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2020年01月25日
再帰代名詞の使い方3格短形(正月廿二日)
ここ に一度書いているので、関係することは書くかもしれないが、まとめて説明するようなことはしない。
最初は、三格短形の「si」がつくことによって、意味が微妙に変わる動詞の使い方とその解釈である。自分が納得するためのこじつけのようなものなので、これを読んだからといってチェコ語の理解が進むとは思えないということは、事前に申し上げておく。
最初に取り上げるのは、「p?j?it」と「p?j?it si」の組み合わせ。「si」が3格で動作の向かう方向を表わすことを考えると、「自分に貸す」ということから「借りる」という意味が導き出されたと理解できるのだが、自分のものを「自分に貸す」ことはできないわけで、所有者がわからないものや他人のものを勝手に「自分に貸」していたのかなんてことを想像してしまう。実際には「貸す」と関連する動作ということで「借りる」になるのだろうけど。
日本語では、動詞だけで特に動作の対象となる人を求めない「取る」だが、チェコ語の場合には3格が必要になる。そして「自分のために取る」ときに「si」を使って、「vezmu si」としなければならない。この動詞、仕事を「取る」、つまり引き受けるときにも使うのだが、そのときは「si」は不要になる。普通は自分が欲しいから、何かを「取る」わけだけど、仕事はいやいや「取る」ものだから、「si」はいらないと考えておく。薬は、いやいやだけど、自分の健康のためだから「si」が必要でいいのかな。
一般に3格というのは厄介なもので、この動詞と一緒に「si」以外の人の三人称を使うと、「その人のために」という「si」を使った場合と同じような意味になることもあれば、「その人の」といういわゆる関係の3格的な意味になることがある。例えば、「Vezmu ti tu knihu」と言うと、相手が欲しがっている本を見つけたときには前者の意味で、相手の持っている本を取り上げるときには後者の意味で使う。訳すとすれば、うちにいる相手に電話で「(欲しがってた)あの本持って帰るね」と言うのが前者で、「あの本もらうよ」と言うのが後者である。
チェコ語の勉強を始めたばかりのころに、教えられる表現の一つに「dám si」というのがある。これはレストランなどで注文をするときによく使う表現なのだが、当時は特に深く考えることなく覚えて使うことで満足していた。「chtít」を覚えてからは、自分ではほとんど使わなくなっていて、たまにチェコ語を勉強している日本の人が使うのを聞いて、そう言えばそんな言い方もあったねえと懐かしく思うこともしばしばだった。
これも、動詞「dát」の本来の意味から考えると、「自分に与える」ということになる。お店にある商品や、メニューに載っているものの中から、選んで「自分に与える」のである。この場合、お金を払うという行為は当然だとみなされるのか、お店で、日本語だと「これ買います」と言いたくなるような状況でも、動詞「koupit(買う)」を使わずに、「dám si」とか「vezmu si」と言うことが多い。特に「vezmu si」は、普通「取る」と訳すので、慣れるまでは、お金を払わないようなイメージもあってなかなか使えなかった。日本語で「これもらいます」というのと似ているのかな。ちなみに「買う」を使っても、「koupím si」と「si」が必要な点は同じである。
関係の3格的な「si」としては、動詞「umýt(洗う)」と共に使うものがある。日本語だと「手を洗う」「頭を洗う」で特に自分という言葉がなくても問題はないのだが、チェコ語の場合には自分の体の一部を洗う場合には、「si」が必要になる。当然他人の手などを洗ってあげる場合には、その人を表す言葉を3格にして使う。皿などの物を洗う場合には、特別な場合を除いて3格は不要だと思うけれども、自信はない。やっぱ3格は厄介である。
再帰代名詞のもう一つの重要な役割に「お互いに」という意味を付け加えるというものがある。この場合、主語、もしくは動詞の人称変化は複数形になる。日本では「この素晴らしき世界」と原題がどこかに行ってしまった映画はチェコ語では「Musíme si pomáchat」である。動詞「pomáchat」は「助ける」という意味で、助ける相手は3格で表す。単数で「pomáhám si」だったら、「自分で自分を助ける」になりそうだけど、複数形で「pomácháme si」となると、「私たちは助け合う」という意味になる。
同じように、動詞「psát」は、普通は「書く」と訳されるが、手紙やメールを書いて送るときにも使えるので、「Budeme si psát」と言うと、「(手紙やメールを)書いて送り合います」、つまりはちょっと古いけど「文通する」という意味にもなるのである。もちろん単数なら、自分のために書くというところから、メモを取っておくような場合にも使える。
最後にこじつけの理解もできない、形容詞に「si」が必要な例を挙げておく。形容詞「jistý」は、「確かな」という意味なのだが、「si」と共に述語で使うと、「確信している」という意味になる。ということで「Jsem si úpln? jistý tím, ?e vám tento ?lánek nepomohl k lepším pochopení ?eštiny(私は、この記事がみなさんのチェコ語理解の向上に寄与しなかったことを確信している)」ということにしておこう。
2019年1月22日22時。