2016年03月26日
睡眠は不足も過多もよくない 意外なところで糖尿病リスクが上がる?
健康診断での血糖値は何となく気にするものの、自分が糖尿病、あるいは糖尿病予備群だと思っている人は少ないのではないだろうか。しかし、厚生労働省の「平成25年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人は約950万人、予備群は約1100万人。合計すると総人口の約16%にあたり、決して珍しい疾患ではない。
「太っているわけではない」「甘いものをそれほど食べているわけではない」、と考えていても、実は思わぬところに糖尿病のリスクが隠れていることが最近の研究で明らかになっている。
かなり多い糖尿病のリスク因子 糖尿病と診断される目安としてよく知られているのは「空腹時血糖値126ミリグラム/デシリットル以上、もしくは食後血糖値200以上」というものだ。「健康診断で空腹時血糖値は100未満で正常だった」と安心している人も多いのではないだろうか。
しかし、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長で専門医の山田悟医師は、「血糖値の異常はまず食後高血糖として現れるため、健康診断で空腹時は正常値だったとしても、すでに予備群となっている可能性はあります」と指摘する。
健康診断のデータにある「HbA1c」という数値が高めの場合、食後高血糖の可能性もあるとされるが、正確に知るには、医療機関で測定するか、測定器を購入して自己測定するしかない。誰にでも糖尿病リスクがあるとは考えておいたほうがよいだろう。
糖尿病にはいくつか種類があるが、患者や予備軍の大半は、生活習慣に起因する「2型糖尿病」だとされている。一般に2型糖尿病の高いリスク因子と考えられるのは、「過体重・肥満」「1日25グラム以上の飲酒」「過剰な赤身肉、炭水化物の摂取」だ。さらに、喫煙やうつ病や睡眠不足もリスク因子の可能性があるとされている。
逆に、予防が期待できるものは「体重を5〜10%減らす」「週150分以上の有酸素運動」「食物繊維、魚、緑黄色野菜、低GI食(食後の血糖値の上昇スピードが緩やかな食品)の積極的な摂取」。最近ではコーヒーの摂取にも予防効果を示唆する研究があるとされている。
リスク因子に覚えがある人は早速、生活習慣を改めたいところだが、海外ではちょっと気になる糖尿病リスクの研究が発表されている。
ひとつは、2015年5月にニュージーランドのオークランド大学が発表した、サーモンとオキアミの魚油サプリメントを飲用している人は血糖値を下げるホルモンの作用が低下し、糖尿病リスクが悪化したというもの。
BMIが25〜30で肥満男性47人を対象にした研究だが、魚油サプリかキャノーラ油(菜種油)を5グラム、8週間摂取したところ、なんと魚油サプリを摂取していた人のほうが、血糖値が下がりにくくなっていたという。研究者らは「DHAやEPAには血糖値を下げる効果があるため、それ以外の何らかの物質が原因」としているものの、魚の代わりに飲んでもよいものか悩んでしまう。
まずは自分の血糖値、食事に注意を もうひとつは6月に発表された、英国ブリストル大学とロンドン大学の研究チームによる、睡眠時間による糖尿病リスクの変化だ。5000人以上の英国人を20年間追跡調査した結果から分析されたもので、1日の平均睡眠時間が7時間の人に比べ、2時間以上短くなったり、長くなったりした人は、糖尿病の発症数が1.5倍になったというのだ。
論文では、睡眠時間が大きく変わるような生活習慣の変化が、糖尿病の原因となった可能性も否定できないとはコメントされているが、睡眠不足解消のつもりで1日9時間睡眠、というのは危険かもしれない。
こうなると、何がリスク因子で、何が予防策となるのかわからなくなってくるが、リスクはあくまでリスク。まずは基本的な生活習慣を見直すのが大切だろう。その上で、山田医師がすすめるのは、食事の糖質の量を減らす「低糖質(ロカボ)」だ。
「糖質を一切摂取しない、というのは難しいですし、健康によくないとする研究もあります。しかし、1回の食事での糖質の量を20〜40グラム(おにぎり1個、サンドイッチ1パック分)程度に減らす低糖質なら、無理なく始められますし、血糖改善に加え体重減少なども期待できます」
低糖質に関してはエビデンス(科学的な証拠)も確立されており、リスク解消の効果も確認されている。まずは、ご飯半減から取り組んでみてはどうだろうか