2016年10月29日
生きている人から肝臓を移植する「生体肝移植」ってどういうもの?
生体肝移植後、患者が亡くなるということが続いてる病院がある…とニュースで報道されました。
ところで生体肝移植とはいったいどのようなもので、どんなときにする移植なのでしょうか?
今回は生体肝移植について医師に聞きました。
肝臓のはたらきってどんなもの?
肝臓は、とても大切な臓器です。
1.栄養の構築
・糖や蛋白質、脂肪の形を変え、エネルギー源として貯蔵する。
・脂肪の消化吸収を行う胆汁をつくる。
2.有害物質の分解
・アルコールや老廃物など体にとって有害な物質を分解し、無毒化する。
肝臓に疾患があって、うまく働かなくなってしまうと黄疸が起きたり肝硬変や肝不全になります。
生体肝移植ってどういうこと?
生体肝移植とは、生きている健康な人から、肝臓の一部分を手術によって切り取り、移植用臓器とします。肝臓の一部を提供する人(ドナー)と、肝臓をもらう人(レシピエント)が同時に手術します。
≪移植する肝臓の大きさ≫
移植される肝臓の大きさは、レシピエントの体重の0.7パーセント以上です。
一方でドナーに残される肝臓は、摘出前の大きさの3割以上となるように移植が行われます。
≪移植後の反応≫
レシピエントには移植後、拒絶反応を抑えるための「免疫抑制療法」を行います。さらにこの療法に対する副作用や感染などさまざまな反応が起こることもあり、場合によっては命に関わります。
ドナーにも、感染や胆汁漏などの合併症が起こることがあります。ドナーは移植によって肝臓の一部を失いますが、残された部分から徐々に再生します。
生体肝移植が必要になるのはどんなとき?
肝移植が必要になる人は、疾患によって肝臓が働かなくなってしまう末期の肝不全の状態で、他に治療法のない人です。
また、肝不全になっていなくても、治療不可のがんがある場合に根本的な治療をするためにに有用とされています。
移植の原因となる具体的な疾患は、子どもでは胆道閉鎖症、大人では肝がんや肝硬変が多いです。
ドナーになる条件も知りたい!
生体肝移植のドナーになるは、いくつかの条件があります。
・自発的意志があること
・全身状態がいいこと
・健康な肝臓で肝機能も正常なこと
・HIVやB型肝炎などの感染や、近年、悪性腫瘍の既往がないこと
・基本的には成人〜65歳程度
・必要な肝臓の大きさがある人(CTを用いて推定することができます)
肝臓の一部を提供する人(ドナー)と、肝臓をもらう人(レシピエント)は原則として、6親等以内の血族、3親等以内の姻族である民法における親族であることも条件と定められています。
生体肝移植はかなり難しい手術といわれていて、慎重に行うべき手術です。リスクも高い生体肝移植ですが、この治療がどうしても必要な人もいます。
肝臓の提供は、親族間であり、さらに提供可否の条件があります。何が起こるかわからない人生、自分がドナー候補となる場合があるかもしれません。知識として覚えておくといいですね。