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おはようございます、ひなこです。9月3日最初から書いた方がいい。じゃなきゃ、忘れちゃうから。だから、僕が起きたところから始めるのがいいだろう。11時くらいだった。僕はキャロルを見に窓の所へ行った。でも今回はあいつはそこにいなかった。僕は服を着て、トイレに行って、自分のナニをじっくり調べた。僕はまだ大丈夫だ。ママとジョンは1階にいて、笑ったりしてるのが聞こえた。トイレから出ると、階段の踊り場が見えて、でキャロルの部屋のドアがちょっと開いてるのが見えた。僕は、抜き足差し足で歩いて行って、のぞき見した。カーテンがちょっと開いてて、太陽の光が隙間から部屋の中にさしていて、埃が浮かんでいるのが見えた。キャロルは何も着ないでマットレスの上に横になっていた。仰向けで。毛布は足元に丸まってて、夜の間に蹴っ飛ばしたんだな。太陽は又、眼鏡のレンズの上に輝いていて、あいつの目は見えなかった。でも、僕はあいつが寝てると思った。頭が片方に傾いていて、口がちょっと開いていたから。僕は、じっくりあいつを見た。雑誌に載ってた売春婦の誰よりもずっといい感じだった。それから太陽の光がちょっと変わって、あいつの目が見えたんだけど、なんと、ずっとあいつは俺のこと見てたんだって気づいた。どうしていいかわからなかった。固まっちゃった感じ。あいつはじっと僕を見続け、それはちょっと奇妙だったんだ。というのも、あいつの頭はまだ片側に傾いていて、口もちょっと開いたままだったからだ。まるで、もう死んでて僕を見てるみたいで、気持ち悪かった。それからあいつの腕が動き出した。両手が体をすっごくゆっくり下りていった。それから本当にゆっくり毛布を上に引っ張り上げた。顎のところまで。それから、あいつは微笑んで、「コーヒーを淹れて持ってきてくれない?」って言った。自分がなんて言ったのかはわからない、覚えてない。多分そこに立ったまま、あいつの言ったことについて考えていたんだと思う。それからあいつは言った。「いい子でいてちょうだい。私のためにコーヒーを淹れてきて」そう言って、僕に微笑んだ。準備をするのに時間はかからなかった。台所でコーヒーを淹れている間、ママとジョンが玄関に近い方の居間で笑ってるのが聞こえた。カップを持って2階のキャロルの部屋に上がって行った。最初にあいつは、ドアを閉めてって言う。それからあいつはカップを受け取って、起き上がる。えーっと、ひなこです。ここから、7000字ほど、エロイ描写が続くのですが、ひなこのブログの品がガタ落ちになるので、削除しま~す。急に、時制が現在形になって、省略部分は全部現在形で書かれています。そして僕は、雑誌で見た色んな体について考える。そしてエディーの兄さんのことや、彼女の体の中をぐるぐるぐるぐるまわっている毒のことを考える。そして、僕は、抜こうとするんだけど、彼女がより強く締めて自分自身を強く押し付けてくる。毒がどんどん強くなってまわってるのがずっと感じられる。それから彼女は突然止める。まるで体の中を何かで刺されたように。喉の奥で、変な音を鳴らす。僕は彼女から下りて、彼女は僕を押しのけて立とうとする。彼女はドアに行こうとするけど、ふらふら、よろよろして、そして、再度何かに刺されたように、身体をぐっと折り曲げる。彼女はドアにたどり着いて、それから口を手で覆う。吐き気がやって来る。ドアを全開して、階段を下りていく音が聞こえる。そしてトイレのドアがバタンっていう音も。僕はパンツとジーンズを履いて、ドアへ行く。そこで、彼女のたてている音が聞こえる。変な嘔吐してる音。部屋からこっそり抜き足差し足で出て、トイレのドアの外に僕はいる。彼女は、奇妙な音を立てている。時々めそめそ泣いている。吐いてない時に。段々、彼女の立てる音が大きくなる。まるで誰かが彼女の首を絞めてるみたいに。僕の後ろで足音がする。ジョンが階段を上がってくるのが見える。ママはその後ろ。「クソ、一体どうしたんだ?」とジョンが言う。僕はただ肩をすぼめる。そしてキャロルがトイレで具合が悪いみたいだと言う。ジョンは僕を押しのけて、ドアを叩く。キャロルは、その時には静かになっている。ジョンがまたドアを叩く。そしてドアを開けようとする。ドアは鍵がかかってなくて、でも何かが邪魔している。ジョンがもっと押して、言う。「ああ、神様」。ママはあいつの肩越しに見て、同じように「ああ、神様」と言う。とても強い嘔吐の匂いがする。ママは、後ろを向いて僕に、電話して救急車を呼んで、急いでと言う。それからママとジョンはドアをもうちょっと開けようとする。僕はそこに立ち尽くし、ママが僕の方を向いて、救急車に電話しなさい、と叫ぶ。僕はゆっくりと階段を降りる。僕が急いでいないことに彼らは気づかない。皆、トイレにぎゅうぎゅう詰めで入っているから。僕は階段を降りながら、ちょっと鼻歌なんかを歌う。だって彼女には死んでもらいたくないから。だって、色んなことをあんまり真剣に考えたくないから。だって、本当に彼女には死んでもらいたくないんだから。彼女を殺したくなんか絶対なかったし、そんなこと絶対したくなかったし、そうしなければならなかったけど、でも絶対本当にそうしたくなかったんだ。彼女に僕のガールフレンドになってもらいたかったし、2人でやりまくって愛し合いたかったんだ。だから、絶対彼女には死んでもらいたくなかったんだ。終わり。いやはや、なんなんだか。訳しているうちに、私、何やってんだろう的な気分になってきましたけども。まあ、この原文は今すぐ破棄ですね。もし、今晩突然死んだら、残った人々が、ひなこ、こんなの読んでたのか?!って唖然としそうですから!では、御機嫌よう!
2020年07月02日
おはようございます、ひなこです。8月30日キャロルは、今日、ママについてありとあらゆる悪口を言いだした。だから、もうあの女とは仲良くしない。あいつは、嫌な女だ。自分の父親は、ママを思いのままどうにでもできる、だってあなたのママは年食ってるし、他には誰もやってくれないからって言いだした。それから、僕が何が起こってるかの半分のことも知らないとか、ママが彼女のフラットに前遊びに行ってた頃、父親と二人でやってたことと言えば、午後の間中、ずっとベッドに入ってただけだとか言いだした。僕はあいつに、止めろって言ったけど、僕の耳の近くで話し続けた。ずっと変な笑顔を顔に浮かべて。僕は、そんなの全部大嘘だって言った。でもあいつは笑って、あんただって全部本当だって分かってるに違いないって言う。それからあいつ又続けて、前に彼女のフラットでの沢山の怒鳴り合いがあったことや、ママが服を何も着ないでベッドルームから締め出されたこととか言い続けた。僕は、そんなの嘘っぱちだって言った。でも、あの女、ママが跪いて、ドアをどんどん叩いたこととか、泣いて乞うたこととか、彼女の父親が、寝室の中でただ大笑いして、ずっとママを中に入れなかったこととか言い続けた。僕は立ち上がって、家の中に入った。キャロルは笑ってた。それよりもっと酷い事をもっと教えてあげるって言って。あいつは、嫌な女だ。9月2日今日は、ママとジョンは(ケント州)マーゲイトに出かけていてずっと留守だった。てことは、キャロルと僕は午後の間ずっとゲームをして遊べたってことだ。僕達は1時間位遊んたでたかな、僕があいつのおっぱいの片方を触った時には。そんなことしたらあいつは起き上がって遊ぶのを止めると思ったんだけど、なんとそのまま寝転がったままで、僕にしっかり楽しませてくれた。僕のTシャツに手を伸ばして、その手は僕の身体中を撫ぜ回した。だから僕はあいつのパンティーに手を伸ばそうとしたんだけど、突然僕のお腹に爪を立てやがった。すごく痛くて、僕は叫んで転げまわった。僕のおへその周りには、小さな跡が一杯あった。「なんでそんなことするんだよ?」と僕はあいつに言った。あいつはその時にはもう起き上がっていて、僕を見ていた。そして「お行儀悪かったわ。お家に戻りなさい」と言った。「お家に戻りなさい」って言ったんだぞ。僕はあいつを見ていた。太陽があいつの背後で沈んでいっていた。そして眼鏡がきらきら反射してた。だからあいつの目は見えなかった。ただ丸い光の平らな板みたいで、僕に微笑みながら「お家に戻りなさい」って言い続けてた。続く。
2020年07月01日
おはようございます、ひなこです。8月22日昨日の夜、ママがジョンに叫んでいて目が覚めた。電話で前に叫んでたのと丁度同じ。で、奴は笑ってた。あいつはずっと笑ってんのさ。で、ママは「お前、クソ野郎、私生児野郎!」って言って泣き続けてた。あいつは笑い続けてた。それからママは部屋から出て、バスルームに行った。そこにずっといて、僕は何やってんだろうって不思議に思った。それから結局、ジョンが寝室のドアを開けて、叫んだ。「おい!」すっごい大声で。家の中にいる他の人のことなんて気にしてないって感じで。「おい!てめえ!ここに戻って来い!聞こえねえのか?」そんな感じ。まるで、ママが犬か何かみたいにさ。で、ママは黙ってバスルームから出て来た。廊下に戻って、ママがすすり泣いているのが聞こえた。「中に入れ!」奴がそう言ってドアが閉められた。そして静かになった。キャロルの部屋は廊下のもっと向こうだ。キャロルにも聞こえたかな。8月23日キャロルはいつも寝てるみたいに見える。でもおかしい。いつ僕が彼女を見てるか知ってるみたいなんだ。例えば、今日。僕は起きて窓に行った。彼女はうつぶせに寝っ転がってた。でも僕が彼女を見始めるとすぐ、グルって向きを変えて仰向けになったんだ。いつも寝てるみたいだけど、でも色んなことをやり始めるんだ。足をがばっと広げたり、また閉じたりとかさ。背中を伸ばしたり、曲げたりとか、ベッドの中で心地良い定位置が取れないみたいな感じで。でも、ずっと寝てるみたいに見えるんだ。8月24日キャロルと一緒に庭にいたけど、今は部屋に戻ってる。台所にいる時彼女がやって来て、僕が一緒に芝の上に寝っ転がるようにしたんだ。僕は、硬くなっているのがバレないように、うつぶせに寝た。少しすると、僕はとてもリラックスしてきてそこで寝っ転がってるのが気に入った。彼女は僕の学校のことを尋ねた。夏休み中、ずっと何やってたんだとかそんな話とか。でも、それから猫の話を始めたんだ。僕が猫が好きか、犬より猫の方がいいか、犬より猫の方が賢いと思うかとか。それから、「猫飼ってたでしょ、前に」って言ったんだ。そんな風に言ったんだよ。「猫飼ってたでしょ、前に」って。いいやって僕は答えた。猫なんて飼ったことないし、猫なんて欲しくないって。そしたら「でも一匹飼ってたと思ったわ。あなたのお母さんがそう言ってたもの」って言った。だから僕は、ああ、そうだった、忘れてたって答えた。彼女は、どうやってそういうことを忘れられるんだって言った。だから、飼ってるっていうほどのことじゃないんだ。だってもういないんだからって言った。ずっと僕のことをじっと見てた。彼女の小さな丸眼鏡を通してさ。全身、寒気がした。だからここに戻って来た。彼女はまだ外。でも彼女を見る気になれない。8月28日ママとジョンは、最近よく出かける。それはすごく良いことだ。だって、そうすれば僕は芝の上にキャロルと一緒に寝っ転がれるし、2人でゲームができる。身体中、どこでも触らせてくれるんだ。とても軽く叩いてあげるんだ、彼女がそうされるのが好きだから。時々、彼女はうつぶせになって背中をむらなく日に焼くために、ビキニのトップを外す。僕が背中をなぜるのが好きなんだけど、何もじっくりとは触らせてくれない。でも、時々、太ももの裏を触る。すごく上の方。僕がそうする度、彼女のおしりがぴくっとなる。無意識にそうなっちゃう感じ。僕のナニは、すごく硬くなって痛くなる。でも突然、彼女は遊びを止めちゃって、僕を押し返す。そうなると、僕はどこにも触らせてもらえない。あっちに行けって彼女は僕に言って、何かしたら、彼女のお父さんに言いつけるって言う。そうしたら、家に戻るしかない。彼女はいつも、僕が彼女の言うことに従って言われた通りにするのを見ると、微笑んでいる。8月29日エディーは、サマンサ・ケンダルとやったと思っている。でも僕は信じない。どんなにすごかったか、どんな風にまたやるかをエディーは言い続けてる。遊歩道の新聞販売店まで歩いて行った時、偶然会ったんだ。どうしてもう僕の家に遊びに来ないんだって聞きたかったけど、結局何も言わなかった。だって、もうエディーは変わっちゃったから。サマンサ・ケンダルとやったって話はでっちあげだと思うけど。続く。
2020年06月30日
おはようございます、ひなこです。8月21日今となっては、僕はお昼の12時前に起きることがない。だって意味ないんだ、何もすることがないから。僕が起きる頃には、キャロルははいつも外で日光浴してる。僕の部屋の窓からそんな彼女を眺めるのが好きだ。窓からちょっと離れてれば、僕が彼女を見てるのが彼女の方から見えはしない。大体いつも彼女の隣の芝の上に本が何冊かあって、彼女はいつも寝ている。おっぱいはかなりデカい。雑誌に載ってた女の子たちほどは大きくないかもしれないけど。色も黒くなってきた。眼鏡を絶対外さないこと以外は、そんなに悪い見かけじゃないと思う。昨日、1階の台所でお茶を入れていたら、キャロルが庭から入って来た。彼女は、僕の前にやって来て、僕を見た。寒気がして、顔を見れなかった。だって、前にどこでその顔を見たか、すっかり思い出したから。続く。
2020年06月29日
おはようございます、ひなこです。8月19日キャロルは、後ろから見る分には結構好きだ。窓から見てる。庭を歩き回ってる。フェンスの近くの低木の薔薇のつぼみを触りながら。彼女は大抵ビキニを着てる。でも今日は服を着てる。後ろから見れば、可愛く感じる。長い黒髪で、かなり痩せてる。でも、顔が嫌いだ。気持ち悪い。いつも小さな丸眼鏡をかけてる。日光浴してる時ですら。で、鼻をつんって上げて、お高くとまってる感じ。でもそういうのは別にどうでもいい。顔なんだ、顔を見るのが嫌い。だってなんだか自分みたいなんだもん。だって、前に見たことある気がするから。8月20日もう家で一人でいることはない、絶対。1階には、ママとジョンがいるから行けない。庭には、彼女がいるから行けない。キャロルのことだ。ベッドの下に雑誌を何冊か隠し持ってるけど、もう読み飽きた。ママが昨日僕の部屋へ来て、僕がジョンと喋らないと小言を言いだした。囁き声でずっと喋り続けて、大きな声で話せないもんだから、指で僕を突っつき続けて。それから、誰かが2階に上がって来た。だから僕のことを睨んで出て行った。僕は、まだ奴とは喋らない。奴のことは嫌いだ。あいつはデカくて、デブで、僕が何かするのを待ってる感じ。そうすれば、僕を怒鳴れるから。この前の朝、僕が階段にいた時、ママが自分の寝室から僕に向かって叫んだ。自分とジョンのために、紅茶を持ってこいって。ジョンが砂糖を入れないことを僕は知っていた。だからすごく沢山の砂糖を入れてやった。僕が2階に戻った時、ママが僕にドアを開けないで、トレイを部屋の外に置いておけって叫んでいるのが聞こえた。僕は聞こえなかったふりをして、中に入った。2人共真っ裸でベッドの中にいた。で、ジョンは腕と胸に入れ墨があった。ママは僕に、トレイを置いてとっとと出ていけと言った。続く。
