検証機能の設定を調整する



この検証機能はもちろん便利なんですが、実際に作業をするときは、少し設定を変えたいと思うことがあります。今回は、細かい検証の内容は翻訳会社さんが設定してきているという前提で、その設定を少し調整する場合のコツを紹介します。1 つ目は、3 つの検証機能を別々に設定すること、2 つ目は、設定をエクスポートして保存しておくこと、そして最後は、除外を適切に設定することです。

検証機能は 3 つある

Trados には、以下の 3 つの検証機能があります。
  • QA Checker
  • タグ検証機能
  • 用語検証機能


9-1.png

「QA Checker」が最も有名かと思いますが、QA Checker は検証機能の 1 つです。この 3 つの機能は、上記のように個別に有効、無効を切り替えられます。設定も別々に行います。

3 つとも有効になっていることが多いですが (多分、デフォルトですよね)、大きなプロジェクトなどの場合、一気に全部検証するとかなりな時間がかかることがあります。特に、用語検証は、設定されている用語集によっては相当な時間がかかります。

設定をエクスポートして保存しておく

さて、いろいろと設定を変える前に、まずはパッケージで設定されてきた設定をエクスポートして保存しておきます。自分で何か設定を変えても、保存しておいた設定をインポートすれば元に戻せます。

9-2.png

ここで注意したいのは、エクスポートは検証機能ごとに別々に行うという点です。
[ 検証] -> [ QA Checker 3.0] -> [ QA Checker のプロファイル] と選択すると、インポートとエクスポートの画面が表示されます。エクスポートすると、「.sdlqasettings」というなんとも長い拡張子のファイルが作られます。
同様に、用語検証にも [ プロファイル] があるので、そこからエクスポートします。

残念ながら、タグ検証にはエクスポート機能がありません。ここだけは、手動でメモするか、記憶に頼るかのどちらかになります。設定があまり多くないので、(おそらく) 大丈夫でしょう。

検証したくない分節を除外する

エクスポートして元の設定を保存したら、少し設定を変えます。細かい設定は翻訳会社さんの設定を信じるとして、私がよく変えるのは「除外」です。翻訳会社から「ロックされている分節は作業対象外です」と言われることが多いと思いますが、作業対象外なら検証でも対象外にしたいですよね。対象外の部分についてはワンクリックだってしたくありません (とは言いつつ、設定を変えるだけでかなりクリックしていますが)。


◆ 3 つの検証機能それぞれについて除外を設定する

3 つの検証機能は、それぞれ別々に除外を設定します。特に、ロックされている分節の除外については、検証機能ごとにデフォルト設定が違うようなので少し注意が必要です。QA Checker と用語検証は、デフォルトで除外されますが、タグ検証はデフォルトでは除外されません。

翻訳会社さんはたいていデフォルトの設定を使ってきます。「ロックされている分節は作業対象外」と言っても、ここの設定まで変えてきてくれることは少ないです。

QA Checker:ロックされている分節はデフォルトで除外される
9-3.png

タグ検証機能:ロックされている分節はデフォルトで除外されない
9-4.png

用語検証機能:ロックされている分節はデフォルトで除外される
9-5.png


◆ 繰り返しを除外する

繰り返しの多いファイルの場合は、QA Checker の [ 繰り返しを除外する] オプションが便利です。
9-8.png

このオプションを有効にすると、繰り返しの 2 回目以降の分節が検証の対象から外れます。自動反映が多かったなぁ、というファイルでは、このオプションを有効にすると表示されるエラーがかなり減ります。ただし、訳し分けや自動反映モレなどの可能性もあるので、最後にはこのオプションを無効にしてもう一度チェックをするようにします。

注記:この「繰り返しを除外」は、表示フィルタ機能の「繰り返し」とは動きが違います。(「 フィルタで繰り返しを除外する 」を参照。) 表示フィルタの「繰り返し」は、そもそも繰り返しでない通常の分節が除外されてしまいますが、検証機能の場合は、「繰り返しを除外」しても、繰り返しでない通常の分節が除外されることはありません。通常の分節と、繰り返しの初回の分節が検証の対象になります。



◆ 完全一致だけは特別らしい

除外の設定で注意したいオプションとして、QA Checker の [ 完全一致単位を除外する] があります。「完全一致単位」とは、エディタ上で「PM」(Perfect Match) と表示される分節です。たいていはロックされているのであまり問題にならないのですが、実は、このオプションと [ ロックされた分節を除外する] オプションは、同時には効かないらしいのです。

9-7.png


これが問題になるのは、完全一致だけれどもロックされていない分節が存在するケースです。まず、[ 完全一致単位を除外する] を有効にすると、完全一致の分節はその分節がロックされているか、いないかにかかわらず除外されてしまいます。それでは困るので、[ 完全一致単位を除外する] を無効にすると、今度はロックされている分節も含めてすべて検証の対象になってしまいます。

複雑です。私はかなり悩みました。たまたま引き受けたプロジェクトが「ロックされていない完全一致は作業対象とする」というもので、結局うまく除外できず、大量のエラーに悩まされました。

