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ところがこの問題を目線を変えて考えてみると、少し状況が変わる。50m✖70mの土地の周りの内側に道を作って、道以外の真ん中に芝生を植えるんですよね。まず道の幅を決ませんか?普通なら!たとえば人が1人同一方向に歩ければいいのか・・・あるいは双方向通行にしてすれ違うことを考えるのか・・・それだけでも道幅の設定が変化していく。まずは道を利用する人たちの安全性や利便性を優先するべきではないだろうか?そうするとやはり必然的に道幅を先に決めるのが自然な流れだ!つまり、道幅を先に決定することの方がよっぽど『論理的』だと言えるのだ。実際、毎年これに類似した問題を解いたときに生徒の皆さんにこれを話してみると「道幅を先に決定する方が納得できる。」と返事が返ってくる。だれもが理解できることが『論理的』なのだから、やはりこちらの方が論理性が高いということになる。
2021.09.30
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この数学の問題に限らず、数学の『論理的』思考というのは誰にでも理解できるというものではないような気がする。分かる者は分かって、そうでない者には理解できないこともある。理解できなかった人でも、何回か考えているうちに、または考え方の角度を変えると理解できることももちろんある。しかし私が子供のころからなんとなく、理解できる者が頭が良くて、理解できない者は頭が悪いという分類されてしまう。それを分けるのは第三者であることも多いが、意外と自分自身のあることも少なくない。それは頭の良い悪いではなく、数学が得意か不得意かであり、数学が好きかそうでないかだけの違いなのだと私は強く思う。それはもう、犬と猫のどちらが好きかとか、ラーメンとうどんならどちらが好きかとか、納豆を食べられるかどうかとかと同じレベルの問題なのだ。そう考える私には、いささか数学の『論理的』思考に疑問を感じてしまう。
2021.09.29
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例えば先日中学3生とこのような問題を解いた。数学の【2次方程式】の単元の授業中だった。問題縦50m、横70mの長方形の土地の周囲の内側に同じ幅の道をつくり、その内側に芝生を植えます。芝生を植える面積を2400㎡にするには、道幅を何mにすればよいか。考え方として、まず縦の長さから攻略!①求める数値・・・道の幅をx(エックス)mとする。②50mの上と下に道をつくるので・・・③芝生を植える土地の縦の長さは50-(x+x)m④x=1x なので 縦=50ー2x とする。次に横の長さを攻略する。①やはり道の幅をx(エックス)mとする。②70mの右と左に道をつくるので・・・③芝生を植える土地の横の長さは70-(x+x)m④x=1x なので 横=70ー2x とする。最後に式をたてる。長方形に面積の求め方は、[縦]✖[横] なので・・・(50-2x)(70-2x)その面積が2400㎡なので!式:50-2x)(70-2x)=2400となる!左辺を展開すると2次式になるので、これは【2次方程式】となる。これが数学でいう『論理的』である。もちろん中学3年の【式の展開】までの知識があるひとにとってのみ『論理的』なのだ。
2021.09.27
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数学で言う「論理的」とは、言い換えれば「順序立てて物事を考えること」であり「順序立てて物事を説明すること」である。なるほど大切なことだ!しかし国語でいう「論理的」とは、言い換えれば「それを聞いた全ての人が理解できること」だ。つまり極端化も知れないが、1人でも理解できなかったらそれはもう「論理的」の範疇にないこととなる。これももちろん大切なことだ。これらはもちろん年齢等によってその範囲が変化する。たとえば未就学児の範囲と成人の範囲は当然ながら異なる。それにしてもやはり数学の「論理的」は少々首をかしげさせられることが多い。計算はかなり「論理的」だと思う。問題は文章題だ。
2021.09.26
