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2017年11月07日
ライカ(十一月四日)
昨日2017年11月3日は、ライカがソ連の人工衛星スプトニク2号に乗せられて宇宙に送り出されてから、ちょうど60年目の記念日だった。ライカは宇宙への旅から生還することができなかったから、この日は人間ふうに言うと祥月命日でもある。それでライカを中心にした宇宙開発の歴史についてのニュースが流れた。それに、60周年を記念してライカをテーマにした映画も公開されるようである。
今でも思い出すのだが、ライカの存在を知ったのは、確か歴史の教科書に載せられていた写真を見たときのことで、キャプションには「ライカ犬」と書いてあった。だから、ライカというのは、シェパードやブルドックなどと同様に、犬種なのだと思い込んでいた。それがチェコに来て何かの機会にチェコ人たちとこの話になったときに、ライカというのは犬種なんかではなく、宇宙に送り出された犬に与えられた名前だということを教えられた。そんな妙な名前の犬種なんて存在しねえよと笑われたんだったかな。
その考えは正しく、一匹目のライカこそ生還できなかったが、二回目に送り出された二匹の犬は無事に地上まで生きて戻り、ご褒美に大きなサラミソーセジをもらってご満悦だったのだとか。日々の餌にも事欠く生活をしていた野良犬たちは、褒美として一切れのパンがもらえるだけでも大喜びで、ささいな餌をもらうために嬉々として訓練にいそしんでいたらしい。そうすると科学者たちの野良犬を使おうという決断が、ガガーリンの有人宇宙飛行を成功に導いたと言ってもいいのかもしれない。
ちなみに、ノラを宇宙に送り出したのはソ連だけではなく、フランスも宇宙空間にノラを送り出したらしい。ただしこちらは犬ではなく猫で、初めて宇宙に出た猫も雑種の野良猫だったのである。人間の場合にはさすがにノラを送り出すというわけにはいかず、必要にして十分な訓練を受けた軍のパイロットを宇宙飛行士として養成して育てることになる。その訓練のためのデータを命がけで提供したのが、モスクワの野良犬たち、パリの野良猫だったのである。
第二次世界大戦後に始まった宇宙開発競争の中心は、ソ連とアメリカであり、宇宙飛行を体験するのも当初はソ連人とアメリカ人に限られていた。ではアメリカ、ソ連以外で最初に宇宙に自国民を送り出した国はと言うと、チェコスロバキアなのである。もちろんソ連のロケットに乗せてもらって宇宙に出たわけだけど。これまでチェコでは唯一の宇宙飛行士になった人物の名前はブラディミール・レメクという。もともとチェコスロバキア空軍のパイロットだったレメク氏が宇宙に出たのは1978年2月のことで、ソユーズ28号で宇宙ステーションのサリュート6に向かいほぼ八日間の滞在の後地球へと戻ってきた。世界では87人目の宇宙飛行士だったらしい。
ヨーロッパの宇宙開発のための組織ESAでは、このレメク氏をヨーロッパで最初の宇宙飛行士として認定しようという動きがあるらしい。待て、ガガーリン以下の宇宙飛行士を輩出したロシアはヨーロッパではないと言うつもりなのか。せこい、せこすぎる。モスクワの近くの出身であるガガーリンが宇宙に出た最初のヨーロッパ人でいいじゃないか。いくらロシアとロシア人が嫌いだからと言って、ロシア、いや旧ソ連が宇宙開発に果たした貢献を無視してはなるまい。
レメク氏は自分を宇宙飛行士にしてくれたソ連への感謝を忘れない人のようで、チェコ国内ではロシア派の人物として知られる。EU加盟のころから長きにわたって、共産党のヨーロッパ議会の議員を務めていたはずである。そして、ゼマン大統領が就任した後、駐ロシアチェコ大使としてモスクワに赴任している。この人選についてもゼマン大統領は強く批判されていた。共産党と結びつきの強い人物に大使のポストを与えるとは何事かというのである。宇宙飛行士としてロシアでも知名度が高いレメク氏の大使起用は悪くなかったのではないかと思えなくもない。
チェコ出身の宇宙飛行士としては、もう一人、というかもう一匹、アメリカのスペースシャトルに乗せてもらって宇宙に出たクルテチェクがいる。2011年にスペースシャトルのエンデバー最後の飛行となったSTS-134に参加したアンドリュー・フューステル宇宙飛行士が、クルテチェクのぬいぐるみを持ち込んだのだ。奥さんがチェコ系の人である関係で、他にもネルダの詩集とかチェコの国旗なんかもスペースシャトルに持ち込んだことがあるらしい。
ということで、ソ連は野良犬を、フランスは野良猫を宇宙に送ったのに対して、チェコは子供向けの番組のキャラクターを送ったのである。終着点が見えなくなったのでこれでお仕舞い。
2017年11月4日23時。