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牡蠣が動くところを見たことがありますか?牡蠣の外套膜、上の図に示した黒い縁取りの部分が外套膜だ。この部分を箸やフォークでつついたり、レモン汁やヴィネガーをたらしたりすると生きている牡蠣は痛がるのか?あるいはしみるのか?この外套膜の部分が縮むような動きを見せる。 私など、牡蠣を剥いているときに一個一個外套膜をつついて生きているのを確認する癖がついているくらいだ。慣れれば、生きた牡蠣が動く姿をはっきりと見ることが出来る。 もっとも、それは牡蠣を痛めつけずに活きたまま剥く技術があってのことだが、、、。 さて、前回はギネスビールとスコッチウイスキーまででてきましたが、、。 ワインに話題を戻しましょうか、、。シャブリのときに書きましたが、牡蠣殻の堆積した石灰質の土壌で出来た白ワインがレモンを使わない生牡蠣には結構合うのだが、私の好みではシャブリを始めとしたシャルドネ種のワインより、同じような土壌で作られるソーヴィニヨン・ブランのほうがいっそう良いような気がする。例えば、シャブリと同じ地域で作られるサン・ブリ(saint Bris)など、実に心地よいミネラル感がキリキリと効いていて好ましいものだし、、、。ちょいと地図を見てもらって、、、。 ブルゴーニュ地区の左上、シャンパーニュの真下にぽつんと青くあるのが、シャブリ地区。一応ブルゴーニュ地方のワインということになっているが、実はこんなに離れているのだ。地勢的には、シャンパーニュやロワールの上流域とむしろ地続きといえるくらいだ。つまり、シャンパーニュ地区もロワール上流域も石灰質の土壌の地域であるということで共通しているのだ。 ベルサイユ宮殿を始めとしたルイ王朝時代の建造物を作った大理石(大理石というのは牡蠣殻などの堆積した石灰岩が地下で熱変成を受けて出来たもの)は、シャンパーニュ地区の地下から切りだされ、セーヌ川の支流を使って船で運ばれた物だ。その地下の石切り場の跡が、シャンパーニュの熟成貯蔵庫の自然な地下セラーになっているのは有名な話だ。 もちろんシャンパーニュと生牡蠣というのも悪くない。ただし、あまり立派な物は必要ないと思う。シャンパーニュの場合、なんといっても炭酸ガスがあるのが強み! というのは、よく言う「シャンパーニュはどんな料理にも合う。」というのも、炭酸ガスが一瞬舌を痺れさせるから、そのつど味覚をリセットするという作用が大きいと思う。ペリエなどのガス入りミネラルウォーターの良さもそこにあるのではないか?アメリカ式に食事にコーラというのも炭酸があればこそだろう。 その証拠に気の抜けたシャンパーニュや気の抜けたコーラやペリエなど、ちょいと厳しいものがあるでしょう?そういうわけで炭酸ガスというのは、かなりの強い作用を持っている。酎ハイやビールにしてもそうだろう。炭酸が無ければ飲めたもんじゃないですよね! <続く>
Oct 29, 2007