2020年06月28日
おはようございます、ひなこです。…午後5時20分。今日の午後には、やることがいっぱいあった。まず、僕はナオミを殺した。やり方はこうだ。いつもの通り、ナオミの首輪に紐をしばって、でも今日はもう片方の紐の先をテーブルの足にを結んだ。餌を用意して、床の上に置く準備も万端。ナオミはテーブルの足の間をぐるぐる歩いたから、僕がそのこんがらがったのを直さなきゃならなくて、テーブルの足の間をぐるぐる歩かせた。餌の皿を届かない場所の床の上に置いて、庭に出た。3時くらいだったかな、家に戻って餌の皿を外に出した。それから試験管の中にあるやつを持ってきて、キャットフードに入れた。餌と混ざって見えなくなった。それから台所に戻って、皿を下に置いた。ナオミはこの時までには本当に腹ペコだったから、紐を引っ張って、ミャオミャオ鳴いてた。僕はハサミを持ってきて、紐を切った。すると、ナオミは猛ダッシュ。ムシャムシャ食べだした。それから、食べるのを止めて、横を向いた。猫ってすごく頭がいいから。毒がまわったらわかるんだ。僕はナオミを注意深く観察してた。だって、致死量を摂取したのかわかんないし、どれくらいの時間で効いてくるのかもわかんなかったから。まず、ナオミは伏せた。それから、なんか変な音を出し始めた。バスがバス停で待ってる時の音みたいな、ちょっとそんな感じの撹拌機の音みたいなの。それから、ドアの所に行って、ドアを引っ掻いた。そして体を横にして寝っ転がって、ドアを引っ掻き続けた。肋骨が上がったり下がったり、上がったり下がったりしているのが見えた。それから又、足で立ち上がって、変な音を立てだしたけど、それは猫の声なんかじゃ全然なくて、どっちかって言うと鳥みたいな声だった。で、なんか変なものが口の中から出てきた。灰色でだらだら流れてて。床のタイルの上に水たまりみたいに溜まっちゃった。どんどんもっと出てきた。僕は屈みこんでよく見てみたけど、なんかちっちゃなぶつぶつが浮かんでて変なものだった。それからナオミは又、横になって、後ろ足がちょっとダメになってきた。眼もおかしくて、僕を見てるみたいだと思ったんだけど、閉じちゃって、それから後ろ足がもうちょっと駄目になって、そして動かなくなった。もう絶対ぴくりとも身をよじったりしないのを確認するために、僕はずっと見てた。それから新聞紙を持ってきて、床の上に広げた。毛のところを掴んで持ち上げた。だってあんまりナオミには触りたくなかったから。で、新聞紙の上に置いた。新聞紙の角の所を2つ持ってそれを持ち上げようとしたけど、片方が滑っちゃって、ナオミは床に落ちた。それから僕は流しの下のビニール袋を探しに行った。スーパーでもらうやつ。ちょっと汚れてて、中を見たら、なんか変な黄色い液体が底にあった。この袋を床の上のナオミにかぶせようとしたけど、あんまりうまくいかなかった。だから、毛を持って又持ち上げて、悪戦苦闘してなんとか袋の中に突っ込んだ。ちょっとねじれたみたいになって袋の中に落っこちた。袋を持ち上げたら、液体がビニール袋の底から漏れて、床の上に小さな点々ができた。モップをかけてる間、袋は外に出した。バッグは、最初にナオミを見つけた小道に捨てた。途中、足になんか感じた。まだ袋から液体が漏れてて、僕のジーンズの上にかかってたんだ。今は乾いてる。目立たないと思う。最初、家に帰って来た時は変なにおいがちょっとしたけど、今は何も臭わない。続く。
2020年06月27日
おはようございます、ひなこです。8月14日昨日の夜ママは、「あんたなんか大嫌い!大嫌い!大嫌い!」って叫んでた。僕が同じ家にいることなんて忘れちゃったみたいで、僕にも聞こえた。それからもっとすごいでかい声で叫び出して、「笑うの止めなさいよ、このろくでなしクソ野郎、笑うな!」ってさ。それから、どれだけママがそいつを嫌いかっていうことについて叫び出した。でも、今朝ママと顔を合わせたら、前みたいにすごく静かで穏やかで、僕に空いてる部屋を片付けろって言った。要らない物は全部物置に片づけろって。なんでって聞いたら、ジョンが引っ越してくるって。でも、その部屋はジョンの娘のキャロルが使うって。彼女も一緒に引っ越してくるんだ。6時までには、ちゃんと片づけておいてとママは言って、そして出かけた。思うにジョンは、ママと同じ部屋で寝るんだろう。で、2人はそこでやるんだ。・・・午後1時。僕は物置に全部片づけ終わった。部屋の準備は完璧だ。そんなに大仕事じゃなかった。ママが言うには、キャロルは16歳。僕には年上過ぎる。物置でもっと雑誌がないか探した。だって、古いのはもう30回くらい読み返したから。でも見つけられなかった。でも、古い雑草除去剤の缶を見つけた。だから試験管を取りに家に戻った。前に学校からかすめてきたやつ。そして、試験管にそれを入れた。よくわかんないけど、多分毒だと思う。だから物置はいつも鍵がかけられてたんだ。だって、毒が中に置いてあるから。まだ1時だ。又、雑誌でも読むか。昨日のことがあるから、ナオミとはゲームをして遊びたくない。続く。
2020年06月26日
おはようございます、ひなこです。8月10日ママは昨日の夜、又泣いてた。電話でずーっと喋ってた。時々泣きながら、「お願い、お願い、お願いよ」ってずっと言い続けてた。そして、謝り続けて、泣いてた。ママは前は泣いたりしてなかった。でも今は、いつも泣いてるのを耳にしてる。今朝、ママの顔を見たら、目が腫れてた。ママに家にいてもらいたくないから、僕はずっと、いつジョンに会いに行くのって聞いてた。ママは、ちょっと家の掃除しないと、家の中が滅茶苦茶だって言った。ママは僕に威張り散らし始めて、そして、まだ猫に餌をあげないのかって、聞いてきた。僕はもうあげたって言った。だってママが出かけたらすぐナオミとゲームをして遊びたかったから。もう一度ママに、いつジョンに会いに行くのかって聞いたら、お前には関係ないことだって僕に怒鳴って、2階へ行っちゃった。又、長電話。それから、厚化粧やらなんやらで着飾って下りてきて、出かけてくるって言った。家が滅茶苦茶だっていうのは、ママが言った通り。クモの巣やらなんらやが、家中にある、今。8月11日僕がやりたいのかどうかはわからない。いつ感染させられるかわからない。キノコ採りみたいなもんだ。キノコを採って食べるのは危険だ。だって、毒キノコがあるし、そうしたら毒にやられちゃう。8月13日今日の午後、ちょっとしたことが起こって、それ以降、僕はずっと変な気持ちがする。説明するのは、ちょっと難しい、本当。僕は台所にいて、ナオミとゲームをして遊んでいた。お皿から2、3センチの所で縄を引っ張って止めてたら、ドアに誰か来た。すっごくびっくりして、どうしていいのか分からなかった。固まっちゃってた。ナオミは、縄につながれたまま前に行こうともがいてた。ドアベルが又鳴って、だから僕はドアを開けに行った。例の背の高いアメリカ人の兄ちゃんが二人いた。ずっと微笑みながら、話す係の方が、お母さんは在宅かなって聞いた。僕がいないと言うと、そいつはもう一人の連れの方を向いて、そいつが何かサインを出したはずだ。だって、僕の方を向いて、イエス様がどうしたとかそんな話をいきなり始めやがった。家々をまわって皆にイエス様が僕らを救済してくれるっていう吉報を伝えているんだって。そういうことは、ママに会って言ってくれって言って僕はドアを閉めた。台所に戻ると、ナオミのやつが気がおかしくなったみたいになって餌を食べてた。僕はすごく腹が立って、ナオミの所へ行って、紐を引っ張って持ち上げた。高く持ち上げたから、ナオミは首つりみたいになった。ここからが、本当に恐ろしいことになった。だって、僕は本当にナオミを高く吊るしてたんだもの。僕の顔くらいの高さ。ナオミの体は、紐の先でくるっと回った感じになって、僕と向い合せになった。太陽の光が丁度ナオミの顔に降り注いでいて、ナオミの眼はもう眼みたいに見えなくて、2つの平らなガラス板かなんかみたいだった。それはすごく恐ろしくて、僕はすぐナオミを下に下ろした。その時はすごく寒気がした。だから庭に行った。今日は風がかなり強くて、雑誌が芝生の上に散らばっていた。続く。
2020年06月25日
おはようございます、ひなこです。8月5日今日は1日中、ナオミにエサをやらなかった。ナオミはずっと僕にまとわりついてたけど、僕は無視してた。ナオミが自分の身の程を知るためにだ。僕が世話して当たり前なんて思うべきじゃない。もし僕がいなかったら、あいつはまだ道の向こうで新聞紙かなんかに包まってたんだ。台所の引き出しの中に鍵を見つけた。物置の南京錠の鍵だ。物置に入って、中を見回してみた。ほとんどの物は、パパの物だった。本とか箱とか、そんな物。本は、どれもそんなに面白そうじゃなかった。でも、片隅に積み上げられていたエッチな雑誌を沢山見つけた。すっごく古い雑誌。女の人の性器とかは写ってないやつ。何冊かを庭に持ち出して、2、3時間読んだ。8月9日ここ何日かは、そんなに退屈してない。ナオミとするゲームをあみだしたから。ナオミの首輪に紐をつける。そして、ナオミのお皿にエサを入れて、ナオミが食べに行こうとすると、僕が紐を握って、皿まで到達できないようにする。そうすると、ナオミはすごく騒いて声を出す。しばらくすると、僕は餌を冷蔵庫の中にしまう。お腹が空いている時じゃないと、僕と遊んでくれないから、それが一番良いんだ。庭で、雑誌は全部読んじゃった。退屈な時は、台所に戻って、冷蔵庫から餌を出して、又、ナオミとゲームをして遊ぶ。長い紐を使って、ナオミが本当に腹を空かせるまで待つのが1番面白い。だって、紐が長いと、ナオミは猛ダッシュで餌まで走って行くんだけど、紐がぴんと張ると、餌の手前でぐいって引っ張られてしまうから。雑誌はすごく良かった。肝心なところは見れないけど。この女の人達の中で誰か、淋病になった人はいるのかな。エディーの兄さんみたいに。何人かは罹ったよな。だって、こんな奴らは皆、売春婦かストリッパーかそんな連中だから。そんな病気にかかった様には見えないけど、エディーの兄さんだってそう見えないものな。毒がまわるにはちょっと時間がかかるんだ。また今日も、じっくり自分のちんちんを見た。僕はまだ大丈夫。続く。
2020年06月24日
おはようございます、ひなこです。2日前にちょっと言及した、ナオミ・イシグロの短編に出てくるコーヒーの美味さのわからない主人公は、その後、すっかりコーヒー・アディクトになってしまって、裏切り者!と思いました。で、その短編に、Lumpenって単語が出てきました。形容詞として使われています。ルンペン?日本で、昔、浮浪者というような意味で使われていましたけど、あれと関係あるのか?そういやあ、昔、北海道にはルンペンストーブなんていうのもあったけど、あれも関係あるのか?いや、ないよな。っていうかこれ英語?時々、フランス語のフレーズが出てくるので、これもなにか教養がないとわからない言葉なのか?とググってみました。フランス語っぽくはないですけども。ドイツ語で、浮浪者。おお、日本で昔、ドイツ語普及してたんですね。同盟国だったからか。でも、この作品内では形容詞だし、と思ったら、イギリスでは、卑俗な、とか社会経済的地位のないって意味で使われているようです。その後、ルンペンストーブのことを調べたりしたら、北海道弁死語辞典なんていうのが出てきました。ははは。そうだよね、今の北海道の若い人、ルンペンストーブわかんないよね。8月1日今日ママは、又、一日中出かけてた。家で一人で留守番してるのは苦にならない。それに、一人っきりってわけでもないし。ナオミがいるから。小道をちょっと行った所で、ナオミを見つけてからもう1年近くかな。それは新聞紙に包まれてた。今はかなりでかくなった。痩せてて、黒くて、綺麗な猫。見つけたばっかりの時、学校までついて来るようにしたのを覚えてる。大丈夫だと思ったんだけど、男子のうちのデイヴ・アトキンソンとかあいつらが、学校のグラウンドで捕まえて、投げたりし始めてさ。キャッチボールみたいに。それからトイレに落とそうとしたんだ。あの日、僕はひどく殴られた。今は、もう絶対学校についてこさせたりさせない。ぼこぼこにされるのには慣れっこだ。あいつらは皆、学校のすっげー嫌な奴ら。エディー以外は。エディーだけが、僕の仲良し。でもエディーは、今、自分にガールフレンドがいるって思ってる。4年生のサマンサ・ケンダルと付き合ってるんだって。(ひなこ注:4年生だと子供過ぎますよね。スコットランドでは高校1年生くらいの学年を4年生と呼ぶみたいなんですが、スコットランドの話なのか?!)学校が新学年になって始まっても、行かないことをずっと考えてる。ママがそうさせてくれるかどうかはわからないけど。ママは前はすっごく厳しかったけど、もうそうでもない。ママは夜遅くまで帰ってこないし、僕が何をしてようが、今は気にしない。8月4日いつもいつも庭に座っているのは、もう本当にうんざりだ。ナオミと遊ぶのは、子猫の時みたいに面白くないし。今は、ナオミはただ座っているだけだし、そうじゃなきゃ、どこかにふらっといなくなっちゃうし。腹が減ってる時だけは、僕にべったりだ。あんな風に僕を無視するのは、ひどい。だから餌をやるのを止めようと思う。ナオミがどう反応するか見るために。今日は、エディーが遊びに来るんじゃないかと思ったけど、来なかった。彼女ができたから、もう遊びに来ないんだな。学校には戻るかわからない。学校に行かないのもすごく退屈だけど。続く。ナオミってお嬢さんの名前が登場!これを書いた時、カズオ・イシグロ氏は独身ですから、将来、自分に娘ができてナオミと名付けるなんて思っていなかったでしょうけど。ご機嫌よう!