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今夜も先ほどまで中3生の皆さんと数学の勉強をしていた。超文系脳の私にはある意味しんどい時間だ。私は生徒の皆さんにそれを正直に告げている。苦手なものに挑戦する!・・・そんな姿を見てもらうことも彼ら彼女らにとっての勉強なのかもしれない・・・なんて思ったりもしている。そもそも数学を学習する目的とは「論理的思考を養う」ことだと謳われている。「なるほどそらそうや!」と納得する反面、「これおかしくないか?」と思うことだってある。その違和感がどこからくるものかと考えると、それは数学で言う「論理的」と国語で言う「論理的」に少々差異があるからではないかと感じている。
2021.09.25
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さて、例によって話が長くなったが、これはひとりの人間がその兄から受けた暴力のほんの一部に過ぎないことをここでもう一度確認しておく。この話題に触れはじめて1か月とすこしが経過した。もう兄に蹴り殺された少女についての報道は全くない。彼女はすでに世間から忘れ去られたのだ。その痛みも、その無念の思いも、その悲しさも、すっかり世間から消えてしまっているかのようだ。しかし今日この時にも家庭内で兄弟から暴力を受けている人間がいる。だれにも言えずにじっと耐えている。あるいは自分の境遇に耐えきれずに命を絶つことを考えている人間も決して少なくない。でも、他人からの迫害ではなく兄弟からの迫害は、遺書を残してもそれを隠蔽される可能性がかなり高いのだ。聞いたことないでしょうよ!家庭に第三者機関が介入した・・・なんて。今現在この国では次の総理大臣を決める選挙が行われようとしている。その候補者も【こども庁】の設立を声高に唱っている。貧困・ネグレクト・虐待から子供を守り、子供の自殺ゼロを目指すようだ。ならば!是非とも兄弟間暴力の実態に切込み、防止策を検討していただきたい。手遅れにならないうちにだ。
2021.09.23
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15年間、「弱い」という理由だけで三男に暴力をふるい続けてきた次男。それは本当に次男が何らかの努力や訓練をして得た強さではなく、ただ年上で体が大きいというだけのフィジカル的な強さだった。高校に上がった三男が小さいな身体のままで戦う技を身につけた・・・さあ次男はどうするか?考えられることとして、まず実際に対決してどちらが強いかを確認する。そして弱かった者が強い者に屈して生きていく。これこそが「強さ」にこだわってきた人間の矜持であろう。次にこれまでの数々の悪行を詫びて、何らかの形でその罪を償う。これが普通の人間のとるべき態度であろう。しかし身体が小さいというだけで弟に暴力をふるい続けてきた、卑怯が服を着て歩いているような人間である次男は違った。なんと・・・自分たちはこれまで仲の良い兄弟であったことを言葉でアピールし始めるのだった。またそのアピールのくどいのなんのって・・・もう恥も外聞もないとはまさにこのとこであった。これには三男は心から呆れた。そして心から次男を軽蔑することができるようになった。そして三男は事があれば身体が大きいだけでは勝てないことを、次男が様々な意味で弱者であることを、右も左も分からない暴力ではなく、格闘で思い知らせてやろうと機会をうかがっていた。でも、それを察知した母親から絶対にそれだけはやめるように懇願されたので、母親の目の黒いうちはやめておこうと心に決めた。
2021.09.21
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こうして三男は公立高校入試に失敗して、私立に通うことになった。しかし結果的にそれが次男の暴力を止めることにつながった。もちろん、次男が自分の暴力が原因で弟が入試に失敗したことの責任を感じて・・・ではない。三男が通うことになったのは隣県のかなりの学力底辺校で、ワルのたまり場で有名な高校だった。そこでは喧嘩なんて日常茶飯事だったので、授業中に普通にあらゆる技に対する受け身のとり方を含めた護身術を教えていた。受け身や護身術を身につけることは同時に攻撃方法も知ることを意味していた。三男は家での食事の時間にそれらを簡単に親に話した。もちろん次男の前でだ。ちゃんとした技を身につけた者には、ただ身体が大きいというだけでは太刀打ちできないことはあの次男といえども理解できていたようだ。つまりは自分が「弱く」なったことを自覚したのだ。それを自覚した次男はどんな態度をとったか!ここが興味深い。
2021.09.20
