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2020年03月03日

チェコのコロナウィルス対策(二月廿九日)




 フランス政府の特別機で武漢から帰国した人は、直接病院に隔離され感染の有無を確認するための検査を受けたが、それ以外の中国から帰国した人については、疑わしい症状が出た人しか検査は行なわれていない。これはイタリアで患者が大量発生した後も変わっておらず、飛行機で入国した人に関しては空港で症状が出ている人は検査を受けることになっているようだが、それ以外はそのまま帰宅が許されている。

 ただ、北イタリアの患者が大領に発生している地方から帰国した人に関しては、地方の保健所が、潜伏期間とされる14日間の自宅待機を命令することがある。そして、厚生省の関係者も、開業医の代表も、自宅待機中に疑わしい症状がでてもかかりつけの医者に行かないようにということを、口を揃えて強調している。まず、電話で医者、もしくは保健所に相談をしろというのである。
 これにはいくつか理由があって、一つは発熱などの疑わしい症状がでてもそれが軽症で済んでいる時点では、ウイルス感染の検査が陽性であれ陰性であれ医者にできることには大差がないことである。相談を受けた医者や保健所が必要性を認めた時点で、特別な救急車を出して、万全の対策をとった上で受け入れの準備のできている病院に運び込むことで、更なる感染の可能性を最小限に抑えようと考えているようである。これが100パーセントうまく行くとは限らないけど。

 もう一つは、チェコの開業医の特殊事情である。チェコの医療業界では、主に待遇の差の問題で、若手の人材のドイツ、オーストリアへの流出が進んだ結果、開業医の大半が定年退職寸前という状態になっている。感染した場合に重症化する確率の高い高齢者たちが、医療の現場を支えているわけで、そんなところに感染者に大挙して来られたのでは、医者の感染と重症化が多発して、医療システムの崩壊を招きかねないのである。
 さらに、旧共産国の福祉大国であるチェコでは、医者の診察料は原則として必要ない。その結果、退職してすることのない高齢者たちが、ささいなことで医者に出向く傾向があり、開業医の待合室にはお年寄りが集まっていることが多い。そんなところに感染者が混ざったら、最悪の事態を想定しなければならなくなる。

 以上のようなリスクを考えた上で、チェコでは何が何でも検査をして陽性の感染者をあぶりだそうとは考えていないのだろう。ウイルスに感染して発症したとしても、軽症ですんで、人に移す前に快癒してくれるのが一番いいわけである。軽症で済む人を病院に呼んで検査をして陽性の確認ができても、現時点では統計上の数字が一つ増える以上の意味を持たない。

 渡航手段の限られている中国だけでなく、陸続きのイタリアでも患者が大量に発生した以上、チェコでも感染者が出るのは時間の問題である。これで感染者がゼロであり続けたら検査の正当性を疑う必要が出てくる。大切なのは、チェコ国内で感染者を出さないことではなく、感染者が出ても重症化する患者をできるだけ出さないようにすることである。考えてみれば、チェコ政府、いや厚生省は騒動が中国で収まっていた時点で、すでにこのことを見通していたようにも見える。
 問題は、厚生大臣が、時に無表情にも思われるレベルで冷静な発言を繰り返している脇で、バビシュ首相がヒステリックに聞こえる発言をし始めたことだろうか。安倍首相と同じように突然思いつきの政策を打ち出して、社会を混乱に陥れるのではないかとちょっと不安である。国民を不安に陥れてストレスを感じさせないためにも、首相は落ち着いた言動をするべきだと思うのだけどなあ。

 ところで、3月に日本に行くことになっている知り合いがいるのだが、日本の受け入れ先から、コロナウイルスの問題で日本に来るのが不安なら、延期してもかまわないという連絡をもらったらしい。その人は、自分の体の抵抗力を信じているから不安は全く感じないと言い、仮に日本で病気になったとしてもそれはそれいい経験になると言って予定通り出発するという。これぐらいの気持ちでいた方が、精神の健康にはいいし、精神が健康であれば、病気になる確率も下がるはずである。
2020年3月1日23時。



日曜日に三件、月曜日に一件の感染者が確認され発表された。
3月2日追記。







posted by olomou?an at 07:39| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ
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