2017年02月15日
なぜ人間の脳は0.6秒で「いいたい単語」を見つけられるのか?
辞書を引くとき、目的の言葉を見つけるまでにどれくらい時間がかかっていますか?
ある程度教養のある大人なら、頭のなかにだいたい3万語から5万語の語彙を持っているといわれています。
そのなかから自分がいいたい単語を見つけ出すのにかかる時間は、なんと0.6秒。脳がどうやってそんなに高速な処理をしているのか、気になるところですね。そこで今回は、そんな脳の不思議なメカニズムに迫ります。
■瞬時に脳が見つけ出す鍵は単語の共通点
イギリスにあるバンガー大学の研究者、オッペンハイム博士によると、人間は単語の意味の間に共通する要素を見出し、体系化しているといいます。
「犬」という単語と「猫」という単語には、「毛が生えている」「四足歩行」「尻尾がある」などの共通点があります。
こうした共通点を見出したうえで、使用頻度に応じて自分のなかの辞書を再編成し最適化しているというのです。
オッペンハイム博士は、被験者に500種類の絵を見せて、それがなんであるかを答えてもらう実験を行いました。
すると最初に「犬」を見せたときには600ミリ秒で反応できたものの、次に「馬」が出てきたときは615ミリ秒、さらにその後「猫」が出てきたときには630ミリ秒と、どんどん反応速度が遅くなっていったのです。
すべて同じ動物なのに、どうしてこんなことが起きるのでしょう?
■使えば使うほど単語の優先順位が上がる
この秘密が、先ほど挙げた「辞書の再編成と最適化」です。
「毛が生えている」「四速歩行」「尻尾がある」などの要素を持つ「犬」という単語を使うと、同じ要素を持つ「馬」「猫」といった単語に干渉が起き、優先順位が下がりすぐ出てこなくなるのです。
逆に「犬」という単語を使い続ければ、どんどん優先順位が上がりより反応速度は速くなっていくだろうと予想されています。
つまり、すぐに言葉が出てくるのは、常に単語の優先順位を変えて最適化しているからだといえそうです。オッペンハイム博士によると、こうした研究は事故に遭った場合の言語障害の治療などに役立てられるそうです。
いつも何気なく使っている単語も、常に優先順位が上がったり下がったりしていると思うとおもしろいですね。
「えーと、アレ、なんだっけ?」とすぐに出てこない単語は、ひょっとしたら日ごろ使っていないために優先順位が低いのかもしれません。いまでも脳内では、単語がどんどん最適化されているのです。