しばらく、生牡蠣とワインの話題が続きましたが、、、季節はすっかり秋冬モードです。 上の画像は、京都の丹波笹山のイノシシの煮込み。赤ワインをたっぷり使って煮込んである。本物の野生のイノシシはやわな肉質ではない。通常なら2時間も煮込めば柔かくなりそうな肉が、倍の4~5時間煮込んでやっと柔かくなった。 ジビエというと臭いとか固いとか食べづらいのではないかというイメージを持つ方も多いだろうが、確かにジビエにはそういう一面もあるのは事実。元々食われるために作られた肉ではないのだから当然といえる。 だから、きちんとした技術と知識を持って調理しなければ、本当にひどい料理になってしまうのは当然だ。色々な技があるのだが、あまりに技術を使いすぎてジビエらしさを抜きすぎても面白くないから、そのさじ加減が難しいいのだ。 旨くバランスを取って仕上げると、元々力のある素材なので他の物では味わえない旨味や風味が味わえる。それは結してマニアックな世界ではなく、上手に調理されたジビエの美味しさは結構分かりやすい世界だと思う。 もうひとつ、これは鳩のロースト。 さばいて盛り付け、、、。 この鳩は、フランスロワール産の食用に飼育された物で、純然たるジビエではないが結構ワイルだな風味が楽しめる。フォアグラも少し添え、赤ワインとポルトのソースを使ってある。 期間限定の秋のお勧め、牛ヒレ肉のパイ包み焼きも大好評です!皆さん大絶賛!!
Oct 28, 2007
そういうわけで、生の魚介類や魚卵や魚の内臓などの生臭系の食物には、普通の辛口白ワインはベストマッチとは言いがたい。生牡蠣は、貝の中では珍しく内臓が大きく発達していてそれがあの牡蠣の旨味やコクの正体なのだが、ワインにとっての大敵でもあるわけだ。 これを美味しく食べるためには、やはり日本人なら日本酒!強力な臭み消しであるおろしポン酢などとも相性がよいし、レモンやカボスやスダチと組み合わせても問題は無い。中庸の味わいの吟醸香の強くない、柔かい味わいの酒なら何でもいいだろう。 それから、イギリス風にギネスの黒ビールも良い。この場合は、やはりカクテルソース(ケチャップ、ウスターソース、タバスコ、ナツメグなどを混ぜて作る)よく太った夏の岩牡蠣や広島産のコクのある生牡蠣にはすこぶる合う。イギリスでは、さらにシングルモルトのウイスキーを飲みながら生牡蠣のカクテルソースを食べ、ギネスビールをチェイサー代わりにというオヤジもいるようだ。 <続く>
Oct 26, 2007
魚介類というと白ワインというのが、常道だが、、。あまり認識されていないかもしれないが、ワインには魚介類の生臭みを抑える力は無い。例えば、イクラやキャビアや数の子などの魚卵を食べてワインを飲んでみると、、、何も飲まないときより生臭みを強く感じる。ひどいのは、ウニ!生うにを食べながらワインはなかなか飲めない。さらに厳しいのは、シラスや小女子!!これを食べながら、ちょいとワインはきつい物がある。もちろん赤ワインは論外だし、万能といわれるシャンパーニュですらシラスや小女子には勝てない。(勝ち負けの問題じゃないが、、、) 上に上げたような、魚卵や小魚は、ご存知の通り日本酒にはよき伴侶となる。それから、焼酎やウオッカ(これはキャビアの恋人!)などのスピリッツ類もほとんどが、生臭系のつまみにマッチする。 ところが、良くある飲み方のパターンでスピリッツにレモンやライムを絞り込んでしまうと、もう魚卵類には合わなくなる。生臭みがとたんに出てくるのだ。 結局、ワインに含まれる果実由来の有機酸、または、かんきつ類のもつ有機酸がくせ者なのだ。あのかんきつ類の香しく爽やかな風味と好ましい酸味、辛口白ワインのきりっとしたサッパリ感のあるあの酸味、あの酸が生臭みを助長するわけだ。 意外でしょ?じゃあ、なぜ昔から牡蠣にレモンを絞り白ワインを飲むのか?おかしいじゃないか?と、思いますよね? おそらく昔は、今のように冷蔵庫も無いしもちろん清浄出荷される無菌生牡蠣も無いわけで、牡蠣など魚介の生食は食中毒のリスクとの闘いであったろう。まさに命がけの美食だったといえる。そこで登場するのが、レモンや白ワインの有機酸の強力な殺菌作用だ。 レモンをたっぷり絞り、白ワインを飲みながら食べれば中らないで済むという安心感が、生牡蠣をいっそう美味しい物に感じさせたのではないだろうか?ものを食べるときには、そういった心理面の作用はとても大きいのだ。中毒になるかもしれないと疑いながら美味しく食事できるはずが無いでしょ? だが、前世紀までの食習慣であるこのような食べ方を21世紀の今も考えなしに周到することは無いだろうと私は考える。食の環境が大きく変わっているのだから、レモン無しの牡蠣、白ワイン以外の酒とのマリアージュも試してみてはいかがだろう? <続く>
Oct 25, 2007
生牡蠣を食べる時何を飲みますか?シャブリ?まあ辛口白ワインの大スターですね。ただ一口にシャブリと言っても、いろいろありますからねぇ、、、。価格でいえば、プチシャブリといって(日本にはあまり輸入されていないが、、)現地なら500円くらいで買える安ワインから数万円もする特級の酩醸ものまである。だから、シャブリに生牡蠣と一括りにしてしまうわけにはいかないのだ。ただ、共通しているのはブドウの品種。これは、シャルドネ100%、辛口白ワイン用の高級品種だ。このシャルドネというブドウは、女性に例えると化粧栄えするタイプというか、上手に手を掛けてあげるとものすごく美味しくなってくれる。ただし、やはり元の素材のレベルの差というのがあり、これが畑の等級だ。シャブリの場合、下からプチシャブリ(小シャブリ)、シャブリ(並のクラス)、一級、特級となっている。シャブリは、世界中でとても人気があるのでこの20年あまりで特級とプチシャブリ以外の一級と並のクラスの畑は倍くらいに拡張されている。 まあ、商売繁盛というところか、、、。 シャブリのような辛口の白ワインが出来る土地の多くが、地下に石灰質の地層を持っている。もちろんシャブリも例外では無い。その石灰質の元になっているのが、太古の時代に堆積した牡蠣殻なのだ。シャブリのブドウの樹は地下の牡蠣殻からミネラル分を吸い上げ、それがこのワインの最大の魅力であるドライなミネラル感を作るのだと言われている。 つまり、太古の牡蠣殻と生牡蠣が、億年単位の時を隔てて出合うというわけだ。 もし三陸産の生牡蠣にシャブリと言うなら、市価で3000円から4000円くらいの並のクラスの若いものが良いだろう。その時にレモンやポン酢はやめておいたほうが良い。むしろ黒胡椒を少し挽きかけたほうが気が利いている。〈続く?〉
Oct 24, 2007

