2017年07月27日
子どもの自閉症の原因に 殺虫剤・農薬の空中散布地域はリスクが急増
アメリカで自閉症が急増している。2010年時点で子どもの68人に1人が、自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されている。
□自閉症とはどんな症状があるのか
自閉症は「周囲との交流困難」「言語発達の遅れ」「限定的な興味の対象と動作の反復性」などの特徴がある。
自閉症が急増している原因は、はっきりしていない。診断の基準が改定されたためや、親の高齢などの要因もある。また、水銀や農薬、栄養不足などの環境要因も考えられている。
□飛行機による殺虫剤散布地域は、自閉症が25%も増!
そして今回米国小児科学会は、新たな知見を発表した。飛行機による殺虫剤散布をしている地域で出生した子どもは、自閉症リスクが約25%も上昇しており、自閉症の発症に大きく影響しているというのだ。
保健当局は毎年夏に、東部ウマ脳炎ウイルスを媒介する蚊を駆除するため、ピレスロイド系殺虫剤の飛行機による散布を実施している。
研究グループは、ニューヨーク州中央部にある沼沢地域に住む小児と、他の方法で殺虫剤を散布している地域に住む、小児の自閉症スペクトラム障害、または発達障害(DD)の発生率を比較した。
その結果、2003年から殺虫剤の空中散布を行っていた地域に住む小児は、ASDとDDの2つの障害の発生率が約25%も上昇していた。
□殺虫剤には小児のASDやDDリスクがある
ピレスロイド系殺虫剤は、現在主流になっている殺虫剤や農薬の一つだ。ピレスロイド系殺虫成分は分解が早いため、有機リン系殺虫剤などに比べると、安全性が高いといわれている。
しかし過去の研究結果からも、農薬がASDやDDリスクを上昇させることが示されている。
妊娠中に農薬が散布された農場の近くに住んでいた母親から生まれた児は、自閉症の発症率が約6倍高いという研究もある。農薬散布地域から遠ざかるほど、発症率が下がることからも、農薬と自閉症発症率との関連性は明確なようだ。
□殺虫剤・農薬の「空中散布」が、さらに自閉症リスクを上昇させる原因に
そして今回の研究は、空中散布という散布方法が、さらに殺虫剤の悪影響を大きくすることを明らかにした。
殺虫剤や農薬の散布方法には、地上散布、有人・無人ヘリでの散布などがある。地上散布の方が、必要な箇所にピンポイントで散布できるが、空中散布の方が、広域に安価に散布できる。
そのため、日本でも松くい虫防除や水稲などに空中散布が各地で行われている。空中散布は地上散布と比べて200倍の高濃度の薬剤が使われている。風の強い日には中止されるが、それでも薬剤の吸入の可能性は否定できないだろう。
近年、日本でも自閉症は急増している。アメリカの研究によるASDやDDリスクの可能性は、日本でもあると考えた方がいいのではないだろうか。
□殺虫剤・農薬の空中散布 自閉症以外のリスクも高める
空中散布のリスクは自閉症のみではない。空中散布は化学物質過敏症の人々にとっても、苦しみの元になる。
空中散布は主に初夏の早朝を中心に行われることが多いが、空中散布の時期になると目のかゆみや苦しさを訴える子どもが増えるのだ。
化学物質過敏症ではなくても下痢、頭痛などの症状が出たり、のどが痛くなり風邪のような症状が出たりすることもある。
□自閉症の原因か 日本の農薬使用量は多い
日本の農薬の使用量は世界的に見ても多い。
また、アメリカの研究はピレスロイド系殺虫剤についてのものだったが、より毒性が高い有機リン系農薬の空中散布も、日本各地で行われている。
EUでは2006年に空中散布が、全面禁止されている。空中散布は人や自然の生態系への影響が大きい。代替案も含めていろいろな視点からの対策が必要かもしれない。
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