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腹部の痛みと吐き気はそれから3日ほど続いた。次男からの暴行を受けて1週間が経とうとするとき、やっと普通に食事ができるようになった。その頃には卒業式も終わっていて、やがて公立高校の合格発表の日を迎えた。三男は受験校まで合格発表を見に行って、自分の番号がないことを確認した。結果が分かれば電話をするように母親に言われていた。電話で結果を伝えたら、母親は数秒間沈黙したまま「とりあえず気をつけて帰っておいで。」と言った。「うん。ほな帰るわ。」と言って受話器を耳から離そうとしたとき、彼は母親が思わずこぼした「・・・すまんな・・・」の言葉を聞いた。帰宅すると、母親はとにかく無事に帰ってきたことを喜んだ。同じく在宅していた次男も不合格であったことを心から喜んだ。アホだの、バカだの、弱いだの、言いたい放題言い放った。三男は結果を学校に報告してくると言って卒業したばかりの母校に向かうことにした。報告なんかしなくとも学校には通知が届いていて、なおかつ同じ高校を受験した友人たちから自分の結果ももたらされていることも分かっていた。それでも彼は学校に向かった。ただ家にいたくなかったのだ。今の心理状態で次男と一緒にいれば、何が起こるか分からないからだ。母親もその気持ちを察して「気をつけて行っておいで。ほんで気をつけて帰っておいで。」と言葉をかけた。
2021.09.19
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翌日は面接だった。朝はやはり母親がキズとアザをなんとかしようとしてができなかった。そして前日のように朝食を食べて家を出て、駅のトイレで吐いてしまう。面接では中学校名と名前を言ってからは、顔のキズとアザに関する質問ばかり受けた。基本的に「転びました。」で通したが、どこでどのように転んだかを聞かれると「話したくありません。」と答えた。最後に面接官のひとりが「入試の面接で質問に満足にこたえなかったらどうなるかは想像できますか。」と聞かれた。三男は「だいたい分かります。」と返事をした。そこで面接は終わった。面接は午前中組に入っていたので、お昼前には学校を出た。駅まで10分ほどの道のりだったが、彼は途中何回も道に座り込んだ。それもそのはず、次男に腹を蹴られてからこのときまで約2日間、口にしたものを全部吐き出していたのでもう体力が無かったのだ。何かを胃に入れなければと思った三男は近くにあった自動販売機でコーヒー牛乳を購入した。固形物はまた吐いてしまうかもしれないが、液体なら何とか大丈夫かもしれないと思ったのだ。冷たいコーヒー牛乳を少し口に入れて、彼は2分ほど飲み込まなかった。いきなり冷たいものを胃にいれるのは得策でないと思ったのと、吐いてしまうことへの怖さがそうさせたのだ。
2021.09.18
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同じ高校を受験する同じ中学校の生徒の集合場所に三男が着いた時、友人たちは驚きを隠せなかった。彼の顔のキズとアザがあまりにひどかったからだ。そして誰もその理由を聞こうとしない、いや、できなかった。それでも彼と本当に親しかった友人が小声で「どうしたん?」と聞いた。三男は一言「転んだ。」とだけ言った。教室に入ると他校の生徒までざわつきだした。こんな顔の人間が受験の教室に入ってきたら自分でも驚くわな・・・と三男は思った。試験中は担当の教員が「どうしたの?」とか「大丈夫か?」とか声をかけてきたが、彼は「大丈夫です。」とだけ毎回答えた。4教科の試験が終わって昼食時間になった。彼は母親がつくってくれた弁当を半分も食べられなかった。吐きそうだったからだ。やはり腹部へのダメージがまだ大きい。この日の学科試験を終えて帰宅する途中の駅のトイレで彼は食べ残した弁当の中身を捨てた。母親に心配をかけたくなかったからだ。帰宅した彼の姿を見て母親は「大丈夫やった?」と聞いた。それは試験のことなのか、自分の体調のことなのか、受験先の先生たちの反応のことなのかよく分からかかったが、やはり彼は一言「大丈夫やった。」と答えた。三男と母親の話声を聞きつけて、次男の玄関までやってきた。そして嬉しそうに三男の顔の両横を覗き込みながら「試験どやってん?」と聞いた。三男は何も答えなかった。母親は次男に「受験前の日に弟をあんな顔にして何とも思わへんのか!」と強い口調で言った。次男は「弱いくせにえらそうにしたからや!悔しかったら強くなったらええねん!」と答えて笑った。
2021.09.17
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吐き気はいくぶん緩和されていて、右頬の傷口は固まって出血は止まっていた。これらは安心材料であったが、左頬からこめかみにわたるアザはひどくなっていた。腫れが増して、内出血の色も濃くなっていた。母親はそれらを何とかしようと、キズには絆創膏を何枚も貼り、アザには化粧品でなんとか肌色にしようとした。彼女は絆創膏を貼りながら、化粧を施しながらも「すまんな。」「すまんな。」と謝り続けた。母親の試行錯誤の結果・・・絆創膏はその数が反対に人目について目立ってしまい、化粧はその部分だけ変な色になっているので、もう何もしない方がいいとの判断に至った。三男は母のその判断に同意した。というかもうそんなことはどうでもよかったのだ。それより腹部のことの方が気になっていた。顔のキズやアザで死ぬことはないが、昨日のあの異常な吐き気の原因の方が心配だったのだ。その後、朝食を食べて、母親が作ってくれた弁当をカバンにいれて、三男は入試に向かう。玄関で靴を履いているとき次男が2階から降りてきて「おい、今日の入試頑張って来いよ。」と笑顔で声をかけた。三男も母親のその声に何の反応もしなかった。次男の声が無かったかのように母親は「気をつけていってきいや。」と言って三男を送り出した。5分ほど歩いて最寄りのバス停に着いて待つことさらに5分ほどでバスに乗った。バスの中で恐れていた吐き気が腹部から込み上げてきた。バスを降りて駅に入り、トイレで朝食を全て吐き出した。このとき三男は腹部にも内出血の変色があることに気付く。
2021.09.16
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その日の夕食はいつも通り食べたが、食後1時間ほどで三男は食べたのもをすべて吐いてしまった。顔のキズやアザよりも腹部のダメージの方が深刻だとこのとき彼は知った。吐いても吐いても吐き気が止まらない。そのうち胃の中のモノを全て吐いても吐き気が襲う。それでも吐き続ける。これはかなり体力を奪った。母親はお白湯を飲むことを勧めた。言う通りにしてもやはり吐く。しかし胃の中に何かがあった方が吐いた時の体力の消耗が軽減されたので助かった。その状態で明日の入試の準備をして、最後は吐き疲れて眠るかたちになった。朝までの間に何回も目が覚めてはトイレで吐いた。そして入試の朝を迎えた。口からほとんどの水分を吐き続けたが、朝はなんとか尿がでた。血尿でないことに三男は少し安心した。そして昨夜よりいくぶん吐き気も弱くなっていたので、なんとか入試には行けそうだった。
2021.09.15
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母親はすぐに1階へ降りていき、次男になんでこんなことをしたのかと問い詰めようとした。次男は「あのボケが弱いくせにえらそうのものを言うからじゃ!」と一言発した後は母親に「お前もお前じゃ!」と喰ってかかった。「親がこんな時間まで家にいないのは主婦業怠慢じゃ!」ヤンキーやチンピラなどのクズ人間に顕著にみられる傾向で、自分に都合の悪い話題になりかけたら話の争点をどんどん変えていって、はぐらかしながらも自分が有利な話題に持っていくという常套手段だ。しかしいつでも母親はその争点のすりかえにひとつひとつちゃんと説明をしていた。今回も例外ではない。こうなると暇な次男がいつも有利で、結局時間がかかりすぎることを懸念した相手が「もういいわ」と話を打ち切るまで続けるのだ。そして相手が向けた背中に向かって「へ!やった~。勝った~。アホのくせにかかってくるからじゃ。」という類の言葉を投げつける。それは相手が母親であっても例外ではなかった。次男は相手にするだけ時間の無駄であり、さらに自分のせいで母が次男から最後に暴言を吐かれるのを見なくない三男は、1階まで降りていき母親の手を引いて「ありがとう。もうええで。」といって部屋から連れ出した。その瞬間三男のキズとアザだらけの顔をみた次男は、本当にうれしそうな顔をして「お、どうしたんやその顔!明日の入試大丈夫か?」と言った。
2021.09.11
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右側の頬は想像通りのすり傷だった。次男が全体重をかけてゆすったこたつの発熱部分を覆う網の部分の傷だ。上下左右に広範囲にわたっている。出血もある。もう絆創膏の1枚や2枚でごまかせるものではなかった。しかし左頬からこめかみに続く部分には驚いた。さっきの手で触った感じではあまり腫れはなかったが、このときは腫れが起こってきている。そしてそれより驚いたのは色だった。青くなっている。場所によっては赤紫色になっている。これもおそらく明日までに何とかなるものではないと思った。三男はそのまま何もしないでただ茫然と椅子に座ったまま時間を過ごした。彼の耳にはわずかに聞こえる1階からくるテレビの音と、時折それに反応する次男の笑い声が入ってきていた。やがて夕方になって母親が帰宅した。三男の入試前日に次男が上機嫌で過ごしていることに異変を感じた母親は、三男の姿を探して2階に上がってきた。そして三男の姿を見て何が起こったかを理解した。
2021.09.10
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30分ほど寝た(または意識を失っていたのかも知れない)後、三男は急に意識を取り戻した。左目の奥を襲う激痛がそうさせた。目の奥が痛いなんて人生ではじめてだった。原因はもちろん次男の攻撃だ。左目の横を触ってみる。思ったほど腫れ上がっていないので安心した。3回ほど意識的に呼吸をする。あまり深く息を吸うと腹部から吐き気が込み上げてくるのが分かった。そうならない程度に呼吸を何回かしてみた。そしてゆっくり起き上がる。目の奥の痛みと腹部からの吐き気はあるもののなんとか座ることができた。1階からはテレビの音とそれを見ている次男の笑い声が聞こえてくる。10分ほど座っていたが、今度はなんとか椅子に座ろうと腰を上げてみる。両足がガクガクと震えてうまく身体をコントロールできない。それでも何とか椅子に座ることができた。そこではじめて脂汗がとまっていることに気付く。床に置いたままになっているスーパーの広告と赤いペンに目をやるが拾える気がしないのでやめておいた。そして机の上にあった小さな鏡で自分の顔を見てみた。
2021.09.08
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脂汗という言葉があるが、これがそうなのかと三男は思った。粘度の高いべたついた汗だった。寝返りをうって痛みが軽減される向きを探るがどうやっても痛みと吐き気が消えない。そのうち激しくのどが渇いてきたが、立ち上がることができないのでどうしようもない。このまま自然回復してくれることを願ったが、このまま絶命する可能性も考えられた。自分は事故死でもなんでもなく次男に殺されたことをせめて文章に残しておこうと横たわったままあちこちに渡した。机の下にスーパーの広告があった。手を伸ばしてなんとかそれを手にする。長い間そこにあったようで少しほこりをかぶっていた。反対側に目をやるとベッドの下に赤いマジックインクのペンが転がっていた。それを手もする。ここにいきさつを書いても次男に見つけられては破棄される。どうやって次男以外の人に見つけてもらおうかと考えてみるが、吐き気がそれを邪魔する。やがて思考力が低下していくのを感じ取れた。疲れたのか何なのか分からないが、三男はそのまま30分ほどの眠りに落ちてしまった。
2021.09.07
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そんなことを考えながらも三男は次男の攻撃の変化を感じていた。左目の横に攻撃が移って4発目あたりから力が弱まり始めていた。まず確実に分かったのは次男のスタミナ切れだ。自分の髪の毛をつかんだ放り投げてからここまで5分ぐらいが経過している。次男は自分への憎しみからここまでの行動を全身に渾身の力を込めている。前蹴りで腹部を蹴ったときも、コタツを持ち上げて叩きつけたときも、その上に飛び乗って全身をゆすったときも、腕、頬、目の横を殴りつけるときも、そしてその全ての行動のときに発する「弱いくせに!」「えらそうにしやがって!」「ウジ虫!」と叫ぶときも、手加減無しの全力だった。そんなことを5分も続ければ普通の人間なら息が上がる。実際このとき次男は肩で息をし始めていた。後は中指を突き出した拳での攻撃で次男は自らの手にダメージを残した可能性があった。どちらにしてもこれだけ全身全霊で憎き三男を攻撃し続けられた満足感もあったのだろう。次男は言葉で三男をこれでもかと罵倒しながらコタツの上から退いた。三男は何事も無かったかのようにゆっくり立ち上がり、投げつけられて散乱した本を集めて手に取り、元いた部屋に戻って机に向かった。その三男に次男はさらに暴言をぶつける。「弱いくせに!」「ボケが!」「ウジ虫が!」「お前みたいな弱いクズがいくような高校があると思うてんのんか!」等々・・・暴言でも満足をした次男は1階におりていった。その後、三男は静かに椅子から床に腰を下ろして仰向けに横になった。やはり腹部へのダメージが激しかった。間もなく呼吸もできないくらいの吐き気に襲われて、全身汗まみれになった。