生牡蠣も料理なんですよ。ただ開けて食べるだけと思うでしょうが、美味しく食べるためには、牡蠣に気づかれないくらいに、ストレスを与えないように開けることが必要だ。牡蠣剥きのの刃物が身に入ってしまっては、牡蠣が死んでしまうので美味しくなくなってしまう。 貝柱だけを切る技術が必要だ。また、貝殻を出来るだけ水平に保って中の美味しい汁をこぼさないように開けることも肝心。 以前千葉のデパートにオイスターバーが出来たというので、早速行ってみたら肝心の牡蠣向きがへたくそな上に牡蠣が真水ですっかり洗われていて何の風味も無いどころか、水道のカルキ臭すらするくらいで、結構なお値段の割りにひどいものだった。やはり牡蠣は自分で剥くに限る。と思ったものだ。 フランスでは、エカイエという貝剥きを生業とする職人がいて、伝統的にオーベルニュなど山国の人が冬の出稼ぎでパリに出てくるケースが多いという。冬になるとビストロやレストランの前に屋台を出し、そこで店の求めに応じて牡蠣を剥いて売るのだ。だから伝統的にフランスの料理人は牡蠣剥きをたいしてしたことが無い人が多いようだ。 また、フランスのいわゆる一流レストラン(三ツ星や二つ星)のレストランではまず生牡蠣というメニューは無い。シャンパン蒸しにしたグラタン仕立ての料理など、火を通した物が多いようだ。 生牡蠣は、もう少しカジュアルなレストランやビストロ(居酒屋)などで食べることになる。 フランスでは、生牡蠣のほかにムール貝やアサリやハマグリの類まで生で食べてしまう。ムール貝やアサリやハマグリの生食というのは私もフランス以外では見た事が無い。日本人にはかなり違和感がありますね。まあ、習慣の違いなのだろう。フランス人はまずアワビを生食しないし、赤貝など見向きもしないのだから、面白い。 <取りとめも無く、続くのか、、>
Oct 21, 2007

