2017年02月04日
「不安」は進化の初期に獲得した感覚か ハエも不安を感じていたことが判明
シンガポール、デューク大学・国立シンガポール大学医学大学院のファルハーン・モハマド氏とシンガポール科学技術研究庁の共同研究チームは、ハエも哺乳類と同様に「不安」を感じており、抗不安薬を処方すると、不安が解消されることを確認したと発表した。
「不安」は、何かを心配したり、恐怖したりする感覚のことで、そのメカニズムは不明な点も多く、特に脳において、発生や抑制がどのように制御されているのかは、ほとんどわかっていない。
不安自体は疾患ではないが、過剰な不安から、身体や精神の健康に悪影響を及ぼす「不安障害」が引き起こされることがある。
モハマド氏らは、マウスを利用して不安の研究をおこなっていたが、別の実験で使用していたショウジョウバエが、特定の環境下で、不安を感じているマウスと同じように、飼育かごの壁に沿って歩き回っていることに注目。
「ハエも不安を感じているのではないか」と仮定し、飼育かごの壁を加熱した場合と、していない場合のハエの行動を比較した。すると、加熱されたときのハエは、加熱されてないときに比べ、壁に沿って歩き回る頻度が多くなっていた。
また、複数の個体と一緒に飼育していたハエを、1匹だけの環境に移した場合も、壁に沿って歩き回る頻度が増加したという。これらのハエのエサに、抗不安薬「ジアゼパム」を混ぜて与えたところ、壁に沿って歩き回る頻度が明らかに低下し、ハエがマウスや人間と同じように、不安を覚えていることが確認された。
モハマド氏はこの結果から、「不安は、哺乳類など知能の高い生物に限られた感覚ではなく、少なくともハエと人間の共通の祖先から引き継いだ、遺伝進化的に古いものと推測される」とコメント。今後、マウスや人に加え、ハエも利用して不安のメカニズムの解析を進めていくとしている。