2020年06月24日
おはようございます、ひなこです。今日から、始まるお話は、ちょっと別世界なイシグロ・ワールドです。毒に対してオブセッションのある小学校高学年、あるいは中1くらい?の男子の夏休みの日記って感じです。いやらしいことが書いてあるますけど、ひなこ、訳しているだけですから~。途中でやめようかと思ったくらいなんですが、最後の方は削除しました~。すみませーん。7月28日今日、エディーの兄さんを見かけた。エディーの兄さんは、淋病にかかった。何週間か前にエディーが全部教えてくれたから、知ってる。海岸通りのボーリング場の外にバイクを停めてるところを見た。でも、その毒に影響されたようには見えなかった。日に焼けて、すごく健康そうだった。きっと、毒がまわるまで、ちょっと時間がかかるんだな。家に帰って、自分のちんちんを注意深く調べた。エディーは、やらなくてもうつるって言ってた。でも、僕は大丈夫みたいだ。エディーは兄さんからうつるんだろうか。7月29日ママは、1階じゃなくて、自分の寝室の電話を使えば、僕が何を話しているか聞こえないと思っているみたいだ。でも、実際は、僕が自分の部屋にいれば、すごくよく聞こえる。昨日の夜は、ママが何度も何度も繰り返し、こう言ってるのが聞こえた。「あのクソ野郎!あのクソ野郎!あのクソ野郎!」ママは叫んではいなかった。でも、僕が家にいなかったらきっと叫びたかったんだろうな。一昨日、ママはあいつと出かけた。で、顔の目の下の所にでっかい痣をつくって帰って来た。僕のママは、もう若くない。1か月くらい前は、そうだな、若かったかもと思う。だって、イケてる髪型にするために出かけたり、ブーツだの真っ赤なズボンだのを買ったりしてたから。その頃日に焼けてたし、もし自分の母親じゃなかったら、若いと思ったかもな。でも今考えると、やっぱ違う。すっごく老けてる。続く。
2020年06月23日
おはようございます、ひなこです。遂に!カズオ・イシグロ氏の新作の発表がありました!来年、3月発売だそうです。日本語訳も同時期発売予定のようです。タイトルは"Clara and the Sun"『太陽とお日様』クララと言ったら、「クララが立った!」のハイジのクララしか浮かびませんが・・・。すっごい楽しみだ~!!!私は、彼の前でナイフを頭上に持ち上げながらも、落ち着いていた。キッチンからの光が彼の顔の片側を照らしていて、彼の頬と顎の骨を強調していた。顔のもう片方は影の中にあり、私は無表情に見つめる彼の片目だけを見ることができた。それからその目は疲れた様子を見せ、ほとんどいらいらしているようになった。私は、階下の道路を通り過ぎる車の音を聞いた。最終的に、私は切りつけ始めた。Jは、私が切り終わるまで、うめき声など全く発することはなかった。彼が手にしていたコーヒーがゆっくりとカーペットの上に広がり始めていた。私の右手の小指が随分と痛んできた。数日前に小さなギリシャの女神の像を彫っている時に、のみで痛めたのだ。その怪我のせいで即座に作業を止めねばならず、その像は未完成のまま新聞紙の上に置かれている。それを完成させようという気持ちもない。以前にも、それと同様の女神像を幾つも彫った。そのような達成は以前と同じような満足感をもたらさなくなった。30分ほど、足音を聞いていない。私の小柄なユダヤ人の近隣は今夜の活動を終えたようだ。そんな今、私は急に、私の肩越しに後ろを振り返った。私の背後にJが立っていないことを確認する度、安心と残念な気持ちが交差した変な感じがした。彼はやって来る。そのことを私は確信していた。4年前のあの勝利の無益さが、恥ずかしいほどに今の私には明らかになっていた。私は、最期にやらねばならないこととして、この部屋にある私の多くの本や多くの小像、家具、私が40年の間に成し遂げたそんな物全てをさっと見回した。だって、自分は、彼が私に挨拶をしに、ここへやって来るということを知っているのだから。終わり。いかがだったでしょうか。これは明言されてないですけど、1年程前に主人公はJが住んでいた所に引っ越して来たってことですよね。Jは地縛霊のように、自分のフラットに住みついているってことでしょうか?この作品は、ちょっと毛色が違うと思ったのですが、この次のGETTING POISONED は、もっとカズオ・イシグロっぽくない作品です。ええ?!って感じで。では、ご機嫌よう!
2020年06月21日
おはようございます、ひなこです。「私達が関係ない分野にいるっていうのはどういう意味かな。私は学者だ。君は倉庫の監督係だ」Jは又笑った。「なんて言い方だ、お前よ。でもお前が言いたいことはよくわかるぜ。俺のことなんてそんなに心配するこたあねえ。コーヒー、コーヒーでも飲むか?」私は頷き、彼はその部屋に続いてある狭いキッチンへ消えた。彼がカップや壺をがちゃがちゃさせる音を、私はしばらく聞いていた。それから、彼が聞こえるように大きな声で言った。「昔、私達が結んだ協定を覚えているかい?」「何て言った?」と声がした。「君と私で、協定を結んだ。昔、川岸で。私は釣りをしていて、君は私の後ろに座っていた」「そうだったか?一体いつの話だよ、お前。砂糖は入れるのか?」「いや、結構。ありがとう」と立ち上がりながら私は言った。彼が部屋の中に戻って来た。両手にコーヒーカップを一つずつ持って。彼はドキッとした表情で、立ち止まって私を見た。私は何気ない感じでナイフを握っていたが、私の振る舞い方は、私の真の目的を明らかにしたと思う。彼の唇は少し開かれ、それから再び閉じられた。彼は、もう疲労しているようには見えなかった。そしてほんの少しの間、彼が17歳だった頃の姿を彷彿させた。私達は、互いを凝視しながら立っていた。多分、丸々1分程もの間。彼はコーヒーカップを置かなかったし、彼の顔はほとんど無表情になった。私は、その時言い訳の考えを捨て、ゆっくりとナイフを上に上げた。「ああ、やっと思い出したよ」と彼は言った。彼の声には何の感情もなかった。「そうか。お前はお前の側の協定を守るためにやって来たんだな」私は黙っていたが、一歩前進して、ナイフが届く距離に移動した。「ああ、はっきりと思い出したぜ」彼は続けた。「おめえは聞いてないと思ってたぜ。お前の釣りに夢中だったじゃねえか」彼はすばやく微笑み、それから彼の顔は再び、無表情になった。「でもな、お前、お前は40歳になるまで後何年かあんじゃねえか。お前は俺側にも協定守って欲しいわけか?」「君の望むことならなんでも」「よし、じゃあそういうことで」続く。
2020年06月20日
おはようございます、ひなこです。彼の部屋は、殺風景であるという以外には何も目を引かない部屋だった。使い古されたくたびれた見かけの幾つかの肘掛け椅子やら、冴えない小さなコーヒーテーブルから目を逸らせる物はほとんどなかった。部屋の角のほの暗いランプの光が唯一の光源で、そんな暗闇を通してだと、彼の部屋の壁には壁紙が貼ってあるのかどうかすら容易に確かめられなかった。彼の友人達は、喋り、笑い続けたが、Jは黙ってしまっていた。私もほとんど何も話さなかった。何度か、部屋の外の廊下を通り過ぎる足音を聞いた。そして、真夜中近くになって、やっと二人の客は重い腰を上げた。戸口で、厚化粧の女はJに大きな音を立ててキスし、楽しい誕生日が過ごせたんだったら良かったんだけどと言った。それから、私達はやっと2人きりになった。Jは相当変わっていた。かなり太り気味で、二重顎になって、少々前方に垂れ下がっていた。疲労していうように見え、2週間ちゃんと寝てないんだと私に言った。倉庫の監督者として働いたんだと彼は言った。楽しんで働いているのかと尋ねると、良い仕事だったと彼は答えた。「誕生日プレゼントを持って来たよ」と私は言って、カバンから包みを取り出した。Jは、彼の椅子に座ったまま前屈みになって、少しの間感激したような顔をした。彼は包みを受け取ると、包装紙を取らずに暫くじっとそれを眺めていた。それからゆっくりと包装紙を開け、黒いケースを見て微笑んだ。それを開け、驚いた。「お前、何だ、これは?バナナ・ナイフか?」「いや、それはトルコ製なんだよ。トルコ人が16世紀に使っていたデザインをモデルにしてるんだ。柄のところが特に気にっているんだけどね」「ああ、トルコのものか」「君はいつも行きたがっていたじゃないか」と私は言った。「ああ、ずっと昔のことさ。子供じみたことはあきらめなくちゃならないもんさ」彼は微笑んでナイフをケースから取り出した。それはほとんど50センチほどの長さがある非常に美しいアンティークだった。「旅行はしたのかい?」と私は尋ねた。「ああ、一度な。ずっと昔だ。今となっちゃあ、何の違いもねえけどな」彼は疲れた笑顔を私に見せ、ナイフの先をきわめて用心深く触った。「お前、俺に付きまといに来たんだろ、良心みたいにさ」「私に会えて嬉しくないのか?」「勿論、嬉しいさ。でもわかるだろ。今はな、物事が俺の周りで全部侘(わび)しいんだよ。ジメジメ湿っぽくてうらぶれてる」彼はちょっと微笑んだ。「だけど、すまんな。そんなに陰気になるこたあねえな。夜の時間だものな」私はドアの方に向かって頷いた。「多分、君がよく眠れない理由はそのせいなんだろうね」と私は言った。「ドアの向こうで行ったり来たりしてるあのうるさい足音のことさ」「全くだぜ。廊下の向こう側の部屋にいる若い女がお客さんらを楽しませるのが好きでな。時にゃあ、朝までだぜ」「今の君の友達のことだけどね、仕事の知り合いかい?」「友達なんかじゃねえよ、お前。ただの知り合いさ。時たま遊びに来んのさ。ところで」と彼は前屈みになってコーヒーテーブルの上に置いてあった鍵の束を持ち上げた。「誰かがここに忘れて行ったんだ、1週間位前に。お前んじゃねえよな、多分」「いや、私の物ではないね」「まあ、どうでもいいけどな」彼は鍵を置き、それからナイフを注意深くケースの中に戻し横たえた。「お前がトルコ建築について読んだあの論文は良かったな。活気づけられるって感じでな」「ありがとう。君がいたなんて気づかなかったな」「勿論だろ。俺はいつだってついて行く努力をしてんのさ。だって、結局のところ、俺達は全然関係ねえ分野にいるわけじゃねえか。おおそうさ、ついて行こうとしてんのさ」続く。
2020年06月19日
おはようございます、ひなこです。昨日、白菜を丸一個買って来て、又、なんちゃって即席キムチを作りました。夫の要望です。(私以上にぺろりと食べ尽くした人)でも、高血圧の人なので、「しょっぱい!」と言うので、今回は、前回より塩分控えめにしました。健康的な感じはしますけど、ご飯のおかずにするには醤油をかけないとダメかも~。私は、彼が別の小枝を拾い上げ、それからもう一度削り始めるのを見ていた。私は黙って、彼のナイフの刃の下で剝かれていく木の皮を見ていた。「切って怪我するよ」と私は言い、最終的に「指を切るよ」と言った。Jは肩をすぼめ、小枝を削り続けた。私は川の水とその流れを見ていた。午後の日差しにもかかわらず、私は全身に寒気がした。彼が村を出た最初の年に、私達はたまに手紙のやり取りをした。彼はレストランで働いていた。彼曰く、海外旅行に行くのに十分なだけ稼ぐ、それだけのためだと。そのうち、結局2人は音信不通となった。私はJとは20年以上会わなかった。もう一度彼の居場所を突き止めるまでには、骨の折れる取り調べが伴った。だが最終的に、私は一つの住所を手に入れた。そしてある遅い夕刻、私は陰鬱な建物の2階のドアをノックした。Jは、私にすぐ気づいて、中に招き入れてくれた。彼には客がいて、幾分怪奇な風貌の2人は缶ビールを飲んでいた。女の方は、大柄で厚化粧だった。彼女の連れの男は、より若く見え、襟の折り返しに花を付けていた。2人共、泥酔していた。しかし、Jは素面のように見えた。私は、彼の質問に手短に他人行儀にそっけなく答えた。それから私は、彼がきまりが悪そうな様子をし、自分の部屋を見回してチェックして、それからお客の二人の方を素早く見たのを見て取った。彼の質問は終わり、彼が私を直視することに困難を見出しているのに私は気づいた。続く。
2020年06月18日
