中野竹子の豪傑母君No.1,入城合言葉と小型犬,母が一気に飲み干した大盃の一升酒_その訳,会津藩,幕末戊辰

カテゴリ：幕末会津藩

中野竹子の豪傑母君,小型犬と入城合言葉,母が一気に飲み干した大盃の一升酒_その訳,会津藩,幕末戊辰

中野竹子,娘子隊,会津藩

勇戦散華の乙女「中野竹子」の豪傑母君＿No.1

■母が一気に飲み干した「大盃の一升酒」＿その訳、■痛感！母にとっての「長女と、下の娘」認識の差
■水島菊子による「娘子隊」の手掛かり「婦女隊」、■戦の中にも無邪気：少女と大人の切り分け

母が一気に飲み干した「大盃の一升酒」＿その訳

22歳の乙女が勇戦散華。会津の為なら、命は惜しくない！

会津の為に、たとえいくら頑張ったとえ、私は、所詮女。
男達に比べれば、僅かな足しにも満たないでしょうが、・・・それでも私は、会津を守りたい！
聖なる会津の為なれば、たとえ死んでも惜しくない！中野竹子といえば、娘子隊。露と消えた。

・・・（今回はヒロインの影の「もう一人」の話）

もののふの
猛き心にくらぶれば、
数にも入らぬ我が身ながらも

娘子隊中野竹子

この句を詠んだ中野竹子は、敵の男達を次から次へと斬り倒して、最期は銃弾に撃たれ、慶応4年8月25日、戦死。

彼女本人に関しては、シリーズが複数ありますから、上記リンク先、または下のバナーからどうぞ

おそらく、瞬時に飛び去るよりも、むしろ、ずっと辛い。
今回は、その母、「中野こう子」の話。

悲しみを噛み殺して、気丈を装う母の姿を、テーマにご案内いたします。

生き残った母「こう子」は、いかにも娘を失った哀れな母の姿は、これっぽっちも見せない。
それどころか、ドガン！と肝っ玉、皆を笑わせた豪傑おっ母さん。
やること、なすこと男勝り。男達も、藩主、松平容保（※）も、みんな腰抜かした。

▼会津に下った段階で、容保は養子に藩主座を移行の為、
厳密には旧藩主だが、まあ実質上の話

この話は、うっかり、読み流すと、烈女の母なれば、やはり、同じく豪傑女だなァ
・・・それだけの感想文で終わってしまいそうなところですが、
・・・
極めて短い文章の中、 盃を飲み干した母の気持ちが、ひしひしと伝わってきました。

この人は、遮二無二噛み殺している。他人に、己の哀れを絶対見せない。
なぜならば、涙されたら、潰れてしまう。涙の一滴は、魔法の「お面」を溶かしてしまうから・・・。
皆が笑いとばしてくれるから、己も耐えれる。

ひょうきん者のお面をかぶって 、豪傑おっ母さんの篭城実話。

1＿恰も戦国時代、入城の合言葉と、小型犬

こう子が引き連れてきたメンバーは、本人を含め全5名。全員戦う武装女性軍団。薙刀の達人。
ところが、これは、事前に打ち合わせして結成された隊ではなく、たまたま
道で出会い、志が同じ故、一丸となって動いたチームにすぎなかった。

▲今回は水島菊子談中心に書いています。別説では、
竹子は事前に他にも同士を募っていたが、合流できなかった。

メンバーは、初め合計6人。このうち、達人の中野竹子は前述のとおり、散華を遂げた。
■中野こう子（44歳）,■中野竹子(22歳),■中野優子(16歳)
■依田まき子（35歳：水島菊子の姉）,■依田菊子(18歳＝後の水島菊子),■岡村すま子(30歳位)。
これは、中野母娘（3人）に、道で、依田姉妹（2人）が遭遇。その後に岡村すま子が合流していた。

入城の際、合言葉の儀式が始まった。

城門の前、こう子が声高らかに叫んだ。 「山っ！」 。城門の影、姿の見えぬ兵が返し言葉。 「川っ！」
扉が微かに開きかけた。続いて、こう子がまた叫ぶ。

「江戸詰勘定役中野平内の妻、中野こう子、44歳。他、娘ら全4名にござります。」
ギギィーッと音がするなり、重い扉が開いた。

悲惨な戦の最中だというのに、やはり、十代の者とは、半分無邪気だ。
依田菊子は、この大仕掛けのドラマに、大層感動したという。本人が後にそう語った。

上記皆を簡単に説明すると、決死の大人女性4名プラス、後の二人はおまけの少女達。
このうち竹子は死亡済につき、母のこう子がリーダー。依田まき子は、鳥羽伏見で最愛の夫を
失い、完全に散華覚悟の仇討ちだった。岡村すま子だけは詳細不明だが、女がたった一人で、
戦衣装に身を包み、薙刀抱え歩いていたところをみると、おそらく彼女も依田まき子と
同じような境遇だろう。

城に入ると、この女性5人組の話を聞くなり、藩主（ ※ ）容保は、大層褒めて、皆を
奥の間に呼んだ。竹子の死を心から悼み、暖かい言葉を下さったという。
しかし、こう子は、けっして泣き崩れることをしなかった。褒美を与えようと言われたが、
かたくなに辞退する。 「お心のみが、誠の有り難き幸せにござります。」

そこに現れたのは、藩主の義理姉、熙姫。メンバーを見るなり、手際よく、女中に命を下した。
三人の大人女性の後には、なんとも可愛い少女が二人。

間もなく、てんこ盛りのお菓子が運ばれた。

「遠慮は要りませぬ。たくさん、召し上がれ。まだまだ、これからですよ。
・・いいえ、良いのですよ。かまわず召し上がって下さい。
そのほうが、嬉しいのです。飾っておくでは意味がありませぬ。さあ、召し上がれ。」

先刻まで、緊張のあまり石のようになっていた少女二人は目がパチクリ。
甘いお菓子、しかも、いくら武家の娘といえど、こんな立派なお菓子は見たことがない。
それが、ひとつふたつならずや、堆く積まれているではないか！

この姿に、思わず、照姫は笑った。その声で、どこからともなく、一匹の狆がやってきた。
戦の最中だというのに、犬だから無邪気。ピョンスカピョンスカ、小型犬特有の仕草。
しまいには、照姫にじゃれついて、袖口に噛み付いて引っ張る。

姉を失い、めそめそしていた優子も、目線は、この可愛い犬と、お菓子の山に釘付けだ。
犬とお菓子、視線が交互に動く。大人三人も、振り返って、少女二人を
あらためて見つめていた。

依田まき子は、ぐっと涙を堪えた。数日前、中野家の三人に遇った時、妹の菊子と、
中野家の優子は、忽ち仲良しになった。どうせ死ぬから、気前よく、そこらのお百姓に
お金をくれてやったところ、彼らの恩返しか、いつのまにやら、この二人は
砂糖の塊を貰って、引っ張りあって、砕いて食べていた。

▲この砂糖話ですが、当時砂糖は高価。庄屋クラスの秘蔵でしょうね。余程お金をあげたのでしょう。

こうしてみるなれば、やはり二人は、まだ、半分子供なのだ。
甘い御菓子の山にキョロキョロしている二人が可愛いかった。

二人にしてみれば、小型犬の仕草が無邪気に見えるのだろうが、大人から見ると、
犬も妹達も似たようなものだ。これも束の間、一弾の砲弾が、この可愛い妹達の
命も奪うのだろうか。まき子は、またしても涙を堪えた。

2＿ひょうきん者のお面＿おむすび事件