2016年01月22日
「スイス銀行」は存在しないって本当?
映画やマンガで定番の「スイス銀行」。警察にも税務署にも情報を開示しない「秘密の銀行」として知られているが、そもそも存在すらしていないのはご存じだろうか?
スイス銀行は「スイスにある銀行」の総称で、州立から個人銀行まで数多く存在するが、共通点は「秘密厳守」で、郵便物にも「〇〇銀行」と差出人を記さないところもある。ただし、この安全性がアダとなり、悪用されているのも確かで、犯罪捜査に協力するため2017年からは顧客情報が提供される予定。カミソリのような目をした国際的スナイパーの預金残高が、明らかにされる日も近いのだ。
■「秘密の口座」は存在しない
顧客の秘密を絶対に明かさないことで有名な「スイス銀行」は、「スイスの銀行」の総称で、その名前の銀行は存在しない。マンガでは「報酬は、スイス銀行のオレの口座に振り込んでくれ」的なシーンを見かけるが、残念ながらすべてが架空である。それなのにイメージだけがひとり歩きし、誰にもバレない秘密の口座、プライバシーを守る守秘(しゅひ)義務の2つの代名詞となっているのだ。
「秘密の口座」の正体は個人銀行だ。スイスの銀行は日本と異なり、中央銀行である「スイス国立銀行」から始まり、規模の大きい順に、
・州立銀行
・大銀行
・地方銀行/貯蓄銀行
・組合銀行
・個人銀行
があり、州立銀行は住宅ローン、地方銀行は一般的な貸し付けなどすみ分けがなされている。個人銀行は個人の資産運用がおもな役割で、顧客のプライバシーを守るために大々的なPRを避ける傾向がある。存在感を消しひっそりと営業している銀行も多く、これが「秘密の口座」と誤解されてしまったのだ。
■2017年からはフツウの銀行に…
プライバシーは本当に守られるのか? たとえ警察や税務署からの問い合わせでも、誰の口座にいくら預金しているかを開示しないのは本当で、もとをたどれば「国民性」につながる。自分のプライバシーが公開されたらイヤなのだから、他人の秘密も守ろう!という気質から始まっているのだ。
これは銀行側にとっても同じことで、信頼できない顧客では話にならない。そのため銀行のマネージャが顧客を面接し、OKがもらえないと開設すらできないところもある。日本では顧客が選択できるのに、スイスでは「選ばれる立場」になるのだ。もっとも、最近はインターネット経由で開設できる銀行もあり、パスポートなどの身分証明書だけでOKな場合もある。「バイト代はスイス銀行のオレの口座に」とシャレてみるのも良いだろう。
ただし、この秘密性の高さがアダとなり、悪いことに使われているのも事実。スイスの銀行に預ければ「隠した」も同然なので、非合法なオカネを預けたり、脱税に利用するヤカラも存在するのだ。
そこで2017年からは欧州連合(EU)と連携し、顧客情報を共有する予定となった。国際的な犯罪組織が利用している疑いがかかれば、EU以外の国にも情報提供するのは時間の問題といえよう。
徹底した秘密保持が災いとなり、情報公開せざるを得なくなったのは皮肉な話である。とはいえ、2017年までは「秘密の銀行」であるのは確かなので、自分の背後にひとが立つとブチ切れるスゴ腕スナイパー気分を味わいたいひとは、いまのうちに口座を持っておこう。
・「スイス銀行」は「スイスにある銀行」の総称。その名の銀行は存在しない
・顧客のプライバシー保護は事実。郵便物の差出人を記さない銀行もある
・秘密の口座の正体は、宣伝を嫌う「個人銀行」
・2017年からは、顧客情報を外国と連携し、フツウの銀行になる予定…
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