2017年07月22日
歯周病が膵臓がんに関係? 2つの口内細菌保持者のがん発生率が高い
ニーヨーク大学の研究によると、膵臓(すいぞう)がんの発症率と歯周病を引き起こす口内細菌2種と間には相関関係があった。
これら2種類の細菌が口腔内に住みついている人は膵臓がんになった割合が高かったというが、果たしてその真相は?
□「膵臓」のがんの初期症状は? 「羊の衣をまとった狼」とも
膵臓がんは最も恐ろしい「癌(がん)」の一つだろう。
膵臓がんは、初期にはほとんど自覚症状がなく、しかも進行が早い。また、周囲の組織へ転移しやすいため、発見された時にはすでにかなり進行した状態のことが多く、摘出手術が行えないことが多い。
残念ながら、膵臓がんの5年生存率は10%〜20%といわれている。
膵臓がんの初期には、背中の痛み、黄疸(おうだん)、体重の減少などの症状が見られることもあるが、どれも膵臓がんに限った症状ではなく、これも膵臓がんが見逃されてしまう要因である。
膵臓がんのこのような特徴は「羊の皮を着た狼」に例えられることもある。
□歯周病菌が膵臓がんのリスクを高める?
ニューヨーク大学の研究グループは被験者732人についての追跡調査を10年以上にわたって行った。
その結果、ある2種類の口内細菌と膵臓がん発生との間に相関関係が見られたのである。
P.gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)という細菌を持っていた被験者は、その菌を持っていない人に比べて約1.6倍、また、A.actinomycetemcomitans(アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス)という細菌を持っている被験者では、約2.2倍も膵臓がん発生率が高かったという驚きの結果が示された。
この2つの細菌はともに歯周病の原因菌でもある。
□口内の歯周病と膵臓がんの関係 求められる慎重な解釈
今回、膵臓がんと口内細菌との間に関連性が見られたわけだが、それはあくまでも解析上の「相関関係」であって「因果関係」ではないことに注意しなくてはならない。
これらの口内細菌が膵臓がんを引き起こすのか、また、引き起こすとしたらどのような作用で引き起こすのか。これらは今のところ全く分かっていないということである。
□歯周病菌と膵臓がんをつなぐミッシングリンク
生活習慣の乱れは、高血圧、心臓病、脳卒中、肥満、糖尿病、がんなどの要因となるが、同様に口腔内の衛生環境も悪くする。従って、膵臓がんの発生と歯周病菌の繁殖に共通する原因は、生活習慣の乱れなのかもしれない。
しかしその一方で、歯周病菌が膵臓がんを引き起こすという仮説もある。歯周病菌による炎症が組織に波及し、がんの引き金となるという考え方で、その可能性もゼロではない。
□歯周病予防を徹底することでがんを予防できる未来がくる?
もし、歯を磨くことで膵臓がんが防げるとしたら、どんなに多くの人を救えるだろうか。また、自宅や歯科医院で唾液などを検査することで簡単に膵臓がんリスクを評価できるようになるかもしれない。
今のところ歯周病菌と膵臓がんの因果関係は明らかでない。今後の研究の進展が待たれるところだ。いずれにしても、正しいやり方で歯をしっかり磨くことを含め、生活習慣を整えることが健康には大切である。
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