おはようございます、ひなこです。It's no so easy.と先日誰かが言いました。そうしたら、私の頭の中で、♪It's not so easy It's '84 now.♪というのが突如流れまして。確かこれは、Happy Endingって歌。歌っていたのは、ジョー、ジョー・・・ジョー何だっけ?ググって発見。ジョー・ジャクソン!アルバムも持ってたのに、すっかり忘れてた。そうです、この歌が入っていた、ボディーアンドソウルの輸入盤を持っていたのです。一緒に歌っている女性は、Elaine Caswellさんだそう。「そんなに簡単なことじゃないよ だって今1984年なんだよ」って歌詞なんですけども、今2020年ですからね。1984年は、えーっと、36年も前?!驚愕の事実!1984年でそんなに大変だったなら、今はどうやねんって話ですよね。そこから関連して、クイーンのIn the lap of the god revisited の始まりは、Its so easy But I can't do it だったなー。と、おばあさんは昔話を始めると長くなる~。たった今、誰かがユダヤ人の女の子の部屋から出て、私のドアを通り過ぎ階段を下りて行った。ドアが開いた時、短い言葉のやりとりがあったが、何を言っているのか私にはわからなかった。彼女と私は、一年以上、廊下を挟んだ近隣として暮らしている。私が彼女にコーヒーをご一緒にどうですかと私の部屋に誘ってもおかしくはないだろう。実のことを言えば、私はこのちょっとした案について数か月熟考していたのだった。私の電話が故障したので、彼女の電話を借りたいという口実で彼女の部屋に入る。そうすれば、彼女の電話番号をメモすることができる。こうすることによって、近所のニュースエージェントの窓にある、滑稽なほどに卑猥な見出しのついた広告カードの多くの番号と比較することが可能となる。勿論、彼女の番号を見つけなかったとしても、私の疑いは、晴れなかっただろうが。それでも、それは考えるのを止められないことであり、更なる証拠への期待が私を刺激するのだった。私が書き始めてから1時間以上が過ぎた。私は自己欺瞞を嫌うし、Jがやって来ない可能性は慰めにはならない。彼を恐れているにもかかわらず、もう一度二人が出会うという期待に興味深い興奮を覚える私であった。Jは、私達の村を17歳の時に出た。彼の最後の夏の多くの時間を私達は川辺で過ごした。その頃には、私はかなりな釣りの達人になっていて、これは私がJよりも上手にできる唯一のことだった。彼はしばしば私を見物するためにやって来て、川岸に座って1時間かそこら話していた。彼は、もっぱら村を出る計画と世界を旅する話をしていた。まず最初にロンドンに行き、そこで劇場の仕事を見つけ、それからトルコに旅立つということだった。どうしてそれほどトルコに魅入られていたのか、私には分からずじまいだった。多くの女達と南フランスについて聞いた話についてもよく話していた。あの村に居続けることは貝殻の中で生きるようなものだと彼は私に言った。私が十分な年齢になったらすぐ出るのが賢明だと。彼は当時まだ13歳だった私に、その時が来たら彼に倣い私も世界を旅すると、私に何度か約束させた。彼が旅立つ数日前、川辺のいつもの場所で釣りをしていた私のところに彼はやって来た。彼の計画は完了したと彼は言った。彼のロンドンにいる友人が芝居の役者の仕事を紹介してくれると。彼は意気揚々としていて、私が釣りをしている間、ずっと話し続けた。彼の姿を鮮明に覚えている。彼の痩せた、ひょろひょろした姿で、急な川岸の私より高い位置の芝の上に座っていたのを。彼の両手は動いていたが、私は最初のうち何をしているのかよく見えなかった。「お前のことはわかんねえけどよ」と彼は言った。「でも俺は絶対年を取りたくねえんだ。意味ねえじゃん」私はちょっと振り返った。そして彼が何をしているのかを見た。彼は小さな枝の先を彼のペンナイフで削っていたのだ。私は、再度ゆっくりと流れる川の流れに注意を向けた。「俺の親父みたいな年まで生きたくねえよ」Jは続けた。「俺が先に死ぬとするよな」「ああ」私は急いで言った。「そうだと思う」「いいか、俺達は取引するんだ、俺とお前でさ。俺達は40歳になった時に互いを殺し合うんだ」彼の両手が、ほんのしばらく止まった。「どうだい?」と彼は尋ねた。「手を切るぞ」「何だと?ああ」彼は小枝を横に投げた。「でも思うに、俺の方がちょっと年くってるよな。何か他のプランを立てねえとな」続く。
2020年06月17日
おはようございます、ひなこです。今、私は40歳の誕生日の深夜に、ここに座ってJのことを恐れているが、Jのことを恐れるのは、私にとって目新しいことではない。子供の時ですら、彼には何か変わったところがあると気づいていた。実に、私は時々彼のことを芯から非常に恐れたものだった。それは、突然の波のように私を飲み込み、出来る限り彼から離れるために走り出したい衝動を覚えた。今となっては、そんな時に実際に彼が私を煽り立てるようなことをしたのか定かではない。思い出せるのは、一人で野原を歩いている時とか、小川の横で二人で一緒に話している時などに、恐れが私の中に吹き荒れ、走り出したということだけだ。そうした最初の何回かは、Jは私の後を追いかけたので、私はより一層半狂乱で走らなければならなかった。彼はいとも簡単に私に追いつき、草の上に私を押し倒し笑った。一体どうしたんだと言って。多分、本当に彼は理由がわからなかったんだろう。今よりも前に、何がそんな風に私が彼を恐れる理由となるのか考えたことがある。今でもまだ思い起こせる事件がたった一つある。それはあの頃起こった。サリー・クロッフィックをスパイするために、彼が私を背の高いポプラの木に連れて行った時だ。確か、私達がサリーの農場内の家に向かっている途中だったと思う。正確には覚えていないが。とにかく、私達は夏の夕方に耕した土地の端っこを歩いていたのだが、道中、一匹のうさぎに出くわしたのだ。体内の激しい苦痛の周期に合わせて、その目は開閉された。私はその光景に惹き付けられそこに立ち尽くしていたが、Jはそれを足で突いて、うさぎの苦痛を止めてやらねばならないと言った。Jがどこに行ったのか私はわからなかったが、Jは私の横にはもういなかった。私はうさぎの姿にとても釘付けになっていたので、どこに行ったのかと見まわすこともしなかった。私は恐れてはいなかったし、可哀そうとも思わなかった。奇妙なほど強い興味にとりつかれ、うさぎの眼が開いたり閉じたりする規則正しさが、私に好奇心に満ちたスリルをもたらした。それから私が気づく前に、Jは戻って来ていて、どっしりと地面に腰をおろして座り、重い石でその動物を叩きのめしていた。永遠にその動作が続けられるんじゃないかと、私には思えたほどだった。全く面白くもなさそうに、打ちのめし、打ちのめし、まるで石を細工して何かを造っているような感じだった。彼は止めることなくずっとその動作を続け、その眼が開閉するのが、頭がひどく潰されたずっと後まで続いたようだった。私は1メートルぐらい離れたところで立って見ていた。眼が開閉するのが止まるのを見届けるために。そしてそれからJは、私をぐいっと引っ張って笑った。急がないとな、サリーを逃しちまうぜと言いながら。彼は、かなり強く私を引っ張り、私達は歩き続けた。私達が立ち去る時、まだ眼は開いたり閉じたりしていた。続く。
2020年06月16日
おはようございます、ひなこです。彼の足音が聞こえたような気がして、私はタイプライターを打つのを止めた。こんなに何年も過ぎた後でも、私にはそれがわかる気がした。しかし、私は間違っていたようだ。又もや、足音は私のドアの前を通り過ぎ、小柄なユダヤ人の女の子の部屋まで続いたのだった。夜通し頻繁に彼女の部屋にやって来るのが、同じ人物のなのか、それとも別々の人間なのか私には定かではなかった。何か月もの間、私は彼女が売春婦なのではないかと疑っていた。しかし、確信は持てない。廊下や階段で偶然顔を合わせることがあったが、私達は礼儀上、単に会釈したり小声でもそもそ挨拶するだけだった。彼女の眼をじっと見てみたが、私を口説こうというようなそぶりは全くなかった。彼女は、背が低く痩せていた。彼女の髪は薄く、黒かった。よく膝小僧まであるあるブーツを履いていた。ブーツと夜間の足音が、私の思索の根拠の全てだった。私はもっと手掛かりが欲しかった。それで、ほんの僅かでも彼女の夜の活動の一端を捕まえようと、しばしばずっと向こう側の角の壁に耳を押し付けたりもした。でも、何も聞こえたりはしないのだが。ここに座って彼女のことを思い、今この瞬間、彼女の部屋で何が行われているのか想像することに奇妙な楽しみを見出したりもする。彼女にコーヒーを勧めて部屋に入れるというアイディアを、私は何度も楽しんだ。しかし、それから私の思考はこの夜のことに戻った。私の40回目の誕生日と、そしてJのことに。ユダヤ人の向かいの隣人が売春婦なのかどうかということについて思いを巡らしているのに気付いたのは、Jのせいというところもある。というのも、ずっと昔、サリー・クロッフィックが村の雑貨店から出て来た時に、彼女のことを指摘したのは彼だったからだ。その頃、私は11歳だった。そしてJは15歳だったに違いない。彼が私を小突き、サリーの方を顎で指し示した時、私達は教会のホールの外の壁の上に座っていた。「おい、お前は、あの女のことを知らねえよな」と彼は私に言った。それはどういう意味かと私は尋ねたが、彼はもし知りたいなら見せてやってもいいと言って笑った。Jの言葉に非常に興味を持った私は、その日の午後、何度も説明するよう求めた。その度に、彼は笑い、時を見計らって私に見せてやると言った。続く。
2020年06月15日
おはようございます、ひなこです。部屋の最も重要な幾つかの場所には、私が最も気に入っている彫刻を展示してある。私はよく大理石を使うが、私が好むのは木だ。柔らかい木を彫ることに、私はしばしば非常に大きな喜びを感じるし、私が得た技術は、取るに足らないものではない。窓台の上に置いた若い女神の像を、特に気に入っている。概して、私の部屋を訪れた人々には、私の彫刻が単なる暇つぶし以上のものであることが明白にわかっただろう。私にだって、時々は訪問者がある。例えば、先週は、2人の学生がチェスセットを借りに立ち寄り、半時間ばかり滞在した。壁の2面は、完全に本で埋め尽くされている。私は、広範囲に渡って学んだし、私の専門分野においては、この国の他の人同様、精通していると認識されている。しかし、ここ2週間ほど、私は大学に顔を出していなかった。私は体調が悪いと告げ、大学側が私を信じない理由は何もなかった。私の40歳の誕生日が近づくにつれ、私は情緒不安定になり、この2週間は、どうしても外出しなければならない時しか部屋から出なかった。続く。
2020年06月14日
おはようございます、ひなこです。今度の短編は、Jを待ちながら、です。舞台はイギリスで、登場人物もイギリス人です。廊下の向かいの小柄なユダヤ人の女の子には、沢山の夜の訪問者がいる。きっと彼女は売春婦なのだろう。この数時間の間に、階段を上ってやって来る音を耳にして、何度もタイプを打つ手を止めた。しかし、彼らは私のドアを通り過ぎ、彼女のドアの前で立ち止まった。私の40歳の誕生日が、つい3時間前にやって来た。最初のうち、私はある特定の焦りを示し、床の上をせかせか歩いたり、時々カーテンから覗き込んで路地を見下ろしたりした。2時少し前には、私はここの机の上に、即席に作った武器の数々のコレクションを用意した。つまり、私が彫刻に使う2本の細い彫刻刀や、ブロンズ製のドーム型の文鎮や、木を彫るのに使う細く鋭いナイフなどのことだ。数分の間、私はこれらの道具について熟考した。厳密にどのようにしてこれらを使うのかという難題に興味をそそられて。そのような道具の展示場はほとんど使い道がないことが明らかになったので、私はそれらを、幾分乱雑に机の上の一方に押しのけた。私はJを待っていた。そして同時に、私が怯えていたことを告白すべきなのだろう。つい最近、木の彫刻を作っていた時に、私は右手の小指を痛めた。今、その指でタイプのキーを打つ必要がある度に、私は刺すような痛みに悩まされている。私のすぐ目の前の壁は、チョークのような白色で、壁いっぱいに、私の左側にある幾つかの本棚が奇妙な影を落としている。私の部屋はとても洒落ている。私の家具の多くは、主に趣味の良い北欧の店で買ったものだ。その中でも特に、私は部屋の中心を占めているガラス製のコーヒーテーブルを好んでいる。その上には、注意深く選択したアイテムを置いている。焼き粘土で出来ているハンドメイドの灰皿、入り組んだ紐付きコルクのティーマットのセット、スペインで購入した精巧に作られたコルク用栓抜き。今は私の近くにある、机の上のドーム型の文鎮は、普段ならテーブルの上に置くアイテムだ。これらのアイテムの位置を変えないように、私は注意を払っているので、私の武器ギャラリーに加えるために文鎮を移動させた事は、全くもって不本意であった。続く。
2020年06月13日
おはようございます、ひなこです。愛らしい英国の一軒家で一人暮らしをするのは、私に向いていると思っています。ここは閑静な地域で、近隣の人々は温かな人ばかりです。私のお隣には、背の高い白髪の女性が住んでいます。ご主人は銀行務めだということです。私の家の窓から、彼女が庭を動き回っているのをよく目にします。つい最近は、彼女の庭のリンゴが木々から落ちるので、毎日彼女が落ちたリンゴをチェックしてバスケットの中に幾つかを拾っているのを見かけます。ある時、私達は植え込みを挟んで話していたのですが、彼女は家の中に入って、一つの大きな中国製の花瓶を持って戻ってきました。花瓶に書いてあることを、私に読んで欲しかったのです。何度となく私は中国語は読めないと言ったのですが、彼女は理解していないようで、私に漢字を指さし続けました。夏の始まりの娘の訪問があるまで、私はやすこについてー最初のやすこですー考えることは何年間もありませんでした。でも、それ以降、頻繁に彼女のことが心によぎるようになりました。彼女の想い出は、懐かしさに覆われて曇っているわけでもなく、私に痛みをもたらしたりもしませんでした。むしろ、それは私に、ある種一風変わった、時に思い出すのがつらいほどの悲哀である奇妙で不穏な種類の悲嘆をもたらします。私は頻繁に、私があの夜見た彼女の顔の様子を思い出すのですが、多分あれは、原爆に対する虫の知らせだっただけでなく、やすこがあの時見た何か、私自身の顔に彼女が見て取ったものへの前兆のようなものだったのだと思えます。もし彼女が生きていたら、今頃何をしていたのだろうと、しばしば考えます。それに、彼女のお父さんについても思いをはせている自分に気付きます。あの時、彼についてあんな風に決めつけたことを恥ずかしく思います。彼がああいう状況に陥ったことについて、どうして非難されねばならないのでしょう。そういう物事は、私達の力の及ばない事であり、非難を押し付けても無駄なことです。私は、ここで私のテーブルで読書をして長い時間を過ごします。私の英語の勉強にもなりますし、いつか日本に帰ったら、多分英語を教えられるんじゃないかと思います。でも、近々日本へ帰るという予定はありませんが。私は、寒さと小雨にもかかわらず、この国のことが大変好きになりましたし、それに、ここには私の娘達がいます。再び、絵を描き始めようかとも思い始めました。実際、絵筆を数本といくつかの絵の具を買いに行きもしたのです。絵を描きたい情熱を持っていたのは、もう何年も前のことです。でも、それがきっと私に戻って来ることを、私は信じているのです。終わり。いかがだったでしょうか。会話の文を長崎方言にできたら最高なんですが、私はわかりません。長崎出身の友達は佐世保の人で、彼女いわく、佐世保弁はまた違うらしい。もう2作ある短編は、うって変わって、ちょっとカズオ・イシグロさんのイメージと違うお話です。では、御機嫌よう!
