2017年09月06日
愛のホルモン・オキシトシンでダイエット?衝動的行動をコントロール
「オキシトシン」をご存じだろうか? 母乳の分泌、親子同士や他人との絆の構築、ストレスの軽減などのはたらきを持つホルモンで、”愛のホルモン”とも言われている。自閉症の情動性などの諸症状や、その他の発達障害でもコミュニケーションなどの改善に効果があるとして注目されたのは最近のことだ。
そのうえ、止められない食欲に悩むダイエッターにとっても朗報となるかもしれない。2016年4月に発表された最新研究によれば、オキシトシンを含んだ鼻スプレーを使った肥満男性の衝動的な行動を抑えられることが判明したのだ。
□ダイエットに効果ある? 肥満男性10人にオキシトシンを投与
ハーバードメディカルスクール講師Franziska Plessow氏主導の研究チームは2015年にオキシトシンの摂取と肥満男性の衝動行動に関する研究を行った。今回は、そのメカニズムを調査するために、太り過ぎ(BMI 25以上)もしくは肥満(BMI 30以上)の男性10名を対象に、以下の実験を2日間に渡って実施した。
1.コンピューターの画面上に四角形が表示されればキーボードの左のボタン、三角形が表示されれば右のボタンを押す
2.慣れるまでしばらく[1]のタスクを行ったのち、次は四角形や三角形が見えたときではなく、音が聞こえたときのみボタンを押す
3.1日目は人工的に合成したオキシトシンを配合したノバルティスファーマ(スイス)の鼻スプレー「シントシノン」を使用。その15分後、この[1]と[2]のタスクを2度行った。2日目はオキシトシンを摂取せずに同様のタスクを行った。
ちなみに、太り過ぎはBMI(肥満指数)25以上の見た目が超過重量である状態、肥満はBMIが30以上で過剰な体脂肪が蓄積された状態を言う。
□ドカ食いの衝動行動も? オキシトシンのダイエット効果は
実験の結果、オキシトシンを摂取しなかったときと比べ、シントシノン使用後は音が鳴っていないときに間違ってボタンを押してしまうという衝動的な行動が減り、参加者たちはより自分の行動をコントロールできるようになった。
□ダイエットの救世主になるか、オキシトシン
しかし、食べ過ぎの原因は自分の衝動をうまくコントロールできないことだけではない。
研究チームは、オキシトシンが自己のコントロールにどう影響を与えるのか、それがカロリー摂取を制限するうえでどれだけ重要であるかを判断するには、さらなる研究が必要だとしている。
また、今回の実験対象は男性のみだったが、ダイエットを気にしている人口では女性の方が多いだろう。女性にも同様の効果が見られるのか、これを解き明かすのも今後の課題の1つだ。
□オキシトシンでストレス軽減→ダイエットに?
ストレスを感じたときや精神的に不安定なとき、ついドカ食いをしてしまうのは珍しいことではない。もしかすると、オキシトシンはドカ食い前のそうしたストレスを軽減することで、余計なカロリー摂取を制限してくれるのかもしれない。
今後さらに研究が進めば、ダイエット中の食事制限に悩む世の多くの人たちにとって、オキシトシンは救世主的存在となってくれることだろう。