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2017年05月19日

日本で見られる「ラビリント」(五月十六日)



紹介ページ を開くと、第一シリーズの主役二人の写真が出てくる。男のほうは、チェコ人のイジー・ラングマイェルで、女性はハンガリー系スロバキア人のズザナ・カノーツである。

 ラングマイェルは、1966年生まれで、80年代の後半には、ルカーシュ・バツリークと並んで、アイドル的な人気を誇る若手俳優だった。それが、今では髪に白いものも見えるようになって……。それでも、どこか若やいだところがあって、渋いとかいぶし銀なんて言葉が似合うところまではきていないような気がする。
 80年代の代表的な主演作としては、徴兵された若者と、配属された部隊の隊長の妹の恋愛を描いたコメディ映画、「軍人がこんなんでいいのか……」(仮訳)が挙げられる。背が高くてかっこいいんだけど、どこかいい加減で頼りない主役の若者を演じていた。この映画で隊長役を演じたのが、ハリウッドでも活躍するカレル・ロデンである。

 「ラビリント」の監督ストラフの出ていた「俺達五人組」(日本語の題名としては「無敵の」とか入れたくなるけどね)には、ストラフ同様、脇役ながら重要な役で出演していた。「チェトニツケー・フモレスキ」にも出演していたのは、確かなのだけど、誰の役を演じていたかが思い出せない。婚約者を亡くした若い男だったかな。
 ストラフ監督作品だと、伝奇推理ドラマ「失われた門」で非常に重要な役を演じていた。主演作品はそれほど多くないけれども、さまざまな作品に出演して、チェコの映画、ドラマには欠かせない俳優の一人になっている。
 監督には、使いやすい俳優、使いにくい俳優がいるのか、同じ監督の作品には結構同じメンバーの俳優が集まることが多い。その意味では、ラングマイェルは、ストラフ監督にとっては相性のいい使いやすい役者ということになるのだろう。

 スロバキアからやってきた女刑事という役どころのズザナ・カノーツは、名字を見てわかるとおりハンガリー系である。スロバキア人であれば、名字が「オバー」で終わるのだが、ハンガリー系の人の中にはハンガリー語の名字をそのまま使っている人たちがいて、その場合末尾に「オバー」をつけなくてもいいのである。
 出身は東スロバキアのコシツェで、高校まではハンガリー語で教育を受けたようである。チェコやスロバキアの少数民族に対する言語政策は、至って穏当なものである。少なくともチェコのポーランド人居住地域、スロバキアのハンガリー人居住地域では、高校まではポーランド語、ハンガリー語での教育が受けられるようになっている。
 スロバキアで、民族主義的な主張を掲げる政党が台頭しているのは、ハンガリー政府が、国外のハンガリー系の人々にハンガリー国籍を無条件に付与するとかいう意味不明なことを始めたのも原因のひとつになっている。スロバキア語を母語としていても、ハンガリー系だというだけで、ハンガリーの大学に入学できたりするもんだから、過剰なハンガリー民族意識に毒されて、ハンガリー人だという理由で警官に暴力を振るわれたなんて狂言をやらかす人間が出てくるのだ。

 カノーツは、基本的にスロバキアで活動しているようで、チェコの映画やテレビでは、ほとんど見かけた記憶がない。ビロード革命以前から、スロバキアの役者がチェコに来て、チェコで活動するという例は枚挙に暇がないのだが、その場合、チェコ人の役をするときには、チェコ語で話し、スロバキア人の役をするときには、スロバキア語で話すのである。それに対して、チェコ人の俳優がスロバキア語でスロバキア人の役を演じるということはめったにない。
 この「ラビリント」では、スロバキア人役なので、カノーツはスロバキア語で話しているが、以前、チェコのドラマに出たときには、チェコ語に吹き替えされていたというし、チェコ語がどのぐらいできるのかはわかならない。ちなみに第二シリーズには登場しないようである。

 他の出演者で気になるのが、ミロスラフ・ドヌティルである。この俳優、悪い俳優ではないのだけど、「どこでもドヌティル」と言いたくなるぐらいに、多くの映画、ドラマに出演している。特に最近は、俳優本人だけの問題ではないのだろうけど、どの役も同じような演じ方になってしまっている嫌いがあって、ドヌティルが出てくると見る気が半分ぐらいになってしまう。第一シリーズを途中で見なくなった原因の一つかもしれない。傑作ドラマ「チェトニツケー・フモレスキ」にも、第三シリーズになって登場しやがって、そのせいで第三シリーズは、あまり見る気になれないのである。

 第二シリーズには、名脇役のスタニスラフ・ジンドゥルカも出るみたいだけど、この人については、機会があったら、別に物することにしよう。結局三人しか紹介しなかった。
5月16日23時。




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