2020年06月12日
おはようございます、ひなこです。私がヤスコに会うことは、二度と再びありませんでした。その翌日、原爆が落ちました。空は奇妙で、雲は巨大で、どこもかしこも燃えていました。やすこは亡くなり、彼女のお父さんも亡くなりました。他にも多くの人々が亡くなりました。道の角で魚を売っていたおじさん、私の髪を切ってくれていたおばさん、新聞配達の少年。私は、前日のしんごっこうの庭園での出来事を誰にも言いませんでした。ナカムラさんが戦闘中に戦死したと知ったのはそれから数か月過ぎてからでした。それは、多分原爆投下の2週間ほど前のことだったようです。原爆は、私にひどい傷を負わすこともなく、今日、私には傷跡も何もありません。私の娘達は、健康に生まれてきて、障害も何もありません。私はそれを投下した人々のことを苦々しく思ったりはしていません。だって、それは戦争だったのですから。戦争というのは、奇妙なものです。それについて理解するのは、絶対不可能だと思います。1年程前ヤスコがー私の娘の方ですー、私に署名するようにと核兵器反対の嘆願書を持って来ました。彼女は、幾つかの事実や数字に言及しましたが、長崎については全く何も言いませんでした。私がそこにいたことを忘れたのではないかと疑うほどです。私はそれに署名し、彼女はそれをどこかに持っていってしまいました。それをどのように使ったのか私が知ることはありませんでした。きっとそういうことを決める場所に行きついて、そういう世界に入っていったのでしょう。何か違いが生じたのかもしれません、誰にわかるでしょう?私は今は、そういうことに関係ない暮らしをしています。続く。
2020年06月11日
おはようございます、ひなこです。夕闇が濃くなるまで、私達はそこに静かに座っていました。「じゃあ、結婚しないって考えは変わったのね」と私は言いました。「わからないわ。ああ、わからない」彼女は疲れたように微笑みました。それからうつむいて自分の両手を再び見つめ、しぼりだすような声で言いました。「私、あなたとナカムラさんが仲が良かったって知ってるのよ。あなたがやきもちを妬かないのは、良い人だからよね」私達は、黙ってもう少し座っていました。そして、最後に私が言いました。「あなたには最善を願うわ、やすこ。でも羨ましがったりはしない。まだ結婚なんてしたくないもの。又絵が描けるようにすること、また教師になること、それが今の私にとって大事なことなの」「結婚はしないの?」「多分、いつかね。でも私にはそれ以外に大事なことだあるのよ」「戦争が早く終わるといいのだけど」とやすこが言いました。私達は、それからもう数分話し続けたと思います。多分、何か大事なことを話したのかもしれませんが、覚えていません。それから私達は立ち上がり、家に帰ることにしました。その時、私はやすこの顔がどんなだったかを思い、恐怖で身震いしました。彼女をもう一度見てみましたが、少し前に目にした不気味な表情の痕跡は全く見受けられませんでした。「どうかしたの、みちこ?」私の表情に気付いて、彼女が尋ねました。「あんまり具合が良くないように見えるわよ」「きっと疲れているのよ」と私は言いました。「ここ何日か、ほとんど寝てないものだから」彼女は、私の健康を気遣って言葉をかけてくれましたが、皮肉なものだと思いながら、私はただ笑いました。その夕方、私は彼女の家には行かず、そのまま庭園で別れました。続く。
2020年06月10日
おはようございます、ひなこです。私は返事をしませんでした。適切な言葉を探していたんだと思います。そして、あれが起こったのがその時でした。奇妙なことが起きたのです、丁度私が友人の顔の方に向き直った時に。太陽は水平線の向こうに沈んでしまっていて、でも後で振り返って考えてみると、それは私達が消えゆく光の中に座っていたのとは何の関係もなかったと感じるのです。私はやすこが私の顔の方に向いてじっと見つめているのを目にしました。その表情は身の毛がよだつほど薄気味悪くて、彼女の顔形を全く変形させてしまっていたのです。その両目は必死に凝視していて、緊張に震えていました。顎は小刻みに震え、歯がむき出しに現れ始めていました。危機感から私は叫び声をあげ、同時に彼女の両肩をぐっと掴みました。多分、とても乱暴に彼女を揺すったのではないかと思います。「一体どうしたの?」と彼女は言いました。「みちこ、どうしたのよ」そして、私が再度彼女を見た時、困惑した表情を除いて、その顔は優しく、美しく、元のやすこの顔に戻っていました。「みちこ、どうして私のことをそんなふうに見てるの?」「でも、あなた、たった今、、とっても、とっても・・・具合が悪そうに見えたわよ」私は笑いました。その時までには、私はとても混乱していたからです。「発作でも起こしたのかと思ったのよ」「みちこ、意地悪はよしてね。そりゃ私は美人じゃないってわかっているけど」私はその話題を避けることにして、単にもう一度笑いました。でも、その経験に、私は非常に怖気づいてしまったのです。やすこは、彼女の工場のことを話し始めましたが、私はほとんど上の空で聞いていませんでした。それから彼女がこういうのを聞きました。「戦争が終わったら、私達、一日中工場で働くこともなくなるわね。その日が待ち遠しいわ。戦争が終わったら何をするつもり、みちこ?また、教壇に戻る?」「できればそうしたいわ」「絵も描くの?絵を描くことは絶対止めるべきじゃないわよ」「ええ」私は微笑んで言いました。「又、絵を描きたいわ。それで、あなたはどうなの、やすこ?あなたは何をするの?」「私は家庭を築きたいわ。子供が大好きだし」「それだけ?」「みちこ、それってすごく沢山のことよ。それが私の願うすべてのこと。子供を持つこと、そしてあの爆弾がやって来て子供達を連れ去らないこと」続く。
2020年06月09日
おはようございます、ひなこです。あの夜、2人はそっけなく別れたはずです。その後2人が会った数回はぎこちなかったと覚えているからです。長い間、彼女の結婚に関することについて、私達はあからさまに話しませんでした。ある朝、私はいつものように橋の上でキノシタさんと電車を待っていましたが、その時、彼の右手にかなり大きく包帯が巻いてあるのに気付きました。私はどうしたのかと尋ねましたが、彼がとても恥じ入ったので驚きました。彼はちょっと照れ笑いをして、ちょっとした事故があったのだと言いました。それで私はちょっと興味を持ったのですが、電車に乗ってから彼が一生懸命包帯を巻いている方の手を私から隠そうとしているのに気付いて、益々興味を持ちました。もっと質問したい気持ちになりましたが、我慢しました。しかし、その次にやすこに会った時、私は彼の包帯を巻いた手について思い出したのです。私達は又、しんごっこの庭園にいました。小さな木のベンチに座って夕陽を見ていました。彼女のお父さん同様、やすこも私がその話題に言及すると恥ずかしがりました。しかし、今回は私はこのことについて聞き出そうと決意していたので、やすこは結局こう言いました。「私のせいなのよ。ガラス鉢の破片を拾おうとして、お父さんは手を切ったの。えっとね、私がそれをコンロに投げつけたのよ」私は驚愕しました。それから自分が何を言ったのか覚えていません。「お父さんがすごく遅く帰って来てね」彼女は続けました。「私、食事の用意をしてあったのに、お父さんたら、お腹空いてないって、すぐ寝たいって言ったの」やすこは神経質に笑いました。「だから、怒って鉢を割ったっていうの?」私は未だ信じられずにいました。「頭にきたのよ。それで投げたの。馬鹿でしょう?」まるで叱られたかのように、彼女は握りしめた自分の手を見下ろしていました。「それは、昔っから使っていた鉢だったの。お母さんも昔使っていたわ」私は、当惑した意見をもっと言ったはずです。やすこは、静かにそこに座っていました。そして私は、やすこは起きたことについてしか言及しないのだろうなと思っていました。ところが、やがて彼女は言いました。「私はその時、この前の夜、あなたが言ったことを考えていたのよ。あなたの言っていたことが正しくて、私は父のことを怒っているようだって。私は父のせいで私がこんな状況に陥っていることに頭に来て、お父さんには私しかいなくて、だから全部お父さんのせいで、お父さんはとっても役立たずで、助けが必要で、だから私怒って鉢を投げつけたのよ」彼女は又笑いました。続く。
2020年06月08日
おはようございます、ひなこです。「お父さんは、みちこさんにお前がいかに私に対して態度が悪いかを言っていたところだよ」と彼女のお父さんは言い、私達は再び食卓の周りに正座しました。あの夏の間、私は頻繁に二人の家を訪問しました。何について話したのか、全て思い出すことは無理ですが、いつでも居心地がよくて、二人に歓迎されていたことは覚えています。しかし、やすことほとんど口喧嘩になりそうになったのもその頃でした。あからさまな喧嘩になったりはしなかったのですが、水面下で何週間もわだかまりが残りました。それは私達が互いに言い合ったほとんどすべての事に気まずい色合いを与えました。自分があんなに肩入れしたこと、それを今考えると不思議な気がします。結局、それは私には関係のないことだったのですから。それは、ある夜、私とやすこが路面電車を一緒に降りたところから始まりました。どこに行ってきたのかは覚えていません。かなり遅い時間だったに違いありません。私達が山道を下っている時、街の明かりが眼下に見えていたからです。気づくと、やがて話題は戦争とナカムラさんのことになっていました。そしてやすこが唐突に言ったのです。「時々ね、みちこさん、私、何を望めばいいのかわからなくなるの。時々彼が戻って来なければいいのにとすら思うわ」私は驚愕しましたが、何も言いませんでした。やすこは、私達が歩いている時、ずっと地面を見下ろしていました。やがて彼女は言いました。「この前私決めたの。お父さんが死ぬまではナカムラさんとは結婚しないって」「ええ?でも、どうして?」「お父さんは、私達と同居することを聞き入れないわ。私達の重荷になることは彼の自尊心を傷つけるって言うの」「でも、何年も長い間待つことになるかもしれないわよ。多分、あと20年とか」「おかげ様でお父さんは健康だから。でもナカムラさんには待ってもらわなくちゃならないわ」「もし、待たないって言ったら?」「だったら、しょうがないわね。お父さんを放ってはおけないわ」彼女はぎこちなく咳をしました。「誰か他の人を見つけてもらうわ」「でも、そんな風に自分自身を犠牲にするなんて、そんなとっても馬鹿げてることが出来るの?お父さんは一人でやっていけるわよ」「でも、わからない?私がいなくなったら、お父さんの人生には何も残らないのよ。お母さんは亡くなったし、それに、じろう兄さんも。お父さんには、もう私しかいないのよ」「でも、やすこ、それはお父さんの問題であってあなたの問題じゃないわ。お父さんにはこんなことをする権利はないのよ。彼の唯一の存在理由があなただなんて。もし他に彼の人生に何もないなら、自分自身を責めるしかないわよ」「まあ。でもお父さんはとても多くのものを失ったのよ。沢山の友達、家族、経歴・・・」「だったら、何か新しいものを見つける必要があるわね。あなたが自己犠牲を払うことに頼るなんて不可能よ」多分、私の声の調子があまりに荒々しくなったのでしょう。その後やすこは黙りました。丘の下まで二人は黙って歩きました。一度だけ私が何を考えているのかと尋ねると、彼女は静かに、「お父さんを放ってはおけないわ、みちこちゃん」と言いました。続く。
2020年06月07日
おはようございます、ひなこです。昨夜、生田斗真君が結婚したと報道がありました!おめでとう!斗真君!お相手との出会いは、私も見ていたドラマ(実は斗真君ファン)「ウラボロス」での共演だそうです。彼女、朝ドラ「半分、青い。」にも出てたから知ってるけど、名前は覚えてません~。そして、横田めぐみさんのお父さんが亡くなったそう。北海道にもゆかりのある方なんですよね、滋さん。それにしても、悲劇だよな、拉致問題。「キノシタさん、ご親切に私達のことを気にしてくれて」私は微笑みながら、言いました。彼は頭をちょっと下げ一礼し、私にもっとお茶を注いでくれました。「二口くらい食べただけで、もう喉が渇くほどだったね」と彼は言いました。「魚料理を作ったのなんて久しぶりだから」あれは暖かい夜でした。それで、彼は立ち上がって庭に面した大きな引き窓を開けました。そして、私に背を向けてそこに立ったまま、両手を着物の袖の中に突っ込んでいました。結局、私も立ち上がって彼の所へ行きました。彼は深く考え込んで、外の闇をじっと見つめていました。庭の向こう端の木々の間では、虫たちが夜の音を奏でていました。「何を考えておられるのですか、キノシタさんのおじさん」「君たち女性に恥をかかせられるとどういう気持ちになるのかを考えていたところですよ。あなた達は我々を甘やかし、そして我々を自分の飯も作れない無能な者にしてしまうんだね。やすこが結婚したら、私はヤナギさんの店で飯を食うしかないないじゃないか。あんなまずい飯をさ」「まあ、キノシタさんにはがっかりさせられましたよ。私達のことを思っていたわけではなかったんですね。ただ単に、ご自分の料理の練習をされただけだったんですね」彼は私の方を向いて頭を下げました。笑っていたので目が細くなっていました。「世の他の人と同様、私も終戦に備えているわけさ」私は笑いました。笑顔で彼の目の周りのしわも一層深くなりました。「キノシタさんは、終戦を望んでいらっしゃるんですか?」「他にすることがあるかね?」「でも、戦争が終わったら寂しくなるでしょう」「そして、幸福にもなるよ」「幸福と寂しさ」私はため息をつきました。「魚にはもっと少量の塩を振ることを覚えておいてくださいね」「ありがとう、みちこさん。ちょくちょくここに来て、私に料理を教えてくれなくちゃね。やすこはただ私のことを笑うだけだから」丁度その時でした、やすこが部屋に戻って来て、自分について何を話しているのかと尋ねたのは。続く。
2020年06月06日
♪べこの子 牛の子 まだらの子 母さん牛によく似た子(←何となく)おはようございます、ひなこです。私達は、あの夕刻の散歩を楽しみました。工場での長い一日の後、お互いにお互いの存在に安堵を見出していました。時々、日中の労働で完全に疲労困憊していない時には、やすこの家まで一緒に歩いて戻りました。そんなある夕方、私達は予定していたのより長く庭園で過ごし、彼女の家に着いた時には、すっかり暗くなっていました。やすこがなにか大声で言っている声を聞いた時、私はまだ靴を脱いでいる途中だったと思います。「お父さん、一体何をなさっていたんですか?」私が部屋に入った時、食卓が広げられ、座布団が定位置にきちんと敷いてあるのを目にしました。そしてキノシタさんは、ゆったりとした着物を着て、急須を手に忙しくしていました。「もう、お父さんったら。私達のためにご飯を作っていたんですね」やすこが言っていました。「疲れて帰って来ると思ってね。どうぞ入って、お座りなさい、みちこさん。今日は暑い日だったねえ」私は一礼して、座りました。彼が炊いたご飯の量に笑いを噛みしめながら。六人分はゆうにありました。「オオシマからこの魚を買ったんだよ。今晩、店の前を通りかかった時にね。外で日向ぼっこしてたから、ちょっと立ち話をしてね」「本当に、お父さんったらどうしたの」と手で口を覆いながら、やすこは笑いました。私達は手を洗って、キノシタさんが私達のために用意してくださった夕食の置かれた食卓に座りました。私が二口、三口食べたところで、やすこが私の方を見ているのに気付きました。それから、彼女のお父さんが疑わしそうに二人の顔を交互に見つめているのに気が付きました。やすこは、又手で口を覆い、吹き出して笑いだしました。魚には、あまりに塩が効いていて、食べるのが不可能なほどでした。私は無礼になるつもりはなかったのですが、私も笑いだしました。キノシタさんは私達二人をじっと見て、彼のお箸を置きました。「魚を料理をしたのなんて、随分久しぶりだからなあ」と彼は言いました。その時には、私達二人は、気にせず笑いこけていました。やすこは立ち上がり、ちょっと待っていてくれれば、自分が何か代わりのおかずを作るからと言いました。彼女は、一人でまだ笑いながら、部屋から出て行きました。続く。
2020年06月05日
