お兄ちゃんの思い出No.1,幕末の散華,会津藩家老_河原善左衛門政良の倅、斗南の国で,幕末WITH_LOVE

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最果ての地、燈篭流し,幕末の悲しい「お兄ちゃんの思い出」No.1,会津藩家老、河原善左衛門政良の倅、斗南の国で,幕末WITH_LOVE

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今回はオンリー心系。小難しい歴史の話は関係なく読めます！

お兄ちゃんの思い出＿No.1

会津藩家老、河原善左衛門政良の倅、斗南の国で

最果ての地、燈篭流し

ここは遥か、斗南の国。会津は遠くて、遠くて遠すぎて、いくら歩き続けても、
子供の足じゃ、一人では無理と言う。

川は流れる。少年は、一人ぼっちで、燈篭流し。
水は、東へ、東へ流れゆく。やがて流れて太平洋に流れ着くのだろう。

ゆっくり、ゆっくり、転ばないでね。紙風船みたいなちっぽけな「竹燈篭」。
だって、手作りだから、今にも壊れそう。蝋燭灯してみたけど、とっても心配。

どうか、転ばないでね。どうにか、こうにか、お願いだから、海まで届いてね。
大きい竹燈篭が4つ。中位がひとつ。ちっちゃいのがひとつ。

「僕は、もうじき、誕生日だよ。
僕は、どうすりゃいいの？
もう少しで、お兄ちゃんを、
追い越してしまうよ。
お兄ちゃんより、僕のほうが
お兄ちゃんになっちまうよ。いいの？
・・・
なんか言ってよ、お兄ちゃん！」

河原勝治：各回想より

■河原勝治（かわらと読む：かわはらでなく：会津藩）,関連：父の「河原善左衛門政良」
■戊辰、会津戦争に散った家老「河原善左衛門政良（1827～1868/10/08）」の二男。
■著書など残された文章：◆『思い出の記』、◆「河原善左衛門の事蹟」他各種。本人の文章以外にも談話等も有

幼すぎたあの頃・・・自分に対する自分の告解の時

河原勝治の文章の内、『思い出の記』はタイトルのニュアンスは極めて穏やか。
中身も、戊辰の悲惨を痛烈に訴える為の刺々しさもなく、あたかも小川のせせらぎのごとく。
悲しみと、怒りを第三者にけっして訴えているものではない。ただ、ただ静かに下流へ黙って流れ行く。

とてつもなく悲しい事柄の描写は、『動』でありながら、不思議と極めて『静的』な印象。
静かに時の狭間に流れ行くような心地。（遺体の描写などはリアルですが、怒りをぶつけていない。）

しかし、ひとつひとつ読み砕くと、全ての場面に、悔恨が感じられてならない。
どうすることもできなかった幼い自分。懐古することによって、幼すぎた自分を責めているのが解る。

苦しみながら書き表すことによって、
きっと魂を弔っているのだろう。

ふと、そんなふうに感じられて仕方ない。

運命のあの日

父は、押しも押されぬ誇り高き会津家老。その名は、河原善左衛門政良。(実質家老か否かもリンク先)
世の流れを敏感に捉えて、むしろ恭順説を藩主に促した。しかし、藩論が決まった以上、
藩主に従うは臣の掟。勝てぬ戦。されど会津の為に、明治元年8月23日（1868/10/08）、戦場に命を捧げた。
上記、8月23日とは、新政府軍、会津若松城の攻撃開始の日。従う部下も皆、その多くは奮戦死。

この防戦隊は、はじめから防戦＝殉死覚悟だった。

間諜の働きで、翌朝発生する戦、それは事前に解っていた。
その前夜、河原善左衛門政良は、部下を集め、自ら一人、一人、全員に酒を注いで廻った。
決死の覚悟を述べると同時に、皆に深々詫びて、こう言った。

「誠に済まぬ。この河原善左衛門の最初で最期の我儘じゃ。
皆の者よ、許せよ。皆の者よ、お頼み申す。
この我に皆の命、預けてはくれぬか。
会津の為に、藩主様の為じゃ、我に悔いは無い。
・・・皆の者よ、このとおりじゃ。」

涙しつつ、皆が賛同していた。

「どうか、ご奉行、そのお手をお揚げ下され。どうか、我らごときにそのような・・・」

国産奉行、河原善左衛門政良は、額を床に擦り付けんばかり。皆に見せた侘びの姿。
誰もが男泣きに泣いた。

涙の盃となった。誰一人異存はない。当に決死、散華の覚悟だった。

明治元年8月23日、11歳の河原勝治は、父：善左衛門政良（42歳）と、叔父：河原岩次郎（39歳）、
及び、兄の勝太郎（15歳）を、同じ日、同じ戦場、滝沢村八幡山の戦闘に失った。

間もなく、祖母：菊子と、幼い妹、国子も天へ昇って行った。

自分と一緒に唯一、生き残ってくれたはずの母も、後を追うように、明治7年（1874）死亡。
ついに、たった一人の生き残りとなった。ひとりぼっち。見知らぬ最果ての地、斗南の国に暮らす。

今回は、スポットを兄の勝太郎（15歳）に搾って書いてみます。題して、お兄ちゃん。