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2019年08月03日

またまた鉄道事故(八月一日)



映像記事 を見つけて、久しぶりにチェコのニュースだと思ったらこれかよと思ったのと、例によって情報が微妙に正しくないのが気になったので、チェコテレビのニュースで把握できたことを書いておく。

 映像についている記事には、「脱線事故の現場は、ドイツとの国境から12キロの温泉保養地として有名なマリアーンスケー・ラーズニェとポドバー・プラナーの間で、石灰石を輸送中の貨物列車が先頭から13両脱線した」とあるのだが、ドイツ語でマリエンバードと呼ばれることもあるマリアーンスケー・ラーズニェが正しく表記されているのはいいとしても、もう一つの町の名前がちょっと違う。正しくは「ポドバー・プラナー」ではなく、「ホドバー」である。
 このホドバーという形容詞は、もう少し南に行ったドマジュリツェを中心とするホツコ地方と関係がある。このホドバー・プラナーの辺りは、厳密な意味でのホツコ地方には含まれないのだが、ホツコ地方と同様に、かつて国境警備を担ったホットと呼ばれる人たちが住んでいたところらしい。そのホット人を意味する言葉からできたのが、ホドビーという形容詞で、後に来るプラナーが形容詞型の女性名詞であることから、ホドバーとなっている。あえて訳せばホット人たちのプラナーということになろうか。だから僅かな違いだけど、「ポドバー」では意味を成さないのである。
 無理に小さな地名を使わないで、マリアーンスケー・ラーズニェ付近とか、マリアーンスケー・ラーズニェからプルゼニュに向かう鉄道でなんて書けばよかったのに。翻訳記事のようだから、英語版が間違えていたという可能性もあるのか。ちなみにホツコ地方にある地名の場合には「ホツキー」という形容詞がつく。

 それから「先頭から13両脱線した」というのは正しいが、本当の先頭についていた機関車二両は脱線していないし、貨物車両も5両は脱線せずに線路上に留まったらしい。機関車を運転していた運転士は当然無事だったが、危うく犠牲になりそうだった人たちは存在する。
 実はこの区間、マリアーンスケー・ラーズニェの街を迂回するためのバイパス道路の建設工事が行われており、脱線現場付近で働いていた人がぎりぎりで逃げ切る様子が写っているたまたまその場にいた人が撮影したビデオがニュースで流された。道路と鉄道が交差するところでの事故というと、モラビアのストゥデーンカで起こった事故を思い出すが、今回も下手をすれば同じような大惨事になりかねなかったようだ。

 それで、「問題の貨物列車は現場付近を規定の制限速度の3倍を超えるスピードで走行していた」というのも、工事のために特別に30キロに落とされた制限速度の3倍ということになる。30キロに落とされているのは、工事のためにもともとのほぼまっすぐの路線が、暫定的な蛇行する路線につけ変えられているからで、もともとはこの区間時速100キロで走っていたらしい。つまりもともとの制限速度で走ったら、現在の制限速度の3倍になったという可能性もある。
 運転士が制限速度をオーバーしたのが、事故の直接の原因であるのは間違いないが、現在問題にされているのが、制限速度が30キロに落とされたという情報が十分に伝えられていたかということで、路線管理会社では十分だと主張しているけれども、事故が起こる以前から運転士の側から、今のままでは重大な事故が起こりかねないという指摘がされていたともいう。

 そもそも時速100キロで走っている18両もの貨物列車が、しかも石灰石を満載した列車が、そんなに簡単にスピードを落とせるのだろうか。定期的にこの区間を走らせている人であれば、事前にわかっているから問題なくスピードを落とせるのだろうが、貨物列車の運転士が定期的に同じルートを走っているとも思えない。その場合、線路脇の30キロにスピードを落とせという表示を見落とす可能性は高いし、表示を見てからでは十分にスピードを落としきれない可能性もある。
 この区間を旅客列車を走らせている運転士の中には、自分も30キロという制限速度を越えて走らせたことがあると匿名で語っている人もいた。重い貨物列車ではなかったので事故にはならなかったのだろうが、乗客を乗せた特急で事故が起こっていたらと思うとぞっとする。問題は運転士のスピード違反というだけには留まらないのである。問題があっても事故が起こるまでは放置して、事故が起こってから対策することの多いチェコだから、この工事区間に関しても何らかの対策はとられることになるだろう。

 事故が起こったのが日曜日、脱線した貨物列車の残骸と、零れ落ちた積荷の回収と路線の改修には数日の時間がかかると予想され、この区間の鉄道の運行が再開されるのは金曜日に予定されている。その間は、普通列車も特急もバスで代替輸送ということになるのだが、代替バスは遅れることが多いし、ぎゅうぎゅうづめにもなりやすいんだよなあ。今年の夏は、各地で鉄道の改修工事が行われていて、全体的に鉄道の遅れが多くはあるのだけど。それでも、2000年前後の送れて当然の時代に比べたら格段によくなっている。そう考えると、批判されることの多かった代々の運輸大臣結構がんばっているのである。
2019年8月1日24時40分。







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