2018年05月31日
標準体重でも「メタボリックシンドローム」 「運動不足」「体力不足」は要注意
標準体重とされている人でも、「低体力」「低活動量」「高脂肪食」などの因子が重なると、肥満者に多いはずの糖尿病やメタボリックシンドロームになってしまう——順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史准教授、河盛隆造特任教授、綿田裕孝教授らの研究グループによって、新たな知見が発表された。
BMI(体重を身長の2乗で割って算出する肥満度)が25以上の肥満者は、糖尿病やメタボリックシンドロームといった代謝異常に関係した生活習慣病になりやすい。これは、肥満によって体内でインスリンが正常に作用せず、血中のブドウ糖を取り込めないため、血糖値が下がらなくなってしまう「インスリン抵抗性」が起きているためだ。
しかし、アジア系の人種では非肥満(BMI25未満)でも、生活習慣病を発症する人が少なくない。肝臓や骨格筋などの部位に脂肪が蓄積し、インスリン抵抗性が生じている可能性が指摘されているが、日本人を対象とした研究は実施されていなかった。
今回の研究では、BMIが23〜25で、「高血糖」「脂質異常症」「高血圧」のいずれも持っていない28人、ひとつ持っている28人、二つ以上持っている14人、BMI21〜23で「高血糖」「脂質異常症」「高血圧」のいずれも持っていない24人、BMI25〜27.5でメタボを発症している20人を対象に、肝臓及び骨格筋のインスリン抵抗性を計測した。
計測には、ブドウ糖とインスリンを点滴で持続的に投与し、肝臓と骨格筋でのインスリンの効き具合を10時間以上計測する「2-ステップ高インスリン正常血糖クランプ法」を、国内で初めて導入している。
その結果、BMI23〜25でリスク因子を持っていない人は、BMI21〜23でリスク因子を持っていない人と同等のインスリン感受性(正常な状態)だったが、リスク因子をひとつでも持っていると、骨格筋にメタボ発症者と同等のインスリン抵抗性が生じていた。一方、肝臓でのインスリン抵抗性には、BMIによる差異は確認されていない。
さらに、どのような因子が骨格筋のインスリン抵抗性と関連しているかを調査したところ、「内臓脂肪が多い」「血中のアディポネクチン(脂肪細胞から分泌されるホルモン)濃度が低い」「体力(持久的な運動能力)が低い」「生活活動量が低い」「脂肪摂取量が多い」などが挙げられたという。
ただし、これらの因果関係の詳細は不明な部分もあるため、今後は介入研究を通した検証が必要であるとしている。