おはようございます、ひなこです。私達、ヤスコと私はそれについて話しました。私が雹だと思った空襲のことです。しんごっこう(注:原文はShingokkoです。ググったり、地図を見たりしましたが、漢字はわかりませんでした。新五湖?)の庭園を二人で散策して夕方の時間を過ごしたのことがよくありましたが、そんなある夕方のことでした。やすこは、わたしよりも爆弾が落ちた場所に近い所にいたのですが、屋根の上の雹の音すら耳にしていませんでした。「負傷者はいなかったようね」と私は彼女に言いました。「私が聞いた話は違うわよ、みちこちゃん。小さい男の子が一人亡くなったって。4歳の男の子」「爆弾一つで小さい男の子が一人亡くなった」私は事実を淡々と述べるよう努力しました。「他には誰も怪我をしなかったのよ」彼女は続けました。「それにほとんど何も壊れなかったの。でもその小さい男の子の頭はすぱっと飛ばされたって。男の子のお母さんは、男の子の体を抱えて医者を!って叫んでたって」私は少し笑いました。「走り回って医者を!って叫んでいる姿が想像できるわ」やすこは微笑みましたが、彼女の目は悲し気で空虚でした。「ええ、急いで医者を見つけなきゃって、そうしないと小さい息子が死んじゃうって思ったんでしょうね」その当時、庭園はいつも、夕方の時間が一番良い時間でした。その時間帯には、ずっと涼しくなっていたし、西の空はとても赤くなっていました。薄暗がりに、夏の虫がいたるところに沢山飛んでいました。「ねえ、知っている?」やすこが言いました。「私、生まれてからたった2度しか長崎を出たことないのよ。福岡にいるおばさんの所に行ったの。ちょっと考えてみて。世界中で戦争していて、私は長崎から出たこともほとんどない」「やすこちゃん、兵隊さんになりたかったの?」彼女は笑いました。彼女の笑い方は、いつも恥ずかし気ですまなそうでした。「こんなご時世でそう考えないのは間違いだってわかっているけれど、そう思ってないことをごまかせないわね。工場に、いつも男に生まれていればよかった、そうすれば戦いに行けたのにって言っている女の子が一人いるわ。でも、私は戦いとか戦争とかいうことがよくわからないの。別の世界のどこか遠いの場所で起きているでしょ。時々、私、ナカムラさんがどこに行ったのかすら忘れちゃうのよ。で、あっちで彼が何をやっているにせよ、それを急いで早く終えてくれればいいなって願い始めるの。間違ってるわよね。わかっているわ。でも、時々、そこで戦争が行われているってこともすごく簡単に忘れてしまうことができるの」「あの爆弾が落ち続けてるのと、食料がどんどん欠乏していくのを除けばね」「爆弾についてすら、私、時々不思議に思うのよ。それらが、どこか不思議な、どこであれ戦争が行われている場所から落ち続けているって感じかな。でも、あなたが正しいわ。爆弾は落ち続けて、小さい男の子達の命を奪っている。だから、本当に戦争なのよね」続く。
2020年06月04日
おはようございます、ひなこです。「でも、ナカムラさんは、おじさんを一人にしてしまいますね」と私は静かに言いました。彼はもう一度微笑み、少し頭を下げました。「年寄りはわがまま言っちゃあいけないよ。彼が無事に帰還することを心から祈っているよ」「私もそうします」「君は良い子だね、みちこさん。君は幸福な人生を送るに値するよ。本当に、こっそり待っている人はいないのかい?」この時は、私は否定することができました。直ぐ、彼の降りる駅が近づいてきました。彼は一礼してから、より一層しっかりとブリーフケースを腕の下に持ちなおしました。そして、あの夏の他の朝同様、私は、彼の小柄で前屈みな姿が朝の人混みの中に消えるのを見ていました。その頃のある夕方 ーもしかしたら、その日の夕方だったかもしれませんー、私はずた袋を積むために倉庫で残業しました。私が奇妙なかたかたいう音を聞いたのは、私が地下階にいた時でした。まるで屋根の上の雹がパタパタたてる音のようでした。変だな、と私は思いました。でも、仕事を続けました。上階に移動して、建物のずっと端にある窓を通して太陽の光がさんさんと照っているのを見て、益々困惑しました。じゃあ、あれは雹ではなかったのでしょう。でも、私は帰宅するための路面電車の中で二人の男性が話しているのを耳にしました。なにやら一機の長い飛行機が、その日の夕方空襲し、市の西側辺りに爆弾を一つ落としたようでした。負傷者はいないようでした。私の近くにいた男性が、奇妙な作戦だと言いました。アメリカ人は何を考えているのだろうか、こんな所に飛行機を一機送って爆弾を一つだけ落とすなんて。もしかしたら、戦争にはまだ負けていないのかもしれない。その男性が路面電車を降りた時に、私は彼のシャツの片袖が空虚にその使い道なくひらひらはためいているのに気付きました。電車の席に座っていた私の背筋に冷たいものが走りました。そして、私は窓の外を移動する街の明かりをじっと見つめました。続く。
2020年06月03日
おはようございます、ひなこです。「やっと手紙が着いて、やすこさんはこれで安心ですね」「まあ、そうかな。でもそれは7週間前の手紙だったんでね。娘は心配し続けるだろうね。みちこさんもそんな心配をずっとしてたのかな。もしかして、密かに待っている人がいたりしてね」「いいえ」私は笑って言いました。「そんな人はいませんよ。でもナカムラさんのことは私も心配です」「勿論、そうだよね。君はずっとナカムラさんのことが大好きだったのものね」「はい、私はナカムラさんが好きです。でも、私が心配しているのは、全部やすこのためですよ」彼はちょっと頭を下げました。「娘のために心配してくれるなんて、君は良い子だね」彼は、朝の空気を深く吸い込みました。まだ完全に日中になっていないあの頃の夏の早朝の空は、いつも淡い青色でした。そして、いつもカラスが路面電車の電線に列になって並んでいました。それも、最初の路面電車がやって来る振動で、飛び立ってどこかへ消えてしまいましたが。「私もやすこのために心配しているんだ」彼は続けました。それから、奇妙な表情で私の方を向きました。「我々は二人共私心なく心配しなければならない、そうだよね、みちこさん?」多分、その時、私はちょっと顔を赤らめました。「何の話でしょう、キノシタさん」彼は奇妙な表情で私を凝視し続けました。それから上を向き、手を上げました。「あ、我々の路面電車が来た」私達が乗る橋のところに来る時には、車両はいつも混んでいて、私達は必ず立っていなければなりませんでした。「キノシタのおじさん」路面電車が再び動き出した時、私は言いました。「このお見合いには喜んでらっしゃると思ってましたけど。二人が結婚するように尽力されたのはおじさんですよね」「そうだよ」彼は笑いました。「ナカムラ家は、ちょっと説得する必要があったからね。でもみちこさん、君は私の努力をあんまり喜べなかったんだろうね」「一体それはどういう意味ですか、キノシタさん?」彼は再び微笑みました。「多分、我々の秘密を分かち合う時なんだろうね。勿論、君はナカムラさんがやすこを選ぶことを望んだんだろうが、君の別の一部が、2人が結ばれないことを望んでいたのではないのかな」私が否定の言葉を見つけることができたのか、私は覚えていません。多分できなかったのではないでしょうか。窓の外を過ぎ去る建物をじっと見ていた気まずい時間を覚えています。それから彼がこういうのを耳にしました。「それは私も同じなんだ」彼は、私の驚いた顔を見て笑いました。「いやいや、誤解しないで。ナカムラ君のことはとても気に入っているよ」彼はまた笑ったのですが、今度はちょっとぎこちないようでした。続く。
2020年06月02日
おはようございます、ひなこです。オーストラリア、今日から暦の上では冬だそうです。勿論、これらの物事は今となっては何年も前のずっと昔のことなので、ほとんどのことは忘れてしまったに違いないと思います。それでも、一握りの情景が、私に鮮明にありありと蘇るのです。戦争最後の年のあのつらい乾燥した夏に起こったということしか正確な日時は思い出せませんが、例えば、ある朝、私が仕事に行く途中にやすこのお父さんと交わしたあの会話のことは、はっきりと覚えています。中川から外の地区に出るために小さな橋がありました。そこで毎朝、彼と私は他の人達と一緒に市街に向かう路面電車を待ったものです。戦前、キノシタさんは公務員でしたが、その時は彼も私の工場からそう遠くない工場で働いていました。毎朝、彼は役所務めの頃に使っていた小さなブリーフケースを片方の腕の下にしっかりと抱えて、私よりも先に橋のところに来ていました。その頃には、彼はとても痩せてしまっていて、又、寄る年波には勝てず、少々猫背にもなっていました。その日の朝、彼はいつものように微笑んで頭を下げ私に挨拶しました。そして、やすこが遂にナカムラさんから手紙を受け取ったと私に言いました。「元気でやっているそうですよ。あちらは非常に暑くて身体中虫に食われたらしいですがね。戦争は我々の負けだとも書いてありました」「え?キノシタさんはそれについてどうおっしゃいますか?戦争に負けるのですか?」彼は頭を少し振りました。「今、私達が望めるのは、兵隊さん達が無事に戻って来ることでしょう。戦いはもう長くは続くまい。だって私達には何も残っちゃいないんだから」続く。
2020年06月01日
おはようございます、ひなこです。やすこと私は、長崎の中川という地域で一緒に育ちました。既に言及した通り、やすこは家の中で時間を過ごすことを好む、大人しい女の子でした。あの当時は戦時中でしたから、彼女も大変な暮らしを余儀なくされました。彼女は、工場での生活に馴染めなかったので、より気の強い女の子達は彼女をからかいました。また、彼女のお兄さんが戦争が始まってすぐ戦死しました。お兄さんの死は悲劇でありましたが、その僅か3年前に、彼女は癌でお母さんを亡くしていたので、なお一層残酷なことでした。そして、彼女の婚約者が太平洋に出征していたので、彼女の苦しみは続きました。毎日毎日、届かない手紙を待ちました。戦時中、彼女は私の家からそう遠くない、街を見下ろす休火山へと続く曲がりくねった山道の横の一軒家に、彼女の父親と一緒に住んでいました。何週間も便りがない時は、何度となく彼女が家にこもって大人しくしていたのを覚えています。多分、彼女が、手紙が途中で消失したとか、遅配したとかなにか苦情を言って、私が慰めたように思います。他の可能性はもちろん言及せずに。彼女のお父さんには、子供の頃からずっと好感を持っていました。彼の目の周りには、いつも優しさがあり、彼の娘同様、親切で物腰の柔らかい人でした。やすこのお父さん、つまりキノシタのおじさんは、特に穏やかで、その存在に安心させられる何かがあり、私は彼と一緒にいるのをいつも嬉しく思ったものです。続く。
2020年05月31日
おはようございます、ひなこです。私には、ヤスコより年上のもう一人の娘がいます。彼女は、4年前に結婚しました。夫の死のちょっと前のことでした。そう遠くない未来に、お祖母ちゃんになれるといいですね。娘達は二人共、日本についてはあまり知らず、日本語の単語を二つ三つ知っているだけで、日本語も話せません。彼女達にとっては、長崎というのは、母親の生まれ故郷として、また過去に原爆が落とされた場所として世界地図に印をつけられた場所でした。そして、それが当たり前ではないでしょうか?今、イングランドこそが彼女達の故郷なのです。彼女達が私の年齢になる頃、2人は私の家の隣に住む白髪の婦人のように笑って話すでしょう。私は時々、庭の垣根越しに彼女とおしゃべりします。ヤスコが家にやって来た時からほぼ3か月が過ぎました。でも、最初のやすこのことを娘に言及したことが、私に多くの思い出を呼び起こすことになりました。そして、それ以降、自分が頻繁に過去に思いをはせているのに気付いたのです。特に、ここ最近の数週間というもの、私は何度も何度も繰り返し想い出に浸ったのです。続く。
2020年05月30日
おはようございます、ひなこです。娘に、産後のあの頃の日々や、当時私達二人を結び付けていた神秘的な力について話していた時、私は私の人生のもっと過去に遭遇した別の奇妙な、おそらく超自然的な現象を思い出しました。あれは、もうずっと昔のことです。長崎にいた頃です。更に不思議なことに、別のやすこが関わりました。私は娘に、あの最初のやすこについて話し始めたのですが、すぐ遮られました。「前にも聞いたわ」と彼女はいらいらして言いました。「お母さんは。彼女の名前から私をヤスコと名付けた。原爆で殺された人」「ええ、その通りよ」と私は応じました。「あなたは生まれる前から問題児だったから、私の友達のようにおとなしく変わってくれればいいと願ってその名をつけたのよ。でも、物事って思い通りにいかないものよね」娘は笑いましたが、私の言ったことは本当でした。最初のやすこは、私が知っている誰よりも、優しく、親切な人でした。私達が長崎で子供時代を共に過ごした頃、私は何度も彼女を怒らせようと挑発したものです。でも、一度もうまくいったことはありませんでした。私の意地悪の度が過ぎると、やすこはただ立ち去り、一人で泣いていました。ところが、私の娘のヤスコときたら、先代には全く似ていませんでした。彼女は、頑固でけんか腰の彼女の母親に似たのです。娘が最初のやすこについて全く聞く気がないことが見て取れたので、私はその話題を終わらせました。私達二人は、大体、些細な物事について語り合い、3日間はあっという間に過ぎました。ところが、時々、私は娘が私が暇を持て余していてやることがないと想像していることにうんざりさせられました。娘は何度も、私が大人のための夕方のクラスに申し込んで絵を描くよう提案しました。私は娘にその提案への謝辞を述べ、考えておくわと言いました。私達は、仲良く別れ、彼女の婚約者に宜しく伝えられることを私は嬉しく思いました。続く。
2020年05月29日
おはようございます、ひなこです。やっと今日から本文に突入です。私がヤスコを産んだのは、私達がイングランドにやって来た翌年のことでした。おそらくホームシックが原因だったのか、よくわかりませんが、問題の多い妊娠でした。それに加えて産後の肥立ちが悪く、ヤスコがまだほんの数か月の時に、再入院しなければなりませんでした。そこの奇妙なベッドで、娘と隔離されて、痛みに悩まされながら、私は最初の数夜の間、ほんの少しだけ眠りました。幾つかの薬を与えられ、私は眠りと覚醒の間を彷徨いました。そして夜になると、私はまるで窓からの景色を凝視するかのようにはっきりと自分の目の前に、私の幼子が彼女のベッドで手足をばたつかせて泣いているのを見たのもでした。私は彼女の許へ行こうとしましたが、それは無理で、彼女はずっと泣き続け、あまりに泣くので、彼女の具合が悪くなるのではないかと恐れたほどでした。朝に、夫が私のベッドの傍にやって来ると、私はヤスコのことを尋ねたものでした。夫は、彼女が一晩中泣き続けたと教えてくれました。ところが、ある晩、痛みが消えました。私は昼夜通して、長い時間眠りました。そして、一度、私は自分の目の前に、前と同じように鮮明に、ヤスコが静かに眠っている姿を見ました。彼女の小さな口元はちょっと開いていて、ちっちゃな握りこぶしの片方は耳に押し当てられていました。そして朝に、夫が私のちっちゃな娘が初めて安眠したと教えてくれたのでした。私は生まれつき迷信を信じたりする方ではありませんが、当時私とヤスコは、科学者達があまり知らない力によって一つに結合していたと信じています。結局のところ、それのどこが驚きに値するのでしょうか?9か月以上も、私達は一つであり、同じ生き物だったのです。私は、ヤスコが夏の始めに私を訪れた時、これらのことを彼女に話しました。彼女はあまり興味がなさそうで、多分ちょっと照れていました。ヤスコは今、婚約中でもうすぐ結婚します。ヤスコは2年間彼女のボーイフレンドと同棲していました。最近では、そういう行いは受け入れられているのだと私は分かっているつもりですが、それでも私は、彼女がやっと結婚することに安堵していました。彼女は私の家に3日間滞在したのですが、彼女が私と一緒にいる時にリラックスしている様子を見て、私は嬉しくなりました。続く。
2020年05月28日
おはようございます、ひなこです。カズオ・イシグロ氏のデビュー作の短編3作を訳そうプロジェクトです。まずは、A Strange and Sometimes Sadnessからです。うーむ。タイトルから躓きました。Strangeって形容詞ですよね。A strangeの後に名詞がくれば意味はわかります。例えば、A strange manとかね。A Strange and mysterious womanとか。でも、A Strange and Sometimes Sadnessって、どうつながるんだ?!the + 形容詞だと人物になりますが、 a +形容詞も、私の知らない文法ルールがあるのか?!実はこのタイトルは、本文の中に出てくる一部で、小説内では、Rather, it brings me an oddly disturbing kind of sorrow, a strange and sometimes sadness I find hard to place.というのが前後の全てです。この流れだと、ちょっとわかりやすいかな。むしろ、それは私に、ある種一風変わった、時に思い出すのがつらいほどの悲哀である奇妙で不穏な種類の悲嘆をもたらす。タイトルから躓いてこの先どうなるんじゃと思いながら、最初から読み始めると、おっとこれは、長崎出身の日本人女性がイギリスへやって来たという、今までずっとデビュー作だと信じていた、『遠い山並みの光』につながる物語であることがわかります。一気にカズオ・イシグロワールド突入!と、今回はタイトルの話で終わってしまいました。御機嫌よう!
