときも、最初はどこかのマスコミの特ダネという形で始まったのではなかったか。バールタ氏のやり口も褒められたものではなかったが、その後の急速な解体の過程には明確な誰かの意思が介在しているように感じられた。
 当時バールタ氏追い落としに熱心で最も貢献したのは「ムラダー・フロンタ」だったと記憶する。実際に記事を書いたのは現場の記者であっても、指示を出したのは社主であったバビシュ氏であろう。バビシュ氏が儲けにならないことを指示するわけはないから、市民民主党辺りの既存政党の政治家から要請を受けてのことだったというのが関の山である。ネチャス内閣が崩壊したのも、きっかけは新聞の報道だった。こちらは政界進出を計画していた本人の仕掛だろうか。
 バビシュ氏は所有する二つの大手新聞「ムラダー・フロンタ」と「リドベー・ノビニ」に対して、オーナーとして書くべきことについて指示をしたことはないと主張しているが、買収した際には、自分について正しくないことばかり書かれるから、正しいことを書かせるために買収したとか何とか語っていたはすである。ならば、バビシュ氏にとって「正しいこと」を書くように指示を出していたとしても全く不思議はない。だから、今回の件が、バビシュ氏が主張するように、メディアによるデッチ上げだったとしても、自業自得というか、天に唾した結果だとしか言いようがない。

 既存政党は、バビシュ氏が新聞社を所有したままであることを批判してきたが、この件に関する最大の問題は新聞社を所有していることではなく、「ムラダー・フロンタ」と「リドベー・ノビニ」というチェコの二大新聞を両方所有していることである。親会社のアグロフェルトは形式上はバビシュ氏の手を離れていることになっているが、実態は変わっていないはずである。
 チェコにも公正取引委員会や独占禁止法と同じようなものは存在するから、普通であれば一つの会社が、「ムラダー・フロンタ」と「リドベー・ノビニ」という同業種の二大企業を買収することは禁止されるはずである。それなのに許可が出たのは、その辺の経緯を明らかにしてほしいと思うのだが、政治家が暗躍したからだというのは想像に難くない。バビシュ氏ももともとはチェコの政界にはびこるクライアント主義のクライアントだったのである。バビシュ氏をあれこれ批判する既存政党に同調しきれないのは、この辺の自らの所業を検証も反省もしていないからである。

 この問題がチェコの政治にどんな影響をもたらすかについては、また明日。
2018年11月15日9時15分。








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