まずはお店の最新情報をお伝えします。 今フォアグラのテリーヌをメニューに載せています。とても美味しいのでぜひお試しください! 9月から特集していたフランス産ホロホロ鳥が大好評で、売り切れました!ありがとうございました。その代わりに、、、牛ヒレ肉とキノコのパイ包み焼きのコースのご予約を受け付けております。 もうひとつ、、ワインリストも更新しました。詳細は、ホームページをチェックしてください!よろしくお願いします。 これは、三陸海岸の衛星写真。リアス式海岸の入り組んだ海岸線がよく分かりますね。前回書いたように、リアスの地形は川が作り上げたものだから、リアスの湾や入り江には大小さまざまな河川が注ぎ込んでいる。そして、海のすぐ上は山。この環境が牡蠣の育成に絶好の条件となる。 というのは、牡蠣を始めほとんどの貝類の主食は植物プランクトンで、これが無ければもちろん貝類は育たないわけ。 では、その植物プランクトンは何を栄養源にするかというと、陸から川によって運び込まれる有機物だ。そして、その有機物を作るのは、森林。それも、秋になると葉が落ちる落葉広葉樹の森林が不可欠なのだ。 森の落ち葉は、時間をかけて腐葉土になりそこで出来た豊富な有機物を雨が溶かして川に流れ込み海に運ぶ。それを餌に植物プランクトンが育ち、そのプランクトンを餌にして貝が育つということになる。 また、植物プランクトンは動物性プランクトンの餌であり、動物性プランクトンは小魚の餌になる、その小魚を求めて秋刀魚や鰹なども集まってくる。三陸沖は黒潮と親潮がぶつかることで世界でも有数の漁場となっているので有名なのだが、その漁場を支えるおおもとが実は三陸のリアスの森林なのだ。 <続く>
Oct 18, 2007

この牡蠣の産地である三陸地方は、リアス式海岸で有名だ。入り組んだ海岸線に大小いくつもの湾や入り江が出来ていて、そこが牡蠣を始めとして帆立やムール貝などの養殖貝類の一大産地となっている。 そのリアス式海岸のリアスとは、スペインのガリシア地方の大西洋に面した海岸線の事だ。本家リアス式海岸は、、、 スペイン北西部の青い線を引いたあたりが、リアス・バイサスの海岸線。 漁港の町のラ・コルーニャ付近のビスケー湾をグーグルアースで見ると、、、 牡蠣やムール貝の養殖イカダが無数に浮かんでいるのが見える。 リアス式海岸というと、陸が波に削られてあのように複雑な海岸線が出来たと思うところだが、それは間違いで、、、山を川が削ってできた谷あいの土地が地殻変動で地盤沈下して以前川だったところに海が入り込んで出来た地形なのだ。 スペイン語のリアスという言葉も、潮が入った川という意味らしい。その証拠に三陸の松島あたりの風景を見ると、、、 巨大なダムに沈んだ山間の村の風景といってもいいような光景に見えるでしょう?海岸線から上がいきなり森であり山である特殊な地形だといえる。 このような環境が美味しい牡蠣を育てるのだが、その話は、、、、。 <続く>
Oct 17, 2007

生牡蠣はちょいと置いといて、、、。リンゴが出てきましたね。サンク・オ・ピエのフォアグラといえば、やはりソテー!!? フォアグラには焼きリンゴ!合いますよねぇ。そして、合わせるワインはもちろんヴーブレィ。 もちろん、ヴーブレィ周辺のコート・デュ・レイヨンなどのシェナン・ブランの葡萄から作ったやや甘口のワインならどれもよく合う。シェナン・ブラン特有のリンゴフレーバーと他の葡萄品種には無い爽やかな酸味が、フォアグラのとろりとしたコクとリンゴの甘さ酸味や香りと渾然一体となるのだ。 よく生半可なワイン通ぶる人が、甘口の白ワインなんて飲めないよ!と、バカにする向きもあるが、、、。 甘い白ワインをバカにしてはいけませんよ。フォアグラには甘い白ワインが合うんです。ただし調理法によって色々ですがね、、、。 とにかくこの料理に赤ワインはいけませんね。はっきり言って料理がだいなしですね。
Oct 15, 2007

