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2019年04月16日
オロモウツ観光案内順路最終回(四月十四日)
同じ道を戻るのも癪なので、さらに進むと、ムリーンスキー川がオロモウツの要塞都市から離れる場所、正確には逆に来たから流れてきて要塞に突き当たって、堀の役割を始める場所で、道路に出る。ムリーンスキー川では、カヌーだかカヤックだかの練習をしている人をたまに見かけるのだが、この前知人を案内していたときは、ちょうどその話をしていたのがここで、いやあこんなところでなんて反応が返ってきたところで、パドルを使って下流から颯爽と上ってきた人がいて、笑ってしまった。
この道路はかつての城塞都市とその外側を分けているのだが、こちら側の面だけは水堀がなかったようで、がけの下にいくつか防御用のだったと思われる建物や、その残骸が残っている。その最初が今では野外映画館になっているところで、岩の上の街よりは低く、周囲よりは高く外側に突き出した砲台があったと思われる場所を利用している。その隣には、蹄鉄の形をした大きな建物があって、兵舎だったのかなと思っていたが、実はパンを焼くための建物だったという。
道路に出て一つ目の曲がり角を左に入る。ホテル・ブ・ラーイのある通りで、まっすぐ進むと急な上り坂になって共和国広場に出る。ここは坂の下の交差点を右に曲がろう。崖下に設置されていた防御設備の残骸を利用して住居にしているような建物があったり、美術館の脇の建物が建っていないスペースのおかげで、下から旧市街の内側が見られたりするのが、この辺りを歩く理由である。歩道もなくて、車が通ることもあるからちょっと注意が必要なんだけどね。
旧市街のほうに上っていく細い道がさらに二本あるから、左に曲がってもいいのだが、もう少し真っ直ぐ行ったところにある交差点を左折すると、特に登ることなく旧市街に戻れる。そこにそびえているのが聖モジツ教会である。ここも現在改修中で足場が組まれているけど、塔には登れるかもしれない。パイプオルガンに興味のある人は、教会の中に入ってもいい。
ホルニー広場に戻ってもいいけど、せっかくなので最後の噴水を見ていこう。トラム通りを進んで、ガレリエ・モリツの先まで行ったところにあるのが、メルキュールの噴水である。トラム通りを挟んで反対側には、啓蒙主義の時代に各地に建設された「民族の家」のオロモウツ版もあるけど、プロスチェヨフのとは違って特に重要な建築物というわけではない。
ここからは民族の家の脇の細い通りを抜けて旧市街の外のほうに向かう。トラムの線路の先、右手に複雑な形をした教会の建物が見えてくる。このあまり目立たない教会はもともとは15世紀半ばに建設されたらしい、聖母マリア何とか教会である。聖母マリアを記念した教会はあれこれあってオロモウツだけでも四つはあるのだけど、何とかの部分が日本語にしにくいものが多くていけない。
教会の脇を抜けて、再び要塞都市の外側の境界をなす通りに出る。正面から右手に見える巨大なのっぺらぼうな建物は、実は五角形をしていて、頂点が外側に突き出すように建てられている。見た目から普段は兵舎か何かとして機能していたのではないかと思うが、同時に要塞都市を守る設備の一つとなっていたのだろう。いくつか並んでいたうちの一つだけが生き残ったのだと見ておく。
建物を見終わったら左に進む。旧市街の周囲を囲んでいたと思われる城壁の一部が修復されている。内側に入って見たいと思うのだけど、何かの会社の施設が入っているようで、古いものが残っているのは壁だけのようだ。こちら側の城壁も、要塞都市の指定が解除された跡に破壊されて、ここだけしか残っていない。こちら側だけでも全面残っていたらなあと残念な気持ちになる。
もう少し進むと、右手の奥にちょっと毛色の違う教会が見えてくる。柱が何本も建っているのは神殿ぽいけど、上に大きな緑色の丸屋根があって金色の十字架が載せられていることから教会だということがわかり、その隣の塔の天辺の金の酒盃からカトリックではなく、プロテスタントでもフス派の流れを汲む宗派の教会だということがわかる。建築としてはチェコの近代建築のいわゆる「チェスカー・モデルナ」に属するのかな。
教会の先の駐車場になっているところを右に入れば、サッカーのシグマ・オロモウツの本拠地となっているアンドル・スタジアム、ハンドボールの女子チーム、ゾラ・オロモウツの体育館、それにバスケットやバレーボールに使われるパラツキー大学の体育館、卓球のチェコオープンの行われるスポーツセンターなんかがあって、まっすぐ行くと、アイスホッケーチームが使っているスケート場がある。近くにはテニスコートや室内プールもあるし、この辺りはオロモウツのスポーツの中心なのである。サッカーファンがいたら、シグマのファンショップに足を向けてもいいかもしれない。アイスホッケーはあるかどうかわからないし、他のマイナースポーツにはそんなものないけどね。
右ではなく左に折れると、この通りはかつての水堀だったトラム通りにつながる。最初に突き当たる大きな交差点が、英雄広場である。歩道が広くなっているとはいえ、現在はあまり広場という感じがしないのだが、トラムが走っていなかったころには広場らしかったのかもしれない。オロモウツの市内交通の要衝で、トラムの停留所だけではなくバスの停留所もある。バス停は同じ英雄広場という名前の停留所がいくつかあって、それぞれかなり離れたところにあるから、初めて利用するときにはどこにあるのか確認しておかなければならない。
この英雄広場で向きを変えて、リーグル通りを通ってホルニー広場に戻ろう。これで、オロモウツ一周観光名所めぐりのお仕舞いである。どのぐらい薀蓄たれるかにもよるけど、二時間もあれば歩き通せるのではないかと思う。もちろん教会やら博物館やらに入ればその分時間は伸びる。ということで、オロモウツにきて時間が十分にあるようだったら、このコースを試してみてほしい。
2019年4月14日23時。