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人工衛星が落ちて家が壊れたら、誰が弁償してくれる?

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気象観測やGPSなど、生活に欠かせない人工衛星。3,000個以上が周回していると言われ、老朽化した衛星は大気圏に突入させて処分するのが定番だが、破片が地表に届くこともあるのはご存じだろう。


もし人工衛星の破片で家が壊れたら、誰が弁償してくれるのだろうか? 隕石による被害は火災保険や住宅総合保険でカバーできる場合があるが、ロケットや人工衛星には通称・宇宙損害責任条約が適応され、打ち上げた国が責任を持つルールになっている。ただし「打ち上げ国の国民」は適応外と、フシギな項目が存在するのだ。


■地表の被害は「打ち上げ国」の責任
隕石で家が壊れた場合は「自然」による災害なので、誰かに責任を問うことはできない。加入している火災保険や住宅総合保険でカバーできればラッキーだが、加入していない/対象外なら基本的には自力で直すしかない。

人工衛星やロケットが落ちてきたらどうなるのか? いまとなっては容易に想像できる事故だが、なんと40年以上も前に条約がつくられている。1972年に発効された通称・宇宙損害責任条約によって、誰がどのような場合に責任を負うかが決められているのだ。


この条約では、ロケットや人工衛星などは「宇宙物体」と表現され、打ち上げた国が責任を負うと定められている。抜粋すると、
 ・第2条 … 地表 または 飛行中の航空機に与えた損害は、無過失責任
 ・第3条 … 地表以外の場所に与えた損害は、過失責任
とされ、物体はもちろん、ヒトにケガを負わせた、健康を損ねたなども含まれる。無過失責任とは「理由を問わない」の意味で、どんな理由にせよ「100%あなたの責任」とも表現できる。地表の家が壊された/破片でケガをした場合は、それを打ち上げた国に請求することになるのだ。


「打ち上げ」と表現されているものの、成功しなかった場合も含まれるので、打ち上げに失敗し落ちてきたロケットも対象となる。もしA国のひとがB国の宇宙物体でケガをしたら、第8条によってA国がB国に損害賠償請求できるので、あとは国に任せておけば大丈夫だ。


■自国のひとは保障されない?
条約のなかにはブキミな内容もある。第7条では例外が定められ、
 ・第7条-(a) … 打ち上げ国の国民
 ・第7条-(b) … 打ち上げ/回収予定地周辺の外国人
には「適用しない」とうたわれているのだ。

言葉通り受け止めるなら、(a)はA国のロケットが打ち上げ失敗して地表に落ちても、A国のひとは保障されないことになる。これは「その国の内部で解決せよ」の意味だろうが、ぶっきらぼうに表現されているだけなので、どのようにでも解釈できてしまう。また(b)はほかの国に依頼した場合を指し、依頼された国が責任を持ちなさいとも解釈できるが、少々無責任な内容にも思える。


これ以外にも、この条約には矛盾や不備ととれる点が多い。たとえば「打ち上げ国」としか定められていないが、民間企業がロケットを打ち上げた場合はどうなる?など、危険性を指摘する声も多い。現在は100カ国以上がこの条約に署名/批准(ひじゅん)しているが、40年以上も前の内容だけに現状にマッチしていない点も生まれてきているのだ。将来的には改訂される可能性が高いだろうが、いまは自分の家に落ちてこないことを祈るしかなさそうだ。


 ・ロケットや人工衛星が事故を起こしたとき用に、通称・宇宙損害責任条約が存在する
 ・「打ち上げ国」が責任を負うのが基本
 ・地表の物体や飛んでいる飛行機を壊したら、無条件で賠償しなければならない
 ・第7条には、「打ち上げ国の国民」には適用されないと記されている




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