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追悼 気骨の政治家大石武一さん


故・大石武一氏を偲ぶ会


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第8回 早坂茂三さんの遺言 その1


第9回 早坂茂三さんの遺言 その2


第10回 早坂茂三さんの遺言 その3


第11回 早坂茂三さんの遺言 その4


第12回 早坂茂三さんの遺言 その5


第13回 早坂茂三さんの遺言 その6


第14回 早坂茂三さんの遺言 その7


第15回 早坂茂三さんの遺言 その8


第16回 早坂茂三さんの遺言 その9


第17回 早坂茂三さんの遺言 その10


第18回 早坂茂三さんの遺言 その11


第19回 早坂茂三さんの遺言 その12


第20回 早坂茂三さんの遺言 その13


第21回 早坂茂三さんの遺言 その14


第22回 早坂茂三さんの遺言 その15


第23回 早坂茂三さんの遺言 その16


第24回 早坂茂三さんの遺言 その17


幼幻記


幼幻記1 微笑


幼幻記2 あーちゃんのハイヒール


幼幻記3 和田屋のロマンス


幼幻記5 福島行きの汽車の中で


幼幻記6 氷水(こおりすい)


幼幻記7 焼きみそおにぎり


幼幻記8 仔猫とチョウマ


幼幻記9 結い髪


幼幻記10 傷つけた写真


幼幻記11 パパのおしゃれ


幼幻記12 母の笑顔


幼幻記17 命日


幼幻記18 安寿と厨子王


幼幻記 19 祖母の生誕100年 佛光寺


幼幻記 20 ホットカルピスの味


2006年12月15日
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旅立ちの歌 ●第31回 三日目の朝



第878回 2006年12月15日


旅立ちの歌 ●第31回 三日目の朝


旅立ちの歌31

 七月二十八日火曜日、「山形まんが展」三日目の朝を迎えた。
 山形のたかはしよしひでとかんのまさひこは早朝の電車で米沢に着いた。二人はまんが展会場近くの「音羽屋旅館」を目指して歩いていた。

 この日も朝から太陽がギラギラと照り付けて暑い朝だった。二人は汗だらけになって歩いた。
「温海町の佐藤厚子さんが米沢に着いたと連絡をしてきたのが、夜九時過ぎだったかなあ」
 と、たかはしよしひでが言った。かんのが、
「オレは佐藤さんと会ったことがないげんど、歳はオレだちと同じ位だよなあ」

「四月の酒田でやった『まんが展』で会ったげど、顔は忘れた」
 と、言った。そして米沢郵便局のある十字路を北に曲がり、数十メートルを歩いて立ち止まった。
「ここだ」
 その旅館は二階建てで音羽屋旅館といい、見るからに由緒ある老舗の旅館だった。
 佐藤厚子はたかはしたちを待つように、旅館の玄関先に靴を履いて座っていた。

 二人を見つけると佐藤はそうっと静かに立ち上がり、照れながら聞えないような小さな声で佐藤ですと、挨拶をした。
「やあ!おはようございま~す。たかはしでした!」
「かんのでした!」

 三人は並んで「山形まんが展」会場の米沢市民文化会館に向って歩いた。

「あ~暑い!この暑さはなんとかならないか~」

 展示会場を開けると、一昨日のように暑さと湿度がいたずらをして、展示原画を覆っている透明のビニールやセロハンがはがれていたからだ。
 三日目になるとさすがに準備や対策も手際よく、米沢中央高校生徒会の有志たちは鈴木の指示がなくても自ら体を動かしていた。

「今日は東京からコム(COM)編集長がいらっしゃるのでしょ?」
 と、受付の戸津恵子が井上に言った。
「石井文男さんね。緊張するなあ」

「酒田からもくるんだ」
 と、宮崎賢治が言った。
「すごいねえ、この暑い中だから遠距離はたいへんね」
 と、小山絹代が言った。
「お昼過ぎには総会をするから、その時は小山さんたちに会場係をお願いします」
 井上が言うと、
「ハイ、ハイ、大丈夫だから心配しないで」
 と、小山が笑顔で言った。

 たかはし、かんの、佐藤がやってきたところで、三日目の朝礼が鈴木の進行で始まった。
「みなさんのお陰で、まんが展も最終日を迎えることになりました。今日は虫プロ商事コム編集長の石井文男さんを迎えて、山形漫画予備軍総会を行います。この総会はこの山形のマンガ同人会の歴史にとって、そしてコムのぐらこんにとっても歴史的な日になるかもしれません。どうか最後まで気を引き締めていきましょう」
 鈴木の雄弁さははいつもよりも磨きがかかっていた。

 三日目も朝から中高校生が詰め掛けた。また、大人の姿もだいぶ見掛けるようになった。
 しばらくすると酒田から漫研のメンバーだやってきた。男性が七名、女性が三名、佐藤厚子を入れて総勢十一名だった。ほとんどのメンバーは米沢を初めての訪れだった。こんなに遠くても同じ山形県なんだとビックリしていた。そしてどうして米沢はこんなに暑いのだ、と言うのだった。

 展示会場ではそれぞれが挨拶を交わした。そしてみんなが原画に夢中になった。
 女性らは矢代まさこの「ノアをさがして」と石森章太郎の「サイボーグ009」を熱心に観ていた。
 また、酒田勢は米沢漫画研究会メンバーの作品を観るのは初めてだった。
 安藤悦子らのイラストや青木文雄の作品に驚きながら、井上のマンガを観ては、
「井上くんはもっと描き込めばうまくなるよ!」
 と、励ましてくるのだった。
「同じマンガ同人会だから初めて会った気がしない」
 と、酒田の誰かが言った。
 近藤重雄や小山にはどんなマンガを描いているのか?と質問する者もいた。二人は生徒会役員でこのまんが展を手伝っていることを話すのだった。質問した者は驚いて、感謝を述べるのだった。
 山形から今田雄二もやってきた。

*温海町(あつみまち)=現「鶴岡市温海」(つるおかし・あつみ)
*ぐらこん=Grand Companion たくさんの仲間などの略称
 マンガ予備校と位置付けられ「COM」の大きな目玉になる。峠あかね(マンガ家真崎守)氏の構想のもとに「COM」編集部が全国のマンガ愛好家の組織づくりをはかり、新人マンガ家の発掘及び育成をもくてきとしたものである。
1.「コミックスクール」=マンガ投稿によるプロへの登竜門。審査にはやなせたかし、赤塚不二夫、石森章太郎、つのだじろう、ちばてつやらがいた。他にも河原淳のイラスト教室もあった。
2.「ぐらこん支部だより」=全国にあるぐらこん支部の活動報告が掲載されている。
3.「同人誌紹介・グループ紹介」=全国から寄せられたマンガ同人誌やマンガ研究会を紹介するコーナー。
4.「ぐらんこんロビー」=コムと掲載作品の感想や意見が寄せられた。

参考:石井文男・著「ぐらこん結成のこと」みのり書房アゲイン(1979年9月号 「COMの神話」第5回より

 2006年 8月 7日 月曜 記
 2006年 8月20日 日曜 記




(文中の敬称を略させていただきました)

旅立ちの歌 ●第31回 三日目の朝


つづく 「旅立ちの歌」第32回にご期待下さい!!





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最終更新日  2006年12月15日 19時51分01秒
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