2021.09.06
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このときもまず頭に浮かぶのは親のことだった。幼少期はとくに楽しい思い出をたくさん与えてくれた。それとほぼ同時に浮かぶのは友人だ。友人には恵まれた人生だったと心から思う。しかし!それでもやはり悔しいのは自分の命を奪った次男は何も罰を受けることはないであろうことだった。このまま自分が絶命しても死人に口無しだ。次男はなんとでもうそをついて自分を守るのだろう。たとえば今回なんかは自分の死体を階段または窓から突き落として、三男が勝手に落ちたとかいうのだろうことは日ごろの次男の言動から容易に推測できた。あるいはもっと強く生まれてくればもっと生きることができたのでは・・・とも思うが、それは違うという結論はずいぶん昔に出ている。つまり、弟として生まれた時点で普通は兄より体が小さいのだ。それはすでにもう弟は弱いという理由で殺されるために生まれてくることを意味している。三男はこんなことを殴られながら冷静に考えた。そのうち左頬を殴り続けていた次男はそのうち攻撃目標を変えた。左目の横だ。そういえば「あしたのジョー」というマンガでこの部分をテンプルと言った。主人公がライバルのここに喰らわせたパンチが原因でライバルが死んだという話があった。はやり次男は自分を殺す気だと改めて確信した。だが微塵も身動きが取れない三男は攻撃をただ受け続けた。明日に入試をむかえる中3生で、兄弟に押さえつけられて殴り続けられている者は一体この世に何人いるのだろう・・・今回もそう思った。
2021.09.05
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「弱いくせに!」歯を噛みしめた状態で声を発しながら次男は中指を一段高く握った拳を三男の左腕に振り下ろす。中指の第二関節部分が腕の骨の真上にあたる。これは痛かった。三男は「ゔゔ」とうねり声をあげてしまう。声をあげるとそれはダメージがあることを知らせることになるので三男はいつも声を出さなかったがこのときはダメだった。もちろん2発目が同じ場所に振り下ろされる。が、今度はなんとか声をあげずに耐えた。3発目も耐えた。次男は4発目を振り下ろす前に、「弱いくせに!この手ぇどけろ!」と言いながら自らの左手で三男の左腕を掴んで強引に横にズラした。三男の左頬がノーガードとなる。コタツの骨組みに押さえつけられたままの三男にはもう身動きが取れずにどうしようもなかった。それをいいことに次男は三男の左頬を容赦なく攻撃する。「弱いくせに!」「弱いくせに!」「弱いくせに!」と歯を噛みしめた状態で言葉が1回ずつ発せられる度に左頬に拳が振り下ろされた。・・・このようにもうどうしようもない体制で攻撃を耐えきらねばならないとき、三男はいつしか自分でも怖くなるほど冷静になる自分がいることに気付いてもう何年にもなる。このときも例外ではなかった。どう説明すればいいのかよく分からないが、どこかそんな自分を俯瞰でみるような感じになるのだ。あるいは、これは自分ではない、これは事実ではないと思うことによって心を防御しようとしているといっても良いかも知れない。このときは、まずは左頬に振り下ろされるパンチの数を数えだした。しかし長続きはしなかった。12発か13発目まで数えてバカらしくなってやめることにした。次にこのような状況に陥ったときに毎回、なぜ次男はこれほど自分を憎むのかと原因を探ってみる。が、思い当たることはない。ひとつあるとすれば、存在しているということ、生きているということだろうと思う。また言葉通りに弱いからだとも思う。そうなると弱い人間でも平和に笑顔で生きていける世の中なんて本当にくるのだろうかという疑問にいきつく。悲しいかなその答えはNOだとの結論は瞬時に出る。それを経ると三男がいつもたどり着くのは、これまでの人生で楽しかったことや嬉しかったことを思いだすことだ。これで殺されたとしても、せめて絶命の瞬間は楽しく嬉しい思い出の中にいたいと思うのだ。
2021.09.04
