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2020年01月10日

チェコ人テロリスト(正月七日)




 この人物は、生まれはプラハだが、サウジアラビアでイスラム教の宗教教育を受けて帰国し、プラハにおける指導者の座に収まった。指導者を務めていた時期には、特に過激な主張をしていたわけでもないという話だが、プラハのイスラム教関係者はこの人物についてコメントすることを避け、関係を絶とうとしているようにも見えるので、実際には何らかの兆候はあったのかもしれない。

 とまれ、指導者を辞めた後、イスラムの過激派の思想に共鳴するような言動を始め、シリアのイスラム教過激派の組織に加わるため中東に出向いたものの失敗しチェコに帰国。この失敗というのが組織に受け入れられなかったのか、シリアに入国できなかったのかについてはよくわからない。チェコに帰国してからは、SNSを通じてイスラム教徒に聖戦への参加を求めるような発言を繰り返していたという。
 その呼びかけに応じたのが、被告その2である本人の逃亡中扱いの弟。弟は兄に代わるようにトルコを経てシリアに入国し、無事にイスラム教の過激派のテロ組織と接触し加入することに成功。一ヶ月ほどの訓練を受けて、正式にメンバーとして認められたようだ。ニュースでは訓練を受けた後の弟から兄へで喜び声を挙げているのが流された。ただし、現時点でイスラムの過激派組織に加入したこの被告その2が、実際にテロ行為にかかわったのかどうかは、情報として出てきていない。SNSには武器を手にしてポーズを撮った写真を投稿していたようだけど。

 三人目の被告は、アラブ系ではなくチェコ人の女性で、被告その2の妻であるらしい。被告その1の呼びかけはチェコ語でもなされたのか、この女性はイスラム教に改宗して名前もアラブ風の名前に変えてしまっている。名字は旧姓をそのまま使っているようなのがよくわからないのだが、夫婦別姓ということなのだろうか。
 とまれ、被告その1の起訴の理由の一つが、このチェコ人女性がシリアのイスラム過激派の支配地域に入るのを援助したことである。最初の試みは、トルコの飛行場で女性がシリアに向かおうとしていることが発覚し、入国させるのに不適切な人物だとして、チェコに送り返されたという。狂信者がそんなことであきらめるわけはなく、被告其の1のアドバイスで、次はバスを使って移動することで、シリアに入国することに成功したらしい。

 そして、シリアで被告其の2と結婚したというのだけど、わからないのは、二人の間にそれ以前から何らかの関係があったのか、被告其の1が弟の妻としてチェコ人女性に白羽の矢を立て、シリアに送り込んだのかということである。恐らく前者だろうけれども、イスラム教の過激派であることを考えると後者であっても不思議はない。
 この女性は母親への連絡で、自分はこれから犯罪を犯して警察に追われることになるから、母親だけれども憎んでいるふりをしろなんてことを書いていた。将来チェコに戻って人を殺すことになるかもしれないとテロを示唆するような記述もあった。母親は娘をテロ組織から救い出すために警察に協力していて、娘からの連絡などはすべて警察に届けているのだとか。ただし、被告その2の場合と同様、この女性が実際にテロ行為に手を染めたかどうかはわからない。

 最後の被告その1の罪状は、チェコからイスラム過激派に資金提供をしたというものである。弟の属する組織の兵士たちが、一般人の振りをしてSNSに大怪我をした写真を上げて、治療のために大金が必要だとか言って、寄付を募りシリアに送金していたらしい。丁寧なことに、恐らくは継続して寄付してもらうためだろうが、頂いたお金のおかげで治療が間に合ったなんて感謝のビデオも投稿していたらしい。自分で稼いだお金を、テロ組織に送金するというならまだしも、寄付を募ってというのは完全な詐欺である。

 このプラハの元イマームと弟、その妻の話は、これまで断片的に聞こえてきていたような気もするのだが、警察でも非常にデリケートな問題だと捉えているのか、情報の出し方に気を使っているようにも見える。下手をすればオカムラ党などの極右の支持者を増やすことにもつながりかねないし。それはともかくとしても、この事件は、現在は穏健なチェコのイスラム教徒の中にも過激派が生じる芽がないわけではないことを示しているのだろう。厄介な時代になったものである。
2020年1月7日24時。












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