「僕は,落合,清原,を獲った辺りまでは松井のためと思えたんです」
自己紹介をお願いするとそう語り始めたのが40代男性の杉田さんだった。
「でも江藤が来てこれはおかしいと。それで巨人ファンをやめました。現在はベイスターズファンです。
巨人は1993年オフに導入されたばかりのFA制度を活かして中日の主砲落合博満を獲得する。
さらにその3年後には西武の清原和博を同様にFAで補強,球界を代表するスラッガーが相次いで巨人に入団する事態は大きな話題になった。
落合を獲得したのは当時入団1年目だった松井秀喜を育成するため。
そして清原獲得はチームの主軸に成長した松井のマークを分散するため。
杉田さんは自分にそう言い聞かせていたと言う。
しかし実際には落合と清原の間に1994年オフにヤクルトの四番広沢克己をFAでそして本塁打王に輝いた実績のあるジャック・ハウエルまでも獲得していた。
さらに清原を獲得した年には球団と契約をめぐってトラブルになっていた近鉄の主砲石井浩郎をトレードで迎える。
この時点で既に四番コレクション欲しがり病などと揶揄されていたがとどめを刺したのが1999年オフの江藤智獲得だった。
本塁打王を2度獲得している広島の四番打者までもが巨人に。
そのインパクトは大きかった。
そんな中これすごくいい質問かもしれないと口火を切ったのは杉田さんだ。 うーん,結局巨人ファンというのは鵺ということなんですか。
「僕はずっと自民党に入れていたんですけど55年体制が崩壊する年1993年くらいから自民党はちょっと力を持ちすぎじゃないかと思って別の政党に入れるようにしたんです。でもこれって考えてみれば野球も一緒だなって」
設問の意図はまさに杉田さんの発言に凝縮されている。
多くの元巨人ファンは気づいたら巨人ファンになっていたと証言する。
両親が巨人ファンだった、
テレビラジオで巨人戦の中継しかやっていなかった。
周りが巨人ファンだった、
パターンはいくつあるにせよ自らの意思で巨人ファンになることを選択したというより周囲に染まる形で巨人ファンになったケースが多いはずだ。
そしてそれは支持政党も同じなのではないのか。