2017年06月30日
植物に触れよう 緑に囲まれた生活は死亡率を12%下げ寿命を延ばす
都市の開発による自然の破壊が進む一方、先進国を中心として都市の緑化の概念が定着してきている。
公園や街路樹の設置、建物の壁面や屋上の緑化は、蒸散効果による都市部のヒートアイランド現象の改善や二酸化炭素の消費に伴う温暖化の抑制など、エコロジーの側面だけでなく、景観や癒しの観点からも推奨されている。
最近発表された調査結果で、緑に囲まれた環境は女性の寿命にも影響を与えることが明らかになった。
□緑の多い生活と死亡率の関係 死亡率に12%もの差
2000〜2008年に10万8000人のアメリカ人女性の情報の分析が行われ、緑に囲まれた環境に住んでいる女性は、ほとんど緑がない環境に住んでいる女性に比べ、約12%も死亡率が低いということが分かった。
呼吸器関連の死亡率に関しては約34%も違いがみられ、がんの死亡率の比較でも、前者の女性では13%も低かった。
□なぜ緑に囲まれた生活は寿命を延ばす? 専門家の考え
この研究の著者はこう語る。「緑の中での生活の長さと、死亡率の低さとの相関性の高さは驚きである。この違いには、精神の健全性が関与していると考えられる。緑の多い環境で生活する女性の方がうつが少なく、精神的に安定している。また他にも社会生活の充実や身体的に活動的な生活、汚染物質への暴露の少なさなどが、この緑のある生活と寿命の関連性に関わっているであろう」。
□緑に囲まれた環境が与える精神的な効果とは?
日本では107人の高等技術専門学校(高専)の生徒に対し、学校内で休み時間を過ごした場合と、公園に行った場合での気分の変化を調査している。その結果、緊張や抑うつ、怒りなどの負の感情は公園利用により低下し、活気は公園利用により上昇した。
□緑の多い環境は「負の感情」をより減少させて精神を安定させる
また、一般の人と学生に対して、ショッピングセンター、公園を利用した前後での気分の変化の調査では、公園利用の方が負の感情をより減少させたが、活気の上昇はショッピングセンター利用後の方が大きかった。
この結果から、公園などの緑のある場所に行くことによるリラックス効果が確認された。さらに、ショッピングなど他のストレス発散方法に比べると、緑の中にいることは負の感情をより減少させ、精神を安定させる効果がある事が分かった。
ストレスがたまっている時には、森林浴までしなくとも、街路樹や観葉植物などの緑色を見るだけでも効果があるという説もある。これならオフィスにいてもすぐにできるだろう。
現在も世界一を誇る日本の平均寿命。食事の改善や医療技術の進歩に伴い伸びてきた寿命だが、今後はこうした環境の整備に伴う精神面でのケアも、寿命を延ばす重要な要素の一つになってくるであろう。