2014年03月21日
花粉症の始まりはイギリスの枯草熱? 知られざる花粉症のルーツとは
第二次世界大戦以前には、日本では存在さえ知られていなかった花粉症が、近年これほどまでに増加したのには、いったいどんな理由があるのでしょうか? 日本人の国民病ともいわれる花粉症のそもそものルーツは、じつはイギリスにあったことがわかりました。
19世紀イギリスで起きた枯草熱
19世紀の初め頃、イギリスの農民たちが牧草を刈り取り、乾燥させるためにサイロに収納するときに、人によっては鼻からのどにかけて灼けつくような痛みとかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙が止まらなくなる、などの症状がありました。
これらの症状とともに、熱っぽくなったことから「枯草熱(hay fever)」と呼ばれました。これを医学的に初めて報告したのはイギリスの学者ボストークです。同じイギリスの学者であるブラックレーは、「枯草熱がイネ科植物の花粉に起因している」として、枯草熱の原因を明らかにしました。このときから枯草熱は「花粉症」と呼ばれるようになり、その後、「花粉症は花粉によるアレルギー反応である」ことが判明します。
当時はまだ、アレルギーという概念は存在しなかったため、アレルギーのメカニズムなどが理解されるまでには、しばらく時間が必要でした。
軍艦建造が花粉症発生の遠因
イギリスの森林面積は現在、国土のわずか9パーセントにすぎません。これに対して、森林が消滅したあとにできた牧草地の面積は国土の45パーセントにもなり、世界最大だといわれています。現在のイギリスでは、ロビン・フッドの住んでいたシャーウッドの森のような風景は見られないのです。
イギリスに先駆けて世界の海を制覇した国々、ギリシャやイタリアでは、森林の切り倒されたあとはハゲ山となっています。これらの乾燥した気候の地域では、緑は再生しないのです。それに比べるとイギリスなど西ヨーロッパは、牧草などの生育に適したやや湿潤な気候であるため、伐採のあとには牧草が生えてきます。
イギリスで森林が消滅し、牧草地が増えたことはそのまま、アレルゲンとなるカモガヤ(カルガヤは最良の牧草のひとつ)などの繁殖につながり、世界最初の花粉症が出現しました。このいきさつから、花粉症増加の背景には何よりも、アレルゲンの絶対量の増加が存在することがうかがえます。
では、なぜイギリスでは19世紀初頭に、牧草地がそれほどまでに広大になっていたのでしょうか。イギリスは1588年に、無敵のスペイン艦隊に舷側の砲門を使った新戦法で挑み、折からの暴風雨の助けもあって撃退することができました。そうして7つの海を制覇しようとしていた頃、イギリスの森林は軍艦の建造その他の目的に伐採され、「森林の消滅」と称されるほどの生態学的危機に見舞われていました。
なにしろ大きな軍艦を一隻造るためには、樹齢100年以上のオークの巨木が2,000本は必要だったのですから。それはスペインも同じで、スペインの無敵艦隊が復活できなかったのは、国内に軍艦建造のための木材がなくなってしまっていたためだと伝えられています。
それまで長く続けられてきた森林伐採は、牧草の拡大を招き、やがては花粉症という現代病の登場を引き起こすことになりました。
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