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カテゴリ：幕末,戊辰,箱館戦争

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伊庭八郎の微笑みと、少年_高梨哲四郎＿No.8

犠牲死の男「本山」と、痛恨の男「中根」

伊庭八郎の関連人物参考補足頁＿その３

【関連頁ナビ】伊庭八郎の関連人物考察の目的と、現在頁のMENU

■ 【Q1】本山小太郎のヒント模索、
■【Q2】「中根淑」の心情

▲ 【No.6】前々頁、▼ 【No7】前頁、

■【A】関連人物の特徴一望表：皆の共通点から、本山小太郎の前職考察
■【B】座礁後、伊庭八郎の陸路逃走経緯＆ルート＆匿ってくれた人＆宅等について

座礁後、陸路逃走ルート＆匿ってくれた人＆宅について
座礁したみかほ丸に乗船していた者の内、共に逃走した者
伊庭を尺振八の家に送り込むまでの経緯：中根と本山の連携プレイ
本山小太郎による伊庭の世話バトンタッチについて

＜▼ 【No8】 現在頁 ＞
■【C】中根淑について＆著書「征西日記」
■【D】：中根淑を救った男「乙骨太郎乙」

＜【C】：中根淑について＆著書「征西日記」＞

現在項目は、「 ■【Q2】中根淑が伊庭について書き残した心情推察」項目」の補足項です。

中根淑は、なぜ、この著書を書いたか。その心情について

中根は、伊庭道場先代の教え子。命にかえても八郎を守り追従したかったが、乙骨太郎乙に、
説得されて留まった。その一方、伊庭の匿いについて相談した相手は本山。本山は、同じく
美賀保座礁仲間ながら、一足早く江戸に到着して、洋学仲間に守られ、乗船事実を隠蔽すれば、
そのまま、何食わぬ顔して明治を生きるも可能な安全圏に居た。
その本山は、伊庭への同情心から、伊庭と共に蝦夷行きとなる。そして戦死の宿命。
結果からすると、当事者、中根としては、自己嫌悪。恰も冥土行き掛を本山に押し付けたような
罪悪感が永久に消えない。
明治のご時勢、賊出身者が箱館戦争参戦者について語るは、実に危険。左遷は間違いない。
その為、この頃の記録は、中根に限らず、皆架空名義。恰もゴーストライター。
それに、中根の場合、被害は己だけでない。自分を守ってくれた「乙骨太郎乙」に迷惑を及ぼす。
「乙骨太郎乙」は、単に中根を説得して蝦夷行きを阻止しただけでなく、自分も体を張った。
美賀保座礁組は、江戸や、静岡に逃げ帰るも、捉えられて斬首される者が後を絶たない。
中根の美賀保乗船事実がバレるなれば一大事。そこで、乙骨は苦肉の策。ほとぼりが収まる迄、
中根の身分を偽造。己の下僕扱いとして、静岡移住組に、無事連れ込んだ。庇った者も、
発覚すれば斬首、覚悟の上だった。
▼
中根淑は決心。丁度、伊庭の日記があった。
それは、下記の「御上洛御共之節旅中並在京在坂中萬事覚留帳面」。これは、旧幕府が、
真っ向から新政府に楯突いたとされる問題期間の「戊辰末期、箱館戦争」などの危険部位に
触れることなく、時期的にはもっと前の段階、しかも伊庭の私的日記。
そこで、この日記に基いて、中根は伊庭について語り残した。心的には、追悼の意と、
せめてもの罪滅ぼしというところだろうか。
中根淑は、伊庭道場先代の教え子。その為、伊庭八郎を命にかえても守るつもりが、自分だけ、
生き残った苦しみを背負って生きる立場。
- おそらく、本山についても書きたかったことだろうが、あまりにも危険。
  しかも、中根は、やはり一度頭を打っている。あくまで史書編纂のモードで書いた書の
  一部は、賊軍賞賛の意で捉えられ、指摘された経緯もある。
- 中根淑が書いた「征西日記」の特徴は、伊庭の好きな食べ物の話やら、かなり平和。
  これは、疑うなれば、おそらく、中根淑は時代背景の都合上、政治的要素が絡む部分は、
  回避したのではないかとも思える。その理由については、以下文章へ。

＜中根淑について＆著書「征西日記」＞

■ 征西日記とは

伊庭八郎に係る貴重な記録：中根淑の著。
伊庭八郎本人の日記「御上洛御共之節旅中並在京在坂中萬事覚留帳面」に基く。

■ 「御上洛御共之節旅中並在京在坂中萬事覚留帳面」とは

伊庭八郎本人の日記
◇元治元年（1864）1/14～6/25日迄の163日間、将軍徳川家茂警護の旅に係る経験日記。
◇14代将軍徳川家茂上洛＝元治元年（1864）1月から。
◇この時、伊庭八郎は、警護掛として随行して、上洛。
◇この原本たるや見たことないが、中根が著わした 「征西日記」 には、政治的事象無し。
長州がどうしたとか、攘夷がどうした・・・その手の話は皆無。中根淑の配慮か？不明だが。

＜中根淑について＞

■ 天保10（1839）/2/12 ～大正2（1913）/1/20 。享年：75歳。江戸生れ。晩年：静岡県興津居住。
■漢学者、随筆家。旧幕臣。■名：淑、字：君艾、初名：造酒、号：香亭。
旧姓は曾根。中根姓は中根家に養子INした為。
■実の父母
◇実の父：曾根直（字：繩卿）、◇実の母：朝川善庵の娘。
：その為、中根淑は＝「朝川善庵（儒者）」の孫である。
■剣術に於ける伊庭家との縁
：中根淑＝伊庭秀業の弟子。（伊庭秀業＝伊庭道場の先代：幕末の道場主は伊庭八郎本人）
■維新後：上記のとおり、「乙骨太郎乙」に守られ、乙骨の下僕に扮して、無事駿府へ移住。
（美賀保座礁組であった過去は隠蔽。最後まで徹底抗戦にあった事実は命取りだから。）
：沼津兵学校教授（明治2年1月就任）。明治5年陸軍参謀局勤務（陸軍少佐）。出版社勤務。
■著書他着手
：沼津兵学校時代に、「兵要日本地理小誌」著。しかし、これは頭を打った。
このご時勢、旧幕府の話を語るなれば、賊軍賞賛の意で捉えられ、指摘された。
他に、◇「日本文典」、◇「香亭雅談」他著。
■幕末戊辰時の姿
：長州征討参戦。幕府陸軍差図役勤方拝命。鳥羽伏見参戦。榎本艦隊に便乗。
美賀保座礁。共に乗船していた伊庭八郎を庇いながら（伊庭は片腕の男指名手配の身）、
陸路逃走。江戸へ。本山小太郎に相談した結果が、本山が蝦夷で戦死。かたや己は存命。
深い悔恨が残る。征西日記を著わした動機は、伏せて語らずながら、当然追悼の意。

＜逃走経緯や、本山へのバトンタッチについては、現在頁上側の関連頁ナビからどうぞ。＞

【D】中根淑を救った男「乙骨太郎乙」

乙骨太郎乙

■生没：天保13 （1842）～大正11（1922）7/19 or大正10年（1921）。享年：80歳。江戸出身。
■名前について
乙骨太郎乙（姓：おつこつ。名前の通称が：たろうおつ）、名：盈(えい)。号：華陽。
■英学者,翻訳家。（漢,蘭,英）の各語可能。
■家族について：
◇父：乙骨耐軒(たいけん)：乙骨太郎乙は耐軒の長男。【乙骨耐軒とは：甲府徽典館学頭。江戸城天守番。】
◇妻と妻方の親族：乙骨太郎乙の妻「つき＝つぎ＝継」」は杉田玄白の曾孫

継の父＝杉田成卿（梅里）：幕府天文方
継の曾祖父＝杉田玄白
乙骨太郎乙の「蘭学＆英学」の師匠は、上記「成卿」。そこで「成卿」の娘「継」と結婚。

■乙骨太郎乙に於ける幕府時代の経緯

◇万延1(1860)年：蕃書調所書物御用出役就任。この蕃書調所とは、開成所と改称される。
◇元治(1864)元年：開成所教授手伝並出役就任。この後、教授手伝を経て、教授に昇格。

■乙骨太郎乙に於ける維新後の経緯

◇明治元年沼津兵学校教授。
◇明治5(1872)年：政府に徴されて大蔵省翻訳局勤務,
◇明治8(1875)年：退官。
◇明治11（1878）年：海軍省御用掛就任。翻訳に従事。【～明治23（1890）年迄：翻訳各種着手。】

というわけで、
箱館戦争の悲劇のヒーロー「伊庭八郎」の重要キーマン「本山小太郎」について、
関連人物網から、「本山小太郎の前職模索資料編」をこれにてお開き。

■直接及び間接的な関連者の共通点から、やはり、つまるところ、「蕃書調所」がキーワード。
・・そして、もうひとつ
■戊辰末期フランス調練を受け軍に流入した者の内、外国奉行お預かり出身者内訳がきっちり、
把握できたら、さらに次なるヒントが落ちてるかもしれない。

伊庭八郎は、モルヒネの杯を、一気に飲み干した。
・・・心と裏腹、なぜか微笑が浮かんでいた。・・この話はSERIESのTOP＿No.1