「一見さんお断り」──これは京都の老舗でよく聞く言葉だ。
花街であれ、ほかの店であれ、その店と懇意にしている人と連れ立って行けば、店は快く迎えてくれる。
次の回には紹介してくれた人を連れて同じ店に行き、支払いはこちらがもつ。
3回目にして初めてひとりで店を訪れられる……とまあ、これは花街のルールだが、紹介者とは私のことを保証する後見人だ。
花街なら、私がツケを抱えたまま行方不明になっても、店は後見人に請求書を回す。
私が店に不義理なことをしようものなら、後見人と私の人間関係にも、もれなくヒビが入る仕組みになっている。しかし、今の時代、後見人の有無など、ふだんのビジネスシーンでは、あまり問われないものではなかろうか。
ところが金沢というまちでは、今でも花街でなくとも、後見人と被後見人に近い関係性が発動する。
掘り起こした政策のひとつに、「旧町名復活運動」がある。
これは、戦後の住居表示によってつけられた地名を、昔からあった町名に戻したものだ。
町名はその地がもつ歴史に由来するもの。
花街の主計町は加賀藩士の富田主計の邸があったところ、下石引町は金沢城の石垣を築くために石を曳いた道筋のところ、というように、金沢のような伝統文化のまちなら、歴史を刻んだ町名のほうがふさわしい。こう考えて、一つひとつ町名を復活させている。
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