2016年01月18日
親知らずを放っておくと口が開かなくなった?
奥歯が痛むので鏡をのぞくと、一番奥の歯が傾いている、歯ぐきを割るようにして歯が少しだけ見えている……、「うわっ、親知らずか!?」と発見した経験はありませんか。
大人の奥歯の最も後ろに生える歯を「親知らず」と呼びますが、歯学博士で江上歯科(大阪市北区)の江上一郎院長は、
「『抜くのが恐いし、顔が腫(は)れるから放っておきたい』という患者さんはかなりおられます」と言います。いったいどうすればいいのでしょうか。詳しく聞きました。
■周囲の歯ぐきの炎症で、口が動かせない
親知らずについて、江上医師は次のように説明します。
「親知らずとは、10代後半から20代前半ごろに最後に生える永久歯のことです。生え方によっては40歳ごろまで気付かない人もいます。前から8番目に生えるので、歯科用語では『8番』と呼びます。
上あごの左右2本と下あごの左右2本の計4本になりますが、歯ぐきの下の骨の中に埋まっている、また、1本もない人や生えてこないなどで1〜3本の人もいます」
親知らずを放っておいた筆者の知人は、「口が開かなくなった」と言います。そんなことになるのでしょうか。江上医師は進行具合とその症状について、こう続けます。
「はじめは、親知らずの周囲の歯ぐきが炎症を起こし、数か月に一度ぐらい『奥歯や歯ぐきがうずく』といった違和感を覚えます。じょじょにその頻度が増して、『腫れや痛み』を感じ、やがて、『奥歯で噛(か)めない』ようになります。
強く痛むときなど、歯ぐきから膿(うみ)が出ていることもあります。痛み止めの薬でごまかしていると炎症が進み、『あごの奥までずんと痛む』、『リンパ腺が腫れる』、『口を動かすと痛くて口が開きにくい』などの重い症状が現れます。ここまでくると、治療をしても炎症が治まらない、もしくは、治るまでに1週間以上かかることがあります」
■治療時の痛みを軽減するコツとは?
親知らずは、抜かなくていい場合もあると聞きます。
「普通の歯のようにまっすぐに生えて、上下がかみ合っている、むし歯や歯ぐきにトラブルが起きていない、あごの骨の中に完全に埋まっている場合は、抜く必要はありません。
昔と比べて軟らかいものを食べている現代人は、あごが充分成長せず、親知らずが出てくるスペースがないため、下あごの親知らずは横向きに生えやすいんです。
そのため、親知らずの手前の歯との間に食べ物が詰まりやすく、むし歯になる確率が高い、また、隣接する歯をぎゅっと圧迫して歯の根や歯ぐきに負担を強いているなどの例がとても多いわけです。
親知らずが横向きに埋まっている、いつも食べ物が詰まる、歯ぐきが腫れている、痛みを繰り返す場合は、抜いた方が後々のトラブルを避けることができます」(江上医師)
親知らずの治療は痛い、というイメージがあります。実のところはどうでしょうか。
「横倒しになっている、ゆがんで生えて一部だけが見えているなどの場合、『あごの骨を削って歯を抜くこと』や、『抜いた後の痛み』を想像すると、つらく感じると思います。
生え方や進行度、医師の技術によりますが、レントゲンやCT撮影をし、歯の根やあごの骨の状態をよく確認してから治療を始めます。いまは治療器具や歯に詰める痛み止めの効果が向上していることもあって、歯科医は最短の時間で抜歯するよう努めています。『こんなに簡単に抜けるのだったら、もっと早く来ればよかった』という患者さんがほとんどです。
また、痛み止めの飲み薬を処方しますので、麻酔が切れるころにはその薬を飲めばそれほど痛むことはありません。治療の痛みよりも、放置して痛んできたときのほうが、苦痛は大きくなります」
できるだけ痛くなくてすむような、歯科を受診するコツはあるでしょうか。
「まず、鏡で自分の親知らずとその周囲をチェックしてください。痛みが出てからや炎症が起こってからではなく、歯科でレントゲン撮影をしてもらい、『自分の親知らずの状態を知っておく』ことがポイントです。
痛みや炎症が起こってからだと、麻酔が効きにくい、抜歯後も炎症の広がりでひどく腫れる、痛みが続くことがあります。半年ごとの定期検診のときに、親知らずにどう対処するかを相談しておくといいですね」(江上医師)
親知らずの痛みと治療時の痛み、耐えて辛抱せずに、「案ずるより抜くがやすし」(江上医師)、と考えて、歯科や口腔(こうくう)外科を早めに受診しておきましょう。
タグ: 健康
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