この現象は、「完全一致」の場合だけで、通常の 「100% 一致」はロックでの除外設定が適用されると思います。(たぶん、Context Match も大丈夫な気がします。すみません、詳しくは検証してません。)


さて、今回は以上です。実際の細かい設定の説明は省きましたが、多少は自分でも設定できるようにしておいた方が便利です。スタイルガイドがいろいろ変わっても、検証の設定はいつも一緒、という翻訳会社さんもありますので。

そして、最後にもう 1 つ。最初にも書きましたが、検証機能の設定はパッケージで設定されてきます。パッケージを受け取った後、自分でいろいろ設定しても、「ファイルが追加されたので追加のパッケージを送ります」などと言われて追加のパッケージを開くと、設定はすべて上書きされてしまいます。追加のパッケージを開く前に、自分の設定をエクスポートしておくのがおすすめです。





最新記事
にほんブログ村 英語ブログ 英語 通訳・翻訳へ
にほんブログ村
 
翻訳ランキング
  翻訳ブログランキング参加中
翻訳ブログ人気ランキング


タグ
検索
ご意見・ご感想

ご意見、ご感想、ご質問をお待ちしております。
こちらから、どうぞお気軽に!

記事一覧
◆パッケージについて
作業前に内容を確認する
作業前に設定を変更する
メモリをアップグレードする (2017 SR1)
格納されているファイルにアクセスする

◆Trados の機能
 表示フィルタ・高度な表示フィルタ
2021 の表示フィルタ
タグの中の検索
プラグイン
プラグイン for 2019
変更履歴
すべてのコンテンツ
 検証機能
全般の設定
QA Checker
QuickInsert
印刷プレビュー
メモリのフィールド
ファイルの解析 ?@
ファイルの解析 ?A
 AutoSggest
ATOK との競合
プラグイン
 ショートカット キー
設定方法
便利なキー
高度な表示フィルタ
変更履歴
繰り返しの自動反映
 upLIFT テクノロジー
フラグメント一致
あいまい一致の自動修正
単語数のカウント
自動置換 > 単位
ジャンプ
用語認識
MultiTerm
変数リスト

◆Trados のバージョン・エディション
2021 SR2 CU9
2021 の新機能
プラグインとアプリの 2021 対応 (2020/08)
2017 SR1 の最近のバグ (2020/05)
プラグインとアプリの 2019 対応 (2019/02)
2019 の新機能
Starter エディション
2017 SR1 の新機能
メモリのアップグレード (2017 SR1)

◆プラグインとアプリ
2024 対応 (2024/08)
フィルタで繰り返しを除外
原文の英数字を訳文にコピー
パッケージの中身を一覧表示
コメントを Excel にエクスポート
選択箇所の検索結果を別画面で一覧表示
メモリをアップグレード
用語集を変換
コメントや変更履歴のユーザー名を変更
sdlxliff ファイルを Excel にエクスポート
Community Advanced Display Filter for 2019
Community Advanced Display Filter
Regex Match AutoSuggest Provider
PackageReader
Comment View Plugin
SegmentSearcher
TM Lifting
Glossary Converter
SDL Batch Anonymizer
Export to Excel

◆トラブルシューティング
QuickInsert の設定が表示されない
QuickInsert が動かない
 訳文生成できない
分節の結合
コメント
表示フィルタのハイライト
ハイパーリンク タグ
 メモリがヒットしてこない
完全一致が登録されていない
検索オプション
言語ペア
サーバー TM
Trados のバージョン
空メモリから作業を始めた場合
単語単位のトークン化
「TM はアップグレードが必要」が消えない
検証の除外設定が効かない
エディタの動きが遅い
エディタが落ちる
ファイルの解析が終わらない
エディタ上のフォントが変わらない
用語が認識されない
同じ用語が何回も表示される
パッケージを正常に開けない

◆翻訳作業に役立つ Tips
タグの中の文字を検索する
複数の分節に分かれている場合の処理
メモリに登録されるユーザー名を変える
自分の訳文用のメモリを作る
Trados の設定を変える
パッケージを別プロジェクトとして開き直す
 訳文を表示する方法
印刷プレビュー
訳文のみで保存
訳文の表示
 単語数・文字数のカウント
解析レポート ?@
解析レポート ?A
単語単位のトークン化
 ショートカット キーを設定する
設定方法
便利なキー
変更履歴を記録する
繰り返しを自動入力する
エディタ上のフォントを変える
1 つの原文に複数の訳文を登録する
単位記号の前にスペースを入れる
英日と日英で同じメモリを使う

◆Trados 以外のツール
 CAT ツール
Memsource
memoQ
 その他のツール
ATOK
   Xbench
変更履歴
使い方【前編】
使い方【後編】
QA Distiller
AutoHotKey
WinMerge
Visual Studio Code
Vale
最新コメント
プロフィール
さくらさんの画像

昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2018年03月01日

この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/7377925
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: