2018年01月09日
「アクネ菌はニキビの原因」は誤解 むしろ皮膚疾患から肌を守っているかも
人の皮膚に一般的に存在する細菌「アクネ菌」が、さまざまな皮膚疾患を引きこす要因となる酸化ストレスによる皮膚の損傷を抑制している——スウェーデンのルンド大学とデンマーク、オーフス大学の研究者らによる発表だ。
「アクネ菌」は皮膚常在菌である「プロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes)」の通称。ニキビの原因とされているが、最初に発見されたのが重度のニキビ患者の皮膚だったためで、現在では直接の原因にはなっていないとされている。
皮膚を弱酸性に保ち、有害な菌が皮膚に定着しないよう防御する働きを担っていることが知られていたが、研究者らは今回新たに、アクネ菌が「RoxP」と呼ばれるたんぱく質を分泌していることを発見した。
皮膚は太陽からの紫外線を浴びることで、活性酸素のバランスが崩れた酸化ストレス状態に陥ることが知られており、アトピー性皮膚炎や乾癬、皮膚癌といった皮膚疾患が引き起こされるとも言われている。
RoxPは、こうした皮膚の酸化ストレスによる細胞の損傷を抑制しており、研究者らは保護機能として作用していると推測。
誰の皮膚上にも存在する常在菌であるにもかかわらず、人によって皮膚疾患の有無が異なる点について、研究者らは「皮膚上の細菌叢は個人で異なるため、分泌されるRoxPの量によって、保護の程度も変わるのではないか」としている。
現在、実際に分泌量の差によって保護機能の差が生じているのかを検証するため、健康な人と皮膚がん患者を比較する試験を実施しているという。先行して実施されているマウスを対象とした実験では、RoxPを塗布されたマウスは、塗布されていないマウスに比べ、紫外線照射による皮膚ダメージが軽減される傾向にあることを確認。
今後の研究結果次第では、RoxPを含有した日焼け止めや乾癬、アトピー性皮膚炎治療薬などの開発が期待できるとコメントしている。