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2019年04月23日

cukr〈私的チェコ語辞典〉(四月廿一日)




 繰り返しになるが、「C」で、「ツァ・ツィ・ツ・ツェ・ツォ」の音を表記するのがチェコ語の特徴の一つである。この読みかたをとっさにできるかどうかが、チェコ語の発音がわかっているかどうかの境目になる。慣れすぎるとチェコ語以外の言葉でも、チェコ語風に読んでしまって、何のことやらわからないなんてことになる。

 ところで、この言葉ツクルの意味は砂糖で特に問題はないのだけど、派生語がいろいろあって面白い。チェコの街を歩いていて、「cukrárna」の看板を見かけたことのある人も多いだろう。日本のケーキ屋、もしくは洋菓子屋みたいなものなのだが、ケーキを意味する「dort」ではなく、砂糖の派生語が使われているのは、甘いものという意識が先に来るからだろうか。ちなみにケーキ屋でケーキを作っている職人は「cukrá?」で、女性は「cukrá?ka」となる。
 ツクラールナの多くは、喫茶店と同様にケーキだけではなく、お茶やコーヒーなんかも飲めるようになっている。喫茶店でもケーキを出すところが多いことを考えると、その境目がよくわからない。個人的には甘いものは苦手なので、喫茶店でケーキを食べることはないし、ケーキ屋なんか入らないけどね。昔、生まれて初めて喫茶店だったか、ケーキ屋だったかで、ケーキを食べたときには妙に感動したのを覚えているけど、所詮甘いものは甘いものである。
 普通の「cukrárna」は甘いものを作って売っているお店なのだけど、オロモウツには特殊なチーズであるトバルーシュキを使った「cukrárna」が存在する。チーズケーキ屋ということなのだろうか。ただあのトバルーシュキで甘いケーキを作るのはあまり想像できない。しょっぱいケーキに需要はあるのかな。

 不思議な言葉は、「cukrovka」である。辞書には、まず「砂糖大根」と「ビート」が上がっていて、その後に医療用語として「糖尿病」が上がっている。砂糖の原料となるものと、砂糖をとりすぎた結果起こるものが同じ言葉で表されるのである。もっとも、普通にこの言葉を聞くと、糖尿病が頭に浮かぶのだけどね。
 それに対して、砂糖大根、もしくはテンサイのほうは、「?epa」という一般に蕪を表す言葉を使うことが多い。形容詞をつけて「cukrová ?epa」と言った方が確実かな。ちなみに大根は「?edkev」で、「?epka」はアブラナである。
 同じく砂糖の材料となるサトウキビは、チェコでは栽培されていないが、「cukrová t?tina」と呼ばれる。その「cukrová t?tina」を材料にしたお酒が「rum」なのは世界共通だが、チェコでは「cukrová ?epa」から造ったお酒も、「rum」と呼ばれていた。同じ砂糖の原料だし大差ないよねで、チェコ国内では済んでいたのだが、国際的には問題だったのか、「rum」という名称は使えなくなってしまった。その後は「tuzemák」という国産であることを強調した名前で売られていたのだけど、最近は見かけない気もする。念のために書いておくと、「rum」はラムではなくて、「ルム」と読むのが正しい。

 サトウキビやテンサイに使われていた形容詞の「cukrový」と発音が全く同じ言葉が「cukroví」である。こちらは中性の名詞で、辞書には「キャンデー類」「菓子」と書かれているが、真っ先に思い浮かぶのは、キャンディーではなく、クリスマスのときに家庭で焼くクッキーなどの甘いお菓子である。チョコレートを丸めたものから、チーズの入ったあまり甘くないものまで、クリスマスの24日の日中に昼食の代わりに口にする甘いものをまとめて「cukroví」と呼ぶのである。お店で買えなくはないけれども、自分のうちで焼くことが多い。

 砂糖を使って甘いお菓子を作るところは上に書いたように「cukrárna」だが、砂糖を作るところはというと、その通り、「pivo」→「pivovar」から予想できるように、「cukrovar」である。オロモウツの辺りだと、ハルバートキの砂糖工場が有名である。H先生の住んでいるブロデクにもあったけれども、EUのあれこれで廃業して、フランスかイタリアの企業に買収されて工場は解体されてしまった。
 ちなみにこの接尾辞の「-var」は結構便利で、工場だけでなく機械にも使うことがある。一番よく使うのは「kávovar」、つまりコーヒーメーカーと、炊飯器を意味する「rý?ovar」だろうか。
2019年4月22日24時30分。










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