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2021年04月16日
混乱は終わらない(四月十三日)
この二つは、前者はゼマン大統領が拒否するだろうし、後者はハマーチェク氏の旧態依然の党内運営を考えると実現は難しそうだから、おそらく二つが同時に叶えられることはないだろう。そうなるとザオラーレク氏が文化大臣に留任するのか、新たな造反者として解任して、事前の約束どおりビルケ氏に大臣のポストを与えるのかが注目される。
ここで、ザオラーレク氏を排除したら、ハマーチェク氏は完全に裸の王様になってしまって、社会民主党の消滅が現実化しかねないと危惧する。だから、おそらくは、対立候補として出馬したペトシーチェク氏の場合とは違って、ハマーチェク氏が何らかの形で譲歩して、ザオラーレク氏を外務大臣に据えるか、文化大臣に留任させるかするだろう。ただ、かつてのソボトカ首相もそうだったけど、社会民主党の党首というのは、追い詰められるとわけのわからないことをしがちである。
それで、秋の総選挙では緑の党と組むなんてことを言い出したのだが、保守的というか、考えの古い人が多いと思われる社会民主党の支持者の中には、これを嫌って支持をやめた人もかなりいるはずだ。最新の、党大会の前に行われたと思われる世論調査の結果をチェコテレビが紹介していたが、3パーセントちょっとという結果になっていた。これは、オカムラ党や共産党よりも少ないのはもちろん、バーツラフ・クラウス若が市民民主党をおんでて結成した挙句に逃げ出したトリコローラよりも少ないのである。
そこに今回の党大会後の外務大臣の解任を巡る大混乱が重なったわけだから、さらに支持を減らしているに違いない。緑の党との関係が切れたことによるプラスでは相殺し切れないだろう。社会民主党の政治家の中には、前回の選挙で支持の低下は底を打ったと考えていた人たちもいたようだが、この秋の下院選挙ではさらに支持を減らして、議席を失う可能性が現実味を帯びてきた。これは、ANOと連立を組んだからというよりは、支持を壊滅的に減らしてなお、変われなかった社会民主党が歴史的な役割を終えたと考えたほうがよさそうだ。
同じく、90年代以来の大政党である市民民主党は、ネチャス内閣末期の迷走、創設者のバーツラフ・クラウス元大統領との確執によって支持を減らし、2013年の総選挙で、36も議席を減らして16議席しか獲得できなかったときに、壊滅的な惨敗で解党の危機だといわれていた。そのとき党外から非党員として選挙に当選したペトル・フィアラ氏を迎え入れて党首に立てることで、危機を乗り越えることに成功した。党内政治とは関係ないところから党首に選ばれたフィアラ氏の存在が市民民主党の変革の象徴となったのである。今後も、かつての支配的な地位を取り戻すことは難しいだろうが、議席を失うところまで追い詰められることもあるまい。
それに対して社会民主党は、2017年の下院総選挙で、2013年の市民民主党と同レベルの壊滅的な惨敗を喫しておきながら、変わることができなかった。相変わらず党人政治家たちの間での権力争いが続き、党内政治によって党首や大臣が決められるという90年代以来の因習を排除できなかった。それが、多くの支持者に見放され歴史的役割を終えつつあるという所以である。
下院の議席を一度は失ったものの次の選挙で議席を獲得した政党にはキリスト教民主同盟がある。この党は、二大政党ほどではないとは言え、1990年代から下院の議席を獲得し続けてきたのだが、2010年の総選挙で得票率が5パーセントに届かず議席を失った後、2013年の総選挙で再度議席を獲得した。ただ2010年の総選挙で議席を獲得できなかったのは、前年の2009年に、カロウセク氏とその一派が、キリスト教民主同盟を脱退して、TOP09党を結成してブームを引き起こしたことが原因になっている。だから、化けの皮がはがれてブームの熱狂が終わった後、一度TOP09党に流れた支持者が、戻ってきたと考えられる。
社会民主党の支持者が、一番多く流れたのは左傾化するANOだと考えられているから、バビシュ氏が政治の世界にとどまっている間は、社会民主党に支持者が戻ることはあるまい。そうなると、国政政党としての社会民主党の命脈はほぼ絶たれたと言っていい。そして2003年の大統領選挙で身内の裏切りで大惨敗したゼマン大統領の復讐劇も、これにて完結ということになる。
2021年4月14日24時30分。