陽炎の向こう側　　浅井　キラリ

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2008/09/11

「その・・・・。自殺しようとしていたと。」

「多分、ご自身も意識的にというよりも、フラフラと言いますか。心と体がバランスを崩されているのです。

もう、そのようなことをする心配はないと思います。そのことには、触れないようにして下さい。

ただ、娘さんを受け止めてあげて下さい。」

「わかりました。どうぞ、よろしくお願いします。」

父親はそういうと、弘子の病室へ戻っていった。

夕食時間の後、森口はまた弘子の部屋を訪れた。

面会時間の７時を過ぎていたので、弘子の両親はすでに帰った後だった。

「調子はいかがですか？」

「先生。」

「ご両親がいらしていましたね。」

「ええ。」

「さっきは、取り乱してすみませんでした。」

「大丈夫ですよ。思ったことは、何でも言って下さい。今まで、心の中に溜めていたことを全て吐き出して下さい。

それをお聞きするのが私の役目ですから。」

「先生・・・・・。」

「なんでしょうか？」

「さっき、私、夫に愛されていなかったんじゃないかって言いました。

多分、そうだったんだろうと思うんです。いいえ、多分じゃなくて、きっと。」

「どういうことでしょう？」

でも、今になって思えば、優しくされていたけれど、愛されていたとは思えないんです。」

「愛しているから、優しくしてあげるんじゃないですか？」

「元々、優しい人でした。でも、私に・・・・。」

「・・・・・。」

弘子は、うつむいて、小さな声で言った。

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