うちの店でも今月から始めました。 生 牡 蠣。 いつも、三陸宮城や岩手の物を使っています。 三陸産の清浄出荷の牡蠣は、衛生面では世界最高レベルだ。つまり、出荷前に水揚げされてから、紫外線殺菌された海水を循環させた水槽で72時間ほど清浄化させてから出荷されるのだ。 これが大きなポイント! というのは、生牡蠣は殻を剥いて食べるわけだが、出来れば真水で洗いたくはないのだ。なぜ洗いたくないかというと、生牡蠣の味わいはその牡蠣の育った海水と一緒に味わってこその美味しさだからだ。 そもそも牡蠣の身の95%以上が水分なのだし、牡蠣は呼吸や摂食のために一日バケツ数杯分もの海水を体内で循環させるといわれているのだから、牡蠣を食べるということはその牡蠣が住んでいた海のエキスを食べることと一緒だと、私は考えているのだ。 だから、そんな海のエキスである牡蠣を真水でジャブジャブと洗ってしまったら、意味が無くなるというものだ。 だから洗わなくて済む、清浄牡蠣はとてもありがたいのである。 <続く>
Oct 12, 2007
一応締めの話として、、、。 かの世界一のフォアグラを食わせるという、ビストロ「ラミルイ」のテリーヌを食べたのは、91年の秋だった。当時日本のフレンチでフォアグラのテリーヌを食べるとだいたい一切れ¥6000から¥7000くらいだったと思うが、ラミルイでは日本円で¥8000くらいで日本の3~4倍の量が出て来るのだから、だいぶ安いのだが、、、。 何しろ縁がかけたような皿にフォアグラだけが分厚く三切れのっているだけ。付け合わせも何も無い。そして別の皿に炭火であぶったてんこ盛りのバゲット。フランス本国のこういう骨太で男性的な料理を見せつけられると日本のホテルなどのチマチマしたフレンチがまるで稚拙なおママごとに見えて来る。 とにかく、フォアグラをたっぷりパンにのせて頬張る。ラミルイのフォアグラは、当時鵞鳥を使っていたから、ズッシリと重く濃厚だ。こういう場合貴腐ワインと合わせるとあまりに重厚過ぎて量が入らない。むしろ強い赤ワインのタンニンで脂肪分をかわしたくなる。この時飲んだのは、確か83年のシャトー・ド・ポマール まだ若いのでしっかりしたタンニンがあり果実味もたっぷり、ポマール特有の土系の香りやドライフルーツ系の香りも、フォアグラをひき立ててくれた。 まあ、さすがに王道の味。旨かった! あれから15年余りたったわけだが、今私が作るフォアグラのテリーヌはラミルイ並みだと思っている。(うちのマダムはラミルイより美味しいと言っていますが、、、。)サンクオピエというとフォアグラのソテーが、すっかりお馴染みらしいが、実は私自身はテリーヌのほうが断然好きだ。 職業として料理に携わっていると、自分で作った料理を心底楽しめるものではなくなる。何故なら自分で作った料理は、思った通りの味しかしないから驚きも有難みもないのだ。だってプロなのに自分の思いもよらない料理を作っているようじゃ困るでしょ? そんな中で自分で作って自分で美味しいと思う数少ない料理のひとつです。 フォアグラのテリーヌはね、、、。完今なら、フォアグラのテリーヌやってますよ!
Oct 9, 2007

もひとつのパターンは、このように薄切りにしたテリーヌをサラダ仕立てにして食べる。まあ、普通ここまで豪勢にのせませんが、、。(笑)口解けが良いのでシャンパーニュに合います。フォアグラが、スゥーーーっと解けてそれを泡がサーーーっと流すわけです。 シーザースサラダに薄切りのパルミジャーノチーズがのっているでしょう?あの感じです。この上にさらにトリュフの千切りを散りばめればさらにゴージャス。 そこまでやれば、よく熟成したクリュッグあたりを開けたいものだが、、、いったいいくらかかるのやら、、、、、、、。 <続くのか?>
Oct 7, 2007

