2016年10月29日
地上最強にタフな生物「クマムシ」は別の生物が2割も混ざっているってほんと?
血縁の判定や病気の診断にも使われる「遺伝子」。将来かかりそうな病気がわかるだけでもショッキングなのに、別の生き物の遺伝子が2割も混ざっているムシがいるのはご存じでしょうか?
体長1ミリほどのクマムシは、ゆるキャラのような風貌からは想像できないタフな生き物で、高温、乾燥、真空も大丈夫、レンジでチンしても生きているため、最強の生物とも呼ばれています。紫外線や放射線でDNAが損傷しても自力で修復可能、最近の研究によってほかの生物のDNAをおよそ2割も持っていることが判明、自分にないDNAを取り込むことが強さのひけつと考えられているのです。
■レンジでチンしても生きているクマムシ
ずんぐりとしたからだに4対8本の足を持つクマムシは、イモムシを小型にしたようなかわいらしい姿で、歩く姿が熊に似ているのが名前の由来。体長1ミリ程度、地球上のどこにでもいる至ってフツウのムシですが、ギネス世界記録にも登録された「最強生物」。地球上には存在しない過酷な環境でも生き延びる、ほぼ不死身な生き物なのです。
クマムシは、温度や湿度だけでなく、x線などの放射線にも耐え、
・絶対零度(約マイナス273℃)から150℃
・真空から6,000気圧
・乾燥
・人間が耐えられる量の1,000倍のx線
もOK、電子レンジで3分間チンしても死にません。理由は、
・乾燥 … 樽(たる)状に丸まって乾眠(かんみん)
・無酸素 … 仮死状態
と、活動を止めて状況が良くなるのを待っているからです。9年間も乾眠していたクマムシに水分を与えたところ活動を再開したとの記録もありますので、最強よりもリアル・ゾンビと呼ぶべき生物なのです。
■他種のDNAを「食事」する?
クマムシはなぜ「タフ」なのでしょうか? 最大の特徴はDNAを修復できること、さらに最近の研究では、ほかの生物のDNAを取り込むことで強くなった、と考えられています。
DNAは紫外線や放射線を浴びると損傷し、日常的な要素では「乾燥」でもダメージを受けることもあります。クマムシも例外ではなく、水分が減ると乾眠で対抗しますが、DNAが断片化してしまうためダメージを受けないわけではありません。そこで、ふたたび水分を得て動き回れるようになるとDNAを修復、このとき水分を失った細胞は外部から「もの」が通り抜けやすくなるため、この際にほかの生物のDNAを取り込んでいるのでは、と考えられているのです。
クマムシのDNAを解析したところ、
・細菌 … 16%
・植物 … 0.5%
・ウイルス … 0.1%
などが見つかり、およそ2割はクマムシ「以外」であることがわかりました。通常、遺伝子は「先代」から受け継ぐものであり、クマムシの親が細菌や植物であるはずもありません。そこで、エサから栄養を摂るように、ほかの種からDNAをもらってくる水平伝播(すいへいでんぱ)では? と考えられ、自分以外の「特徴」を取り入れることが強さのひけつ、と推測されているのです。
宇宙空間でも生き延びられそうなクマムシの研究が進めば、病気の治療にも大きく貢献しそうですね。あったかいんだから、な結果が出ることに期待しましょう。
・クマムシは、高温、乾燥、真空、高圧でも生き延びるタフな生物
・ダメージを受けたDNAを、自分で修復できる
・クマムシのDNAを調べたところ、およそ2割は「ほかの生物」のものだった
・DNAを修復する際に、ほかの生き物のものを取り入れている、と考えられている
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