2018年12月11日
理解されにくい身体症状症 長期に及ぶ体調不良のワケは
頭痛や腹痛が続いて、病院に行っても原因は不明…。もしかすると、体調不良の原因は「身体症状症」かもしれません。
原因がわかりにくい身体症状症ではありますが、身体症状症になりやすい性格や体質はあるのでしょうか。
また、日頃からどのようなことに気をつけていれば身体症状症を緩和することができるのでしょうか。
今回は身体症状症について、医師に詳しく解説していただきました。
身体症状症とは
自覚症状の原因となりうる身体的異常や検査結果が明らかではないのに、頭痛、腹痛、筋肉痛や吐き気、しびれ、など多くの症状が長期間にわたって続くものです。
医療機関に受診してもこれと言った原因がわからず、以下のような診断をされ、医療機関を転々とすることもよくあります。
診断例
□ 異常はない
□ 心配のしすぎ
□ 不定愁訴
□ ヒステリー
(参照:精神神経学雑誌)
身体症状症の原因
性格
遺伝的な素因に、育つ環境によっての経験から形成されると考えられてきました。
最近では上記の理由の他に、腸内細菌や自分が作り出す神経伝達物質やホルモンが性格形成に関わるのではないかとされています。
■ 神経症になりやすい性格
・内向的
・心配性
・まじめで完璧主義
・責任感が強い理想主義
・負けず嫌い
・他人の評価を気にする
・失敗が怖い
・冗談が理解できない
■ 神経症を引き起こしやすい食事
腸内細菌や神経伝達物質やホルモンのアンバランスは、食事によっても起きます。 特に糖質や悪い脂肪分の多い食事なども、悪玉腸内細菌が優位になり、アンバランスが起きるとされています。 ?
ストレス
ストレスを無意識に抑え込んでしまうことも原因となります。
・仕事や学校に行きたくない
・肉親が亡くなった、重い病気になった
・離婚した、家族への怒り
上記のようなストレスでも症状が悪化します。
声が出なくなってしまう「失声症」はストレスが関わっており、神経伝達物質、ホルモン、腸内細菌に大きく影響し、身体症状を引き起こすこともあります。
年齢や性別
子どもや若い人(朝、学校に行きたくなくてお腹が痛くなる)、女性(性周期や年齢でホルモンのバランスが大きく変化するからでしょう)などに多いと考えられますが、すべての年齢層、性別の方に起こりうる症状です。
身体症状症の症状
・筋肉、関節などの痛み
・胃痛
・腹痛
・呼吸困難
・吐き気や嘔吐
・胸焼け
・頭痛
・まぶしい
・耳鳴
・肩凝り
・しびれ
・声が出ない
・喉の違和感
・けいれん
・不安
・心配、不眠
・イライラ
身体症状症の診断基準
通常の検査では明らかな異常を認めないこと。
それでいて、説明のつかない痛みや吐き気、しびれ、脱力、などが長時間続くことから推測します。
身体症状症の治療内容
治療内容
■ 薬物療法
強く出ている症状に対する薬や、抗不安薬・抗うつ剤を使います。
■ 認知行動療法
症状が強くなる時、良くなる時の状況やきっかけをよく分析し、症状が軽くなるような行動を取っていくように変えていく方法。
■ 精神療法
原因となるストレスについて理解したり、対処を考えていく方法。
治療期間
原因になっていることが改善するわけではないので、半年〜何十年にも及びます。
処方される薬の例
■ 精神症状
抗うつ剤、抗不安剤など、精神症状に比較的あった薬剤 。
■ 胃腸の症状
胃液を抑える薬、胃腸の動きを良くする薬など 。
■ 痛みを感じる症状
頭痛ならば頭痛薬、肩凝りならば、筋弛緩剤、筋肉痛であれば痛み止めなど。
また、痛みに対して抗うつ剤、抗不安薬もつかうことがある。
身体症状症により併発しやすい疾患
・逆流性食道炎(胸やけ)
・線維筋痛症
・うつ
・不安神経症
・自律神経失調症
・更年期障害
・機能性胃腸症
・レストレスレッグス症候群
・筋緊張型頭痛
・慢性疲労症候群
・慢性疼痛
など
身体症状症を緩和する方法
生活習慣を整える
バランスの良い食事や早寝早起き、適度な運動。例えば週に数回はウォーキングやジョギングなどで体を動かしましょう。
目への負担を減らす
スマートフォンなど、目に負担のかかる電子画面の使用を制限しましょう。
心身をリラックスさせる
下記のような方法で、心身を緩和させましょう。
・嫌なことを抑えるのでなく、自分で理解して納得する
・瞑想
・心を落ち着けるツボを押す
・呼吸法は腹式呼吸にする
・体の筋肉を順番に緊張・弛緩を繰り返す、リラクゼーション法を行う
・「手足が重たい−手足が温かい」など、決められた文言を自分に繰り返し語りかけながら体を感じる、自律訓練法を行う
また、周囲に理解してもらうことも改善するきっかけになります。
身体症状症は検査をしてもはっきりと原因がわからないので、決定的な治療法がないとされています。
しかし、検査をして原因がわからないことと、原因がないことは全く違います。
機能性胃腸症やうつ病や統合失調症の患者さんの多くが、腸内細菌のバランスや脳内の神経伝達物質のバランスが悪いともいわれています。
今後、こうした方面でも研究が進み、症状が楽になる患者さんが増えるといいですね。