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先日、その1でご案内した 金井真紀「酒場学校の日々」(ちくま文庫)
なのですが、読み終えて
「これは!」と思ったところがもう一つあります。
愛を告白!していらっしゃることですね。 ドリアン助川 という人については、 「アン」(ポプラ社) という小説を読んだことのあるという程度の知識しかありませんが、この本の愛の告白は読ませますね(笑)。
台風が関東をかすめた夜、ボクは再び「學校」を訪れた。強い雨風が新宿を洗っていた。カウンターのなかには真紀さんしかおらず、嵐で興奮したもじゃもじゃが、「あめ!わははは」「かぜ!わははは」と店を出たり入ったりしていた。 いかがですか?文中の もじゃもじゃさん とかは 「學校」の常連さん で、 禮子さん というのは ママさん です。
ボクはこの夜初めて、真紀さんとじっくり話をした。本書にもちりばめられている真紀さんのウイットとユーモアを宝石の豪雨のごとく浴び続けたのだ。「見つけた」とボクは全身で思った。「お会いした」でも「知った」でもなく、見つけたのだ。
それは、真紀さんが新聞記事で「學校」の存在を知ったとき、あるいは禮子さんが心平さんの記事をきっかけに「安保反対、本日開店」のお店まで行ってしまった、その逸話の根幹にあるものと極めて近い「見つけた」なのではないかと思う。
生涯、この人の言葉を聞こう、この人の書いたものを読もう、この人の絵を観ようと思った。しかしそれは同時に、ボクだけの特異な感慨ではないであろうこともわかった。いつか自分の本を出せたらいいなと語る真紀さんに、だからボクは自信たっぷりにこう言った。「あなたはたくさんの人から愛される国民的な物書きになりますよ。いや、世界的かな。このまま、書くことと描くことを続けていればいいだけです。」と。
この夜のことは忘れない。嵐の音が聞こえなくなった頃、ボクは真紀さんと再会を約束し、スツールに貼りついていたお尻を引き上げた。扉を開け、一歩踏み出し、「あーっ!」と感嘆符になった。
嵐は一掃されていた。空には眩しいほどの満月があった。新宿ゴールデン街のなにもかもに、青白い月の光が届いていた。真紀さんも「學校」から出てきて、路面でともに月の光のなかに溶けた。あのとき、ボクの中で新宿ゴールデン街は一新されたのだった。(P253)
清水さんの太い指がゆで卵をむくまあ、こういう雰囲気です。いかがですか? 「フムフム」 とか、一緒に頷いてしまいそうでしょ。うっとうしくない空気の作り方がヤルナ!なんです。
清水さんスーツにネクタイ、五十代後半のおじさんで、私に目を留めると少し驚いた顔をした。常連中の常連である清水さんはほぼすべての學校のお客さんを知っているので、見慣れない顔を見て、おや、と思ったのだろう。くぐもった声で
「初めて?」
「ひとりできたの?」
などと話しかけてくれる。
そのときまで、「草野心平の詩が好きなんです」なんてミーハーな発言はするまいと決めていた。心平さんがつくったお店に来ている人は、みな心平ファンに決まっている。もしかしたら、みな詩人かもしれぬ。安易な知ったかぶりは恥ずかしい。でも、清水さんの質問に答えるうちにおずおずと言った。
「昔、卒論で草野心平さんを・・・・・」
すると清水さんと禮子さんが
「まぁ、珍しい」
「へぇ、心平さんが好きなの」
と喜んでくれた。もう最近は、心平さんが開いたお店であることを知って學校にやってくる人はほとんどいないという。心平さんが世を去ってから、二十年以上経っていた。
追記
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