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右の頬を下に向けると必然的に左の頬が上に上がる。三男の左頬は押さえつけられているコタツの骨組みの板の無い部分に持ち上げられる。これでは次男に左の頬を殴ってくださいと言っているようなものだった。まずいと思った三男はその頬の前に何とか左手を持っていった。試験前日に顔にキズを負いたくなかったからだ。しかしそれも裏目にでる。その行為が三男の意図を次男に理解させてしまった。「弱いくせに!」「えらそうにしやがって!」「ウジ虫!」と歯を食いしばったままの叫びを続けながら、次男は右手で三男の左腕に殴りかかる。次男は三男を殴るときは必ず拳の中指を一段上に突き上げた。面の破壊力をそのまま点に集中させるためだ。同じ一撃でもより三男にダメージを与える方法を常に次男は考えて行動に移してきた。彼はそれほど三男の存在が憎かったのだ。三男にはその理由は分からなかったが、心から憎まれていることだけは理解できていた。それまではなんとか動ける状態でその拳を喰らっていたので、何とか殴られる場所の角度を拳が当たる瞬間に変化させることでダメージを受け流していた。それを可能にするために三男は目を閉じなかった。もちろん拳をかわすこともできたが、それをするとさらに次男が逆上することも経験で知っていた。ダメージを極力軽減させながら暴力を受け止めて次男が満足するまで我慢するのが最善の対処法だった。しかし。このときばかりは角度を変えることはできなかった。
2021.09.03
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2回目の攻撃で思うようなダメージを与えられなかった次男は手段を変えた。またコタツを高々と持ち上げたかと思ったら今度は三男に投げつけた。と同時に次男は全身でその上に飛び乗った。全体重で三男を押しつぶそうとし始めたのだ。次男はコタツの中央にあるヒーターを保護するためにある金属製の硬い網の部分を使った。両手でコタツを受け止めていたが、ただでさえ大柄な次男の全体重を受けるのはキツかった。そこに次男がコタツの上でこれでもかと体を上下左右にゆするのだ。網の部分が両手に喰いこみ痛みが走る。痛みと重さでどんどん腕が下がってしまい、とうとう金属の網の部分が右の頬に達した。腕は着ていたジャージの長袖である程度保護されていたが頬は地肌だ。次男はそれを見てここぞと三男の顔の部分に体重を集中させて上下左右にゆする。そうなってはもう2本の腕ではどうにもできない。すぐに金属の網の部分が三男の右頬に喰いこむ。「痛い!」と言いたかったが、最初の腹部への蹴りを喰らったときに出たよだれというか水が気管に入ってしまいセキしか出ない。それでもなんとか「痛い!」と声を出したが、それは逆効果だった。その声でダメージを与えられていることを確認した次男は今度はコタツの上でジャンプしはじめた。その時点で三男の目には見えていないが右頬にかなりの傷を受けていることは明白だった。彼にできるのはその体勢での可能な限り右頬を下に向けて、金網が肉に喰い込むことを緩和させることだけだった。しかし・・・それがまた裏目に出る。
2021.09.02
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背中と後頭部を強打して身体が床でバウンドした空中で三男が見たのは次男がその部屋の隅に置いてあったコタツの骨組みに手をかける姿だった。その前日、母親が一度コタツ布団を干すためにコタツを骨組みだけにしておいた。四隅の足は外されていた。幸いだったのはコタツの天板が別の部屋にあったことだ。天板の方が重みと硬さがあり、受けるダメージが大きかったはずだ。次男はその天板の下にある正方形の骨組みに躊躇なく手をかけていた。バウンドの影響で再び床に身体を打ち付けられた三男は腹部を押さえたままの状態で左横に2~3回転転げた。ちょうど仰向けになって回転をし終えた三男の頭上にコタツの骨組みが力いっぱい振り下ろされる。次男がそれを自分に叩きつけてくることは予測ができていたし「弱いくせにえらそうにしやがって!」と歯を噛みしめた状態で発せれらる声が近づいてきているもの分かっていたので、両手をグーにして手の甲を上に向けた状態で振り下ろされたコタツを受け止める。指をやられたら鉛筆が持てないと思ったからだ。1回目の攻撃を防御された次男は瞬時に再びコタツを頭上に高々と持ち上げて三男めがけて振り下ろす。持ち上げるときと振り下ろすときに1回ずつ歯を噛みしめた状態で「弱いくせに!」と叫んでいる。2回目の攻撃は両膝でも受け止めようとした三男であったが、腹部に激痛が走り下半身を思うように動かせない。2回目の攻撃も1回目と同じように受け止めた。
2021.09.01
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