2020年05月27日
おはようございます、ひなこです。この曲は、2017年に発売されたステイスィー・ケントさんのアルバム『アイ・ノウ・アイ・ドリーム』に収録されているそうです。(日本語のアナウンス)女性の声:「名古屋、名古屋です。ご乗車ありがとうございました。この新幹線は東京行きです。東海道線、中央線、関西線、名鉄線、近鉄線、地下鉄線は、反対・・・・」(関西線の後ぐらいから、フェイドインしてきた楽器の音の方が大きく聞き取りづらく、もしかしたら違うことを言っているかもしれません。しかし、やはり母国語。聞き取りできます。英語のディクテイションならこうはいきません)歌詞の中では、東京発になってますが、アナウンスは東京行きになっていました。まあ、この矛盾が気になるのは日本語のわかる人だけですね。あなたの頭が私の肩に寄り掛かっているまた寝ちゃったのねこの夢の列車の私の隣で日本の人はシンカンセンって呼ぶ東京から名古屋へ名古屋からベルリンへそのうち、私は分からなくなる私達がどっちの半球にいるのか窓から外に見えるこの街はたった今私達が通り過ぎた街そっくりに見える人はこれを弾丸列車って呼ぶでも私達は全然移動していないように感じるだけど私は私達が移動しているはずって分かってはいるのよそう、分かってるわ、私達が移動していること、私達が移動してるって、私達は移動している、それもかなり速くあのトローリーを押している乗客係の彼通路をこっちに向かってやって来るわ彼は、私の地元のクラスメイトちょっと付き合ってたこともあった人噂を聞いた気がする彼はニューヨークに住んでいるってウォ―ル・ストリートのスーパー弁護士かなんかになったってじゃあ、何故、彼はとてもリラックスして見えるの飲み物と軽食を給仕しながらこの東京発名古屋行の列車で?それに何故、夜が更けるのがこんなに遅いの?人はこれを弾丸列車って呼ぶでも私達は全然移動していないように感じる教えて、私達本当に移動しているの?だって移動しているようには思えないんだもの、動いてないように感じるのよ全然、移動していないように感じるのあそこのプラットフォームにいる男性私達がたった今通り過ぎた街であの人、完全に私の先生に瓜二つずっと昔、中学・高校の時の先生皆その先生のことが好きだった優しくて、生徒を鼓舞する人だったじゃあ、先生はここで一体何をしているのかしらこんな日本の辺鄙な場所で?何もない土地が沢山ある都会のあの無秩序に拡大したスプロールの後で人はこれを弾丸列車って呼ぶでも私達は全然移動していないように感じる教えて、私達本当に移動しているの?だって移動しているようには思えないんだもの、動いてないように感じるのよ全然、移動していないように感じるのあなたの頭は私の肩に寄り掛かっているあなたは又ぐっすり眠っているこの夢の列車の私の隣でシンカンセンって呼ばれてる東京から名古屋へ名古屋からベルリンへそのうち、私は自分がどこにいるのか分からなくなるそれに、どこに行ったのかも私達はお互いを見つけることができてとても幸運だったわこの鋼鉄とガラスの世界で人はこれを弾丸列車って呼ぶでも私達は全然移動していないように感じるだけど私は私達が移動しているはずって分かってはいるのよそう、分かってるわ、本当に私達が移動していること、私達が本当に移動してるって、私達は本当に移動している、あまりに速くあなたが私の隣にいてくれて、私は本当に嬉しいのこの弾丸列車の中で私の肩に寄り掛かって夢を見ているあなたをもっと近くに抱き寄せてもいいかしらこの弾丸列車の中で夜が更けて段々寒くなってくるにつれて私達は未来へと向かっているこの弾丸列車に乗ってだけど、私達、年を取るのかしら?弾丸列車に乗って弾丸列車に乗って弾丸列車に乗ってサー・カズオ・イシグロさんが来日して新幹線に乗った時にインスピレーションを得たのでしょうか。歌っているのが女性なので、女性視線になっているけど、あなたに会えて本当にラッキーなんて書いてあると、奥さん喜びそうですよね。だって、新幹線で隣に座っていたのは奥さんだと思うから!ご機嫌よう!
2018年12月22日
おはようございます、ひなこです。昨日は、大嵐で、どでかい雹がガンガン降って、雷鳴轟き、非常に怖かったシドニーです。身の危険を感じ、「もっと善い行いを積んでおくんだった」と思いました。私達はリオを出るところ?それとも、ニューヨークにいたの?そよ風が吹いていて、ボサノヴァを覚えてる私達は後部座席にいた私達には贅沢なタクシーのねあなたは膝の上に私のぼろぼろのリュックサックを握っていたあなたはあなた側の窓に寄り掛かってた前方の道路状況を確認するために「この通勤通学者達は皆」あなたは言った「歩く死人達なんじゃないか」そして私達は誓った。私達の夢を護るって前に立ちはだかる全ての嵐から恐怖、そして年を取ること、妥協、それらの強風から、私達は絶望を笑ったとても沢山の人々の人生の絶望を私達がゆっくりと変わろうと点滅する信号に向かっている時にあれは、(パリの)レ・インヴァリデスだったかしらそれとも確か(ロンドンの)トラファルガー・スクエアあれは、夜遅くで、街は眠っていたあなたは後部座席でおどけていた私達がどこかで見つけた友達と一緒にあの頃、私達がいつも出会う種類の人達「この偉大なる世界には」とあなたは言った「只、成功すると運命づけられている人々がいた」そして、私達は幸運な者達としてあの車の中にいたそして、あなたの友達が歌を歌いだした「星に願いを」あなたは手拍子し続けた、何も気にしちゃいないみたいにだけど、一度私が振り向いてあなたに目を向けると広場を運転して横切った時にだけどね変わろうと点滅する信号の光で、あなたの顔は幽霊みたいに見えたあれは去年の9月だったかしら?多少、秋めいていた頃よあなたはとある大通りを横切ろうと、待っているところだった携帯で話しながら相手は多分、あなたのご家族ねあなたのブリーフケースは、脇の下に挟んであった私が近づくと、あなたは振り向いたあなたの瞳には問いかけがあった私はあなたを無視すればよかったのかもしれない只歩いて、横を通り過ぎてしまえばでも、私達は微笑んで、ちょっと立ち話をしたお互いの暮らしぶりについて1,2度、私は思わせぶりな語気に気づいたそれからあなたは、横断歩道に向かって行った車が停まるためにスピードを落とした時にそして、私達は手を振って別れた。変わろうと点滅する信号の下で。うっ。なんか、私ものすごく悲しいんですけど、この歌詞。いや、ひなこさんの訳じゃ全然ぐっときませんよと言われそうですが。若い頃、多分大学生の頃あたりに恋人同士で、お互い夢を持って世界中を一緒に旅した二人ってイメージです。ずっと、そんな若い頃の思い出が振り返られ、最後に最近、去年の9月頃に、ばったり再会したと。二人共、大人になって、お互い家庭を持って、とそんな感じです。あー。それが、信号とからませてあって、まるでもう、映画のようだわ。さすがです。続く。
2018年12月21日
おはようございます、ひなこです。ウェイター? ウェイター?ウェイター?ウェイター、ちょっとウェイター、私を助けに来て頂戴このメニューに書いてあること、一言だってわかんないの私がこういうお洒落な料理に慣れてないからじゃないのよだけど、あなたが私に手渡してくれたものには、私が今まで見たこともない言葉が書いてあるそして、ここにいる私の連れが私をじっと見つめる様子ときたら私がどんどん海の沖の遠くの方に流されているような気分にさせるわ全てが怖く見える、ここにあるもの全てが素敵に見えるちょっと、ウェイター、お願い、ウェイター!まじであなたのアドヴァイスが必要よウェイター、ちょっとウェイター、ほんっと私恥ずかしいのもしこれが本当にフランス語なら、パリで使ってるのとは違う種類よねこの蟹とロブスターの泡は何?このカスレ―(フランスの肉入り白いんげんシチュー)には何が入ってるの?私の連れはとってもくつろいで、ひどく精通しているようだけど私は賢者の言葉を必要としているの、あなたに私の肩を持ってもらいたいのだってもうすぐ決めなきゃならない時が来るってわかってるものこのメニューの最初から最後まで通して助けて頂けない?只、私と目を合わせるだけでいいから、お願いできる?だから、ウェイター、ちょっとウェイター、今晩、私を救い出してそのぴっちりしたタキシードの下では、あなたも人間でしょうあなただって傷心の日々があったはずそしてあなたの幾つかの夢が叶った日々もだから、ウェイター、ちょっとウェイター、今夜は私を救って頂戴ウェイター、ちょっとウェイター、私を助けに来て頂戴これだってあなたの給仕の仕事の一部でしょ私がこういうお洒落な料理に慣れていないからじゃないのよだけどこのメニューは、今まで私が見たどんなものより難しい向こうの方から彼が冷笑的な視線で私を見る様子といったら自分が波立つ幾つもの波へとどんどん流されていくように感じる全てがとっても怖く見える、そしてここの全てが素敵に見えるちょっとウェイター、お願い、ウェイター!あなたのアドヴァイスが必要なのそのぴっちりしたタキシードの下では、あなたも人間でしょうあなただって傷心の日々があったはずそしてあなたの幾つかの夢が叶った日々もだから、ウェイター、ちょっとウェイター、今夜は私を救って頂戴なんでしょう。カズオ・イシグロさん、フランス料理の店で困った経験でもあるんでしょうか。私は、オーストラリア人の日本とは全く関係ないカップルが、なんかのはずみで日本食レストランに行って、そうしたら出てきた料理が全部冷たい物だったそうで、「どうして日本人は冷たい物しか食わんのだ?」と聞かれたことありますけど。「それは、あなたたちが冷たいものばかりをオーダーしたからですねえ」と答えましたが。冷ややっこに酢の物、和え物、おひたしとか頼んだのかしら?!「隣のテーブルに座ってる人、暖かい物食べてませんでしたか?」って聞いたら、「食べてた。なんか美味そうなもの食べてた」と言うので、「もしまた日本食レストランに行く機会があったら、”隣のテーブルの人と同じ物を”って頼むという手もありますよー」なんて答えときましたけど、きっとあの時のあのカップルもこの歌の主人公みたいな気分だったのかなー。何がなんだか全然よくわからんっていう。続く。
2018年12月20日
おはようございます、ひなこです。この曲から『ザ・チェンジング・ライツ』までの3曲は、『ザ・チェンジング・ライツ』というステイスィー・ケントさんのアルバムに収録されているそうです。2013年の発売だったそうです。ここ何年間かあなたが大変な目にあったからだとあなたは言うあなたが以前からずっと抱いていた夢の重さが今あなたを潰したキャンドルを灯した二人のディナーは、全部温めなおしたものばかり二人の喧嘩と失望の数々も繰り返されるえーっと、私二人分の旅行鞄の準備をしたわ。あなたにも相談すべきだったって分かってるけど取引してるふりをするのは、あなたを侮辱するだけでしょうだから私が言った通りにして頂戴今日、二人は旅に出るあなたが何と言おうと、情熱はまだ燃えるのよさあ、また若くなりましょう、週末だけだとしてもまたバカになりましょう、どん底まで落ちましょうさあもう一度やってみましょう二人で昔やった全てのことを私達が雨の中ヨーロッパを旅した夏にあのホテルのこと覚えてる?バルコニーのひん曲がったドア私達が立っている所から、豪雨の市場を見たわね温かいバゲットを二人で分けて夏の寺院の階段でタンゴを踊って、雨を待ったさあ、また若くなりましょう、週末だけだとしてもまたバカになりましょう、どん底まで落ちましょうさあもう一度やってみましょう二人で昔やった全てのことを私達が雨の中ヨーロッパを旅した夏に(これはパートナーを元気つけようとする歌なのかな)ご機嫌よう!
2018年12月19日
おはようございます、ひなこです。この曲は、2011年発売の『ドリーマー・イン・コンサート』(2011年)というステイスィー・ケントさんのアルバムに収録されているそうです。最近、私は絵葉書の恋人になってしまったみたい特に、あなたからもらうのがそうこれから、それもあんまり頻繁に来なくなるなら絵葉書が着いたら、きっと今以上にあなたの絵葉書に魅了されるでしょうお天気の良い港の近くにいるあなたを想像するむこう岸に連れて行ってくれるボートを待ちながらあなたの指は絵葉書スタンドをだらだらと回してるみすぼらしい旅行者向けの店の入り口であるいは、魔法にかけられたあの暖かな夕暮れをぶらぶら過ごしているどこかのカフェのどこかの片隅で絵葉書を書いている良く考えもしないで書かれた、あの言葉と感情のコレクションあの日もそんな風にして、私に送ろうって思ってくれたのかな私は捨てずに全部取ってあるのよ。最近ちょっと大変だけど統一感のないお土産と一緒じゃきちんと整理できないのちょっと驚いてる、私達がどうなってしまったのかにこんな風に絵葉書の恋人達になるなんて、大洋と年月に隔てられてあなたは素敵な道連れを見つけた?そして天が許す全ての幸福をそれとも、あのどんよりと灰色の、小ぬか雨降る国にホームシック?夕方の帰宅ラッシュの人込みの中、家路へ急ぎ歩いている時に私が旅行した時にあなたに送った絵葉書それらは、あなたが送ってくれたものとほとんど合致しないでも、少なくとも私は自分が今何をやっているかというニュースをあなたに知らせたそして、たまにはあなたに心を開いたあなたがくれた絵葉書を全部見返しながら太陽の下、全ての遠く離れた辺鄙な場所から実際にはあなたがどんな暮らしをしているのか、ちっとも書いてないどんな人になったのかちっとも書いてないでも未だ全ての特別な場所の痕跡を帯びている私達の希望と私達の恐れを深くしまい込んでちょっと驚いてる、私達がどうなってしまったのかにこんな風に絵葉書の恋人達になるなんて大洋と年月に隔てられて(あれ?これも悲しいな。きっと女の人の方は彼が好きだったんでしょうね。彼も勿論彼女が好きだから絵葉書を送っていたんだろうけど、旅行に出たままイギリスに帰ってこなかったんだね。女性の方もイギリスにはいないような書き方してるけど)続く。
2018年12月18日
おはようございます、ひなこです。あなたはいつもこういう映画が好みだったわ「カサブランカ」とか「我が心の歌」なんかがね複雑な世界や冒険への誘惑が本当に愛し合っている恋人達を別れざるをえなくするヒーローがストイックに彼ら二人にあったであろう全ての幸福に背中を向ける時あなたはいつもそれをとてもロマンティックだと感じるでも私はそんなのただ悲しいだけだと思うあんなタイミングを選ぶなんて、とてもあなたらしかった広場に太陽が沈みかけてた歩道のカフェ、近所の子供達が遊んでたどこかからアコーディオンの音色突然、あなたは言った、「運命が僕ら二人を別れさせてしまうんだ」それからあなたは肩をすくめた。それ以上もう何も付け足すことはないみたいに多分あなたは、それがとてもロマンティックだと感じるのねでもね、私はそんなのただ悲しいだけだと思う多分あなたは今、アメリカに住んでいる多分、あなたは今、ティンブクタ(アフリカのマリにある)にいる私の中の小さな一部が、こんなに時間が過ぎた後でもあなたを待つことを決して止めないこの希望という楽観的状況に生きるために希望を持つなんてことは、完全に狂っていると思える時私はそれがとってもロマンティックだと思わずにはいられない本当は、それを悲しいと思うべきだと分かっているけど(ああ、これも切ないねえ。女性シンガーが歌う歌の歌詞だから、こういう切ない歌になるのかなあ)続く。
2018年12月17日