テリーヌに熟成が必要なのは、やはり味わいの変化があるからだ。空気を遮断した状態で時間を置くと何が起きるのかというと、まずは塩分が均質に行き渡るという事がある。 よく塩が立っているとか角が立っているというのが、出来立ての状態なわけ。低温の中浸透圧でフォアグラの組織全体に塩分が回るのだ。それから発色。フォアグラのテリーヌの調味に実は少し砂糖を入れるのだが、砂糖には少し肉を発色させる作用があるし、私が愛用している塩にもミネラル分が多いので微妙に入っている硝石系の成分などにも発色作用がある。 まあ、ただし完璧な火の通しが出来てなければ本当にきれいな色は出ませんが、、、。 このように厚め(1センチ強)に切って食べる場合は、焼いたバゲットのスライスにのせて食べるのが、先に書いた“ラミルイ”風の食べ方で、私の好みでもある。合わせるワインは、ソーテルヌなどの貴腐ワインが美味しいのだが、もし赤ワインをというのなら、、このフォアグラの産地に近い、ベルジュラックやラングドック地方のコクがあって強い味わいの赤がよいのかな?仏西南部のワインならバゲットをガーリックトーストがよいかもしれない。 まあ、これが一番美味しいのかな?私の好みである。いつもこのテリーヌを仕込むと必ず自宅でも食べるのだが、やはりバゲットにのせて食べることがほとんどだ。 <続く>
Oct 5, 2007

さて、下処理が終わったテリーヌを室温に戻してから、湯煎にかけてオーブンで焼く。 この場合、焼くといってもオーブンの温度はせいぜい170度だし湯煎にかけてあるからテリーヌ型の温度はさほど上がらないので、実際は一時間くらいかけてゆっくりと火を通すわけだ。中心の温度がたんぱく質凝固温度である約60度を超えるくらいで出来上がる。 このときに重いホウロウ製のルクルーゼのテリーヌ型の火のあたりの柔かさと熱の余韻の長さがものをいうのだ。ゆっくりと温度が上がり、ゆっくりと冷めていくことによって滑らかな食感のテリーヌができる。 焼きあがるとこんな感じ。透明な脂がでているのがわかるだろうか?フォアグラは約6割以上が脂肪分だから火を通せばこのように必ず脂が出てくる。 Terrine de foie gras au naturel テリーヌ・ド・フォア・グラ・オ・ナチュレルといって、テリーヌの中でフォアグラが脂汗をかきながら自身の脂でゆっくりと火が通ってゆくという、シンプルで自然な調理法だ。このあと、器から脂と煮汁を取り出して透明な脂だけを器に戻し冷やし固める。 固まったところ。脂が完全に空気を遮断してくれる。この状態で冷蔵庫に入れて5~10日間ほど熟成させる。つまり、仕込みから開始して最低でも一週間近くかかることになる。 美味しい食べ方は、、、。 <続く>
Oct 5, 2007

さて、テリーヌを仕込みましょうか、、、。フォアグラは室温に戻して柔かくしてから、デネルベ(筋や血管を取り除く)する。真ん中に動脈が見えるでしょう?これを取り除く。フォアグラは大小二つの部分に分けられるのだが、大きい部分から、血管が2本小さい部分から1本取れる。それからフォアグラ全体の外側の薄皮もはがす。これを調味料をまぶしながらテリーヌ型に詰める。 かものフォアグラは1個約500グラムほど。これを2個使うので、テリーヌ1本で約1キロのフォアグラが必要だ。 型に一杯煮詰めた状態がこんな感じ。これで一晩冷蔵庫で味を馴染ませる。 一日目はここまで。 <続く>
Oct 3, 2007

