陽炎の向こう側　　浅井　キラリ

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2008/09/08

夕食後、弘子は、薬を取りにナースステーションへ行った。

入院患者が列を作っていた。

ほかの患者は、自分の薬名を言って、もらっていた。

薬は、その場で飲まなければならない。

弘子は、コップにお水を入れて列についた。

薬を飲み、部屋に戻ると、森口が来た。

「いかがですか？少しは落ち着かれましたか？」

「はい。」

「あの後、お休みになったとお母様がおっしゃっていました。お疲れが出てきたのでしょう。お疲れをとりましょうね。」

「何か、不安なこととかはありますか？」

「先生、ありがとうございました。

先生があそこにいなければ、私は今頃・・・。

そう考えると、怖くなってきます。それを繰り返し繰り返し思い出してしまいます。」

「不安になるようでしたら、頓服をお出しします。

恐怖感が強くなるようでしたら、おっしゃって下さい。」

「はい。自分でも、わからないうちにあんなことをしようとしていて。

また、同じようなことをしないか思ってしまうんです。」

「自分を傷つけるようなことはしないと、誓約書に名前を書きましたね。

それに、あなたは、もう、そんなことはしません。大丈夫です。いいですね。

眠れないようなら、睡眠導入剤をお出しします。

森口が部屋を出て行くと、弘子は、疲れからか、そのまま、眠ってしまった。

翌日も、部屋から、ほとんど出ることなく、ベッドの中にいた。

「いかがですか？」

「先生。」

「体調がわるいですか？」

「まずは、疲れをとりましょうね。」

「先生、私、どうしたらいいのでしょう？」

「何がですか？」

「主人のこと、どうしてあんなことをしたのか、自殺なんてしたのか。

私、どうして、気がついてあげられなかったのか。

私、主人のこと、何も知らなかったんじゃないかって思うと・・・・。」

「ご主人の自殺の理由を知りたいのですか？」

「え、ええ。」

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