おはようございます、ひなこです。そういえば、昔、ブレックファースト・イン・アメリカって歌あったなー。歌っていたのは、ほら、ええと、そう、スーパートランプ!一瞬スーパースランプと言いそうになりましたが、スーパースランプは爆風スランプの前身のバンドだった。今トランプと言ったらアメリカ大統領を思い出しますが、スペルが違います。ザ・グルメにも何度も出てきましたが、TRAMPとは浮浪者のこと。スーパートランプは「漂流者」のこととウィキペディアに書いてありました~。一方、大統領の名前は、TRUMPです。ドイツのアシュケナージユダヤ人の苗字を英語風にしたらしい。スーパートランプってイギリスのバンドだったのかー。だからアメリカで朝食なのね。もうひとつ、知ってる歌あったよな。うーんと、ロジカルソングだったかな?まあそんな話は置いといて。このタイトルを聞いただけで、これはもう『充たされざる者』のラストシーンが浮かびますけれども!そんなわけで、あなたは今この街にいるきっと砕けた心であなたが到着した時は夢の休暇を過ごすんだって思ったはずなのにねもしそうできたなら、あなたは泣きながら眠りについたことでしょうでも、一晩中起きていたさて、あなたがやらなくちゃならないことがあるの朝日の最初の兆候が現れる時に人気のない街を横切って歩いてアムステルダムの大通りへそしてそこで待つのここの市民達が朝食路面電車って呼んでるものをねステップを上がって乗車そうしたらあなたはすぐ車両の一番後ろに見つけるでしょう最高に素敵はビュッフェをあなたの食べたい物が全部あるご馳走を自分の席に持ちこめるなんでもあなたのトレイに詰め込めるだけそして、窓の結露は消え始める太陽が空高く上るにつれてそして、あなたはカフェオレを手にリラックスして座ることができる外では、目覚めた街が音をたて始めるそう、物事は予想通りにはいかないでもあなたはきっと熟考することになるあなたが気にすることなんて何もない自分にご褒美をあげようシナモン・パンケーキを食べよう即、傷心なんて忘れるわ朝の路面電車で朝食を食べるとねあなたが最初に乗車した時はすごく静かかもしれないだけど路面電車が進むにつれて一日を始める人々で一杯になる食べながら、笑って冗談を言っているお皿を席から席へと手渡しするあなたの傷心の夜は、あっという間に遠いものに思えるたとえあなたがよそ者でもその人たちはあなたを生まれ故郷にいる気持ちにさせるその人たちは、あなたのコーヒーのおかわりを尋ねるあなたを一人ぼっちで座らせてなんておかないその人たちは、丁度あなたと同じような人に沢山会っている全員、一人一人に同じことをしたのだから、スクランブル・エッグとハムを楽しんで自分にご褒美をあげようシナモン・パンケーキを食べよう即、傷心なんて忘れるわ朝の路面電車で朝食を食べるとねたとえあなたがよそ者でもその人たちはあなたを生まれ故郷にいる気持ちにさせるその人たちは、あなたのコーヒーのおかわりを尋ねるあなたを一人ぼっちで座らせてなんておかないその人たちは、丁度あなたと同じような人に沢山会っている全員、一人一人に同じことをしたのだから、フレッシュなクロワッサンとジャムを楽しんでそして、ベルギーのワッフルも忘れずにね即、傷心なんて忘れるわ朝の路面電車で朝食を食べるとね以上。うーむ。傷心には食欲!?これは『忘却のサチコ』に相通ずる理論でしょうか。刺身にカキフライにエビの天ぷら~、みたいな。オランダには、本当にそんなトラムがあるのだろうか?!オーストラリアに『寿司トレイン』という名の回転寿司があったけど(今もあるのかな?)、朝食トラムより寿司トレインがいいなあ、私!続く。
2018年12月16日
おはようございます、ひなこです。また旅に出られたなら夏が決して終わらないように感じる私は何人もの友人達から、とっても素晴らしいオファーを受けたものまた旅に出られたらいいな私は日よけの下に座って、私のラテをちびちび飲みたい有名なカフェの雨おおいの下で時差ぼけと迷子になった私達の預け荷物また旅に出られたらいいのになウェイターに私達を叱ってもらいた私達二人がどちらも理解できない言葉でその土地の習慣について私達が言い争っている時にまた旅行に行きたいな交通渋滞に巻き込まれ座りながらイライラして、私達の乗る飛行機のことを心配したいあなたのうんざりするコメントに、私は半ば気が狂いそうになりながら熱帯の雨の中を、あなたと一緒にダッシュして雨宿りしたいまた旅行に行きたいな火災報知器の誤作動の音で目を覚ましたい全然魅力的じゃないぼったくりのホテルでそれから、あなたの腕の中で二度寝するまた旅行に行きたいなでも、どうやってまた旅行に行けるだろうまた私が一人で想い出に浸っているだけだって分かっているのにまた私が一人でかき集めてるだけだって知っているのに私の心を壊してしまう想い出をね(あれ?楽しい歌だと思ったのに!最後に一気に哀しい歌になっちゃった)続く。
2018年12月15日
おはようございます、ひなこです。今日からは、サー・カズオ・イシグロが書いた歌詞です。「ザ・アイス・ホテル」から・「ソー・ロマンティック」までの4曲は、2007年に発売されたステイスィー・ケントさんの『ブレックファースト・オン・ザ・モーニング・トラム』というアルバムに収録されているそうです。アイスホテルはスウェーデンにあるようです。北海道にもあるみたいですけど。道産子ひなこにとっては、珍しくもなんともないので、泊まりたくないですけどね。さあ、あなたと私で氷のホテルへ行きましょうカリブ海の方はもうみんな予約済みどちらも同じようなもの前は私、もっと夢中だった(カリブの)バルバドスやアンティグアにだけど今は北極も私達に似合うと思うのあなたと私、二人で逃避行しましょうよ氷のホテルへ何もかもを氷で作ったんだって。それは純粋で透明ソファーもロビーもなんとシャンデリアもよ温度計は保証する常に一定、マイナス5度私達の必要な物をそんなに素晴らしく提供してくれる他の場所があるかしらあなたと私、二人で逃避行しましょう氷のホテルへロマンティックな場所(イタリアの)ヴェロナや(フランスの)パリみたいなそういう所ではいつも他のことに気を取られちゃう初心者だけよヴェニスを信頼するなんてそしてあの夢みたいな水路熱帯地方がどんなかなんて私十分知っているものだからあなたと私、二人で逃避行しましょう氷のホテルへ続く。
2018年12月14日
おはようございます、ひなこです。シーン77.裏部屋/聖具室。早朝。クローズショット:デイヴィッド。壁にもたれかかっている。それから起きだす。辺りを見渡し、それからリラックスする。裏部屋は狭く何もないむき出しの部屋。教会の不用品の奇妙なあれこれが置いてある倉庫のような場所。だが我々はまだそれに気づく必要はない。壁の一つに全身を映す鏡が立てかけてある。床の上には、マンリーがいたことを証明する品々が転がっている。片付けられていない見捨てられたキャンプ場みたいだ。簡易ガスコンロの上に中華鍋が傾いて乗っている。幾つものスプーンにへら、空の皿、瓶や包みが散らばっている。デイヴィッドは、日酔いで目覚めた人のよう。深くため息をついて、首の後ろを摩る。突然シャツの穴のことを思い出し、夜のうちに穴が亡くなったことを期待して、穴を確認する。疲れたように立ち上がる。指で穴をいじくりまわすことに心を奪われているが、視線は部屋の中の何かを探している。視線:デイヴィッド。肉片が3つか4つへばりついている中華鍋。ちょっとした好奇心から、中華鍋に近づきその傍らに跪く。中華鍋から1つ肉をつまむ。ナメクジみたいなので、デイヴィッドは注意深く取る。更に注意深く顔の近くに持ってくる。強烈なひどい匂いが襲い掛かる。しかめっ面をして、肉を遠くに投げつける。それから、又ため息をつき、前方を空虚に見つめる。未だシャツの穴をいじりながら、入口に移動。きょろきょろ何かを探し続けている。入口の向こうに聖具室のドアが見える。今は少し開いている。裏部屋の入口の床が映る。そこにデイヴィッドはの探していた物がある。彼のジャケットだ。白い粉のような灰の中にある。デイヴィッドは自分のジャケットを拾い上げ、灰をできるだけ落とし着る。肩の辺りに大きな焼け焦げた穴がある。それに気づき落胆する。ジャケットの穴に指で触れる。その時、裏部屋の何かに注意を引きつけられる。肩の焼けた穴がまるで傷口であるかのように手で押さえながら、裏部屋へ戻る。デイヴィッドが見たのは全身が映る鏡。壁に立てかけられて忘れ去られている。デイヴィッドは、鏡の前に立ち、ジャケットの焼け焦げから手を離す。自分の姿を無表情に見つめる。それからため息をつき、肩をすくめ、向きを変え、もう一度首の後ろを摩る。シーン78.ロンドン中心部。早朝。ロールスロイスが朝の通りを走る。終。(1987年放送。プロデューサー:アン・スキナー。ディレクター:マイケル。ホワイト。スクレべ・プロダクションズのご厚意によりGRANTAにおいて初めて公開された)いかがだったでしょうか。マンリー、カーターの名前覚えてあげなよー。金持ちなんだから、デイヴィッドのジャケット代くらい弁償してあげなよー!日本の、「実るほど 頭を垂れる 稲穂かな」を思い出したわたしです。ご機嫌よう!
2018年12月13日
おはようございます、ひなこです。シーン72.橋の下。早朝。少し後。1台のロールスロイスが、橋の下の一番向こう側に現れる。ホームレスの人々の前を通り過ぎ、こちらに向かってゆっくり進む。シーン73.車。早朝。カーターが運転している。歩道を見ている。しばらくの間、探している。マンリーを見つけ、じっと見つめるが、顔に微笑みの兆候はこれっぽっちも浮かばない。車を停め、2秒くらい、”席”に座ったままのマンリーの姿を凝視する。シーン74.橋のしたの通路。ロールスロイスが、マンリーとホームレスの男の前に停まる。マンリーは、不機嫌に車を見上げる。だが、立ち上がるために動かない。カーターが急ぐことなく車から下りる。マンリーを立ち上がらせるために手助けする様子は全くない。その代わりに、後部ドアを開け、それを開けたまま立っている。マンリーは、疲れ切った様子で立ち上がる。カーターは、開けたドアを持ちながら待っている。車に乗り込むのに、這いつくばって苦労しているマンリーを、手助けする様子は全くない。ホームレスの男にオンカメ:驚いている様子は全くない。この男は何に対しても驚かないのだ。以前と同様の友好的な微笑みを浮かべている。シーン75.とあるロンドンの通り。ロールスロイスが人気のない通りを走る。シーン76.車。次の会話の間中、マンリーは疲れ切って窓から外を見続ける。具体的にカーターに語りかけているが、実際は声を出して考えているだけで、カーターが無言でも気を悪くしたりしない。マンリー:(意気消沈して)「多分、お前は知りたいだろうね、カーソン。昨夜行うことを計画したことを成し遂げたよ」カーターは何の反応も示さない。マンリー:「期待した程、特別なことでもなかったな。(間)概して失望したよ。多分、又アイスランドにでも出かけるかな。(間)うーん、全く退屈だ、カーソン。(間)ありとあらゆるものを食べ尽くした後では、人生は本当に退屈になってしまう」マンリーは深く考え込んで、窓の外を見ている。続く。
2018年12月12日
おはようございます、ひなこです。シーン71.橋の下。まだ明けたばかりの早朝。橋の下の歩道に、15人ほどの男達が避難している。常住している印が見て取れる。多くの空き瓶、毛布、新聞、寝場所を作る段ボール箱など。半分くらいの男達は座った姿勢。壁に寄り掛かっている。起きているのか、あるいはこの姿勢で寝ている。マンリーの姿が、橋の下の向こう端に現れる。そしてよろよろとこちらに近づいて来る。男達は、マンリーを全く気にかけない。マンリーは、橋の下の半分の所で止まる。壁に寄り掛かり、息を整える。別アングル:マンリーが立ち止まった場所。そこに一人のホームレスの男が座っている。40歳くらい。彼はスーツを着ているが、ネクタイはしていない。彼の衣服は汚れ、染みがつき、しわくちゃだが、思うにこの同じ服を何か月か前に着て、保険でも売っていたのかもしれない。ホームレスの男は、同情的な目つきでマンリーを見、自分の隣の場所を示唆する。そこには、平らになった段ボールの”席”がある。ホームレスの男:「座りなよ。少し休むといい」マンリー:「むむむ」マンリー、座る。まだ息が切れている。ふさぎ込んで自分の前にある空間を見つめている。ホームレスの男はマンリーに友好的な微笑みを浮かべながら、マンリーをじっと見る。しばらくの間、マンリーはその男を無視している。だが、ホームレスの男は微笑み続けている。マンリーは素早くホームレスの男をちらっと見て、それから橋の下の彼の仲間の先を見据える。マンリーとホームレスの男にオンカメ:マンリーはゆっくりとお腹をさすり、それから再びふさぎ込んで一点を見つめる。ホームレスの男:「やりすぎちゃったよね、俺達」マンリー:「何?」ホームレスの男:「昔ながらのあれが過ぎた。(と飲むふりをする)」マンリーは軽蔑してホームレスの男を見る。それから威厳を持って。マンリー:「私は空腹だった。私は食べた。そして今は具合が悪い」ホームレスの男:(肩をすくめて)「そうか、そうか。分かるよ」マンリー:「私の言っていることが分かるだと?全くそうは思わないね。私の経験した空腹がどんな種類のものか、お前に分かるわけないだろう」ホームレスの男:「でも俺達皆、空腹になるじゃないか」マンリー、再び見下した視線をホームレスの男に向ける。マンリー:「お前には、本当の空腹というのがどういうものか分かっていないんだ」ホームレスの男、肩をすくめる。マンリーはゆっくりお腹をさすりながら、目の前の一点を憂鬱そうに見つめ続ける。続く。
2018年12月11日
おはようございます、ひなこです。別アングル:何かが入口に勢いよく炎の輪を起こす。浮浪者の姿は銅像のように動かない。肩越しに半分振り向いている。炎で顔は見えない。視点:幽霊。炎の向こうに、デイヴィッドが半狂乱になって、ボウルに入った白い粉をカメラに向かって投げつけているのが見える。マンリーのために一生懸命やっているというよりは、非論理的な自己防衛本能で一心不乱にに投げているように見える。マンリーは網を広げ、じっくりと狙いを定め、投げる。網がカメラを覆い、画面暗転。シーン68.聖具室/裏部屋。30分後。フェイドイン。聖具室は空っぽ。網とデイヴィッドのジャケットが裏部屋に続く入口の床に転がっている。炎は消え、火事による被害は全く見受けられない。裏部屋から光が漏れている。我々は、ゆっくりと入口を移動し、マンリーが小さな腰掛に掛けているのをみる。コンロの上に前屈みになり、中華鍋の中で何かを料理している。コンロの炎が唯一の明かり。裏部屋を全て見渡せるほど強い光ではない。デイヴィッドの姿がコンロの光で照らし出される。壁に寄り掛かってマンリーを見ている。クローズアップ:マンリーの顔。もう我慢できないといった好色そうな表情で、料理しているものを見ている。食べる時のことを思って微笑む。マンリーは、中華鍋の中にスパイスを入れる。中華鍋からは、シューシュー、ジュージューと音がする。中華鍋の中身は見えない。シーン69.ロンドン中心部。まだ明けたばかりの早朝。チャーリング・クロスとトラファルガー・スクエア。街はまだ目を覚ましていない。シーン70.チャーリング・クロス近くの路地裏。まだ明けたばかりの早朝。ごみと古い新聞紙が路上に散乱している。路地にはごみ箱が一列に並んでいる。一番奥の方で、一人の老人がごみ箱を漁って食べる物を探している。老人は、プラスチックの袋を手にしていて、何でも食べられそうな物をその中に入れる。老人が、一つ一つごみ箱を漁るのを我々は見ている。段々とこちらに近づいて来る。マンリーが、画面の全景に入っている。又、コートを着ている。マンリーは、よろよろしている。立ち止まり、壁に寄り掛かる。そうしながら、カメラの方を向く。マンリーは、とても具合が悪そうだ。胃の辺りをぎゅっと掴んで、荒い息をしている。マンリーは向きを変え、手近なごみ箱の中に吐く。一方老人は、その2つ3つ向こうのごみ箱を漁っていて、マンリーに背中を向けているため、マンリーが吐いたのに気付かない。マンリーは吐き終わり、こちらを向いて、それからよろよろと画面から消える。老人は、一つのごみ箱を漁り終わり、隣のごみ箱に移動するが、一瞥しただけで、それが空っぽであることが分かる。その次のごみ箱が、マンリーが吐いたごみ箱。老人は、段々こちら側に近づいて来る。期待を込めて、手には袋を広げている。老人がそのごみ箱を覗く瞬間に次の場面に変わる。続く。
2018年12月10日
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