2018年05月25日
あなたのご両親は大丈夫? 加齢による視力低下がもたらす心と体の不調
美しいものを見れば気分が良くなる。当たり前といえば当たり前の話である。ただ、それを自分の視力の良し悪しと関連付けて考えるということはあまりしない。今回は視力と心や体の健康、さらには睡眠との関係について考えてみよう。
□視力の低下が心と体の健康に悪影響を及ぼす
イギリス・ロンドンにあるユニバ ーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが、視力と健康の関係の調査を行った。
10万人以上の男女を対象とした調査により、視力に問題がある人の12%以上に健康上の問題があり、14%以上がうつや不安、その他の精神的な健康の問題で精神科医の治療を受けているという。
さらに、白内障などの視力に関わるような病気の多くが見逃されている可能性があるということも報告された。
□視力の低下による日常生活の変化が問題を引き起こす
この研究を行ったラヒ教授は、視力が健康上の問題や精神的な問題に影響する理由の一つは、視力の低下に伴う生活の変化だと語る。視力が落ちることで、転倒などの事故への恐怖からあまり外に出なくなり、社会生活が少なくなるという。
さらには視力の低下は食生活の変化や、家でのちょっとしたアクシデントを引き起こすことで、家の中での活動量も低下させるという。こうした日常生活の変化が、健康上の問題を引き起こしたり、気分を落ち込ませたりする原因になるようだ。
□高齢者の視力低下は認知機能も低下させる
日本では奈良県立医科大学が、高齢者約3,000人を対象に、視力と認知機能の関連を調べている。それによると視力の悪い人はいい人の約2倍認知症の発症リスクが高いというデータが出ている。
そして、視力が落ちる白内障を手術すると手術後は視力だけでなく認知機能も改善するという調査結果も発表された。
□視力の低下はしっかり治療すべき
奈良県立医科大学の緒方医師は、「眼は重要な感覚器で、脳に送られる情報の80%以上は眼を通して入ってくるといわれています。視力が低下して眼からの情報が減れば、脳に送られる情報も減少する。見えにくい状態をそのままにしておけば、脳の働きはおのずと低下してしまいます」と語っている。
また、視力低下により、外出での事故を恐れて家に引きこもりがちになっているのを、認知症と勘違いされて病院へ来院する例も少なくないという。
□白内障手術により概日リズムを改善できる
また、白内障手術による概日リズムの改善効果の報告もある。この報告によると、白内障があると、網膜まで届く光が減少するため、昼間に脳が感じる光の量が減少してしまう。その結果、睡眠と覚醒をコントロールする概日リズムがくるってしまい、夜中のメラトニン分泌が減少し、睡眠の質が低下するという。
白内障の手術をすることで、特に概日リズムを左右するブルーライトの透過性が回復して、睡眠の質が改善するということである(※3)。
人間にとって目から入る情報というのは非常に重要である。その分、脳と視覚というのは密接な関係があり、視力が落ちることで体や心の調子も崩れてしまうようだ。
自分自身だけでなく、身近な家族の気分が落ち込みやすくなったとか、気持ちよく眠れていないという人は、視力が最近落ちてきていないか一度考えてみてほしい。
タグ: 健康
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