これが、フランス、ランド産の鴨のフォアグラ。 フォアグラは、基本的に2種類ある。つまり鵞鳥のフォアグラと鴨のフォアグラ。 鵞鳥というのは、 こんな感じ。くちばしの付け根がこぶ状になっていますね。 鴨というのはこの場合家禽の合鴨やアヒルの類で、 こんな感じ。フランスでは、ミュラールという品種がフォアグラ用に使われています。 ミュラール種はこんな感じ。(これは♀、♂はもう少し真鴨っぽい風貌) 現在フランスでは、鴨のフォアグラが主流で、鵞鳥のフォアグラはあまり生産されていない。鵞鳥のフォアグラの主たる生産地は、近頃ハンガリーだ。ハンガリー産の鵞鳥のフォアグラはかなり上質だ。 このように、鵞鳥のフォアグラは白っぽい色をしていてサイズは800グラム前後で大きい物は1キロを超えることも、、、。 鴨のフォアグラは、冒頭の画像のように黄色がかっていて、サイズも500グラム前後で大きくてもせいぜい700グラム程度。 性質や味わいの違いは、、、鵞鳥のほうは熱に強く、焼いても融けにくい。だから逆に言えば、口解けは良くないので、余韻が長い味わいで重厚な風味だ。合わせるワインもやはりハンガリー産のトカイアズーの貴腐ワインやある程度熟成した重厚なボルドーのソーテルヌの貴腐ワインがいいだろう。実にクラシックな味わいといえる。 一方鴨のフォアグラは、熱に弱く焼くとかなり融けやすい。まるでバターの塊を焼いているように融けることもある。だから、とても口解けがよいので、軽い風味だ。融けやすいからか、香りの余韻が長いのが特徴だ。合わせるワインは、ロワールのヴーブレやコート・ド・レイヨンなどのシュナンブランの甘口やボルドーよりさらに南に下った、ランド地方のフォアグラの産地に近いベルジュラック地区の貴腐ワイン、モンバジャックの甘口の若いものなどがお勧めだ。 私の場合、軽くてあっさりした鴨のフォアグラをもっぱら使っている。もう5年くらい鵞鳥のフォアグラは触ってないかなぁ?<続く>
Oct 2, 2007

テリーヌという料理、実はこの器の名前のことなのだ。これはフランスのルクルーゼ社製のプロ用のもので、長年愛用している。 このブログで何度か書いたことなのだが、テリーヌというフランス料理の代表的な前菜のメニューの意味をまだ正確にご存知ない方も多いようなので、又書くのだが、、、 テリーヌという料理は、このような型に入れて、蒸したり焼いたりあるいはゼラチンで固めたり、あるいは重石で押し固めたりした料理の総称で、多くは冷製で供されることが多い。つまり丼物とか椀物というように、器の名前が料理の名前になった物というわけ。 牛丼や鱧のお椀というとき、丼や椀は食べるわけではないのと同じ。 また、丼や椀物と一緒で食材や調理法などにかなり幅があり、それこそテリーヌの場合材料の組み合わせや切った断面のデザインなどを考えると種類は無制限にあるといっていいだろう。 そんな中であまたあるテリーヌ料理の最高峰といえば、異論もあろうがやはりフォアグラのテリーヌということになるだろう。パリにある世界一高くて世界一美味しいビストロ“ラミルイ”の名物料理でもある。パリに住んでいる食いしん坊のフランス人に、「ラミルイのフォアグラのテリーヌ」といえば、みな必ずあらぬ方向を見ながらうっとりするはずだ。 そのラミルイには91年の初冬に食べに行った事があったが、1.5センチくらいの厚さのテリーヌが一人前でなんと3枚も!出てくる上に炭火で焦げ焦げのバゲットのスライスがこれまた大皿にてんこ盛り出てくる。前菜としては驚異的ボリュームで、小食の日本女性ならこれだけでまず二人はお腹一杯だろう。ラミルイは世界一高くて美味しくて、世界一ボリュームがあるビストロでもある。<続く> サンク・オ・ピエのフォアグラ料理
Oct 1, 2007

これは、伝統的なマッシュルームの飾り切り。私が駆け出しのころに勉強していたフランス料理の本を見ると、このようにマッシュルームは飾り切りをして使うことになっていたものだ。 最近の若い料理人は、見たことも無い人も多いだろうし、ましてこれができる人はおそらくほとんどいないんじゃないか。最近のフランス本国の仕事を見ていても、全く見ないのだからほぼ完全に廃れてしまったのかもしれない。 かなり独特の動作をする切り方なので、これは誰かにやって見せてもらわないとなかなか習得できないかもしれない。 まあ、味にはほとんど関係ないですが、、、。料理には雰囲気も大切でしょ?クラシックな舌平目の白ワイン蒸しの上などにこれがのっていると、あー、、フレンチだなぁー、、と。
Oct 1, 2007
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