2017年07月01日
シワやたるみが消える?! 「肌」もウェアラブルな時代に
ファンデーションやコンシーラーでは隠しきれないシワや目の下のたるみ。いっそもう一枚、真新しいきれいな肌を上からかぶせられたら......。某SF映画の変装シーンを彷彿とさせる願いだが、いま、かなり「現実味」を帯びてきているようだ。
薄くて見えない「第二の肌」 2016年5月、米マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の研究者らがまとめたある論文が「Nature Materials」オンライン版に掲載され、CNNやニューヨークタイムズほか多くのメディアに取り上げられた。
タイトルは「An elastic second skin(弾力のある第二の肌)」。研究者らは、肌の上に見えない膜をつくる特殊なポリマーをつくり、「第二の肌」と名付けた。ポリマーの主成分は米食品医薬品局(FDA)によって安全性が認められたシロキサン(シリコン)で、肌に直接つけられる。
非常に薄くて目立たないこの「第二の肌」は、肌を保護・強化するだけでなく、シワや目の下のたるみを隠す効果がある。
画期的なのは、2.5倍に引き伸ばしても元の状態にもどる弾力性(普通の肌は1.8倍)と、素肌と見分けがつかないほど目立たないという特性だ。研究チームは性質の違う100種類以上のポリマーをつくり、もっとも弾力性があり、健康な肌に近いものを発見した。これまでにも同様の研究はあったが、今回作成したポリマーほどフレキシブルでつけごこちがよく、肌の動きに合わせて自在に伸縮するものはこれまでなかった。
MITのニュースリリースに掲載されている動画では、右目の下だけにポリマーを塗った女性の顔が見られる。左目の下にはくっきりと見えるシワとクマが、右目の下にはない。目の下の皮膚を指で強くつまむと一瞬シワになるが、すぐに元のなめらかな状態に戻る。あとが残ることも、ポリマーがよれることもない。動画では、顔の右半分と左半分で肌老化の度合いが明らかに違うのである意味ホラーだが、右目の下に何かを塗っているような不自然な感じはしない。両側に塗れば、自然で、かつ10歳は若返った顔になるのではないか。
皮膚疾患のケアにも 「第二の肌」はつけるのも手軽だ。2種類のローションを指で肌に伸ばすだけでいい。最初に透明なローション(液状のシリコン)を塗り、乾いたら白いローション(ポリマーを含む触媒)を塗る。この2つを重ねることで、理想の弾力性と耐久性が実現する。数分で乾くうえ、汗をかいたり、水に濡れたりしてもとれず、24時間は持つという。とるときもクレンジング剤を使う必要はなく、端からペロッとはがせる。
研究者らによると、シワやクマ隠しといった美容用途だけでなく、湿疹や乾癬(かんせん)、ドライスキンなどのケアにも応用が期待できるという。これらの皮膚疾患に用いられる保湿剤は効果が短時間で、夜中にかゆみで起きてしまう人も多い。「第二の肌」は患部を保護し、保湿することで、こうした不快感をなくす。また、軟膏やステロイド剤などが衣服や寝具に付着し、取れてしまうのを防ぐカバーの役割も果たす。
皮膚科・抗加齢医学を専門とする近畿大学奈良病院の山田秀和教授は、「第二の肌」について、「たいへんおもしろく、将来性がある」と、今後の研究に期待を寄せる。
「美容医療の分野では、シワなどの根本的な治療にはならなくても、気軽に使えるのが素晴らしい。少なくとも短時間は改善を望めます。また、たとえばレーザー治療などのダウンタイム(回復期間)に、患部を覆うガーゼの代わりに使えたらいいですね。目立たないので患者さんも周囲の目を気にせず、日常生活を送ることができるでしょう。ただし、レーザー治療をするなら、この『第二の肌』以上にきれいな仕上がりにしないと意味がなくなるかもしれませんが...(笑)」
皮膚疾患についても、さまざまな応用が期待できると言う。
「保湿ができるなら、湿疹病変が改善したあと、角層が正常化する2週間ほど使うと、再発を少なくできる可能性があります。保湿能力の低い子どもにも使えるなら、アトピーの発症を抑制できるかもしれない。さらに、通常はレーザー治療で取り除く平らな血管腫や扁平母斑、扁平のほくろなどは、もしかしたら治療の必要がなくなるかもしれません。接触性皮膚炎や汗によるトラブルがどの程度かといった点が気になりますが、使い道はいろいろ考えられます」
今回の研究は初期段階で、商品化されるのはまだ先の話になりそうだ。しかし、若い女性の顔の皮を一枚はいだら、実は老婆だった...。そんなSF映画の特殊メイクの世界が現実になりつつあることを感じさせる。
タグ: 健康
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