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2020年03月30日

自宅監禁日記(三月廿七日)





 多分、周囲が普通の社会活動をしていれば、自分が自宅に引きこもっていても、あまり気にならないのだと思う。世界で毎日毎日いろいろなできごとが起こっていることがテレビやネット上の報道で理解できるし、毎週末のスポーツなんかも、時間が流れて季節が移り変わりつつあることを示してくれる。それなしに、チェコの暖房の効いた部屋の中に閉じこもっていると、外が暖かいんだか寒いんだかさえわからない。
 テレビをつけても、再放送の番組が多いし、ニュースは寝ても覚めてもコロナウイルスの話ばかりで代わり映えがしない。唯一毎日変わるのは、感染者や犠牲者の数字だけ。変わったからといって、増えたからといって、喜べるようなものではないし、単なる数の変化に時の流れを感じられるほど感性豊かではない。なによりも完治者数がなかなか増えないのが最悪である。


 チェコのコロナウイルス対策を指揮している厚生省の伝染病学者のプリムラ氏は、感染者数が増えているのは、事前に予想されていたのだから、それほど重要なことではないと言い、重要なのは重症化して入院が必要な患者数と、さらに集中治療室に入れて人工心肺の使用が必要な患者の数だと主張しているんだから、入院中の人の数と、重症の人の数も公表してくれんもんかね。チェコは軽症者は原則として自宅療養という方針だから、入院患者の数が少ないのを見れば安心すると思うんだけど。

 犠牲者の数が三人増えたのは昨日だったかな。三人とも高齢者で重い持病があった人のようだ。問題は、病院に運ばれるときに持病の悪化を疑われて運ばれるため、入院してからの検査で陽性が判明することが多いことだ。そうなると、かかわった医療関係者も、感染の疑いで二週間の自宅待機ということになるわけで、人手不足が進むことになる。
 最初の犠牲者が入院していた長期療養者向けの入院病院では、さらに何人かの人が感染していることが確認されたし、この方が入っていたのとは違う老人ホームに入っていた人が二人、病院に運ばれる前に亡くなった。チェスキー・クルムロフでも病気の高齢者向けのサービスの関係者の間に感染が広がるなど、職員が感染して高齢者の間に感染を広めた例がいくつか出ていて、対策の難しさを見せ付けている。

 もうひとつの問題は、日本のほうがひどいと思うけど、多少具合が悪くても仕事を続けてしまう人がいることで、最初の国内での感染者とされているプラハのタクシー運転手もそうだった。非常事態宣言で休みを取ることを禁じられている医療関係者の中に、熱があったり咳が出たりしても頑張って仕事を続けていて感染が発覚した人が何人か出ている。他人に迷惑をかけたくないという責任感の強い人ほど、頑張ってしまうなのかもしれない。
 これを機に、体調がよくないときには在宅勤務に切り替えたり、医者の証明はなくても熱がでたときには休めたり、できるような社会になればいいと思うのだけど。昔日本であれこれ仕事をしていたころは、正直、残業しなければならないことよりも、体調不良で職場まで出て行かなければならないことのほうがつらかった。電車に乗って職場まで出る間に体調が悪化して、ろくに仕事にならないということもあるんだから、働き方改革というならその辺も改革してほしいところである。

 いかん、また日記から逸脱している。昨日は午前中は、ひたすら書類のチェックと修正を行い、午後からはオンラインのビデオ会議の連続だった。それが今日は午前と午後が逆。気分転換にはならない。一日中PCにへばりついて画面をにらんでなければならないことには変わらないのだ。眼鏡の度数も合わなくなりつつあるから、目は疲れるし、頭は痛くなるし、ろくなことはない。
 うちのが買い物から帰ってきて曰く。先週より町に人が多かったと。外出禁止令が発せられてから二週間に近づき、どの程度の外出なら許されるのか理解できた人が増えたということだろう。最初は買い物に出るのもはばかられるような雰囲気があったし。みんなお手製のマスクもしているようだし、最近はおしゃれの一環としてマスクに使う布の色や柄を選ぶ人たちも出てきているのかな。オロモウツ地方の知事なんか、住民から差し入れられたマスクをして、感謝の言葉を述べていた。
 落ちがつかないけど、これでおしまい。
2020年3月28日8時。









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